【詳細レポート】氷川きよし「これか
らがスタート」初披露「ボヘミアン・
ラプソディ」など全29曲で魅了

デビュー20周年を迎えた氷川きよしが、東京・千代田区の東京国際フォーラム・ホールAで、恒例のクリスマスコンサート<氷川きよしスペシャルコンサート2019~きよしこの夜 Vol.19~>を開催した。同所にて、12月11日と12日の昼夜の計4公演で約2万人を動員。18人編成の豪華バンドの演奏で、厳選されたオリジナル曲に、初披露のカバー曲など計29曲を、8種類の衣装で歌う、盛りだくさんな内容となった。

ここでは、12日の昼の部の模様を紹介する。開演前の場内は約5,000人のファンで熱気に包まれていた。スクリーンには、「かねふくの明太子」「X‐Mobile」など、氷川が出演したコマーシャル映像が流れているのも嬉しい演出。開演時間となり場内が暗転すると、色とりどりのペンライトが美しく揺れ、方々から「きよしくーん!」「きよしちゃーん!」といった女性達の声が聴こえてくる。緞帳が上がり、薔薇の花をあしらった紗幕の奥にうっすらと氷川の姿が見えると、いっそう激しくなった歓声と大きな拍手が贈られた。蝶をイメージした華麗な衣装で登場した氷川。1曲目に選ばれたのは、今年の10月に発売されたアルバム『新・演歌名曲コレクション10. ‐龍翔鳳舞』の収録曲「それぞれの花のように」。「♪ありのままの自分を生きる」「♪迷うことなく咲けばいい」という歌詞が印象的だ。続いて、新曲「大丈夫/最上の船頭」(Gタイプ)のカップリング曲「天地人」を歌唱。衣装が映える美しい舞姿と心のこもった歌いぶりに、オープニングから全力を感じさせてくれる。歌い終えると「最高!!」「きよしくーん!!」という興奮気味の声が上がった。
バンドによる、インストゥルメンタルの演奏を挟んで、和装で登場した氷川。最新曲「最上の船頭」を歌い上げた(同曲はコンサートの2日後の14日に第52回「日本作詩大賞」を受賞)。演奏が終わる最後まで切なげな表情で演じ切り、観客を歌の世界に深く引き込むところも流石である。深々とお辞儀をして、「皆様、こんにちは! 今日は、平日のお忙しい中、お寒い中、ようこそお越しいいただきました。本当にありがとうございます!」と挨拶。1階席から2階席の上の方にまで「ありがとうございます」と声をかけ、「きよしくーん!!」という声に「はい!」と返事をしたり、歓声を受けて「元気ですね。良かった! 安心しました!」などと答える、ファン思いの氷川。会場は和やかで温かい空気に包まれていた。ここで、「歌というのは自分自身との闘いで、それで続けてきた歌の道なのですが、皆様がいてくださったから今日の日を迎えられました」と20年を振り返るトークとなった。

「氷川きよしという歌手が2000年2月2日に誕生しまして、22歳で右も左もわからないような芸能界に入って多くの方に氷川きよしはこういうものであるということをプロデューサーが作られて、歌の主人公として大切にこの道を歩ませていただいて、この日を迎えられました。これからもたくさん色んな歌を歌っていきたいですし、とにかく歌が大好きで、歌もお料理もファッションもおしゃれも好きですけど、やっぱり歌っていうのは自分を表現できるものなので、自分の最大の武器でもあり、歌は剣であり、そして服は自分の盾でもあります。これで、一人の勇者としてこの道をたくさんの方に支えていただいて歩んで参りました。これからがスタートです」。そこから、氷川が“平成の股旅野郎”というキャッチフレーズだったデビュー時の話から、氷川の原点となった股旅演歌のオリジナル「ちょいときまぐれ渡り鳥」「花の渡り鳥」「越後の雪次郎」「大井追っかけ音次郎」「箱根八里の半次郎」を選曲。晴れ晴れとした表情で堂々と歌い切った。
ここで、氷川のコンサートでお馴染みの司会者・西寄ひがしが登場。西寄は、氷川のコンサートの司会を務めて19年になるという。2人が出会った頃は、氷川が23歳で、西寄が27歳だったのだとか。今年の活動についてや今までの思い出など、仲の良い2人の軽妙な掛け合いで会場を大いに沸かせた。続いて、氷川は世界の国旗をあしらった鮮やかなスーツ姿で登場し、「きよしの令和音頭」を披露。個性的な衣装について、氷川は、「『国旗が着たい』って衣装さんに発注しました」と振り返り、西寄に「すごい発注ですね!」と突っ込まれる場面も。その衣装のまま、「きよしの数え唄」「きよしのソーラン節」「きよしのズンドコ節」と、曲名に“きよし”が付く名曲をたたみかけた。

氷川の衣装替えタイムには、西寄による面白ほっこりエピソードも明かされた。氷川がある時、「ご飯をおひつに移してください」と言おうとして、「ご飯を棺に移してください」と言った話や、車に乗っている時に、「サービスエリアで降ろしてください」というのを「インターチェンジで降ろしてください」と言ったことなど、西寄だからこそ知る、貴重なエピソードである。また、氷川は、スタッフや移動車のドライバー、警備員の1人1人にまで気遣いを欠かさない、という話も聞くことができた。
紋付袴に、長い髪を一本に結った凛々しい姿では、レコード大賞を受賞した「一剣」をはじめ、「浪曲一代」「玄海竜虎伝」「男の絶唱」「白雲の城」と、賞を受賞した作品を熱唱。「白雲の城」では、稲妻の音が鳴るやいなや「待ってました!」と声がかかり、足元にはスモークが流れ、宇宙と雲の映像を背にするという幻想的な雰囲気の中での歌唱となった。
インストゥルメンタルの演奏を挟んで、突如ハードなギターが鳴り響き、ステージ上段に現われた氷川。和装とはうってかわった赤いエナメルのボディスーツとニーハイブーツ姿に、どよめきまじりの歓声が起こった。ボディラインが映える妖しげなポーズと動きに、目付きも別人のようである。そのまま、新曲「大丈夫/最上の船頭」(Iタイプ)のカップリング曲「確信」をロックに歌い上げた。そこからクレーンに乗りこみ、「限界突破×サバイバー」という流れに、会場もヒートアップ。ヘッドバンキングやシャウトもカッコ良く、客席の上下左右に動くクレーンに、時おり片足をかけて歌う氷川の美脚にくぎ付けになるファンも。同曲は2017年にリリースされてから歌唱映像が人気を集め、氷川の新たな面を見ることができた、記念すべき曲である。この後は、また雰囲気ががらりと変わり、水をイメージしたスパンコールの衣装に長い髪をサイドに流した姿で、アルバム『新・演歌名曲コレクション10. ‐龍翔鳳舞』の収録曲「かなしみのマーメイド」と、最新曲「大丈夫/最上の船頭」(Hタイプ)のカップリング曲「恋初めし」をしっとりと歌い上げた。
コンサートも終盤に入り、ここで、西寄が日本の歌謡界の歴史を紹介。その流れから、作詞家の湯川れい子からの手紙が読み上げられた。

きよしさん、デビュー20周年おめでとうございます㊗︎ この20周年を機に、最近は大きく歌の翼を広げて、演歌以外のジャンルでも、自由に大空を飛び始めたきよしさんを、私もファンの1人として、眩しく見上げて喜んでいます。でも、洋楽のカバーは、まだですよね。 昨年から今年にかけて世界中で大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観て感動したきよしさんが、自分もクイーンのフレディ・マーキュリーが創り歌った、主題歌の『ボヘミアン・ラプソディ』を歌いたいと言い始めて……。 それが今回日本を代表する歌手でトップ・スターの氷川きよしが、20周年を記念するコンサートで歌うということなら、と、私が原曲に忠実に訳詞をして、それをイギリスに送り、クイーン側から、正式に日本語で歌う許可が下りて、今日の発表となったのです。 きよしさんの念願が叶って、私もとてもうれしいし、光栄です。華麗なオペラの世界をイメージして、このドラマティックな歌を作り、歌った歴史に残る大シンガー、フレディ・マーキュリーも、きっと空のどこかから聴いていてくれて、喜んでいてくれることでしょう。 おめでとう。きよしさん。これからも言葉の壁、人種の壁、あらゆる壁を乗り越えて、天高く自由に歌い、光輝き続けて、私たちを幸せにしてください!! 令和元年12月12日 湯川れい子

西寄が代読すると、氷川はこの日、初披露となる「ボヘミアン・ラプソディ」を歌唱。氷川の抜群の歌唱力と表現力で、通常、カバーでは省略されがちなオペラの部分も含めて見事に演じ切り、魂のこもったパフォーマンスに、盛大な拍手と歓声が贈られた。氷川は、「これからもフレディの想いを感じて、日本語で伝えていきたいです」としみじみ語った。
オリジナルのポップス作品からは、氷川が「自分の気持ちを重ねて歌える」という「8番目の虹の色」、木根尚登が作曲を手掛けた「hug」、GReeeeNが提供した「碧し」を披露。「碧し」は氷川のデビュー日の2月2日から歌詞が始まる、この日にぴったりの曲である。歌の間、スクリーンに流れる過去の映像も相まって、感慨深い時間となった。最後は「ファンの皆様へ」という氷川の曲紹介から「あなたがいるから」を披露。感極まって途中で涙ぐむ様子や、マイクを通さずにアカペラで歌う場面も感動的だった。生き生きとした幸せそうな表情で最後まで歌い切りステージを去ると、すぐさまアンコールがかかり、ゴージャスなゴールドの衣装で再び登場。氷川が大好きだという美空ひばりの曲で、アルバム『新・演歌名曲コレクション10. ‐龍翔鳳舞』にも収録されている「歌は我が命」をカバー。同アルバムから「COME ON」と続き、最後は最新曲「大丈夫」を、観客の手拍子と“大丈夫”コールの息が合った一体感の中で絶唱した。圧倒的なパフォーマンスで観客を魅了し、ジャンルを超えた今後の活躍への期待も高まるコンサートとなった。
取材・文:仲村 瞳
【Gタイプ】
COCA-17722 / 1,227円+税
C/W「恋初めし」(作詩・作曲:永井龍雲/編曲:萩田光雄 )
「hug」(作詩:石井克明/作曲:木根尚登/編曲:佐藤 準)
【Hタイプ】
COCA-17721 / 1,227円+税
C/W「天地人」(作詩・作曲:塩野 雅/編曲:野中“まさ”雄一)
「hug」
【Iタイプ】
COCA-17723 / 1,204円+税
C/W「確信」(作詩・作曲:塩野 雅/編曲:Nao)
「hug」

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