浜田麻里 photo by 堀田芳香

浜田麻里 photo by 堀田芳香

【浜田麻里 リコメンド】
紆余曲折を経て辿り着いた
26年振りの日本武道館

デビューから35周年を迎えた浜田麻里。2019年4月19日に最新作『Gracia』を引っ提げたツアーのファイナル公演が日本武道館で行なわれたが、当日の模様を収めた映像作品『Mari Hamada 35th Anniversary Live “Gracia” at Budokan』がついに完成した。いかに素晴らしいライヴであったのかは、公演直後に各方面で報道されていた通りで、日本が世界に誇るロックシンガーであることを改めて証明したパフォーマンスは、本作に触れてみても当然揺るぎない。

ファンにとっても重要なものだった
日本武道館公演

 同作品のリリース(12月18日)に先駆けて、去る12月2日には東京・名古屋・大阪の映画館にて『プレミアム先行応援上映会』が催された。巨大なスクリーンと大音量。しかも、この日は“拍手OK! 手拍子OK! 発声OK!”という特別許可がなされていた。どのような光景が繰り広げられるのかまったく想像もつかなかったが、足を運んだ東京会場であるユナイテッド・シネマ アクアシティお台場では、ライヴのような盛り上がりとはむしろ正反対で、目の前で繰り広げられる映像の迫力に飲み込まれたかのように、観客は一様にスクリーンを凝視していたほど。この日本武道館公演がファンにとってもいかに重要なものであったのか、そんな個々の想いを垣間見る時間でもあった。

ライヴ活動を休止し
約9年間は音源のリリースのみ

 浜田麻里が日本武道館のステージに立ったのは、実は26年振りのことだった。新たな流行が次々と生まれては消えていく中、これがどれだけの偉業であるのかは、推して知るべしである。事実、ここに至るまでにはあらゆる苦難があった。

 一般的には「Return to Myself〜しない、しない、ナツ。」(1989年4月発表の9thシングル)や「Heart and Soul」(1988年9月発表の8thシングル)のヒットで知られるシンガーかもしれないが、人気絶頂期だった1993年に国内でのライヴ活動を休止。背景に何があったのか、理由はひとつではないものの、端的に言うならば、日本の音楽業界におけるアーティストとしての生きづらさを彼女は感じていた。その現状に対する反発心を具体的に示した行動だった。本作でも“この世界には楽しむための歌がある。楽しむためのたくさんの音楽があります。でも、一方、魂を絞り出す手段としての命の歌というものもあります。私の歌は楽しみなんかじゃありませんでした”との言葉が残されている。

 以降、約9年間は音源のリリースのみという状況を続けていた。ただ、かねてから特にテレビメディアに出演することは少なかったものの、そのつど効果的なプロモーションが行なわれることもなく、アルバムのセールスも下降傾向を辿っていく。言うまでもなく、ランキング自体はアーティストの価値を測るものではない。とはいえ、かつて1位を記録していた人が100位近いポジションにいれば、世間的にどう映るかは想像に難くないだろう。

 大きな変化が訪れたのは2002年のこと。アルバム『marigold』の発表に伴い、東名阪でのツアーが行なわれることになった。突然のニュースに周囲は沸いた。なぜそのタイミングだったのかを説明するのはひと筋縄ではいかないが、少なくとも確かなのは、長年にわたって声援を送り続けていたファンの存在がある。あの時、彼ら彼女らが浜田麻里のステージへの復帰を熱望していなかったら、未来はまた違ったかたちになっただろう。チケットは早々に完売。東京は改築前の赤坂BLITZ(キャパシティーは現在の約1.5倍)だったが、その異様な盛り上がりは今でも覚えている。

 築かれていた確固たるファンベースは、ここから徐々に広がりを見せていくことになる。例えば、東京でのライヴ会場は、その後、中野サンプラザ、東京国際フォーラムへと規模が拡大していった。デビューから30周年を迎えた2013年には『FNSうたの夏まつり』に出演。地上波のテレビ番組で彼女が歌ったのは約20年振りだ。当初、本人は積極的ではなかったものの、現在はもっとも近いひとりである、信頼のおける人物からの強い勧めがあって実現したものだった。そこで多くの人が耳にした圧倒的な歌唱。放映時にはインターネット上の検索ワードとしても“浜田麻里”が急上昇するなど、反響はすさまじかった。そして、翌年には『SUMMER SONIC』、翌々年には『LOUD PARK』という大型フェスのラインナップにも名を連ね、実際のステージにおいても浜田麻里のすごさを強く印象付けることになった。
浜田麻里 photo by 堀田芳香
浜田麻里 photo by 堀田芳香
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浜田麻里 photo by 堀田芳香
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OKMusic編集部

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