山本耕史&堂珍嘉邦に舞台への思いを
聞く ミュージカル『アナスタシア』
にグレブ役で出演 

第70回アカデミー賞で歌曲賞、作曲賞にノミネートされた同名アニメ映画に着想を得て制作されたミュージカル『アナスタシア』がいよいよ2020年3月〜4月に、日本初演される。

 
帝政ロシア時代最後の皇帝となるロマノフ2世をはじめ一族が殺害されたなか、皇帝の末娘アナスタシアだけは難を逃れていき続けたという歴史上の謎「アナスタシア伝説」に基づいた物語。2016年にアメリカでのトライアウト公演を経て開幕したブロードウェイ公演は、17年3月のプレビュー公演の後、4月に開幕。以降、19年3月まで2年間にも及ぶロングラン上演となった。その後、スペイン公演、北米ツアー、ドイツ公演、オランダ公演も開幕。日本国内では、この日本初演オリジナル版公演に続き、2020年6~8月に、宝塚歌劇団・宙組による宝塚歌劇版の上演も決定している。
今回、グレブ役として出演する山本耕史、堂珍嘉邦CHEMISTRY)に、作品に対する意気込みなどを語ってもらった。なおグレブ役は、遠山裕介も合わせ、トリプルキャストとなる。
ーーまずは、『アナスタシア』にご出演が決まった気持ちをお聞かせください。
 
山本:『アナスタシア』のような大型のグランドミュージカル、“ド直球”のものに出演させていただくことが、結構久しぶりなんです、僕。過去に『レ・ミゼラブル』(※ガブローシュ役やマリウス役)などに出演したことなどはあるのですが、それからロックミュージカルやライブパフォーマンス的な作品が多かったんです。これだけの大所帯で、トリプルキャスト・ダブルキャストがいて、壮大なミュージカルはなかなかなかった。初めてではないんですけど、久しぶりにそこに自分が参加するということで、新しい自分がまたあるなと思って。とても嬉しい気持ちでした。
 
堂珍:光栄でした。この舞台に立つということも特別なことですし、そういった意味も含め、しっかりやろうという気持ちしかないですし、楽しみです。
 
ーー山本さんと堂珍さんのお二人が共演したのは、およそ10年前のバラエティ番組内だそうですね。
  
堂珍:そう、確か耕史さんの番組じゃなかったかな…?
 
山本:いや、ぐっさん(※山口智充)の番組で、ぐっさんと僕が即興で曲を作るコーナーがあって、それに関連したトークコーナーで、(堂珍さんに)来ていただいたと思います。だから仕事でしかお会いしていないんですけど、その後、僕は『RENT』の日本初演(※マーク役)をやっていて、堂珍さんは近年の『RENT』に出演されていましたよね。なんかそれもあって、僕の中では近い存在という感じがする。
 
製作発表でも話しましたけど、せっかく一緒になったのに、同じ役だから一緒のステージには立てない。それは残念なんですけど……きっと女の子たちも「絶対堂珍さんがいいよね」とか派閥が分かれていくんでしょう?(笑)
 
堂珍:いやいや!(笑)
 
山本:「堂珍さんのグレブが素敵!」、「私は遠山くんがいい」とかね。そういうことも想像しながら面白いなぁと思っていますよ(笑)
 
堂珍:みんなそれぞれ、違っていいと思いますよ(笑)
堂珍嘉邦
山本:そうですね。もちろん自分もやるんだけれど、僕も普通に見たいですもん(笑)。このキャストとこのキャストの組み合わせはどうだろうと、すでに観客としての目線も持っちゃってます。
 
ーーおよそ10年前と今、お互いの印象に変化はありますか?
 
堂珍:耕史さんは変わられていないですね。
山本:よかった。僕は当時から……、ミュージシャンの方って、ちょっと怖いイメージがあったんです。だけどね、堂珍さんについては「こんな素敵な人柄の方がミュージシャンなんて、素敵だな〜」と思ったのを覚えています。
 
堂珍:勿体無いお言葉です。
  
山本:堂珍さんは終始紳士な方。まぁ普段はどうか知らないですし、酒を飲んだら暴れたりする一面もあったりするのかも? なんて妄想したりもしますけど(笑)、でも本当にすごく穏やかな印象を受けています。
 
堂珍:僕はテレビでずっと耕史さんを見ていたから、すごく大人の方というイメージがありました。番組でご一緒させていただいて、耕史さんはギターもお上手で。ミュージシャンよりミュージシャンっぽい感じがしたし、ものづくりや表現すること、そして音楽がすごく大好きなんだなという印象です。僕も41歳になるんですけど、“40代としての佇まい”ってあるじゃないですか? 耕史さんは、絶好のお手本なんですよ!
山本:ありがとうございます……!!
 
堂珍:久々にお会いさせていただいて、お話もフランクにさせていただいたんですけど、これから舞台を一緒にやらせていただけるということで、本当に楽しみ。同じ役なので、稽古の時から多分密になれるのではないかなと思っていて、とても楽しみです!
 
ーーグレブ役のオーディションについて伺います。海外クリエイター陣が参加されたそうですが、どんなことが印象に残っていますか?
 
山本:僕の場合は外国のクリエイティブスタッフの方と面接みたいな感じでした。オーディションというと、「はい、何番の人入ってきて。歌ってみて」というような感じだろうけど、本当にね、向こうからこちらのことを知ろうという姿勢がすごく感じられたオーディションだったかな。
 
「どういう風にしていきたいですか? いま受けている役はこういう役で、こういうことが必要なんですけど、表現として、こういうことはどうですか? 得意ですか?」みたいな話から、「じゃあ歌ってみてください」みたいな。ワークショップのように、その人そのものを知ろうとしていた。愛を持ってオーディションをされていたなという印象です。
 
堂珍:僕はスケジュールがあわなくてクリエイティブスタッフの方とはお会いできなかったので、オーディションの映像を送っていただきました。オーディション用に歌を歌っていたという印象くらいしかないんですけど、演目の曲が何曲かあって……ちょっとだけ早めに入って教えていただきながら歌いました。音楽ですし、歌なので、その時に感じたことをバッと出してみて。その中で、歌いながら面白いなと思いました。レンジが広い曲で、野太いところから甲高いところ、ロングトーンもあって、これはやりがいがあるなっていう感じでした。
(左から)堂珍嘉邦、山本耕史
ーー堂珍さんは『RENT』(2017年)ぶりの舞台ですよね。少し間も空きましたが、舞台に対する思いをお聞かせください。
 
堂珍:製作発表で、共演させていただく方のお話を聞いて、なるほどということがたくさんありましたし、舞台って一つになるじゃないですか? 舞台によっていろいろあるんでしょうけど、エネルギーが一つになるという結束力。それがすごく楽しいというか、変な言い方ですけど、生きている実感のようなものがあるのかな。そういうことがたまに恋しくなる。
自分がやっている音楽には結束力がないのかというと、そういう話ではないんですけど、音楽というのは偶然が重なり、一つになった瞬間が気持ちいいというところがあるんですね。もちろん舞台もそうなんですけど、最初からみんなが円になっている感じがなかなかね、僕にとっては新鮮なことですよ。
ーー山本さんは舞台経験も豊富でいらっしゃいますが、どのような思いを持っていらっしゃいますか?
 
山本:舞台といってもね、ミュージカル、ストレートプレイ、音楽劇などがありますし、時代物もあれば、現代、未来もあったりして、一括りに舞台というとなかなか難しいんですけど、表現の場所としてはいろいろなことを必要とされる場所だと思うんです。だから、俳優の中だと一番アスリートに近い感じなのかな。
 
あとは、役を脚本の頭から最後まで一気に突っ走れるのは、実を言うと舞台だけ。ドラマや映画は撮影でシーンが行ったり来たりするし、順番にいくら撮っても1日で撮るわけじゃない。その役を2時間なり3時間なり、頭から心もそのままに追いかけていけるのは、一番舞台がリアリティがある。もちろん映像もその瞬間にその気持ちを思い出して、そう言う風に表現すると言う意味ではね、リアルなんだけど。
 
舞台って、すごく上手くて、すごく魅力的なんだけど、例えば立ち方が悪いとか、そういうことが正直あるから。そういうことも気にしながら、いろいろなことが露わになってしまう場所でもあります。それが鍛錬の場所であると思うし、自分を知る場所でもあるし、突き詰めれば突き詰めるほど意外と簡単だったりもするし。知れば知るほど分かってくる唯一な場所な気もするんです。
テレビドラマや映画などでは、どれだけ色々なパターンを考えていても実際に使われるのはその中のひとつだけで、後から「本当にこれが正解だったのかな?」なんて考えたりすることもあったりします。でも舞台は100回も200回も同じセリフを人前でお金をいただいて言うわけですから。だから、毎回毎回100%以上のものは出ている気がします。舞台は自分の潜在能力をぎゅっと引き出すような場所という感じがしていますね。
山本耕史
ーー「突き詰めていくと意外と簡単」というのは?
 
山本:そうだな、例えば、丸を描くとしますよね。それを欲しい人はもう「OKです」というわけじゃないですか。だけど本当にOKなのかどうかは自分の中の判断だったりするし、後ろ向いたらその丸に対して笑っている奴もいる。そういうことに翻弄されなくなるわけです。
 
誰というわけじゃないけど、見ていて素敵だなという人もいれば、もうちょっとできるのになという人も正直いる。だけど同じ拍手を観客から浴びるわけ。その人にとってはものすごく錯覚するし、これでいいんだと違う方向に行っちゃう人もいるんだけれど、やっていけばやっていくほど、それがなんとなく分かってくる。
 
細かいことを言うと、ここは右足から一歩ではなくて、左足から一歩だなということすら分かってくるようなイメージです。どちらから行けばいいんだろう? というのは迷いだから。どっちでもいいんだけど、どっちでもいいんだったら迷う必要はないんです。それはもう右でいいんだって。でも右を出してみたら、あそこまで三歩でこういう態勢になりたいなと思ったときに、あ、左足からだっていうことが分かってくる。それが舞台。
  
セリフを言い終わった後に向くのか、向きながら言うのか、向いてから言うのか、戻して言うのか、いろいろ試せる。自分にとってしっくりくるものを探れる。そうすると、一番簡単と言ったのは、一番自分がいいと思うものを人に提示できるから、難しくないという意味。迷わないでできるというのかな。やればやるほどね。
 
ーー研ぎ澄まされていくと言うような感覚ですか。
 
山本:そう。あとは諦めですから。これで絶対いいんだと思い込む。本当に思い込んじゃって失敗するパターンもありますけどね(笑)
ーー初めてミュージカルをご覧になる方も多いと思いますが、ご出演されている立場から、見方のアドバイスや楽しみ方のコツを教えてください。
 
堂珍:映像などの技術を駆使した舞台、すごく楽しくないですか? 今はもう2019年だけど、1900年代から本当にあったようななかったようなお話をファンタジックにやっているわけですから、面白くない? って思うんですよね。何か圧倒されるものや何か伝わるものがあるはず。歌やセリフは訳されたものかもしれないけれど、日本で日本人がやるわけだし、世界観を伝わりやすくするというのが僕らの役目なのかなと思ったりもします。
 
山本:技術的に昔よりいろいろなことができることができるようになっている。見どころというのは、もちろん俳優たちのパフォーマンスもそうですし、衣装も装置もそうなんだけれども、それにプラスして、やはり今の現代でしかできない演出ですよね。これが50年前、10年前でもできなかったようなことがどんどん舞台の中で巻き起こっているから。
 
僕も未だにミュージカルはちょっと見づらいなと思っている部分があるんです。でもそういう僕らが出ることによって、少し変わると思うんです。「テレビやドラマに出ている人が、ミュージカル?」という方は未だにいますから。そういう人たちがミュージカルを観たときに、僕らがいいと言っていただくのも嬉しいし、あとミュージカルってこんなにすごいんだと、きっと驚くような演出をしてくると思うんです。
 
それこそ、僕も360度劇場に出演したことがありますが、あれもどこかアトラクションみたいな気持ちでお客さんも来ると思うんですよ。だからもうね、今や舞台は、観劇に来て静かに観るというよりは、「うわ! すごい! と体感するようなものだと思う。これはミュージカルですが、子どもの頃に経験したジェットコースターやお化け屋敷のような、そんな気持ちで来ていいんじゃないかな。一瞬で終わってしまうジェットコースターとは違って、ミュージカルは3時間ぐらいあるわけ。長いこと体感できるのは新しい楽しみ方だと思います。
(左から)堂珍嘉邦、山本耕史
<ヘアメイク>
国府田圭(堂珍嘉邦)
沖山吾一(山本耕史)
<スタイリスト>
Die-co★
衣装協力
YOHJI YAMAMOTO(ヨウジヤマモト)/ワイズ プレスルーム 03-5463-1540
取材・文=五月女菜穂 撮影=敷地沙織

SPICE

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