「シティーハンター」をフランスで実写映画化し大ヒット

「シティーハンター」をフランスで実写映画化し大ヒット

実写「シティーハンター」フランス大
ヒットの要因 オマージュ&小ネタ満
載でアニメファンが大喜び

「シティーハンター」をフランスで実写映画化し大ヒット(c) Axel Films Production 北条司氏による大ヒット漫画「シティーハンター」をフランスで実写映画化した「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」は、原作の大ファンであるフィリップ・ラショーが監督・主演を務め、フランスで観客動員168万人のヒットを記録。日本でも11月29日に公開され、12月8日までの10日間で動員8万1127人、興収1億を突破、観客からは「心底安心できた実写版」「原作への愛を感じる」「日本よ、これが実写化だ!」(映画.comレビューより)と高い評価を得ている。しかし、難しいといわれるマンガ・アニメの実写化が、なぜフランスで成功したのだろうか? このほど、映画.comがヒットの要因を探った。
編集部注:本記事にはネタバレ・解説が含まれています。
 「シティーハンター」は、フランスでは「ニッキー・ラルソン」というタイトルで、リョウがニッキー・ラルソン、香はローラという名前だ。今回の実写映画の原題は「Nicky Larson et le parfum de Cupidon」(ニッキー・ラルソンとキューピッドの香水)。実は本作、ラショー監督の日本アニメへの愛が溢れる多数のオマージュが詰め込まれており、リョウが槇村とバーで飲むシーンでは、らんまと呼ばれるウェイトレスに1/2サイズのビールをオーダーしたり、「ドラゴンボール」シリーズの亀仙人のようなシニア男性が登場と、現在公開中の吹き替え版でも映像で表現されたいくつかの描写が確認できる。
 しかし、驚くべきは同作の仏語版ウィキペディアで、“公園でサッカーをしていた少年の名前はオリヴィエとトム。これは「キャプテン翼」のフランス版のタイトルである”、“テレビ中継の画面のテロップで、モッコリー市長が「ハイスクール奇面組」の舞台の中学校を訪れたと書いてある”など、フランスの日本アニメファンでなければわからない小ネタについて様々な引用元が5000字以上にわたり記載されており、「人造人間17号」「アタッカーYOU!」「聖闘士星矢」「北斗の拳」「ニルスの不思議な旅」など日本アニメのフランス版タイトルが数多く並ぶ。なお、“もっこり”については、“擬態語、勃起を意味する日本語のオノマトペの一種である”と真面目に解説されている。ラショー監督同様、フランスのファンたちの本作に対する熱量を感じるページだ。
 子供の頃自国でアニメ版を見て、同作のファンになったというフランス人男性は「当時フランスで原作漫画は読めなかった。アニメ『ニッキー・ラルソン』は、おバカさや不条理なおかしみという原作の魂が残った作品」と話す。フランスでは1980年代後半から、漫画の出版より先にアニメが放送された。「クラブ・ドロテ」という子供向け枠での放送だったため、流血など暴力的なシーンやエロティックなセリフ、成人向けの場所については、カットもしくは吹き替えで別の表現に差し替えられていた。例えば女性が接待するバーはベジタリアンレストランに変更され、今回の実写版映画では、リョウが女性をナンパするシーンで、ベジタリアンレストランに誘うという表現で回収されている。
 また、映画で航空会社のスタッフを演じた女優が当時「クラブ・ドロテ」の進行役を務めていたり、90年代前半にヒットしたドラマ「ベイウォッチ」で絶大な人気を集めた女優、パメラ・アンダーソンが下着モデルを演じたりと、アニメを見ていた世代のノスタルジアを喚起したことも成功の一因のようだ。
 なお12月13日から、TOHOシネマズ新宿で「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」字幕版の公開が決定。吹き替え版に満足した方は、字幕版で新たな発見を楽しんでみるのはいかがだろうか。

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