歌謡界のスーパースターと称される人物を取り上げ、さまざまな資料から、その人物の“すごさ”を浮き彫りにする証言集。今回は惜しくも2013年にこの世を去ってしまった国民的女性歌手、島倉千代子をフィーチャーします。
島倉千代子(シマクラ チヨコ)
1938年3月30日生まれ、東京都品川区出身。日本音楽高等学校卒業。歌手。2004年、NHK紅白歌合戦(第55回)に生涯最後となる35回目の出場を達成。2013年、死去。享年75。

超の付くベテランの彼女だが本番前はいつも緊張して第一歩がなかなか踏み出せない。いつも誰かに背中を押されていた 株式会社ミュージックグリッド代表取締役(元音楽プロデューサー)・境弘邦 『うたびと』(【第29回】島倉千代子とのエピソード(3)「境弘邦のあの日あの頃〜昼行灯の恥っかき〜」/2019年4月22日)より

新曲の歌詞などをもらうと、かならず自分のノートに、1字ももらさず清書し直し、覚えるそうだ。ドラマ、リサイタルなどの台本にいたっては、タイトルから、他人のセリフまで……。いままでに、たまったノートは数えきれない。それほど、仕事をたいせつにする人なのだ 元TBSアナウンサー・鈴木治彦 『週刊平凡』(1975年7月3日発行/平凡出版)より

この人には、突撃癖があるらしい。古くは五七年に作曲家船村徹がターゲットになった。島倉が“その気”になったのは、美空ひばりの『波止場だよお父つぁん』を聞いたせいだ。《私も、ああいう曲が欲しい!》 思い込むと即行動ーーである。島倉はコロムビアの文芸部に通いつめ、船村をつかまえるとストレートにねだった。<中略>応じた船村は間もなく『東京だョおっ母さん』を書いた 音楽プロデューサー・小西良太郎 『女たちの流行歌』(産経新聞ニュースサービス/著・小西良太郎/2001年3月30日発行)より

イエス・キリストほど幸福な人もなく、また悲劇的な人もないように、島倉千代子ほど、人間としての幸福と悲劇を合せ有する人も稀である。だがこれが彼女の運命であり、島倉はその運命にたえる強さを持っていたのだった 演劇、文芸評論家・田辺明雄 『withnews』(高倉健さん「俳優をやめようと思うたび、いい監督や作品に出会った」/2014年11月18日)より

同じ俳優なのに、どうしてこんなに違うんだろうってショックでしたねぇ。日本一高いギャラをとれる俳優になりたいと思ったのは、その頃でした 俳優・高倉健 『日本の歌謡曲』(講談社/著・田辺明雄/1981年7月1日発行)より

最後の最後まで歌に生き、歌を愛する姿勢はまさに歌の神様でした シンガーソングライター・南こうせつ 『Sponichi Annex』(南こうせつ「奇跡の歌声」島倉千代子さん死去3日前に録音/2013年11月9日)より

「神田川」以来40年来のコンビである南こうせつ君から夜、電話が入った。「急ぎます。島倉千代子さん。メロディーは出来てます。一番の歌詩はラフで島倉さんに聞かせました。完成させて下さい。急ぎます。」急いでよかった。亡くなる三日前の壮絶な自宅でのレコーディングに間に合ったのだから…。島倉さん、天国で喜んでくれているだろうかな…? 作詩家・喜多條忠 『私が好きな島倉千代子の歌』(日本コロムビア/ブックレット 間に合った「からたちの小径」/2015年3月18日発売)より

島倉は英雄ではない。やはり普通の人間である。ただし、志の極めて高い純な人間である。少女のような可憐な心と、風雪に耐えた一本の樹木のような強靭な精神力とを併せ持っている ジャーナリスト・田勢康弘 『島倉千代子という人生』(新潮社/著・田勢康弘/1999年2月10日発行)より

千代子は8人きょうだいの6番目。1954年に芸能界に入ったときは16歳でしたから、世間知らずで駆け引きを知らない。真っ白すぎて、好きになった人に簡単に染まってしまう 実弟・島倉征夫 『デイリー新潮』(「島倉千代子」大借金を10億円値引きさせた「細木数子」の見返り/2016年2月25日号/週刊新潮)より

島倉千代子さんの「愛のさざなみ」を歌わせていただき、この時は作詞者であるなかにし礼さんが番組をご覧になっていたというお話を人づてに訊き、心の底から「音楽をやってて良かった!」と感激した次第です エレファントカシマシ・宮本浩次 『ザテレビジョン』(エレカシ宮本「全力で歌い上げたい」カバーズフェス開催/2016年9月14日)より

アルバム『島倉千代子全曲集 2020』

2019年10月23日発売
COCP-40990 / 2,818円+税
[ 収録楽曲 ]
1. 人生いろいろ
2. 鳳仙花
3. 夢飾り
4. くちべに挽歌
5. 生きた 愛した 唄った
6. 片瀬月
7. 火の酒
8. 北どまり
9. 海かがみ
10. 風のみち
11. ちよこまち
12. おかえりなさい
13. 風になる
14. 私の小さな幸せの花
15. 愛するあなたへの手紙
16. からたちの小径

アルバム『千代ちゃんの東京うた散歩』

2019年10月30日発売
COCP-40970 / 2,273円+税
[ 収録楽曲 ]
1. 東京だョおっ母さん
2. 日本橋から
3. 築地明石町
4. 九段の母
5. 雨の湯島天神
6. 赤坂の夜は更けて
7. アモーレ東京
8. 東京チャイナスタイル*
9. 銀座カンカン娘
10. 真白い東京
11. なごり雪
12. 神田川
13. すみだ川
14. 柳橋情話
15. 矢切の渡し (デュエット:船村徹)
16. 浅草メロドラマ
17. 武蔵野エレジー
18. 波浮の港
19. 島の娘
20. 東京の人さようなら

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仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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