ウソツキがラブソングを通して伝える
想い「泣ける」と話題のロックバンド
ーー「僕らは君を一人にはしない」

0時2分を題材に、その時刻を過ごす人たちの身に起きた出来事を5つ曲として綴った、ウソツキのミニアルバム『0時2分』。「一生分のラブレター」「名もなき感情」といった楽曲群が年代問わず多くの人たちの感情を揺さぶり、ウソツキはラブソングの名手的な存在となっている。このミニアルバムにも、出て行ってしまった彼女を追いかけられなかった「僕」の想いを歌う「0時2分」、遠く離ればなれになりながらも自分たちなら大丈夫だと言い聞かせる「大丈夫」など、ドラマチックな恋愛模様が楽曲に紡ぎこまれている。「泣ける」と話題をあつめるウソツキのラブソングの裏側には、メンバーのどういった恋愛観が潜んでいるのか。今回は、恋愛をキーワードに竹田昌和(Vo.Gt)、林山拓斗(Dr)、藤井浩太(Ba)3人それぞれの内面性をひも解いた。
ウソツキ
――ウソツキは今や、ラブソングの作り手として大きな期待を寄せられていますよね。そういった評価に関してはどのように感じていますか。
竹田:すごくありがたい反面、まだ違和感もあります。「一生分のラブレター」をリリースしたあたりから、「また次もウソツキのラブソングが聴きたい」という声をいただくようになりました。ただ実は僕自身、ラブソングを聴くことは苦手だったんです。そもそも自分は恋愛どころか人間関係そのものが決して得意ではないので、そういう曲を作ることに難しさを感じるんです
――え、そうなんですか。
竹田:この前も仲の良いアンテナのボーカル、渡辺諒くんとちょっと喧嘩しちゃって。「もうお前とは一緒に音楽はできないよ!」という感じになって(笑)。
――ハハハ(笑)。それは、今だからこそ言えるエピソードってことですよね。
竹田:うん、それくらいのことを言い合える関係性なんです。最後は「あの時、俺は言い過ぎたよ」と謝ったんですけど、そこに至るまでに『NARUTO-ナルト-』のコミックを全巻読み直したんです。『NARUTO』は友情の物語だし、登場人物のナルトとサスケが、まるで僕と諒くんみたいに重なってきて。『NARUTO』を読んだり、諒くんのことを考えながら「そもそも人のことを好きになったり、大切に想ったりすることってどういうことなんだろう」と考えたんです。一方的に感情をぶつけてもそれはエゴになる。たとえば恋愛においても「自分を好きだということを証明してほしい」という人もいるじゃないですか。その手段が難しくて、僕はそういうことが上手くできないので「ウソツキ=ラブソング」と言われることに違和感を抱いていたんです。
――なるほど。
ウソツキ
竹田:でも自分と同じような感覚の人もいて、「だからこそウソツキのラブソングが好き」「共感できる」と感想も書いてくれていたので「僕には僕のラブソングができるんだ」と気づくことができました。
藤井:僕らは意識してラブソングをやってきたわけではないんです。ただ、デビュー曲「金星人に恋をした」やその次の「新木場発、銀河鉄道」も恋愛曲だったし、その後SNSで「一生分のラブレター」がピックアップされるようになり、TikTokでも「名もなき感情」がたくさんの方に届いた。そうやって数字として伸びていることが分かって「自分たちがやってきたことは間違っていない」と納得できたんです。「ラブソングと言えばウソツキだよね」と見られることは良い傾向だと捉えています。
林山:確かに「一生分のラブレター」の後、メンバー内で自分たちの強みはラブソングなのかもしれないという話はしましたね。竹田のように人間関係が得意ではない人や、ラブソングを普段は聴かないという人も、ウソツキの曲は素直に好きになってくれる人が多い。僕らはもともと、世の中に受け入れられていない気がしている人とか、そういう人に対して「みんな違うようで同じなんだよ、仲間なんだ」と呼びかけるようなライブをしてきました。ラブソングが苦手な人も受け入れられるし、逆に青春を満喫した人も重ね合わせられるような、ある意味、最強の曲を作っています。意識してラブソングを作ろうという感じではなかったけど、でもラブソングは今では僕らの武器になっています。
竹田昌和(Vo.Gt)
――そもそも、メンバー内で恋愛の話をしたりするんですか。
林山:うーん、触りくらいはするかな(笑)。たとえば「今度デートなんだ」とかそういう話はしたとしても、ディテールは話さないし聞かない。個人的にはそういう話が好きなんですけど、今さら「元カノはどんな子だった?」とか、お互いに聞くタイミングはもうないよね。
藤井:拓斗さんとは「今、こういう子が気になっている」とか、そういう話は前まではしていましたね。竹田さんとはあまりしないかな。
竹田:そもそも僕は自分の話をあまりしないよね。
林山:竹田さんはそもそも考えていることが読めない人間。恋バナってみんなで「わかる」と共感をしたいものだけど、竹田さんの場合は「そ、そうですか……」となる(笑)。
竹田:恋バナに関わらず、そもそも人に悩みを相談しないんです。というか悩みがほとんどない。悩みが一つでもあると全部が止まっちゃうんです。例えば、お腹がすいたという悩みがあったとしたら、それだけで何も前に進めなくなる。だから極力は悩みを作らないようにしています。
――逆にいえば、これまで悩みがあったせいでつまずいた経験があるということですよね。
竹田:そうですね。というか、よく考えれば毎日のようにつまずいているかもしれない。ご飯作らなきゃいけないけど作りたくないとか、たったそれだけのことで「今日はスタジオには行きたくないな」というくらいになっちゃいますから。
藤井浩太(Ba)
――『0時2分』の曲の中に出てくる人物たちも、みんな悩んでいますよね。「僕」と「君」の物語が多くて、その関係性における悩みや想いが描かれています。でも「君」はみんなどこかへ行っちゃう。どうやったら「君」をつなぎとめることができるんだろうと思いました。
竹田:今回は特にそういう曲が多いですね。相手をつなぎとめることって永遠の課題。僕の場合は、がむしゃらにしつこく頑張るタイプ。BAD ENDが苦手なんです。人との付き合い方って関係を持ち直して上手くいくか、ぎくしゃくしながら続いていくか、完全にバイバイをするか、いろいろあって。ただ、情がわいてくると「このままじゃいかんぞ」となりますよね。僕は、何が起きようと人とのつながりは断ちたくない。
藤井:人をつなぎとめることって差し引きが大事じゃない? 相手に突っ込んでいくのも必要だけど時には引かないと。ずっと一緒に居続けることが正解じゃないだろうし。そんなことを最近よく思うんです。いつも一緒にいれなくても、気持ちが通じ合っていれば適度な距離があった方が良いんじゃないかなって。僕は絶対に一人の時間が欲しい。一人でいろいろ考える時間が生きる上で必要なんです。静岡から東京に出てきて一人暮らしが長いからなのか、僕は「誰に対しても一定の距離を置きたい」という考えに至りました。
林山:いや、ちょっと待って。二人とも何を語ってんの(笑)。つなぎとめられるかどうかとか全然わからないよ!
――ハハハ(笑)
林田:分からないけど、でも人との距離感って、理屈の部分と逆に理屈では片付けられない部分がありますよね。楽しかったらその人と一緒にいたい。それは理屈じゃない。でも離れることに関しては理屈だと思っていて。
――というと?
林山:初めて付き合った彼女に「別れよう」と言われたとき、単純にすごく嫌だったので「考え直そうよ」と引きとめたんです。だけど相手から「たとえばファミレスに入っても、ドリンクバーを取りにいったとき、あなたの分を持ってきてあげたいと思わなくなった」と言われたんです。そこで「なるほど」と納得しちゃって(笑)。それを聞いたときに「あ、俺たち終わりだな」と。納得ができる理由があれば、それはもう仕方がない。自分本位ではありますが、恋愛に関わらずどんな物事でも「まずちゃんと納得したい」という気持ちがあります。
林山拓斗(Dr)
――『0時2分』にはそういうみなさんの恋愛観や意識もこめられた作品になっていますよね。リリースから2ヶ月以上が経って楽曲自体も良い具合に熟成されていると思います。12月3日からは『0時2分』のリリース記念『timeless tour』が始まります。各会場でどのような反応があるのか楽しみですよね。
藤井:今回は哀愁が漂うイメージの曲もあるし、それがセットリストに含まれることで今までとはライブの雰囲気も違ってくるはず。特に『0時2分』の曲があることで、過去の曲も際立ってくるはず。両方の良さを出していきたいです。
林山:先ほども少しお話をしたようにウソツキのライブって、ふと自分が「世の中に必要とされていないんじゃないか」と疑いを持ってしまった人に特に来てほしい。僕らは2時間ほどのライブが永遠に感じられるような、そんな内容にするので。そして「今日もなんとか頑張ろう」と思ってもらいたい。曲を聴いて気に入ってくれた人だけではなく、そういうマインドの人に対して僕らはもっとできることがあるんじゃないかなって。
竹田:『timeless tour』というタイトルは拓斗がつけてくれたんですが、まさに「不朽」「永遠」を意味するライブにしたいです。音って「あ」と言った瞬間にその音は消えていくし、次に「い」と言えばまた消えていく。だけどそうやってすぐに消えてしまう音の数々が、みんなの毎日の糧になり続けてほしい。どんなに「自分は必要とされていない」と不安になっていたとしても、ウソツキだけは君を一人にはしない。「こういうふうに考えたら現実はよりおもしろいよ」と声をかけてあげられるようなライブをみせたいです。
ウソツキ
取材・文=田辺ユウキ 撮影=日吉“JP”純平

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