趣里は今夜も「寝稽古」で奮闘?~シ
ス・カンパニー『風博士』に出演

2013年にスタートしたシス・カンパニーの人気シリーズ「日本文学シアター」。作・北村想、演出・寺十吾のコンビで第6弾となる『風博士』の上演が迫っている(東京公演:2019年11月30日~、大阪公演2020年1月08日~)。坂口安吾による同名の短編小説から着想を得て、どんな劇世界が繰り広げられるのだろうか。日本文学シアターVol.4『黒塚家の娘』でエレガントな存在感を放った女優・趣里が、本作でもキャスティングされた。『ペール・ギュント』『オレステイア』などの舞台で活躍目覚ましい彼女に話を聞く。
■言葉遊びとダブルミーニングの北村戯曲
――日本文学シリーズでは2017年の『黒塚家の娘』以来、二度目の出演ですね。
シス・カンパニーさんの公演は、私が演劇を始める前から観に行っていて、好きな作品がたくさんあります。親しんできたカンパニーでお芝居をできるのがうれしいです。信頼するスタッフさんたちがいて、安心感がありながらも身の引き締まる思いもあります。台本を読んでみると、まさに北村(想)さんの世界そのものでした。それでいて、前回と違う雰囲気になりそうなのが感じられて、稽古や本番がますます楽しみになりました。
北村さんの戯曲を読むと、「言葉って面白いなあ」と、いつも思います。言葉遊びの仕掛けやダブルミーニングもあって……。海外戯曲に近いものを感じるんです。神をイメージさせるような宗教的な雰囲気があることも、関係しているのかもしれないです。
――寺十吾さんの演出現場は、どのような雰囲気ですか?
淡々としているけど、たまに稽古場でドッと笑い起きるくらいにユニークな演出をしてくださるので、楽しいです。役者に向き合って、じっくり見てから演出をつけていただけているイメージです。寺十さんご自身は飄々とした雰囲気がありますけど、演出に意外性があります。やさしいけど、引っ張ってくださる存在です。だから逆に激怒している寺十さんを見てみたいくらいです(笑)。
――作品中では、15曲くらいの歌があるとお聞きしました。
そのなかで私は3曲くらい歌います。音楽劇ではなくて、流れのなかで曲を歌うような感じです。お風呂で毎日聞いています。身体に叩き込んでいるところです。
――趣里さんは、どのように台詞を憶えていますか?
作品によって全然違います。会話劇だと、そのシーンを想像しながら読んで憶えます。会話のやり取り全体を頭に入れていくような感じです。説明性のある台詞は、そこだけ区切って暗記します。むずかしい専門用語や、数式など、会話の流れとは違うパートがあれば、そこも区切って身体に憶えさせるようにしています。
――日本文学シアターでは、太宰治や夏目漱石など名だたる文学者の作品をモチーフに作品がつくられてきました。趣里さんが好んで読む小説などありましたら教えてください。
本谷有希子さんが好きです。女性の面倒さやダメな部分にも寄り添ってくれるような世界感で、短編の小説も読んでいます。最近だと、SNS社会に翻弄される人たちを書いた『本当の旅』が好きです。頭に絵が浮かんでくるような作品がいっぱいあります。映画や演劇は、いつも文学の横にあるような気がします。だから本当はもっと読みたいなと思っています。
――芝居の仕事があると、台本を読むことに時間が割かれてしまいますからね。
でも、その気になればもっと読めるんですよ。まだまだなんです。ストイックにもっと読まないと!
■頭を整理するためのルール「寝稽古」とは?
――本作に限らず、趣里さんには稽古のときに決めているルールはありますか。
ええと……。私はいつも寝稽古しています。
――寝稽古ってなんですか?(笑)
フフフ(笑)。眠りにつきながら台詞を復唱したり、明日のやるべきことを思い浮かべたりしています。稽古の時期はアドレナリンが出ているのかあまり寝つきがよくないんですけど、寝稽古するとよく眠れます。おやすみなさいの前に、寝稽古が大切なんです(笑)。
――睡眠学習のようなものかもしれないですね。
そうかもしれません! あと、寝室には必ず台本を持ち込んでいます。明日やるページを開いて、横に置いてから眠ります。朝になるとだいたい床に落ちていますけど(笑)。
食事の面では、あまり稽古の前はお腹いっぱいにしないように気をつけています。集中力が途切れないように。稽古場ではできるだけ自分で決めずに、臨機応変にしようと心がけていますけど、習慣的なルールになっているのは寝稽古ですね(笑)。
――「寝稽古」というのは初めて聞いた言葉です。
寝稽古、いいですよ! おすすめします。寝稽古したら発見もありますから。「これをこのタイミングでやればいいんだ」とか、頭を整理できるんです。
何事も整理したいので、台本にもかなり書き込みしていたんですけど、少し前に、小川絵梨子さんから細かく書き過ぎだと言われたことがあります。「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」って神経過敏になるのはよくないというアドバイスをいただきました。寝稽古するようになってから、台本に細かく書き込み過ぎることも減った気がします。
■決め込まないで、自由に楽しみながら
――世田谷パブリックシアターは、これまでも数多く出演した劇場ですね。
バレエをやっていたときも世田谷パブリックシアターに立ったことがあります。演劇もバレエも上演する劇場は少ないかなと思います。だからか、個人的には思い入れがある場所です。それに演劇好きのお客さんがたくさんいらっしゃるイメージがあります。シアタートラムもそうですね。
世田谷パブリックシアターは、客席と近すぎず遠すぎず、距離感もよくて、演者としてすごくやりやすいです。細かいお芝居も客席からも拾ってもらえるからそう感じます。
――いつか立ってみたい劇場はありますか?
ザ・スズナリに立ってみたいです。いつかスズナリのお客さんと接近した濃密な空間でやってみたいです。大きい劇場のよさもあるけれど、小さいところの楽しさもあるんですよね。
――『風博士』に作品に参加するにあたって、課題としていることを教えてください。
台本を読むと、私は『白痴』の世界を背負わせていただく役柄です。登場人物のそれぞれと絡みがあります。今は稽古が入る前なので想像の範囲ですけど、みなさんと一緒にやると絶対に色々な相乗効果があると確信しているので、そこで私は決め込まないで、自由なやりとりを楽しみながら、稽古場で見つけられたものを大事にしたいです。そのためにも、毎日の寝稽古は欠かせません!(笑)
取材・文/田中大介
撮影/中田智章
スタインリング/岡村春輝
ヘアメイク/佐鳥麻子

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