坂本真綾

坂本真綾

【坂本真綾 インタビュー】
今ここにあるものに
意識をもっと向けられたら
物事をシンプルに
理解できるかもしれない

“今日聴くのと明日聴くのとでは意味が変わってしまう、今日だけの音楽”をコンセプトに、川谷絵音や大沢伸一など多彩な作家陣による新曲ばかり全11曲を収録した、実に約4年振りとなるアルバム『今日だけの音楽』。当然、そこからは坂本真綾自身の“今日だけの音楽”も見えてくる。

参加クリエーターのみなさんの
“今日だけの音楽”を集めた

今作を聴いて、人生を謳歌することが“今日だけの音楽”を奏でること、つまりは“日々を大切に生きる”みたいなことを感じました。時間がテーマになった曲も多く、“今日”という言葉もたくさん出てくるし。

夢の中で主人公がいろんな人と出会って、その人にとっての“今日だけの音楽”を集めていくといった内容のショートストーリーを最初に書き上げたんですね。参加クリエーターのみなさんにもクリエイティブの始点としてそれを読んでいただいて、“あなたが思う今日だけの音楽とは?”といったふうに、ショートストーリーから自由にインスピレーションを膨らませて作ってもらい、それぞれが奏でてくださった“今日だけの音楽”を集めました。

そのストーリーは、どんなイメージをもとに書かれたのですか?

例えば、いつも見ている景色が今日はとてもきれいに見えたり、昔から好きな曲だけど今日は違う歌詞が胸に刺さったという経験が、みなさんにもあると思うんですね。普段からそこにあるのに気付いていなかっただけの輝きにふと気付く瞬間が、今日だけの音楽なのかなって。それに加えて、動物の中で人間だけが時間にすごくとらわれているということを何かの番組で知って。でも、過去は取り戻せないし、未来は分からないのだから、今ここにあるものに意識をもっと向けられたら、物事をシンプルに理解できるかもしれないということを、アルバムの核に置いて作っていった感じです。いろんな記憶を忘れたり忘れられなかったりして、今の自分と向き合わなきゃと思っている方は、きっといっぱいいると思うんです。こういうテーマであれば、聴いてくださるみなさんそれぞれの何かしらの部分に、きっと触れることができるのではないかと思っています。

ゲスの極み乙女。の川谷絵音さんやMONDO GROSSOの大沢伸一さん、元キリンジの堀込泰行さんなど多彩なクリエーターが参加されていますが、中でも川谷さん作詞作曲の「ユーランゴブレット」と「細やかに蓋をして」は、本当に独特の世界観ですね。やはりゲスの極み乙女。が好きで、聴いていたのですか?

はい。indigo la Endさんも好きです。初めてゲスの極み乙女。さんの「私以外私じゃないの」を聴いた時に衝撃を受けたのですが、曲よりも言葉が先に入って来たので、最初は作詞家としての川谷絵音さんに惹かれました。この人の書いている詞をもっと読みたいという感覚でしたね。また、歌詞とメロディーの関係が独特なので、川谷さんの曲で私が作詞をすることも考えられたのですが、やはり詞曲のセットでなければあの世界は味わえないと思って。音楽を一緒にやることもそうですけど、頭の中を覗いてみたいという興味が先行していたかもしれません(笑)。自分が川谷さんの音楽に飛び込んだ時にどうなるかやってみないと分からないけど、きっと得るものが多いだろうと思ってお願いしました。実際、不思議なくらい全曲を通して一番歌いやすかったです。

逆に一番歌うのが難しそうなイメージですけど。

確かに「ユーランゴブレット」は早口言葉のようではありましたけど、たぶん歌いながら作っていらっしゃるので、それが歌いやすさにつながっているのかもしれませんね。

それが歌詞とメロディーの独特な関係ということですね。実際に一緒に制作をして、川谷さんの頭の中は覗けましたか?

打ち合わせの時から、曲作りが速くて煮詰まることがないとおっしゃっていたので、頭の回転が速いんでしょうね。普通はそんなことを言い切れないし、羨ましいと思いました(笑)。オケのレコーディングにも立ち会ったのですが、最終地点が川谷さんにははっきりと見えていて、そのゴールに向かってみんなが操られて連れて行かれているような感覚でした。何手も先が見えていて、司令塔としてのカリスマ性も感じましたし、何かアイデアが出てきた時に取捨選択の判断に迷わないんです。天才ってこういう人のことを言うんだろうと思いながら、“こんなことができたらどんな人生なのだろう”と考えていました。

以前に音楽番組で曲作りの過程を再現していて、あっと言う間に曲が出来上がっていて驚きました。それを間近で見たわけですね。

はい。きっとマルチタスクで、いろいろなことを同時に考えられる人なんでしょうね。それと同時に歌詞は私が書くよりもよほどフェミニンで、「細やかに蓋をして」は女性視点で書いてくださっているんですけど、男性なのにこんなにも色っぽい女性の視点を持っていることも面白いと思いました。「ユーランゴブレット」に出てくる《日付けを跨ぐ前に 今日を脱皮します》というフレーズはとてもキャッチーだし、ひたすら刺激を受ける日々でした。

“ユーランゴブレット”というタイトルも造語ですよね。どういう意味か訊いたりはしなかったんですか?

訊いたら負けだと思って訊きませんでした(笑)。それでも最初は自分なりに、遊覧船に乗って1日をグルッと時計のように1周するイメージからきているのだろうと、脳で理解しようとしていたんです。でも、歌っていると脳ではない部分で、身体に入ってくる気持ち良さが勝つんです。考える歌ではない、感じる歌だと思いました。知的フレーズと背景のようなフレーズがあって、フレーズが飛び込んで来てほしい時に飛び込んでくる。どこまでが計算なのか、感覚なのか分かりませんけど、とても勉強になりました。

「細やかに蓋をして」は歌詞がだいぶ大人の女性のイメージですが、こういうセクシーさのある歌詞を歌う機会が少ないのでは?

私の今までの流れを知っている方では、こういうイメージは出てこないと思います。きっと川谷さんとは初めてだったからこそ、すごくフラットな目線で、これくらいの年齢の女性だから、これくらいは歌うだろうと思ってくれたのではないかと思います。今までの自分にはなかった雰囲気ですけど、異色なものに挑んでいるという感覚はなくて、不思議なフィット感が強かったです。

「細やかに」には休日課長もレコーディングに参加していますね。

そうなんです。素晴らしい演奏でした。私も入って一緒に仮歌を録ったのですが、私としてはみなさんの演奏で一緒に歌えたことがとても楽しかったです。

他の方は1曲ずつなのですが、川谷さんだけ2曲なのは?

当初は1曲のつもりで「細やかに」をいただいたんですね。あまりにも仕事が早くて、言っていた締め切りの2週間前くらいだったので、断られてもいいつもりで“もう1曲、別パターンも聴いてみたいです”とお願いしたら、「ユーランゴブレット」が上がってきて。どちらかを選ばなきゃいけない理由もなかったので、両方入れちゃったという感じです。それくらいスピード感があったし、今の私の気分にも合ってて、ほんと出会えて良かったと思ってます。
坂本真綾
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坂本真綾
アルバム『今日だけの音楽』【初回限定盤(Blu-ray付)】
アルバム『今日だけの音楽』【通常盤】

OKMusic編集部

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