フラワーカンパニーズは
なぜ消えなかったのか?
そのバンドのすごさを
『世田谷夜明け前』から探る
歌詞の世界観を見事にサウンド化
アルバム『世田谷夜明け前』は結成から15年を経た作品で、通算10枚目のアルバムであって、バンドアンサンブルが絡み合ってグイグイとドライブしていく様子はさすがである。M2「永遠の田舎者」やM3「赤点ブギ」、M6「空想無宿」、M9「野暮天ブギ」など疾走感のあるナンバーが顕著だが、そこまでテンポの速くないM1「深夜高速」やM4「初恋」にしても、グルーブが強固であることがはっきり伝わってくる。スローバラードであるM12「いろはにほの字」が、各パートが密集していない分、このバンドのアンサンブルが分かりやすいだろうか。ギターはアドリブっぽくフリーキーな旋律を聴かせているのだが、それができるのもベースが安定してその背後を抑えているからであることがよく分かる。ドラムは極めてシンプルで、アンサンブルの土台を支えていると同時に楽曲の雰囲気を醸し出している。いい意味で、手練れた仕事っぷりがうかがえる。
また、基本はR&Rではあるものの、ファンク色の強いM7「世田谷午前三時六分」、ロッカバラード的なM8「青い春」、ジャングルビート風のM10「俺節」、C&W調のM11「寄鷺橋サンセット」と、バラエティーにも富んでいることも見逃せない。本作では前述したような鈴木の歌詞が比較的多く見受けられるのだが、それでいてアルバム全体が単調に聴こえないのは間違いなく編曲によるところが大きいと言える。改めて言うのも憚られるが、フラカンはバンド以外の何物でもないのである。
TEXT:帆苅智之