藤井フミヤのデビュー作
『エンジェル』に
ソロシンガーとしての
ビギニングを見出す
デビュー作にはすべてがある
バンドから離れてソロ活動に転じた時のデビューアルバムとなると、さらにそのアーティストの方向性が明確に出ると思う。それもまたThe Beatlesを例に取るのが分かりやすいだろう。John Lennonは自らの人間性を露呈し、Paul McCartneyはメロディーメーカーとしての職人的資質を推し進めたと言われている。日本ではCAROL解散後の矢沢永吉に同様の現象を見ることができる。矢沢はバンド解散と同年の1975年に1stアルバム『I LOVE YOU,OK』を発表しているが、[キャロルを否定するような曲構成にファーストツアーでの評判は散々で、"キャロルの矢沢"を期待するファンが一気に離れた]という([]はWikipediaからの引用)。だが──そこは矢沢自身の大いなる努力があって現在のポジションを確立してきたからではあろうが──今、一般的な矢沢永吉のイメージは、CAROLよりも「I LOVE YOU,OK」の方に近いはずだ。元BOØWYの氷室京介と布袋寅泰とのソロデビュー作品も同じことが言えると思う。氷室の『FLOWERS for ALGERNON』、布袋の『GUITARHYTHM』は、各々バンドとは異なるサウンドを示したところでその方向性には近いものを見出せるものの、両アルバムのシリアスさとポップさとのバランスは明らかに異なっており、今思っても現在のふたりのアーティスト性を暗示していたように感じる。
藤井フミヤの場合も同じである。彼が所属していたバンド、チェッカーズはメンバー自身がアイドルバンドであったことを否定していなかったので、そもそもバンドとソロとでは明らかに方向性が異なってはいるのだが、チェッカーズ解散後のソロデビューアルバム『エンジェル』にはアーティスト、藤井フミヤの意志がしっかりと貫かれているように思う。以下、いくつかの側面からその点を探ってみた。