清元斎寿がゲストで登場する“附けの
會”の様子を現場レポート 江戸浄瑠
璃清元の魅力とは?

歌舞伎の舞台では欠かせない効果音、“附け打ち”。役者の動きに合わせて附け板に拍子木を打ち付けて音を出し、その行動や仕草を強調する演出のひとつだが、その附け打ちを生業とする山﨑徹が全国各地で行っているワークショップが“附けの會”だ。この8月末、東京は浅草にて行われた“附けの會”は『江戸浄瑠璃 清元の世界を知る 初代清元斎寿さんをお迎えして』と題されており、斎寿がゲストとして登場するシリーズの第6回目にあたる。果たしてどんな内容のイベントなのか、会場に潜入する前に、まずは斎寿に話を聞いてみた。
ーー今日は附け打ちの山﨑徹さんが主宰する“附けの會”のワークショップに、斎寿さんがゲストとして出演されるわけですが。
山﨑さんは“附け打ち”のことを広く知ってもらいたいという想いから、この“附けの會”のワークショップや体験教室などを精力的に開催されていまして。僕自身は今日が6回目の出演になります。内容としては実演をしたり、お客様の代表の方に三味線を実際に触っていただいたりもしますが、基本は山﨑さんと僕とで「あの時はこうでしたね」というようなトークや、演目の解説などです。
ーーやはり舞台裏で、異業種間交流があるんですか。
ありますね。人それぞれですが、僕は持ちたいほうなので。ただ、附け打ちさんとは仕事で一緒になることが少ないんです。清元の場合は附けが入る演目が少なくて。ですからこういうワークショップで実演する場合は、パフォーマンスできる部分を探して、そこを抜粋してやることになります。
清元斎寿
ーー6回も参加されている、ということは山﨑さんのお人柄に魅かれる部分もあるんでしょうね。
もちろんです。いろいろと趣向を凝らして熱心にやっていることは、本当にすごいことだと思いますしね。前向きで、どうしたら附け打ちを多くの方に知っていただけるかを、常に考えていらっしゃる。その姿に魅かれますし、共感できることもたくさんあります。
ーー舞台に立つ時ともまた違う楽しさ、やりがいがありそうですね。
僕の中では全然違う種類の楽しさ、やりがいですね。自分個人のワークショップも含めて、芝居で演奏するのとは別問題です。さらに小学生などの子供に教えるワークショップともまた違うので、それぞれで頭を切り替えてやっています。山﨑さんの話を聞いていると、​附け打ちさんの世界というのも特殊なものがあるんだなあと、しみじみ思いますね。
ーーどうやって稽古をしているのかとか、どういうことにこだわるのかとか、ちょっと想像ができません。
そうでしょう? たとえば、場面によってどんな木を使うかとか、素材にこだわったりされるんですよ。この木のほうが情感が出る、とか。そういうところは三味線とも似ています。三味線の音で表す時も、こういう風に弾いたほうがこの場面には合うな、とか僕らも考えますからね。ちなみに山﨑さんのこの附けの會からは、若い方がもう二人もプロになったんですよ。
ーーワークショップでの出会いから、ですか。それは素晴らしいことですね。
本当ですよ。しかも趣味で習っている、というのではなくプロになるなんて。こうして山﨑さんがいろいろなところでワークショップを行うことで、若い人がそれに気づいて参加して、職業にしようと考えるまでになったんですからね。だけど山﨑さんって、実は若干シャイな方なんですよ。だから僕が出る時はいつも「どうぞ、どうぞ」という雰囲気なので、ほぼ僕がしゃべり倒している感じです(笑)。そして後半には質疑応答のコーナーも毎回あるんですが。予期せぬことを聞かれることもあって。
清元斎寿
ーー聞かれて困った質問とは。
「三味線の音を、ドレミでたとえると?」とか。基本的に三味線はドレミで音を取っていないんですよね。その場の空気、たとえば人の吐息でも三味線という楽器は調子が変わっちゃうんです。
ーー三味線ってそんなにも繊細なんですね。
はい。そして、その点でも附けは近いんです。木が湿気を含んでいたりすると、音がすぐ変わってしまいますから。また、今日使っているのは何の木ですかと山﨑さんに聞くと、これは樫(かし)です、柊(ひいらぎ)です、花梨(かりん)ですと教えてくださるんですが。僕らも練習用のばちは木でできているから、同じ柊の木だったりするんです。
ーーそういう共通点のお話を聞くだけでも、面白いです。それにしても、斎寿さんはしゃべるのがお好きなんですね(笑)。
いや、よくそう言われるんですけど、実際のところ、そんなことないんですよ……、って言っていてもこれ、誰からも信じてもらえないんですけど(笑)。
ーー今日のワークショップでの活躍ぶりも、楽しみにしています(笑)。
この日の“附けの會”の会場は、浅草公会堂の集会室。広い和室に座布団が並べられ、約50人の参加者が揃うと山﨑徹、次いで清元斎寿が登場した。実は前日までの『名古屋をどり』でも一緒に仕事をしていたという二人。シリーズ6回目ともなると、トークの掛け合いもすっかり息が合っている。ちなみに山﨑のこの“附けの會”はこの日が31回目ということだが、このスタイルになる前のものから数えたらトータルで76回目にもなるそう。
(左から)清元斎寿、山﨑徹
まずは清元節の説明から。これが、舞台上のスクリーンに写真や画像を映し出しながらの解説になるため、とても親切でわかりやすい。家族写真を前に「コメントしづらいですねえ」と照れ笑いする斎寿の姿には、会場からもあたたかいクスクス笑いが漏れてくる。
清元斎寿
「清元で、知っている楽曲はありますか?」との質問には参加者も積極的に挙手し、『かさね』や『三社祭』のタイトルがあげられ、それらを含めて代表的な演目を詳しく紹介。さらに古典音楽の代表的なものを分け、それをさらに三味線誕生から細かく分類し、その流れを軽く説明。「清元は1814年にできた“語りもの”で、200年以上経っているから古いものだと思われるでしょうが、実は邦楽の中では最も新しいジャンルなんです」と斎寿が語ると、会場からは「へえ~!」と感嘆の声。
実演コーナーでは斎寿が持参した三味線を、各部の名称や材質などを解説しながら4つのパーツに分解し、その場ですぐにもう一度組み立ててみせたりもしていた。飛行機で移動する際などにはそうやって持ち歩くそうなのだが、三味線がそこまで簡単にバラバラになることを知らなかった参加者も多く、「おぉ~!」とここでも驚きの声が湧く。さらに三味線本体に使われている素材の事、清元の棹は中棹であること、撥は象牙でできているが稽古で使うのは木、弾く際には爪をつかっているので出血することもある、などさまざまなエピソードが次々と語られていく。

清元斎寿
清元斎寿
また、10月30日に同じく浅草公会堂にて行われる、斎寿の自主公演『清道會』で演奏される演目にちなんで『隅田川』と『三社祭』についても解説。あらすじ、心情や情景の解釈の仕方で演奏家の個性がでることなどを聞くと、いかに見どころ、聴きどころがある演目なのかが伝わってくる。

するとここで、山﨑が「せっかくですから、附けのある曲を二人で実演しましょう」と提案。『かさね』の一節を披露することになり、三味線の音色に附けの音が加わると、そのナマ音の迫力に参加者たちも前のめりで聴き惚れている。加えて、体験コーナーでは「触ってみたい方~」と言われて手を挙げた3名が前に出て、実際に斎寿が使用していた三味線を持たせてもらい、撥でひと弾き。

清元斎寿
山﨑徹

質問コーナーでは、清元の三味線方の役割分担についての質問もぶつけられた。
最後は斎寿の今後の予定として、9月と10月には歌舞伎座公演、11月には平成中村座小倉城公演に出演が予定されていること、自主公演『清道會』のことなどをお知らせし、この日のイベントは終了。
10月30日に開催される、清元斎寿の自主公演『清道會』は記念すべき第10回目にあたり、演奏されるのは『隅田川』と『三社祭』。既に指定席は完売したが、2階席、3階席の自由席はまだ発売中。清元の三味線に興味がある方はぜひともこの機会に、浅草公会堂へ!
取材・文=田中里津子 撮影=iwa

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