osageインタビュー 捻れやノスタル
ジーを内包した“一癖ある”ギターロ
ックの源泉に迫る

Czecho No RepublicSUPER BEAVERsumikaらが所属するレーベル・murffin discsのオーディションで、昨年グランプリを獲得した4ピースバンド・osageが、このたび初の全国流通作品『October.』をリリースする。90年代ジャパニーズポップスからの影響を感じるノスタルジックな旋律や、詩情あふれる言葉で感傷を誘ったかと思えば、耳触りはよいが一癖あるサウンドで「あれ?」と注意を引いたりもする彼らの人懐っこい音楽が、ここからどう愛されていくのか、非常に楽しみだ。

今回SPICEでは初のインタビューを実施。4人の話から浮き彫りになったのは、誰もいない場所を探し求めるバンドの性格と、別れや後悔について唄う山口ケンタ (Vo/Ba)が滾らせる想い。それらの内側に秘められた、替えの効かない存在でありたい、あなたの特別になりたいという願いだった。
――山口さんのTwitterのプロフィールにある「ちょっとへんな声です」という文が気になって。
山口:何ていうかこう、ビニール袋をぐしゃぐしゃにしたような声じゃないですか。
――自分の声をそう喩えるボーカリスト、なかなかいないと思いますけど。そういう個性を自覚したのはいつ頃ですか?
山口:中学校のときからモノマネをされたり、「面白い声だな」と言われたりし始めて。高校に入ってからも……その頃にはもうバンドを組んでたんですけど、当時一度も喋ったことない同級生の女子から「いや、もうホント声が無理なんだよね」ってすれ違いざまに言われて。
――うわあ……ひどい……。
松永祐太朗 (Gt):いや、普通に爆笑しましたけどね。面白過ぎて。まずお前誰だよっていう(笑)。
山口:「名乗れ名乗れ!」と思いながら(笑)。だから(自分の声を)良いようには捉えてなかったんですけど、バンドをやって唄ってみて、意外とこのジャンルの声はいないのかな、競合相手が少ないのかなと思えるようになって。そこからは「良いね」と言ってくれる方も多かったし、徐々に武器になってきてはいるなと思いますね。唄うようになってよかったなって今は思います。
――みなさんは元々高校の同級生なんですよね。松永さんと金廣(洸輝・Gt/Cho)さんが「山口さんの曲をやるバンドがやりたい」「山口さんの声を活かせるバンドがやりたい」と本人がいないところで盛り上がったことがきっかけでosageが結成されたとか。
金廣:そうなんですよ。当時(山口が)SoundCloudにデモをいっぱい上げてたんですけど、2人(松永と金廣)でごはんを食べてるときに「これやりたいね」っていう話になって。
松永:声が特徴的なところはもう言わずとしてだと思うんですけど、曲調や歌詞の感じもいいなって思ったんですよ。現代レトロって言うんですかね?
――というと?
松永:昔のSF映画で、めっちゃ未来の話のはずなのに、宇宙船の電話が有線だったりすることってあるじゃないですか。そういう昔の人が考えた未来って逆に新鮮に感じるというか、それが素敵というか。そういうイメージですね。
――山口さんはどんな音楽を聴いて育ったんですか?
山口:よく車や家の中でよくユーミン(松任谷由実)やオフコース小田和正、サザン(オールスターズ)が流れてたんですよ。そういう両親の世代が青春時代に聴いてたような音楽を、小っちゃい頃からずっと聴いてきて。だからいざ曲を作ろうってなったときに、どっかでそういうエッセンスが出たんだと思います。
金廣:僕たちからしたらそれは知らない音楽だから新しいなって思うんですよね。
――なるほど。そこに当時の所属バンドが自然消滅してしまった田中(優希・Dr)さんが合流し、この4人が揃って。
田中:はい。
osage・山口ケンタ 撮影=大橋祐希
――そこから『murffin discs audition 2018』でグランプリを獲得するまでに至りますが、そもそもどういう経緯でエントリーすることに決めたんですか?
金廣:俺が勝手に応募したんだよね?
松永:いや、これは違ったよ。こいつ(金廣)、1回勝手に応募しちゃったことがあって、しかも通っちゃったんですけど、仕事で(次の審査に)出られなかったからすごく怒ったんですよ。「1回でもこういう断り方をしたら次ないんだよ、信頼問題なんだから」って。
山口:ごもっともだよね(笑)。
――金廣さんはどうしてメンバーに相談する前に応募をしがちだったんですかね? 何か強い気持ちがあったからそういう行動に出たのかなと思うんですけど。
金廣:なんか、山口の作る音楽は絶対にもっと評価されるべきだろうっていう、内に秘める憤りみたいなものがあって。
山口:憤り? 納得いってなかったんだ。
金廣:うん。だから「応募したら受かるでしょ!」って思ってたし。
山口:そうだったんだ。そんなこと思ってたなんて、全然知らなかったですね……。嬉しいですけど。
――ということは、グランプリ獲得は金廣さん的には当然の結果という感じ?
金廣:そう……ですね?
松永:本当?(笑)
山口:随分大きく出たけど(笑)。
金廣:いや、正直1次審査、2次審査、ライブ審査と進んでいくうちに、やっぱり残ってるバンドはカッコいいなあと思って。だから「絶対通るでしょ!」って最初は思ってたけど、「意外といい音楽あるんだな……」みたいな感じになっていったよね(笑)。特になきごととか、「おおお~!」って思ったし。
山口:なきごととはライブ審査で(出る順番が)前後だったんですよ。確かに、あのときはちょっと負けたかもって思ったよね。
金廣:でも後から聞いたら、なきごとも俺らのライブ観て、ヤベーって思ってたらしいよ。
――その2組が後に選ばれるわけで。
山口:本当ですよねぇ。
――そして今回のミニアルバム『October.』がosage初の全国流通作品ですが、改めてどんな作品になったと思っていますか?
山口:前作(タワーレコード限定全国流通盤『ニュートラルe.p』)よりもosage節が炸裂してると思います。
osage・金廣洸輝 撮影=大橋祐希
――osage節というのは?
山口:ソリッドなギターとか、ロー感があるのにギュッとミッドにまとまってるようなパワー系の音とか、刹那をなぞるようなひらひらっとした和っぽいメロディとか。
松永:フックのあるアルバムだよね。『ニュートラル~』のときはとにかく全部の曲が引っかかってほしいっていう気持ちがあったから、全部がストレートっていうイメージだったんですけど。
金廣:全曲リードトラックみたいっていうふうに結構言っていただいて、それもそれで嬉しかったよね。だけど『October.』は人によって好きな曲が分かれるというか。
田中:『ニュートラル~』だけを知ってる人とかはちょっとビックリするかもしれないですけど、これがある種名刺代わりというか、自分たちがこういうバンドだということを知ってもらうために聴いてほしいですね。『October.』を聴いて、「あ、この感じ好きだな」って思ってもらえたら、もうこっち側の人ってことだと思う(笑)。
山口:これがすんなり聴けたらもう大丈夫だよね(笑)。
松永:自分たちの曲はある種一本調子なところがあると思うんですよ。同じリフをずっと弾いてたりするから、人によっては飽きちゃうと思うんですけど、でも僕はそれがいいなって思ってて。4分半の曲だったら、4分半まるっと聴いて初めて曲の良さを分かってもらえればいい、みたいな。そういう考え方を詰め込んだ作品になったので、そういう意味でosage節が出てるアルバムかなっていうイメージですかね。
――1曲目の「アナログ」から勇気あるアレンジだなと。サビから始まったあとのイントロにあたる部分、かなり音を間引いてるじゃないですか。
松永:デモのときからずっと「このインターバル感がいいんだ!」って言いながらやってたよね。
山口:ゴリゴリのフレーズを入れようと思えばいくらでも入れられると思うんですけど、そうじゃなくて、ここでふっとそよ風が吹いてる感じを出したかったというか。季節が変わって、「あ、半袖だと夜は寒いな」っていうことにここで気づいてほしいみたいな想いがあって。ここはいろいろ試しましたし、一番悩んだんですけど、結局最初のテイクに戻ってきましたね。
――過度に盛り上げない、ドラマティックにしすぎない、っていう話だと思うんですけど、みなさんぐらいの規模感・世代のバンドだと、音を足す方向に行きがちなバンドが多い印象があって。
松永:カウンターというか、「みんながやってることとは違うことを」っていう気持ちはちょっとありますよね。「本来こうあるべきじゃない?」みたいな。
――「みんなとは違うことを」という意識は、他の曲にも出てますか?
山口:そうですね。まず「Greenback」は作詞が僕で作曲が祐太朗なんですけど、こういう曲がアルバムに入るのは今回初めてで。
松永:どうせやったことのないことをやるんだから、今までやったことない切り口でやってみようっていうコンセプトがあって。例えばイントロが3回出てきたりとか。
山口:サウンドもコードも結構実験的だよね。4コードで、全部の頭にシンバルが入るっていう爆発ゾーンがあったり。
松永:osageにしてはかなりシンプルですよ。
金廣:確かに。他の曲だったらもっとコード出てくるもんね。
山口:普通4つで行けるところだとしても、全部の転換点に半音を挟みたい(笑)。それも別にこだわりがあるというよりかは、どうせなら(他のバンドとは)違うところに行きたいっていう気持ちからで。あと、せっかくギター2本もいるのにコードを使わないのはやっぱりもったいないっていうのもあります。
――3曲目の「1954」はまず、どうして中国語を使ったんだろうと思いました。
山口:いや~、入れたかったんですよね(笑)。1単語だけですけど英詞も入ってるので、この曲は3か国語なんですよ。サウンド面に関しても、どっちの耳で聴けばいいんだっていうような(L-Rの)振り方をしましたし、だいぶ遊んだ曲ではあります。
osage・松永祐太朗 撮影=大橋祐希
――4曲目の「ginger air」もこれまでになかったような……って全部そういう種類の曲ではありますが。
山口:ははは。そう感じていただけてるなら嬉しいです。この曲は、ギター2本の兼ね合いがすごい面白いなって思って。そこが出発点ですね。サビがキャッチーだし、最後はギターロックに落とし込みたいっていうのは何となくあったんですけど、そこから「じゃあ頭はどう始めよう?」って考えたときに、ちょっと気持ち悪いベースのスラップと、音程の滑らかでない唄い出しで始めたら「これ、やってる人いないんじゃないかな?」って思って。
――やっぱり基本的に王道から逸れたがりますよね。
山口:誰もいないところに行きたいですよね。
――その気持ちは、どういう欲求から来るものでしょう。
山口:ちょっとふざけていたいというか、ユーモアを持っていたいっていうのはあって。ギターロックは分かりやすくドーンと鳴らすこともできると思うんですけど、それを聴きたいっていう気持ちになったときに「別にosageじゃなくてもいいかな」って思う人は絶対にいると思うんですよ。別に(シーンへの)反逆まではいかないですけど、(他のバンドが)やってないことをこの4人でやって、「あ、いいね」って言われたときに初めて “らしさ”が生まれるのかなと思ってて。
――そこで初めてこの4人である意味が生まれると。
山口:あえて音を外してみたり、気持ち悪いコードを鳴らしてみたり、そっちに逃げてもカッコいいって言われるんだとしたら、それは本当にカッコいいっていうことなんだろうなって思います。
――5曲目の「セトモノ」は相田みつをの詩からイメージしたんですか?
山口:実はそれとは関係ないんですよ。でも人と人との関係がギクシャクしてぶつかって、案の定割れてしまったときに書いた曲ではあります。
――山口さんの書く歌詞って、上手く行かなかった人間関係というか、後悔と過去の話ばかりしていますよね。
山口:そういう曲が多いですね。例えば無茶苦茶な失恋をしたときに「あなたとはもう会わないです」「どっかで元気でやれよ。じゃあね」っていうのを、振り切ってハイテンポなギターサウンドで唄うというか、ネガティブなことをめちゃくちゃポジティブに言うのって面白いなって思って。「セトモノ」は金廣の失恋を基にした曲なんですよ。
――そうなんですか。
山口:彼の出来事を夜中に電話で聞きまして、そのあと明け方ぐらいに出来た曲で。これだけネガティブな話を聞くのも初めてだったので、只事じゃないぞと思いながら曲を書くなかで「こいつ(金廣)はこれだけまっすぐなのに何で報われないんだろう」「何でこんな想いをしてるんだろう」って僕まで腹が立ってきて。だから悲しいことを極力ポジティブに、明るく唄えればいいなっていうところからこの曲は始まりましたね。他の曲も基本的にはそういう制作スタイルです。
――曲にすることによって、ネガティブな出来事をポジティブに変換しているというのは理解できました。でもそもそも人間って、ネガティブなこともポジティブなことも、時間が経てばいずれ忘れるじゃないですか。だから放っておけばいいのに、どうしてわざわざ曲に残すんでしょうね。ネガティブな出来事を曲に書き残したら、それを聴いたとき、苦い記憶が蘇ってしまうわけで。
山口:多分、自分が忘れたいというよりも、その曲が引っ掛かってほしいんだと思うんですよ。曲にするということはある意味究極というか。例えば僕らがこの曲でこれからめちゃくちゃ売れたとしたら、すごくショックを受けるだろうし、そうじゃなくても、これを聴いたらきっともう、忘れられなくなるじゃないですか。
――ん、それは誰が?
山口:昔付き合ってた人だったり、関係があったけど今はもう会わなくなってしまった人だったり。
――つまり、歌詞の二人称側にあたる人ですよね。
山口:そうです。曲にすることによって憶えててくれるというか、引っかかってくれるんじゃないかなと思ってて。
――……今結構すごいこと言ってるけど、その自覚はあります? だって、復讐心みたいなものが根底にあるっていうことでしょ?
山口:そうですね……。汚いというか、すごくドロドロかもしれないですけど、変な話、そういう負の出来事からエネルギーが生まれてくるんですよ。それが僕らの爆発力であり、多分、聴く人に対するフックにもなってるんじゃないかと思いますね。
osage・田中優希 撮影=大橋祐希
――そういう自覚があるからなのかもしれないですけど、山口さんは相手から傷つけられることをどこかで望んでますよね。例えば「1954」では<咽るような刺激もないまま/冷めるようじゃ物足りないです>と唄っているし、「ginger air」では<誰にも忘れられないくらいに/甘いだけじゃなく苦いんだ/ずるいくらいの君がいい>と唄っているし。
山口:あ~。そうかもしれないですね……。あ~……(苦笑)。結構ショックを受けることはあるんですけど、ありがとうっていう気持ちもあるというか。いや、ありがとうって言ったらあれですけど……「別に全然いいよ!」っていう感じもあるんですよ。傷つけられたとしても、結局それがナニクソ!ってなった先が今の楽曲たちなので、別にそれを傷と思ってないというか。
松永:でもさ、曲にする時点でサイコ的なものがあるじゃん。
山口:え、俺ってサイコなの? サイコじゃないよね?(笑)
松永:いや、“あなたとの思い出を曲にしました”ってだいぶエゴだよ(笑)。
田中:確かに。「セトモノ」を初めて聴いたときはこっち2人(松永、田中)がその話(金廣の失恋話)を全く知らなかったので、普通に「あ、カッコいいじゃん」って思ったんですよ。でも後から聞いたらそういう背景があったみたいで、それを知ったとき、なんてものを送りつけるんだろうって俺は思いました(笑)。
松永:うん。後日その話を聞いたときは最悪だなあって思いましたね(笑)。え、これやるの!?みたいな。
金廣:俺も、最初に聴いたときは2人と同じように、歌詞がどうこうじゃなくて「カッコいい曲だな~!」ってふわっと思ってて。そこから歌詞を見ていったら「いや、俺のことやん!」って感じだったんですけど。
田中:そこで気づいたんだ。
金廣:そう。でも、こんなに綺麗な歌詞にしてくれてありがとうとは思った(笑)。
――そう、ちゃんと綺麗にパッケージしててすごいなあとは思ったんですよね。5W1Hを極力削り、自分のことも相手のことも悪くは書かず、抽象度を高めることによって、あくまで美しいものとして曲に残してる感じがします。だから復讐心がエネルギー源だとしても、それを感じさせないほど曲自体は綺麗で。
山口:それは、男っていう生き物全般にどこか(失恋に)浸ってる部分もあるからかもしれないです(笑)。
田中:そうだね。だから自分も失恋したら電話しようと思いました(笑)。
山口:ははは。身を削り合ってやってます。
――次なる名曲楽しみにしています。最後に、今月半ばから始まるツアーへの想いを聞かせていただけますか。
山口:前回のツアーは4公演だったんですけど、今回は6公演で。ありがたいことに前回よりも僕らのことを待ってくれてる人がたくさんいるので、これは何よりありがたいことだなと思ってます。ここまでの規模感にしてくれてありがとうございます。
――ファイナルは来年1月18日、shibuya eggmanでのワンマンです。
山口:はい、キャリア初のワンマンなんですよ。ロングセットなのでいろいろな曲を取り入れつつ、演出にもこだわりたいですね。途中で仕掛けとかも作りたいし――
松永:それ言っちゃって大丈夫? 仕掛け、作れなかったらどうする?
田中:怖いなあ。
山口:いやいやいや(笑)。大丈夫なので、ぜひぜひ楽しみにしていてほしいですね。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=大橋祐希
osage 撮影=大橋祐希

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