the GazettEとなら夢を見られる、『
NINTH』ツアーファイナル横浜アリー
ナで見たバンドとファンの絆

the GazettE LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL「第九」

2019.9.23 横浜アリーナ
「15周年のライブで改めて過去の自分たちを見つめ直して。『NINTH』というアルバムは、いまのthe GazettEは最高なんだというのを示すために、これまでthe GazettEが歩んできたものを凝縮して表現したんだけど。今日ここに立って、本当にこれを作ってよかったと思いました。“最高だ”と心から自分たちが思える景色が見れました。ここまでついてきてくれてありがとう。俺たち……みんなも、日々戦わなきゃいけないことがあると思う。そんななかで自分たちのライブを楽しみに待って、こうして参加してくれて。世界にも、自分たちの音楽を待っててくれる人がいる。待ってる人がいるっていうのが、俺たちが存在できる唯一の理由です。ここまでいろんなライブをやってきたけど、完璧にできたってことはなかなかなくて。まだ不完全。だからやめられない。“まだまだ”って思うと希望がわくから、17年経ったいまでも“夢”が見られるんだと思います。俺らの願いはできるだけ長く、永遠に近い時間まで俺らの人生、命をかけたこのバンド、この夢を一緒に見てって欲しいということ。これからも俺ら、最高の景色を見せてやるから、ついてこいよ! 最後に……このthe GazettEと、このジャンルを守ってくれてありがとう」。
the GazettE/RUKI 撮影=KEIKO TANABE
RUKI(Vo)の言葉に、the GazettEを愛したすべてのファンが報われた。ついてきてよかった、離れなくてよかった。過去を受け入れた最新モードのthe GazettEが誇らしく、彼らとならまだまだ夢を見られる。そんな高揚空間がそこにはあった。
the GazettE/AOI 撮影=KEIKO TANABE
the GazettEが9thアルバム『NINTH』をリリースしたのは2018年6月13日のこと。そこから彼らはホールツアーにZEPPクラスのスタンディングツアー、ライブハウスツアー、さらにはワールドツアーに至るまで全61公演、実に1年2ヵ月にも及ぶ時間を費やしてロングツアーを行なってきた。そのファイナル公演『the GazettE LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL 「第九」』が9月23日、横浜アリーナで行われた。
the GazettE/URUHA 撮影=YOSHIHIRO MORI
開演時間までは横浜とがっつりコラボした横浜探索企画で限定品が手に入ったり、場内に入るとフォトブースがあって、そこではメンバーのパネルと撮影ができたり。開演直前になると、場内アナウンスが「頭をふるときは椅子にぶつけないように、周りの人にも気をつけて」と他では聞かないようなお茶目な注意喚起で笑わせてくれたり。開演前から、ファンをとにかく楽しませようとするバンドの意思がうかがえるthe GazettEのライブ。しかし、ライブが始まるとそのムードは一変。ステージ後方、左右に設置した巨大パネルが真っ赤になると、舞台を覆うスモークとともに重々しいダークな空気が立ち込める。
the GazettE/REITA 撮影=YOSHIHIRO MORI
大歓声に包まれる場内にアルバム『NINTH』のオープニング曲「99.999」が爆音で鳴り響く。過去のアルバム8作品に使った音を盛り込んだこの曲をSEに、メンバーがオンステージ。「Falling」でライブが幕開けすると麗(Gt)、葵(Gt)、REITA(Ba)、戒(Dr)のアンサンブルが殺傷力抜群のサウンドを叩き出し、場内は見渡す限りヘドバンの海と化す。そのパンチのきいたど迫力の景色たるや、ただただ圧巻の一言。そのまま、今度は歌詞に過去の8作品のイメージを盛り込んだ「NINTH ODD SMELL」というライブ運びで、冒頭からアルバムの核となる曲を立て続けに披露していった。
the GazettE/KAI 撮影=YOSHIHIRO MORI
「よっ!」と気軽な口調で挨拶を告げたRUKIは「本日61本目、横浜アリーナ。いまお前ら椅子あるじゃん? いらないんじゃない? 関係ないぐらい暴れちゃってよ。俺らやっちゃうよ」と宣戦布告。まず、「CLEVER MONKEY」でフロントまで出てきたREITAが雄叫びをあげると、「GABRIEL ON THE GALLOWS」では観客も負けじと一丸となってジャンプで応戦。アルバムのなかでもバンド初期の“大日本異端芸者”時代をもっとも彷彿させるバキバキの歌モノ「裏切る舌」は、戒が切れ味抜群のドラミングで客席に襲いかかり、続く「THE MORTAL」は無数のレーザーと照明が強烈な“赤”を描き出し、そのなかでRUKIが絶唱を届け、観客の胸を締めつける。最後に彼が手を差し出すと、その指先めがけて赤い1本のレーザーがあたるというドラマチックなラストシーンまで、オーディエンスを釘付けにしていった。
the GazettE/RUKI 撮影=KEIKO TANABE
そこから、さらにメロディアスな楽曲へとライブは展開。疾走感ある「虚 蜩」とミラーボールが回るバラード「その声は脆く」を続けてパフォーマンスした場面では、麗と葵が繊細なアルペジオで憂いのある旋律を響かせ、満員の観客は息をのむように聴き入り、曲が終わると場内からは自然と拍手がわきおこっていった。このようなthe GazettEも、いままでがあるからこそ、とでもいうようにこの後はカオティックな「BABYLON’ S TABOO」と前作『DOGMA』の「DOGMA」を違和感を感じさせることなく連投することで、凶暴で重厚な暗黒世界も地続きで存在していることをサウンドでも表現してみせた。
the GazettE/AOI 撮影=KEIKO TANABE
ここまで終えて、RUKIが「小さいライブハウスもいいけど、こういうデカい箱も気持ちいいよ」と手応えを告げた後は「やるのか、やらないのか。お前ら、まだいけんの? やれんの?」とオーディエンスを煽り立て「INCUBUS」からライブは後半戦へ突入。シャウトを繰り返すRUKIの声に応えて、オーディエンスは激しく拳を突き上げる。麗、葵、REITAも負けじとそれぞれ定位置を飛び出し、ステージ中央のお立ち台や広いステージの左右に伸びた花道をアクティブに駆け回り、観客と激しいコール&レスポンスを繰り広げていくと、場内の盛り上がりは最高潮に。そこに「まだ力、有り余ってんだろ? 地獄へようこそ!」というRUKIの一言で本編ラストにして最強なキラーチューン「関東土下座組合」を投下。客席の通路のあちこちでは“土下座ヘドバン“が始まり、the GazettEにしか作れない熱狂空間を横浜アリーナに生み出してみせた。
the GazettE/URUHA 撮影=YOSHIHIRO MORI
戒の熱い気合い入れで幕開けしたアンコールは、グラマラスなヘヴィーチューン「INSIDE BEAST」を始めとしたテッパン曲を連発。客席が怒涛の盛り上がりをみせるなかで、彼らはこの日、誰も予想していなかったバンド初期の曲で、そのなかでも暴れ曲ではないフリ満載の「貴女ノ為ノ比ノ命。」を堂々とアクトしてみせたのだ。その衝撃を示すように、横浜アリーナにはその瞬間激震が走り、雄叫びにも似た悲鳴が響き渡った。
the GazettE/REITA 撮影=YOSHIHIRO MORI
あるときから否定してきた自分たちの過去の歌謡曲調のキャッチーなメロディ。そのような過去をも受け入れ、それを肯定した上にアルバム『NINTH』が、そしていまのthe GazettEがあることをここで証明してみせると、その姿に多くのファンは感極まる。さらに、RUKIの「いろんなイベントに出させてもらっても、フェスでこんなノリしてるのは他にはいなくて。ある意味、俺たちの武器でもある訳。お前らが」と信頼感丸出しのファンを賞賛する言葉がさらなるダメ押しとなり、そこから始まった「ATTITUDE」、「TOMORROW NEVER DIES」で、the GazettEとオーディエンスの結束感はますます高まっていった。そんななかで、ダブルアンコールを受け、RUKIが放ったのが冒頭に書いた言葉だったという訳だ。信頼するオーディエンスだからこそ、光や愛、希望、未来などいつものthe GazettEからは出てこない言葉を綴った「UNFINISHED」を贈りたい。そんなバンドの気持ちが伝わったのか、銀テープが舞うなか、観客たちはピースフルな気持ちに包まれたままthe GazettEの横浜アリーナ公演のクロージングを見守ったのだった。
the GazettE/KAI 撮影=KEIKO TANABE
ライブ終了後には、2020年3月4日にこの日のライブ映像作品と2019年ワールドツアーのドキュメンタリー映像作品を発売すること、さらに、3月10日には、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで『the GazettE 18TH ANNIVERSARY DAY/6576』を開催することが伝えられた。
取材・文=東條祥恵

the GazettE 撮影=KEIKO TANABE

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