Tsubasa Shimada(PRIZMAX)
presents『Wet Crate』
- 第40回 間宮貴子 -
PRIZMAXのパフォーマーでありながらDJとしても活躍する島田翼が、長年集め続けた珠玉のレコードコレクションの中からお気に入りを紹介する、偏ったエゴ満載の連載企画。この機会にぜひ、ループミュージックの世界観に浸ってみてはいかがでしょうか?
秋の気候は好きですね。といいますのも僕はコットンテーラードジャケットが好きでして、やっと大好きなジャケット達を羽織れる季節だと。
中でも僕のお気に入りはKarim Hadjabというフレンチアーティストのものでして、この時期はほぼ毎日袖を通しています。これはヴィンテージのジャケットを、アフリカの神聖な川の泥を塗りたくってその泥色に染め上げ、しばらく放置されたものなのです。この異常なテーラードジャケットを単純にプロダクトとして気に入っているのも当然ですが、なにより制作過程に感動しまして、身にまとう鎧のような気持ちで毎日着ています。僕は〇〇のブランド、というより”作品”に近いものを好む傾向がありますね。気づけば友人の写真家のTシャツ、先輩がオープンするタイ料理店のTシャツ、小さなシルクスクリーンラボで生産されたプリントトートバッグなどがクローゼットでひしめき合っています。
僕がこういったプロダクトを手に取る理由は、もちろん友人や知人をサポートしたい気持ちというのもございますが、大量生産、大量消費を繰り返す”ファッション(流行)”に対する雀の涙のような、ほんの小さな、小さな、抵抗というかアンチテーゼ的なものになるのでしょうか。
自分でも重々承知しておりますが、僕は天邪鬼ですので、あまり自分の奥深くの内面を知られたくないのです。公式SNSでよくベラベラと投稿しておりますが、そんなものは僕のただの”つぶやき”。足跡くらいのものでしょう。
僕のその悪い性格は(主にダンスミュージックにおいて)レコードにも通ずることがありまして、自分が時間をかけて見つけた最高のレコードを口軽にあまり人に紹介したくないものなのです。かといって昔買ったが今はあまり旬ではない曲を無理矢理紹介するのも嘘になってしまうし、自分は表舞台に立つ人間の立場上、シェアできるものはたくさんしたい、とも思いますし、それなりに葛藤はございます。
最近DJをやらせていただいてる現場では、旬で最高と思えるレコードをプレイしています。ダンスフロアは「え?なにこの曲?超ヤバイじゃん!」的な会話も楽しさの要素ですので、どうかそれでひたむきに踊ってください。それでもどうしても曲名が知りたい…みたいな場合は僕の手元を覗き込みに来るなり、僕に直接聞いてください。そうしていただければ全然教えます。
僕は昔から気になる曲は全てその人に直接聞く、ラジオでオンエアされた曲はメモる、それ以外はレコード屋に足繁く通って自分で掘り漁る。
誰かにとってのゴミが、自分にとっての宝物になるかもしれないと常に思っている、生粋のアナログ的思考を持つ性分でありますので、是非ご理解いただければと思います。繰り返しにはなりますが、現場で聞いてもらえれば全然教えられますよ。
なのでダンスミュージックにおいては、僕のDJを聴きに来てほしいですね。
この秋冬は何度かDJができそうです。
とっても長い前置きでございました。最後に紹介しているレコードについて少しだけ。
今回ご紹介するのは間宮貴子さんのラブ・トリップです。発売から37年経った現在も色褪せないサウンドで、これは天邪鬼の僕でも全ての人にオススメしたいアルバムでございます。
こうして何十年後も世界中からトップ・ウォントを得られ続けるこのアルバムの”タイムレス”という価値が僕はとっても好きなのかもしれません。
それは音楽然り、アフリカの川の泥で染め上げたあのテーラードジャケット然りです。