【ライブレポート】THE ORAL CIGARE
TTES主催野外イベント、DAY2にSiM、
アルカラら7組が集結

THE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)が、9月14日(土)、15日(日)に大阪・泉大津フェニックスにて、自身初の野外主催イベント<PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~>を開催した。
DAY1はオーラルのワンマンライブ、DAY2は彼らとゆかりの深いアーティスト7組との対バン形式で開催された同イベント。以下、9月15日(日)公演のオフィシャルレポートをお届けする。

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DAY2では各アーティスト登場時のジングルを、DAY1に出演していたヒューマンビートボクサー・KAIRIが人力でパフォーマンス。トップバッターのBLUE ENCOUNTは、初めにオーラルのライブで恒例となっている4本打ちに挑戦するという粋なオープニングだった。オーラルとブルエンは互いがインディーズレーベルに所属していた頃からの仲であり、ブルエンにとってのオーラルは「いち早く俺たちの音楽に気づいてくれた」存在なのだという。田邊駿一(Vo,G)曰く、この日は「我ながらとんでもないセットリスト」とのことで、終盤に「THANKS」が演奏されたのも今日だからこそだろう。喜びも悲しみも共有してきた仲間と、その仲間を愛するファンたちをまるごと抱きしめるように、エネルギッシュなサウンドが鳴りわたる。
奈良出身のAge Factoryは、オーラルにとって同郷の後輩にあたるバンドで、MCによると、清水エイスケ(Vo,G)は山中と昔同じマンションに住んでいたとのことだ。むせ返るようなビート。空を塗りつぶすような轟音。絶叫混じりの絶唱。彼らが鳴らすのは音楽性としてはオーラルと近いわけではないが、「好きなように聴いて好きなように帰ろう。俺たちは自由の世代だと思う」と前を見据え、自分たちの音楽を鳴らしきる姿には近い志を感じる。特に初期の名曲「ロードショー」のドラマティックな音像から、最新曲「nothing anymore」の歌い出しに繋げた流れが鮮烈だった。
クリープハイプは「HE IS MINE」からスタートした。4ピースのグルーヴとそれぞれの音が重なり合った時のヒリヒリとした緊張感。それ以外を削ぎ落した彼らの演奏はストイックですらあるが、途中に挟まる曲紹介MC(テキスト化することが憚れるほど際どい内容も含む)とのバランスも絶妙。山中の「音楽ももちろんですが、人間性に強烈な魅力を感じているバンドです」というコメントの背景が透けて見えるようだ。MCでは尾崎世界観(Vo,G)が山中と久々に呑みに行った時のエピソードを披露。そのうえで2バンドの違いを「陽キャと陰キャ」と表現し、「違うけど根本にあるものは同じだと思ってます」とも語っていた。
続いてはSKY-HI。炎天下にもかかわらず、ドクロやバラの描かれた真っ黒な衣装で登場した理由は、本人曰く「ちょっとばかりヤマタクを意識した衣装を着てきました」とのことだ。アカペラによる「何様」をはじめ、言葉数が多く切れ味の鋭い曲を前半に固めたセットリストには“攻め”の姿勢が反映されていた印象。そこからはSKY-HIからオーラルに対する──ひいてはオーラルファンに対する信頼が読み取れた。オーラルにとってのSKY-HIとは“ジャンルに関わらず、カッコいいものはカッコいい”ということを改めて教えてくれた存在である。SKY-HIはそんなオーラルを慕う観客を信じ、ヒップホップならではのカッコよさで真っ向から魅せるようなライブを行ったのだ。
ブルエン同様、オーラルとは旧知の仲である04 Limited Sazabys。自身でフェスを開催している彼らは、“自分たちが主催するイベントに仲間のバンドを呼ぶ”という行為の重要性を心から理解しているのだろう。そしてこういう時のフォーリミはいつも決まってライブが良い。連続で演奏した冒頭4曲からして気合いが漲りまくっているのがよく伝わってきた。MCではGEN(B,Vo)が「俺たちの活動にとってもオーラルは大事な存在でいっぱい刺激をもらいました。同じ時代にオーラルがいてよかったなって思います」とコメント。そのうえでオーラルとは異なる自分たちのバンドの役割を語り、それを全うするように陽性のサウンドを鳴らしきった。
「神戸ART HOUSEから来ました、アルカラです。どうぞよろしく!」と挨拶していたアルカラは、元々山中と彼の兄がファンとして追っかけていたバンドで、オーラル結成時に直接対バンの依頼をした、しかもそれを快く引き受けてくれた、というエピソードがある。オーラルの父にあたる存在だそうだが、息子を抱きしめるのではなく、むしろ「もっと強くなれ」と、崖から突き落とすように強烈なライブを展開。長く続いているバンドなのに新曲が一番カッコいいのがすごい。途中には出演前にオーラルメンバーから貰ったという直筆の手紙を公開。「チクショーチクショー!」と締め括られたその手紙に返答するように、急遽セトリを変更、「チクショー」を演奏する場面も。
アルカラが関西の父ならば、オーラルにとって「東京で居場所を作れずに悩んでた僕たちに居場所をくれた」存在だというSiMは関東の兄のような存在だろうか。とはいえ悪魔が生易しいライブを行うわけでもなく、フィールドには早速巨大なサークルが出現。MCではMAH(Vo)が、山中が朝11時時点から泣いていたことを観客に暴露するなど愛あるイジりをかましつつ、「でも出会った頃と変わってなくて、素直で熱いやつだなと思いましたけど」と語る。一方演奏では、レゲエに根差した、しかしいちジャンルでは括れないほど多展開な楽曲群を観客に呑み込ませ、根こそぎ踊らせてみせる。SiMは今年11月で結成15周年。その腕っぷしの強さと懐の深さに重ねた月日の厚さを見た。
トリを務めるのはもちろんこのイベントのホストであるTHE ORAL CIGARETTESだ。“見えないAITSUは泉大津を真っ二つにする”というこの日ならではの歌詞替えにグッときたファンも多かったであろう「Mr.ファントム」、女性のシルエットをモチーフとした映像演出が官能的な雰囲気を引き立てた「mist...」、そしてメジャーデビュー曲「起死回生STORY」と序盤は初期曲を連投。また、5曲目の「リコリス」の前には、山中がかつていじめられっ子で泣き虫だったことを打ち明け、「今死にたいと思ってるやつ、友達できへんと思ってるやつ。頑張れとは言いません。俺らは寄り添うだけです」と伝えた。“一人”であることと“独り”になることは必ずしもイコールではない。自分たちの道を突き詰めるなかで似たような志を持つ、しかしそれぞれに違う道を究める仲間たちと出会い、今日のようなイベントを創り上げるに至ったこのバンドらしいメッセージだ。
この日共演したアーティストに対する想いを語ったMCのあとには、「BLUE ENCOUNTは甘いです」と本家4本打ちを披露。そして共演者の好きな曲を基にした特別版の“キラーチューン祭り”へと突入した。その内容は、フォーリミ・GENの「狂乱 Hey Kids!!」、SKY-HIの「カンタンナコト」、クリープハイプ・尾崎の「DIP-BAP」、ブルエン・田邊とSiM・MAHの「嫌い」という計4曲。なかでも「カンタンナコト」はSKY-HIが加わった編成で演奏され、イントロやラスサビ前にSKY-HIがラップを加えるという、一夜限りのアレンジがお披露目されたのだった。
本編ラストのMCでは山中が、DAY1でも語っていたような“制作者がいなくなってしまっても創作物は遺っていく”という音楽のロマンに触れつつ、この日共演した仲間たちやファン、スタッフを含めた自分の周りにいる人々との出会いは奇跡でも偶然でもなく、必然なのだという持論を展開。その後演奏されたのは、山中が初めて特定の相手へ向けて書いたラブソングであり、次第にそれ以上の意味を伴う曲として成長していったバラード 「エイミー」だった。山中の弾き語りからスタート、と思いきや途中でエレキを鳴らすのを止め、アカペラ状態に。イントロが始まると、まるで光が灯ったみたいに、バンドサウンドが一気に溢れ出す。
時間が巻き戻っていくような演出映像のあと、DAY1の1曲目だった「BLACK MEMORY」が再び演奏される、という意味深な演出で本編は終了。アンコールではまず「容姿端麗な嘘」を演奏。そしてラストにはフォーリミ・GENとブルエン・田邊(つまり “ONAKAMA”のボーカル陣である)をステージに呼び込み、「ReI」を計6人の編成で──いや、オーディエンスも含めたこの場に集まるみんなで唄い鳴らしたのだった。
「これから先もっともっと、もっともっと! 常識を壊していって、ワクワクするようなことを自分の好きなようにやっていけたらと思ってます。みんなもそう」「あなたたちがワクワクするようなことに挑戦するのであれば、これからも、俺らに共有してください」と観客へ投げかけていた山中。「ついてきたい人はついてくればいい」的な言い方をせず、今いる全員と一つずつ分かち合い、互いに納得してから前に進むことを求める彼らのやり方は泥臭いし、言ってしまえば手間もかかる。しかし振り返れば、オーラルはずっとそういうバンドだったんだよなあということを改めて実感させるような、<PARASITE DEJAVU>とはそんな2日間であった。人を憎み、人を愛し、人の上に成り立ってきたこのバンドの音楽は、これからもきっとそうあり続けるのだろう。
文◎蜂須賀ちなみ
写真◎Viola Kam (V’z Twinkle Photography)、AZUSA TAKADA、鈴木公平

■THE ORAL CIGARETTES<PARASITE DEJAVU~2DAYSOPENAIR SHOW~>
2019年9月15日(日)大阪・泉大津フェニックス

【DAY2】THE ORAL CIGARETTES セットリスト
1.Mr.ファントム
2.mist...
3.起死回生STORY
4.A-E-U-I
5.リコリス
6.狂乱 Hey Kids!!
7.カンタンナコト(feat.SKY-HI)
8.DIP-BAP
9.嫌い
10.エイミー
11.BLACK MEMORY
EN1.容姿端麗な嘘
EN2.ReI(feat.GEN,田邊駿一)

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