【ライブレポート】THE ORAL CIGARE
TTES主催野外イベント、DAY1に「この
光景を5年前から思い浮かべてました

THE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)が、9月14日(土)、15日(日)に大阪・泉大津フェニックスにて、自身初の野外主催イベント<PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~>を開催した。
DAY1はオーラルのワンマンライブ、DAY2は彼らとゆかりの深いアーティスト7組との対バン形式で開催された同イベント。以下、9月14日(土)公演のオフィシャルレポートをお届けする。

   ◆   ◆   ◆

オーラルのライブが開演するまでの間、ヒューマンビートボクサーのKAIRI、書道家の万美、ライブペインターのOLI、ファッションブランド「MUZE」の創設者・SIVA(MUZE)が登場し、様々な催しで来場者を楽しませたDAY1。ATTRACTION AREA内のステージでは、KAIRIと万美が計2回ステージに現れたほか、その間の時間にはOLIがライブペイントを披露した。
まず、KAIRIと万美は“KAIRIがパフォーマンスをする背後で万美が書をしたためる”という形でコラボレーション。1度目のステージで万美が書き上げた「和敬清寂」という言葉には、“互いをつつしみ敬い、場を清らかに保つ”という意味があるという。

2人が去ったあとに登場したOLIは、わずか2時間程度で真っ白なキャンバスを真紅の不死鳥に変身させてみせる。OLIはステージに立っていない間、ブースにて、観客が持ち込んだアイテムにペイントを施す企画を実施。世界にひとつだけのグッズを手に入れた観客はそれを形に残る思い出として持ち帰ることができた。そして2度目のステージに臨んだKAIRIと万美は、OLIが残していった不死鳥の上に「番狂不死」と刻み込む。こうして完成した彼らの作品はパフォーマンス終了後、DAY2終演時までステージに展示された。
また、ステージの横ではSIVAがMUZEのギャラリーをオープン。MUZEは山中拓也(Vo,G)のステージ衣装を手掛けているブランドだけあり、ギャラリーは終始大賑わい。今回はギャラリー内での商品の販売はなく展示のみだったが、「PARASITE DEJAVU」のオフィシャルグッズにはMUZEとコラボしたグラフィックTシャツやバンダナが販売されており、場内ではそれらを身につけた観客が多数見受けられた。因みに SIVAは当日場内にてファッションスナップ企画も実施。そのスナップは後日EYESCREAMにて公開されるとのことなので、楽しみにしておいてほしい
18時になると4本打ちとオープニング映像を経て、蔦が巻かれたような装飾のステージにメンバーが登場。そして「オーラルの第2章は間違いなく今日始まります。お前らはその証人!」と山中が宣言し、「BLACK MEMORY」が始まった。曲のスケールを拡張させるような映像演出、夜の闇に映える照明演出とともに鳴らされる4人のサウンド。「What you want」の開放的なメロディを風に乗せて届けたところで最初のMCに入るが、山中は腕で目元を隠し、早くも感極まっている様子。観客が励ましの拍手が送るなか、涙で目を潤ませながら「この光景を5年前デビューした時から思い浮かべてました。本当にありがとうございました!」と伝えた。
各日約2万人ずつ、計4万人が来場した<PARASITE DEJAVU>。全国からコアなファンが集まっていることもあり、この日は、3rdアルバム『UNOFFICIAL』収録曲の「WARWARWAR」や、インディーズ期のミニアルバム『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』の収録曲であり近鉄線にある駅をモチーフとした「瓢箪山の駅員さん」などレアな選曲もあった。また、「N.I.R.A」、「LIPS」はリアレンジを施して演奏。「N.I.R.A」はあの印象的なベースリフなどは原曲のままだが、サビのビートが改変されているほか、ホーンの音も組み込まれていて、新旧両方の要素が読み取れる。「LIPS」はここ最近のライブでも披露されていた、そして先日発売されたベストアルバム『Before It’s Too Late』にも収録されているモータウン調のアレンジだ。
中盤ではメンバーが一旦捌け、ステージに招かれたKAIRIがパフォーマンスを披露。いわゆる打楽器のような音だけでなく、ありとあらゆる効果音やナレーション風の音声までその身ひとつで鳴らしてしまう姿に観客が感嘆していると、途中KAIRIが「もしかしたらみんなが一番観たいやつ、やってもいいですか?」と切り出し、聞き覚えのあるビートを展開。そこで山中が再登場し、「DIP-BAP」をコラボしたのだった。普段から2人でセッションをすることもあり「然るべきタイミングで共演したいね」と話していたという山中とKAIRI。2人のみで届けた冒頭は呼吸がぴったりと合っていたし、バンドが加わって以降は、中西雅哉(Dr)とKAIRIのビートが絶妙に絡み合う場面があったり、KAIRIに触発されたのか山中がメロをアレンジしながら歌ったりと、双方の化学反応が感じられるシーンも多かった。
同曲を終えたあと、「拓也くんの“カッケー!一緒にやろう!”っていう気持ち、その結果がこの景色なわけじゃないですか。だからみんなも信じて。オーラルめちゃくちゃカッコいいから。カッコいいものはカッコいいって、これからも胸張ってこうぜ!」とオーディエンスに語りかけていたKAIRI。この5年間でオーラルの鳴らす音楽はどんどん幅広いものになっていったし、それはこのあと演奏されたRedone Versionの「ハロウィンの余韻」、「僕は夢を見る」を聴いても明らかだったが、突き詰めるとバンドの根底にあるものは変わらない。特にここ最近は音楽性の変化が大胆であるため、驚いてしまったリスナーもいたかもしれないが、彼らは都度、その決断に至った経緯を音楽や言葉で伝えてきたし、なかでも人と人とが直接顔を合わせるライブという場所を大切にしてきた。そのうえで、あなた自身の目と耳で価値判断をしてほしいと、彼らはずっと言い続けていた。このやり方は決してスマートとは言えないし、回り道も多かったと思う。しかし、その結果辿り着いたのが今日のような愛に満ちた空間なのだとしたら、これほど美しいものはなかなかないだろう。「やっぱり着実にちょっとずつ前に進んでいくのが俺らには合ってるんやなとみんなに思わせてもらいました」と、山中が眼前の光景に目を細める。
「ロックは弱いやつが鳴らすもの。俺は自分が弱いからロックを鳴らしてます。だから誰よりも絶望が欲しい。苦しみが欲しい。みんなに寄り添えるように、みんなの悲しみが分かるように。それが俺らのロックのスタイルです。絶望を感じた時に素晴らしいものを生み出せる力を持っています。みんなに寄り添える力を――」

山中がそう語ったあとの「5150」では、それまでも山中の心情に共振するように歌心溢れる演奏をしていた鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B,Cho)がさらに熱量の高いプレイを見せる。観客のシンガロングを吸収し、さらに活力を増す3人のサウンドを中西がビシッとひとつに束ねるなか、4人の背後のスクリーン上にバンドロゴが堂々と表示された(この演出は「N.I.R.A」に続きこの日2度目)。「PSYCHOPATH」、「狂乱 Hey Kids!!」を終えると、止まない拍手にメンバーが表情を緩める。音楽の素晴らしいところはその人が絶えてしまっても遺り続けること、という話のあとに披露した「See the lights」。そして、「みんなの愛を聞かせてください」と言うまでもなく手拍子とシンガロングが発生したRedone Versionの「LOVE」。“夢に見てたこのステージも”と唄いながら自分の立つ地面を強く叩いていた山中は、両腕を広げオーディエンスからのシンガロングを抱きしめるが、その直後、顔を覆って泣いてしまう。鈴木やあきら、中西も感極まったような表情で、その感情を音の隅々にまで行き渡らせるような演奏を行うなか、ステージ背面のスクリーンでは虹色の花火が咲いていた。
「容姿端麗な嘘」で本編が終了。この大舞台でも変わらず行われた “まさやんショッピング”(中西による物販紹介)を終えると、なんとロザリーナがサプライズで登場し、今月6日にデジタルリリースされたばかりの新曲「Don't you think(feat.ロザリーナ)」が初披露された。例えばDAY2に出演予定の7組とは違い、ロザリーナとオーラルはこれまで交流があったわけではないが、儚く繊細でありながらも強さもある歌声を求め、バンドが彼女へオファーをしたとのこと。そんなエピソードからも“カッケー! 一緒にやろう!”的なシンプルな動機を読み取ることができる。
そんなオーラル第2章の先駆けといえるシーンのあと、「我々はあなたたちに何を言われようと初心を忘れません!」(山中)と、この日最後に演奏されたのはメジャーデビューシングル表題曲「起死回生STORY」だった。同曲の歌詞にある<臆病もの>という言葉がこれほど力強く響いてきたのはこれが初めてだったように思う。当初からのプリミティブな感情・欲求を再自覚・再解釈し、未知の道を切り拓いていく彼らの旅路は、いったいどのようなものになるのだろうか。THE ORAL CIGARETTESの第1章と第2章を結ぶ、非常に意義深いライブだった。
文◎蜂須賀ちなみ
写真◎Viola Kam (V’z Twinkle Photography)、鈴木公平、AZUSA TAKADA

■THE ORAL CIGARETTES<PARASITE DEJAVU~2DAYSOPENAIR SHOW~>

2019年9月14日(土)大阪・泉大津フェニックス

【DAY1】セットリスト
1.BLACK MEMORY
2.What you want
3.WARWARWAR
4.N.I.R.A
5.GET BACK
6.瓢箪山の駅員さん
7.LIPS(Redone)
8.ワガママで誤魔化さないで
9.カンタンナコト
10.DIP-BAP(feat.KAIRI)
11.ハロウィンの余韻(Redone)
12.僕は夢を見る(Redone)
13.5150
14.PSYCHOPATH
15.狂乱 Hey Kids!!
16.See the lights
17.LOVE(Redone)
18.容姿端麗な嘘
EN1.Don't you think(feat.ロザリーナ)
EN2.起死回生STORY

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