「いつか消えてしまう感情」を歌う、
Reolの曲作りに迫る

7月に新曲「ゆーれいずみー」をデジタル配信したシンガーReolが、それを携えたライヴ『Reol Secret Live 2019 文明ココロミー』を東名阪で行なった。昨年末から年明けにかけて行われた、アジアを含め全9都市を回る大規模なツアー『MADE IN FACTION』から半年というインターバルでのライヴということもあり、新曲はもちろん「れをる」名義の楽曲からギガ、お菊とのユニット「REOL」時代の楽曲、そしてソロ名義での楽曲までバランス良く並べた今回のセットリストは、新規のファンには「Reol」というアーティストの全貌を網羅する、コアなファンにとっては久しぶりの楽曲をも堪能できる嬉しい内容だった。そこで今回は、そんなライヴを振り返りつつ10月に東名阪で行われるワンマンツアー「Reol Oneman Live 2019 侵攻アップグレード」に向けて、「Reolとは一体何者なのか?」を紐解くバイオグラフィー的なインタビューをお届けする。

Interview&Text_ Takanori Kuroda
Edit_Miwo Tsuji

「慣れているお客さんの前でライヴをす
ることの方が緊張します」

――まずは、先日行われたライヴ『Reol Secret Live 2019 文明ココロミー』開催の経緯から聞かせてもらいますか?
▲ライブレポートはこちらから

Reol : 昨年末から年明けにかけて、『MADE IN FACTION』という大規模なツアーがあり、そこからわずか半年というインターバルでのツアーだったので、今回は「ファンクラブ向けのイベントくらいの規模感がいいのでは」という話をスタッフともしていたんです。でも、その『MADE IN FACTION』のライヴ映像をYouTubeに何本か上げたところ、これまでReolのライヴを観たことがない、新規の人たちからの反応がすごく多くて。「今回のライヴを一般販売できないようにするにはもったいないのでは?」ということになって、少しだけ枠を拡大したんです。

――Reolさんの、ステージに向かう気持ちの部分にも前回のツアーと違いはありましたか?

Reol : 外向けの大規模なライヴよりもむしろ、慣れているお客さんの前でライヴをすることの方が緊張しますね。家族の前で歌を歌うのって恥ずかしくないですか?(笑)それに近い感覚かもしれないです。ただ、よく知っているお客さんの前だからこそ色んなことを試せるというのもあるんですよね。「そうか、この曲はこんなふうに盛り上がるんだな」「意外と今、この曲をやるとウケるんだ」みたいな感じで、「統計」を取る場というか。
――今回、ライヴ演出にはギガさん(音響班長)、お菊さん(映像班長)」とともに、秋赤音さん(映像副班長)の名前もクレジットされていました。

Reol : 私がギガ、お菊とともに大文字の「REOL」名義でユニットをやっていた時は、映像に関して明確に「お菊の担当」と決まっていたのですが、ソロになったことで、2人以外のクリエイターも積極的に呼ぶようになって。それで今回、お菊に「誰とやってみたい?」と聞いたところ、彼女からも秋さんの名前が挙がったんですよね。お菊も秋さんもビビッドな映像という意味では共通の世界観を持っているし、一緒に組んでもらったら面白いことになるんじゃないかと思ってお声をかけさせてもらいました。

――衣装やグッズまで、トータルでプロデュースしているのは?

Reol : 幼い頃から「視覚的にも楽しめる音楽」が好きでした。劇団四季などのミュージカルは勿論、Blast!だとか。自分の中ではニコニコ動画でのアートワークに凝ることもその延長だったし。

――生の演奏や歌を楽しむ以上の「体験」を提供したいという気持ちもあるのかもしれませんね。

Reol : そうですね。

「消えてしまう感情」を歌詞に刻む

――音楽的な部分では、ロックももちろんですがHIPHOPからの影響も大きいですよね。

Reol : そうですね。HIPHOPに出会ったのは、17歳くらいの頃でした。ネットラップから入ったんです。「ネットラップ」というとボーカロイドのインスト音源で二次創作しているものと、単にオリジナル音源をインターネットで公開していく一次創作とがあって、私はどちらかというと後者を聴いていたんです。そこにはメジャーデビュー前のぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)もいましたね。そのあとに邦洋問わず色々なHIPHOPを聴くようになっていきました。

それまではバンドロックに傾倒していましたが、インターネットに触れるようになってからデスクトップミュージックに興味が強くなって、HIPHOPもそうですがUSのPOPSやK-POPもよく聴くようになりました。ジャンルを問わなくなって。2015年頃は『SHOW ME THE MONEY』『UNPRETTY RAP STAR』とか韓国のラップバトル番組を観たりもしてました。『高校生RAP選手権』とか「フリースタイルダンジョン」も勿論見ていたし。

――HIPHOPのどんなところに惹かれるのですか?

Reol : スピード感ですね。1週間で、状況がガラッと変わる世界にワクワクしたというか……今でいう「SNSの炎上をつい追っかけちゃう」みたいな感覚に近かったのだと思います(笑)。

初めて自分で作って公開した楽曲が「No title」なんですけど…音楽に昇華する手法としてすごくしっくりきたんです。親にも友達にも、近すぎて逆に言えないことってあるじゃないですか。まるで喋っているみたいにラップをするというその術が、その時の自分にすごくマッチしていました。
――Reolさんが、歌詞を書く上で最も伝えたいことってなんですか?

Reol : 「瞬間」なのかな。怒りも悲しみも、「寝たら忘れる」と言われるように速度のある感情ですよね。そういう、消えてしまう感情を、その都度刻んでおきたいというのが、歌詞を書くモチベーションになっていると思います。曲という媒体に落とし込むことで、決して交わり得なかったであろう人にまで、広く伝わっていくのが音楽の面白さだなと。

映像を「おまけ」みたいには絶対にした
くない

――ライヴの話に戻りますが、今回の演出はどんなところにこだわりましたか?

Reol : 「文明EP」を初披露する場だったというのが第一にあったのですが、今回ヴィジュアル的なコンセプトというものを全く決めずに挑んだんです。その分、作っていくうちに楽曲に引っ張られていくところはかなりありました。最初に「シンカロン」の映像から作ったので、そこが軸になったというか。秋さんに自由にイラストを描いていただき、その素材をもとにお菊が映像を組んでいったのですが、そこから派生して「塔」をモチーフにしたイントロダクションの映像も生まれていったんです。塔がどんどん高くなっていき、宇宙にまで届くという「人間の進化」とかけたイメージにしようというところから、全部がまとまっていきました。

――半透明のスクリーンを使って立体的な映像を展開したり、プロジェクションマッピングを取り入れて、Reolさんが映像の中に埋没するような演出があったり、音と映像が一体になっているような演出が非常に印象的でした。

Reol : 映像を「おまけ」みたいには絶対にしたくなくて。そのためには映像と同時に演者が動くというか、シンクロしていないと意味がないなと思ったんです。

――音響部分ではどのようなこだわりがありましたか?

Reol : シーケンスでライヴやったりするアーティストがいるのって、日本だとクラブくらいじゃないですか。ライヴハウスでシーケンスを流すという試みを成功させるため、PAさんとはやり取りしまくってとても仲良くなりました(笑)。

――ライヴハウスでシーケンスを鳴らすのは、主にどんなところが大変なのですか?

Reol : まず会場によってシーケンスの鳴り方も変わってくる、それを踏まえた上で、CDで聴いた時の臨場感を上回るサウンドにしなければならない。例えばライヴ用に生バンドでアレンジし直せば、それが正解になるんですけど、CDと同じシーケンスを会場で流す場合は、そこに「プラスα」の要素が必要になってくるんです。例えばミックスのバランスを変えたり、曲と曲をつないだり。CDを聴き込んで来てくれた人たちにも、ちょっとした違いを楽しんでもらえるよう事前の仕込みにかなり時間をかけましたね。

「こことここが繋がっていたのか」と後
から気づかされるものにワクワクする

――ライヴで初披露となった「ゆーれいずみー」は、お客さんと「ユーレイ」にちなんだ振り付けをしていてとても盛り上がっていましたよね。あの新曲はどんなふうに作ったのですか?
[MV] Reol – ゆーれいずみー / Phanto(me) Music Video

Reol : 子供の頃、地区の行事で「ぼんぼん」というものがあったんです。鬼灯(ほおずき)提灯に火を入れ、浴衣を着て髪に花を飾って近所を歌いながら歩くというものなんですけど、その記憶がずっと残っていて。今でも「あれは何だったんだろう」って時々思うんですよね。それを最近ふと思い立って調べてみたところ、先祖の霊を弔うためにやっていたものらしく、そこで歌われている歌詞は、とても悲しい物語だったんです。

思えば日本のお盆って、独特な文化じゃないですか。「おばけ」の概念も、日本はじめっとしているというか。ハロウィンとかとは違いますよね。そこを昇華した曲というのは意外にないのでは? と思って作った曲です。

――今回のライヴをやってみて、今後の展開はどのように考えていますか?

Reol : 私は伏線が張られたものが好きなんです。ミステリー小説もそうですが、「こことここが繋がっていたのか」と後から気づかされるものにワクワクするというか。今回のライヴに来てくださったお客さんが、10月に東名阪でやるワンマン(「Reol Oneman Live 2019 侵攻アップグレード」)を観た時に「あ、これって……」って思えるような仕掛けを入れるつもりなので、是非楽しみにしていて欲しいです。

Reol Oneman Live 2019 侵攻アップグレ
ード

【公演概要】
大阪公演
・日時:10月6日(日)17:00 OPEN / 18:00 START
・会場:大阪 松下IMPホール
・チケット:スタンディング5,500円(ドリンク代別)
・お問い合わせ:YUMEBANCHI(06-6341-3525)

名古屋公演
・日時:10月11日(金)17:30 OPEN / 18:30 START
・会場:名古屋 ReNY limited
・チケット:スタンディング5,500円(ドリンク代別)
・問い合わせ:サンデーフォークプロモーション(052-320-9100)

東京公演
・日時:10月19日(土)17:00 OPEN / 18:00 START
・会場:新木場スタジオコースト
・チケット:1階スタンディング5,500円(ドリンク代別)
2階指定席 6,000円(ドリンク代別)
・問い合わせ:ディスクガレージ(050-5533-0888)

[一般発売情報] ●ローソンチケット 大阪公演:0570-084-005 Lコード 52534 名古屋公演:0570-084-004 Lコード 41866 東京公演:0570-084-003 Lコード 71825 https://l-tike.com/reol/ ●チケットぴあ 大阪公演:0570-02-9999 Pコード 160-988 名古屋公演:0570-02-9999 Pコード 161-868 東京公演:0570-02-9999 Pコード 163-760 http://t.pia.jp ●イープラス http://eplus.jp/

インフォメーション

公式サイト
https://www.reol.jp/
Instagram
https://www.instagram.com/rrreol999/
Twitter
https://twitter.com/RRReol

「いつか消えてしまう感情」を歌う、Reolの曲作りに迫るはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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