【インタビュー】加藤和樹、初の配信
SGとバイタリティーの源を語る「僕は
まだまだ発展途上」

加藤和樹が、9月11日に配信シングル「Tell Me Why」をリリースした。どこか懐かしさを感じるノスタルジックな要素を取り入れながらも、近年の彼の作品にみられるロックなエモーションも堪能できるナンバーである。

今回BARKSでは、そんなハイブリッドな同曲について、さらには、こうした作品リリースや精力的なライブ活動を行いながら、ミュージカル俳優・声優としても活躍する多才な加藤和樹のバイタリティーの源に迫った。また、彼にとっては息抜きでありながら、最近話題にもなっている「本格自家製ラーメン」についても語ってくれている。

  ◆  ◆  ◆

■ 麺も自分で作りたいという欲が出てる

── 加藤さんが明智小五郎を演じるミュージカル『怪人と探偵』上演まであと少しというお忙しい時期に取材時間をいただきまして、ありがとうございます。

加藤和樹:いえいえ、こちらこそありがとうございます。稽古場での稽古は終わって、劇場での稽古が始まるところです。今日はほかに、来年のミュージカル『フランケンシュタイン』についての取材もお受けしたりしつつ。

── 今回BARKSは、配信シングル「Tell Me Why」についてのお話をうかがいに来たのですが、舞台モードな中で音楽の仕事をしたり、同時進行でいろいろなお仕事をこなすのは大変ではないですか。

加藤:昔はそれこそ、「1日の中で役者の仕事と音楽の仕事を混在させないでほしい」ってマネージャーにお願いしていたんですよ。そうじゃないと、モードが切り替えられないから。でも、年齢を重ねいろいろ経験していく中で、自然に頭も身体も切り替わるようにはなりました。要は、慣れですね。絶対に無理だ、って思っていたことも、いつのまにか慣れてしまうんですよ(笑)。あとは、息抜きをしっかりできているっていうことも大きいと思います。僕の場合は、歌うことがまず息抜きになっているし、ここ何年かは料理というものも気分転換になっていて。

── 役者仲間の方が“加藤二郎ラーメン”を絶賛するツイート、お見かけしています。

加藤:“加藤二郎”だなんて恐縮ですけどね(笑)。スープ作りに向き合って集中していいる時間って、僕にとっては重要なんですよね。最近は麺も自分で作りたいという欲が出てきて、広く浅くではあるんですけど、自分なりに突き詰めたいという気持ちはあります。

── 息抜きをするにしても貪欲とは、実に加藤さんらしい。さて、9月11日に配信シングルとしてリリースされる「Tell Me Why」ですが、これは5月から6月にかけて出演されていた舞台『BACKBEAT』のあとで制作に入ったのでしょうか。
加藤:選曲などはそれ以前にやっていたんですけど、レコーディングをしたのは『BACKBEAT』のあとです。『BACKBEAT』はザ・ビートルズの創成期を描いた作品だったので、テンション的にはいい流れだったんですけど……僕が演じたのはジョン・レノンで、「ツイスト・アンド・シャウト」なんかを嗄れた声で歌う姿を表現するためにすっかりしゃがれ声になっていたから、声を戻すのに少し時間が必要でした。

── ヴォーカリストとしては、かなりリスキーな役柄でもありますよね。

加藤:役に入り込んで歌うからセーブもなにもないわけで、完全にノドを潰して、だいぶ無理していたところはあります。医者からは注意もされましたよ。だから声を出したあとのケアは自分のライヴツアーのとき以上にしっかりしつつ、『BACKBEAT』が終わったあとは、歌はもちろん、まずしゃべらないでとにかく声帯を使わない期間を設けて。

──「Tell Me Why」を聴くといつもの美声が戻っているので、本当によかったです。

加藤:このまましゃがれ声から戻らないんじゃないか…って一瞬思ったりもしたけど、ちゃんと戻ってきたと感じてもらえたならよかったです。ひと安心(笑)。
──「Tell Me Why」は加藤さんにとって初の配信シングルであるわけですが、今作の意図というのは?

加藤:僕自身はCD世代だから、配信だけでのリリースっていうのは、正直言うと最初は少しだけ抵抗感があったんですね。でも、CDになろうが配信だろうが音楽であることには変わりはないわけだし、時代の流れを考えても配信に一度挑戦してみて、みなさんの反応を確かめてみたいなと思ったんです。配信であれば、よりみなさんにも届きやすいだろうし。

── 確かに、配信ならば興味を持った方がより気軽に手に入れやすい、という利点もあります。「Tell Me Why」の作詞・作曲は、昨年リリースのアルバム『Ultra Worker』に収録の「knock knock knock!」はじめ、これまで幾度かタッグを組まれているナノウ(コヤマヒデカズ)さんが手がけています。

加藤:候補となる曲がいくつかあった中で、ナノウさんの曲っていうのはもう曲調でわかるわけですよ。彼の曲調が好きな僕としては、この曲を歌いたい!と迷いなく思ったし、歌詞の世界観にしても自分のものとして歌えるだろうなという確信があったので、この曲を選びました。

── ストレートなロック、本当に加藤さんにぴったりです。

加藤:歌詞にしろ曲にしろド派手なわけではないんだけど、言いたいことがストレートに伝わってくるなっていう印象を僕も受けて。それをそのまま自分のものとして出せればな、っていう想いはあったんですよ。

── 最後の“全て抱きしめて離さない”のエモーショナルな歌い方なんか、特に刺さります。

加藤:ありがとうございます。最初、その繰り返すサビの最後って全部ファルセットで歌っていたんですけど、何回かテイクを録っていく中で地声でガっと感情のままに歌っちゃっていたら、ディレクターから「この感じもいいね」って。それでラスサビはそれでいくことにしたんです。レコーディングのときってそういう意図せずに出たものがよかったりするし、今回は全体に気持ちよく歌録りができました。

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■ 女性がハっとしたり、ドキっとしてくれたら

── 先ほど、「歌詞の世界観にしても自分のものとして歌えるだろうなという確信があった」とおっしゃっていましたが、“二人が出会った理由を 神様などには決めさせない”“ただひとつが 欠けただけで モノクロに変わる”というフレーズも印象的な歌詞を加藤さんは、どう捉えましたか?

加藤:僕も、サビ頭の“二人が出会った理由を 神様などには決めさせない”っていう歌詞がすごく好きで。自分の定められた人生の中でなにを選択するかが僕は重要だと思っているし、恋愛においても2人の関係性は自分たちで作っていくべきだ、っていう想いがこの歌詞には込められているんじゃないかなと。男って女々しかったりもしますけど(苦笑)、男としての力強さも感じました。女性が強いと言われる時代ではあっても、男だってやるときはやるぞっていう。僕自身、自分が引っ張っていきたいと思っていますからね。そういう男の心情に、女性がハっとしたり、ドキっとしてくれたりしたらいいな、という想いもあります。

── まさに、これは女性がドキっとして惹かれてしまう歌詞です。ちなみに、“君の心を まるごと僕に見せてよ”というフレーズがありますが、加藤さんは思いを寄せる人に自分をさらけ出せますか?

加藤:人間だから秘密のひとつやふたつはあるだろうし、なにもかもさらけ出すことがイコール愛にならないだろうけど……できるだけさらけ出したいし、好きな人とはお互いになにも言わなくても通じ会える仲になりたい、相手を理解して自分のことも理解してもらいたいな、とは常々思っています。歌詞にある“探り合い”とか駆け引きとかは、なるべくしたくないなって。

── 恋愛に限らず、人と関わっていくときにそういう姿勢でいれば良好な関係が築けそうですが……その上で大事なのは、どんなことだと考えますか?

加藤:理想論かもしれないけど、やっぱり“信じる”ことじゃないかな。相手のことも、相手を信じた自分のことも。

── 以前、なにかのドラマで「愛するより信じることのほうが難しい」という言葉を聞きましたが、信じるってすごく難しくて。

加藤:うん、わかりますよ。裏切られることだってあるし、そうなれば傷つくから、いっそ最初から信じないほうがいいんじゃないかっていう気持ちが芽生えてしまうことだってある。実際、前回のシングル「Answer」でも歌ったように、今って人や自分を信じることが出来ない人、自分を偽ってしまう人が多いと思うし、自分自身も昔は自分を偽ったり、わざとおどけてみたりもしたんですよ。でも、まず偽りない自分を知ってもらってこそ、人と信頼関係を築いていくことができるわけで。僕はできるだけ人を信じたいし、信じた自分を信じたいな、って思います。

── 胸に刻みたい言葉です。そして、「Tell Me Why」の配信ジャケットは、3パターンどれも手錠姿。ファンの方をドキドキさせているであろうこの手錠には、どんな意味があるのでしょうか。


▲配信シングル「Tell Me Why」AWA限定


▲配信シングル「Tell Me Why」mora限定


▲配信シングル「Tell Me Why」共通

加藤:そう、ジャケット公開後からたくさん反響があるんですけど……手錠は、カメラマンさんのリクエストです。自分の解釈としては、自分を解放する前の、押し殺している自分、ですね。その手錠の鍵は自分で開けられるものかどうかはわからないけど、なにかきっかけがあれば開くかもしれないし、そのきっかけは人との出会いかもしれないっていう。ひとりでできることって多くないな、って芝居をしていても歌を歌っていても痛感しますから。

── 共演者やメンバー、スタッフやお客さんがいて、ひとつひとつの舞台、ステージが成り立つわけですもんね。

加藤:まさに、相手がいて自分の芝居があるし、みなさんのリアクションがあるからライヴになるし。今年の3月から4月にかけて、たったひとりで巡る<Kazuki Kato Road TOUR2019~Thank you for coming!~>を行いましたけど、ステージに立つのはひとりでも、たくさんの人の協力があって、お客さんに支えられてやりきることができましたからね。ひとりでやってみて初めて、ひとりでやることの難しさと周りの偉大さ、みんながいて自分がいるんだ、っていうことをあらためて思い知ったんですよ。

◆インタビュー(3)へ
■ ネガティヴな言葉を口にしない

── 中でも大変だったのは、どんなことだったのでしょう。

加藤:ステージ上でなにかあっても誰にも助けてもらえない、っていうことですかね。THE DRASTICS(サポートバンド)のメンバーがいるときには話題に困れば話を振ったりできるけど、ひとりだとそういう逃げ道はないし。機材トラブルも、自分でなんとかしないといけないですからね(笑)。

── 袖で待機しているスタッフさんには……。

加藤:頼れないです。というか、今回はステージ袖に誰もいなかったんですね。

── そんなことってあります!?

加藤:それがね、あったんですよ(笑)。約2時間、本当にひとりきり。それまでバンドを背負ってギターを弾くことはあっても、弾き語りなんてしたことがなかったのに、自分で決めてしまったことだから……初日なんて本当にすごく緊張しちゃって、手が震えてまともにギターの音が鳴らなかったりとか(苦笑)。10年以上音楽活動をしてきてやっとそれを味わうわけですからね、そりゃ初心に返りますよ。機材も自分で借りて、セッティングして……。

── そこはお膳立てしてもらっていいでしょう、ということまで!

加藤:しました。僕は学生時代にバンド経験もないし、これまではやってもらっていたんですけどね。自分がライヴをできるのは目に見えないところでもたくさんの人が動いてくれているからだし、それが当たり前だと思っちゃいけない、いろんな人の“想い”を背負って自分はステージに立っているんだぞっていう。

── キャリアを重ね成功者でもある人が、そう思って行動をできるって、すごいことです。

加藤:自分のキャリアにあぐらをかいてしまう人にはなりたくないし、僕はまだまだ発展途上ですから。そのあとの舞台『BACKBEAT』で、ジョン・レノンっていう世界的なバンドであるザ・ビートルズのメンバーを演じるということも見据えて、覚悟を持って自分のツアーに臨むべきで、甘えちゃいけないと思ったし、実際にかけがえのない学びを得られるツアーになりました、本当に。2020年に行う<Kazuki Kato Road Tour 2020 ~Thank you for coming! 2~>、THE DRASTICSとまわる東阪のバンドバージョンライヴ(<Kazuki Kato Live GIG 2020 ~タイトル未定~>)では、今年の経験を生かしつつみなさんへの感謝の気持ちを音楽で返していきたいな、って思っています。

── 今回の2つのツアー合わせると過去最多となる全国24ヶ所、25公演に及びますね。

加藤:<Kazuki Kato Road TOUR 2019~Thank you for coming!~>をやっている段階から、なんとなく次回のスケジューリングをスタッフと話してはいたんですけど、見事にはまっていて。しかも、観に来ていただきやすい土日や祝日ばかりですからね、尽力してくれたスタッフには感謝しかないです。

── そしてツアー終了後も、11月から12月にかけてはミュージカル『ファントム』~もうひとつのオペラ座の怪人~に、2020年1月から2月にかけては再演されるミュージカル『フランケンシュタイン』に出演と、俳優としてもお忙しい加藤さん。少し気が早いですが、今年はどう駆け抜けて、2020年はどんな年にしたいと考えていますか?

加藤:今年前半は、だいぶ久しぶりに2年分くらいのお休みをしっかりいただいたので……音を上げず、「やればできる」をモットーによりいっそう一生懸命働きます(笑)。

── 音を上げそうなときは……。

加藤:どうしたってあるんですけどね。でも、数年前からネガティヴな言葉を口にしないように決めていて。「疲れた」とか「眠い」とか「もうダメだ」とか、言いたくなることはあっても、独り言でも言わないようにしています。

──“言葉はその人をつくる”と言いますもんね。

加藤:そうそう。周りは自分のために頑張ってくれているのに、その自分が「疲れた」だなんて言えないな、って思うし。支えてくださる方たち、応援してくださる方たちへの感謝を忘れず、前向きに、1日1日を大事にしながら生きていきたいなと。

── 個人的にやってみたいこと、挑戦したいことはありますか?

加藤:製麺ですね。さっきもちょこっと話ましたけど、そろそろ麺を作りたいんですよね。

── ちなみに、スープやチャーシューだけでなく麺もすべて自家製になったあかつきには、なにか目標もあるのでしょうか。

加藤:いや、ないです。親しい友だちに食べてもらいたい、っていうただの自己満足なので(笑)。最近、知人から製麺機をもらったんですよ。塩のパーセンテージもだいたい決めてあるし、年内には一度試作をしたいです!

取材・文◎杉江優花

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■配信シングル「Tell Me Why」

2019年9月11日(水)より各音楽配信サイトにて配信スタート。

■<Kazuki Kato Road Tour 2020 ~Thank you for coming! 2~>

6月20日(土) 千葉県・柏 PALOOZA
6月21日(日) 茨城県・水戸 LIGHT HOUSE
6月27日(土) 神奈川県・新横浜 NEW SIDE BEACH
7月03日(金) 岐阜県・柳ケ瀬 ants
7月04日(土) 愛知県・名古屋 SPADE BOX
7月05日(日) 静岡県・浜松 窓枠
7月10日(金) 岡山県・岡山 IMAGE
7月11日(土) 香川県・高松 DIME
7月12日(日) 徳島県・徳島 club GRINDHOUSE
7月14日(火) 兵庫県・神戸 VARIT.
7月18日(土) 北海道・札幌 SPiCE
7月19日(日) 東京都・新宿 BLAZE
7月23日(木・祝) 岩手県・盛岡 CLUB CHANGE WAVE
7月25日(土) 宮城県・仙台 MACANA
7月26日(日) 福島県・郡山 HIPSHOT JAPAN
7月29日(水) 埼玉県・さいたま新都心 HEAVEN’S ROCK
7月31日(金) 石川県・金沢 AZ
8月01日(土) 長野県・長野 CLUB JUNK BOX
8月02日(日) 山梨県・甲府 CONVICTION
8月06日(木) 広島県・広島 セカンド・クラッチ
8月08日(土) 鹿児島県・鹿児島 SR HALL
8月09日(日)  長崎県・長崎 DRUM Be-7
8月10日(月・祝) 福岡県・福岡 DRUM Be-1

■<Kazuki Kato Live GIG 2020 ~タイトル未定~>

6月28日(日) 東京都・新宿 BLAZE
7月08日(水) 大阪府・大阪 Banana Hall

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