グループ分裂直前の作品にも
かかわらず
傑作となったCCRの『ペンデュラム』
西海岸から発信する泥臭いサウンド
1970年7月、5thアルバム『コスモズ・ファクトリー』では収録曲11曲のうちオリジナルは8曲。このアルバムから大ヒットしたのは「トラヴェリン・バンド」(最高5位)「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」(最高2位)「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア」(最高1位)で、カップリングの「フール・ストップ・ザ・レイン」「ジャングルを越えて」「光ある限り」もヒットするので、オリジナルの8曲中、6曲がヒットしたことになる。アルバムは2回目の全米1位を獲得。このアルバムではCCRの原点とも言えるロックンロールとロカビリーに重点を置き、その目論見は成功したと言えるだろう。サザンソウル風の「光ある限り」(名曲!)では、オーティス・レディングを思わせるようなジョンの魂のこもったヴォーカルが聴ける。
本作『ペンデュラム』について
これまでのアルバムには必ずカバー曲が収められていたが、本作は全てジョンのオリジナルで、どれもが優れた楽曲に仕上がっている。また、当時ジョンはブッカー・T&ザ・MGズの音作りに影響されており、本作ではヴォーカル、ギターのほか、オルガン、サックス、エレクトリック・ピアノ、パーカッションまで手掛けている。特にサックスとオルガンは本職並みの巧さで、CCRの印象が変わってしまうぐらい分厚い音作りになっている。
クックのベースとクリフォードのドラムは、いつものリズムキープだけでなく、これまでにないほどの音数を駆使しているのだが、絶妙のグルーブ感とタイトさでリスナーを惹き付ける。収録曲は全部で10曲、1曲目の6分半に及ぶファンキーな大作「ペイガン・ベイビー」、日本人が大好きな「雨を見たかい」、エレピやサックスを駆使したロックンロール・ナンバー「カメレオン」「モリーナ」、MGズをイメージしたファンキーな「ボーン・トゥ・ムーブ」、ビートルズ風メロディーの「ヘイ・トゥナイト」、プロコルハルムの「青い影」を思わせる美しい「イッツ・ジャスト・ア・ソート」、アルバムの最後を飾る美しくサイケデリックなインスト「手荒い覚醒(原題:Rude Awakening)」(意味は“嫌な予感”…意味深なタイトル)など、どれもが名演であり名曲である。
本作は、CCRファンの間でもあまり受けの良くないアルバムだと言われるが、僕は全く逆の意見で、本作こそ成熟したCCRが味わえる最高のアルバムだと考えている。彼らの作品で本作ほどよく聴いた作品はない。ただし最後の「手荒い覚醒」は、後半プログレというか現代音楽のような展開になるので飛ばすことは多いが…。
TEXT:河崎直人