血気ほとばしるスペクタクル活劇! 
矢崎広、元木聖也ら出演、舞台『GOZ
EN -狂乱の剣-』ゲネプロレポート

2019年9月12日(木)東京・サンシャイン劇場にて舞台『GOZEN -狂乱の剣-』、初日直前のゲネプロが公開された。脚本・演出の毛利亘宏自ら「今まで培ってきた全てを投じた今の自分の集大成」と語った“大作”は、血で血を洗うダイナミックな復讐の物語だった──。
主演の矢崎広&ヒロインの若月佑美のインタビューでも語られていた通り、本作のストーリーは丁寧に練られた“和製『ハムレット』”。矢崎演じる府月藩藩主の嫡男・望月八弥斗が修行の旅から帰国し、父親の死を知り、すでに新たに藩主となった叔父の甲斐正(波岡一喜)が母・朝霧(AKANE LIV)を妻に迎え……という現実に困惑するところから物語は始まる。ここでの八弥斗の印象はまだ何者にもなっていない“THE モラトリアム男子”。ダメなところも丸ごと受け入れてくれる恋人の奈奈に支えられ、なんとも頼りない甘えん坊風情だ。しかし、城内を彷徨う父の亡霊に「自分を殺した弟・甲斐正へ復讐を……」との無念を託され事態は一変。八弥斗は悩みに悩んだ末に狂人を装って復讐の機会を狙う中、身を引き裂かれるような思いで奈奈とも決別。一人前の剣士として抗えない運命の大波へとその身を投じていくのだった。
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト

(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト

全体を引っ張っているのはやはり優柔不断に見切りをつけて、運命の悪戯に翻弄されつつも“狂人”だらけのおぞましい戦いにピリオドを打つべく剣を振るう八弥斗=矢崎の存在の頼もしさ。彼が心に強さを増すごとに舞台上の空気もグイグイと緊張の度合いを高め、観客の集中度も研ぎ澄まされていく。繊細かつ大胆に演じられる短時間で成長する青年の魂の揺れ、5年ぶり(!)という殺陣の切れ味、恋物語の愛情深さ。座長としての見どころ・見せどころが満載だ。
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト
八弥斗を取り巻く面々も、それぞれに魅力的なキャラクターが揃った。急激な八弥斗の変貌に戸惑い、愛の強さゆえに正気を失ってしまう奈奈を演じる若月は、混じり気のない生き様で恋人たちの悲劇を鮮烈に叩きつける。奈奈の兄・蓮十郎(松村龍之介)は、登場人物の中で最も正統派の剣士。家族を思う純粋な気持ちで戦いへと向かっていく凛々しさが好印象。赤目の異形侍・結城蔵人(前山剛久)は「影」として生き、何者も恐れずやるべきことをやり遂げるクールな男だ。親友として常に八弥斗に心を寄せ応援する興津清順(上遠野太洸)の真心は癒しポイントに。また、圧倒的な剣の強さを秘めた怪しげな剣士・流狂四郎(元木聖也)や、いわくありげな陰陽師・土御門月暗(梅津瑞樹)の思惑も気にかかるが……。甲斐正役の波岡と朝霧役のAKANE LIVの酸いも甘いも嚙み分けた大人感も、人間ドラマの襞に欠かせない。
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト
キャスト総動員の殺陣に次ぐ殺陣、死闘に重なる死闘は、これぞ活劇、まさに狂乱! 俳優陣が培ってきたスキルと演出家が描く剣劇のイメージが合致した血気ほとばしるスペクタクルな空間──誰もが自分だけの戦う理由を掲げ、否応なくぶつかり合う戦場から目が離せなくなる。そして重厚なドラマの1幕、さらにダイナミックな展開で観客の予想をひらりとかわして奇想天外な世界へと連れて行ってくれる2幕を全て見終え復讐劇の顛末へとたどり着いたとき、「なるほどこれが“御全試合”か……!」と、ある種スカッとした気持ちになれる構成もお見事だ。
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト
“演劇にしかできない和物エンターテインメントの新たなスタイル”とでも言いたい粋のいい一作。ぜひ観客それぞれがホレイショーとなって、この熱情を語りついでいこう。
■会見コメント
(c)2019 toei-movie-st  カメラマン:金山フヒト
矢崎広:台本をもらったときは「最後まで駆け抜けられるだろうか」と思ったし実際稽古もハードでしたが、素敵なカンパニーに支えられてここまで来ました。映画を観たら舞台が観たくなる、舞台を観たら映画が観たくなる。まさにムビ✕ステというひとつのジャンルを確立できた超大作。令和という時代にふさわしい作品になりました。八弥斗は奈奈との関係性だけではなく、いろいろなキャラクターとも全力でぶつかっていく。どの関係性も見逃さず、『GOZEN』の世界にどっぷりハマってください。
元木聖也:「こんなにスケールの大きい物語になったんだ!」と、僕自身も台本を読んだ時からどんどん世界観に引き込まれていた作品。みんなの殺陣のレベルも高く、舞台ならではの迫力……刀がぶつかる音や足音も聴いてほしいですね。あっと驚く展開もたくさん、自分が演じる流狂四郎にもどんでん返しがあるので、その正体も見どころだと思います。
前山剛久:映画を観た方は「蔵人ってこんな感じなんだ」ってびっくりするんじゃないかと思うし、他のキャラクターも舞台でさらに変化しています。演出も華やかで、視覚でも聴覚でも満足できる作品。自分は仮面をつけているので、激しい殺陣で呼吸困難にならないかがちょっと心配ですが(笑)。また、僕はセリフ第一声も衝撃的なので、そこにも注目してください。
松村龍之介:充実した日々、毎日が刺激的な稽古を経て初日を迎えられました。舞台では映画には出ていなかった蓮十郎の父上と妹が登場します。彼の家族に対する想い、そして八弥斗との関係性が紐解かれていくキャラクターの深さも楽しんでもらえたらいいですね。映画とはまた違った舞台ならではのみんなの衣装も見どころのひとつになっていると思います。
若月佑美:舞台『GOZEN』のヒロイン・奈奈は芯が強く、物語が進む中でいろんな表情、いろんな声をお見せできる女性キャラクター。その違いを楽しんでもらえたら。恋、友情、家族とたくさんの愛が散りばめられている作品ですが、その愛からみんなが狂っていく姿がとても美しいんです。私もしっかりと色を添えていきたいです。
波岡一喜:21年前、早稲田大学演劇研究会に1年生として入り、4年先輩にいた毛利さんと今こうして華やかな場所にいられるのは嬉しいですね。少年社中の第1回公演ではスタッフとしてピンスポットを当てていた自分の成長を、恩返しとして見せられたら。個人的な見どころは僕と蔵人の“GOZENずラブ”(笑)。感じていただけるかな?
毛利亘宏(脚本・演出):東映さんが映画と演劇を連携する新しいジャンル、ムビ✕ステに踏み出す場で僕を選んでいただき、すごく光栄に思います。今まで自分が培ってきた全てを投じた今僕のできる集大成がこの『GOZEN』。ふたつの作品がより大きなひとつの作品となっていくダイナミズムをお見せしたいです。また、矢崎広という俳優の良さのすべてを八弥斗に込めました。「舞台『GOZEN』、ここにあり」。ぜひご期待ください。
取材・文=横澤 由香 
写真=オフィシャル提供 (c)2019 toei-movie-st カメラマン:金山フヒト

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