水上真理がライフスタイルをコラムす
る「Make smile」vol.9 水上真理流、
愛すべき音楽のススメ(1)

「何も考えたくないな。」
全てをシャットダウンしようとしても、情報は頭に流れ込んでくる。目は閉じることができるけど、耳はふさぐことができないからだ。そんな時私は、耳にそっとイヤフォンを差し込む。携帯のアプリを開き、今の気分を探す。癒されたいのか、落ち着きたいのか、怒りたいのか、問いかけたいのか・・・
音楽を探していると今の自分が見えてくる。そして、今の自分を作るようにプレイリストを作ってみる。プレイリスト名は4つの数字。例えば本日「0910」。後で聞き返すと9月10日の自分が見えてきて、なんだかおかしくなることもある。そして思う。音楽というのは誰かの日記みたいなモノなのかもしれない。
シンガーソングライターの作る歌は、まさに日記ではないか。溢れ出す感情を言葉と音に込める。私は、歌を書くようになって自分を客観視できるようになった気がする。そこには、なんとも恥ずかしい「素」の自分がいるからだ。
不思議なもので、どんな感情でも書き出しているうちに自然と落ち着いてくる。感情によって落ち着くまでの時間は違うわけだが。5分の時もあれば4,5時間かかることもある。そして、それを歌にするときには、そこから余分な言葉たちをそぎ落としていく。その作業をしていると、本当に伝えたいことが見えてくる。
「怒り」だと思っていた感情は、本当は「寂しさ」だったりする。そして、言葉を眺めているうちにメロディーが浮かんでくる。ここでまた、自分の感情が見えてくる。「寂しさ」を隠すために切ないバラードではなく、ポップなメロディーに乗せてみたくなるからだ。
そして発見する。「強がり」な自分。あぁ、めんどくさい女だ・・・と思いながらも、作業を進めていく。夢中でこの作業を進めているうちに、ただ、吐き出したはずの出来損ないの感情がひとつの形になって見えてくる。そして、その歌が誰かを励ましたり、そっと寄り添ったりするのだ。
その時に、「あぁ・・・あの経験も無駄じゃなかったなぁ。」と思えたりする。
だから、ぜひおススメしたい。自分の感情を文字に起こすことを。人は誰かに何かを話すときは、たいていの場合、ストレートな気持ちをぶつけることができない。相手の顔色を見てしまったり、見栄をはったりしてしまうからだ。
しかし、ただ、感情を吐き出す相手がノートであれば、何も恥じる必要がない。好きなことを書けばいい。そして、人に伝える時には、余分なモノをそぎ落としてから伝えればいい。
「言い過ぎたこと」を後悔しないために。
今回のコラムは、よそ行きな自分ではなく、なるべくありのままに近い形で書いてみようと思った。「です。ます。」を取っ払ったのもそのためだ。
私は音楽が好きだ。聴くのも、歌うのも好きだ。音楽にはたくさん救われてきた。きっと、みんなもそうだと思う。誰にも話せない感情のモヤモヤを、まだ、会ったこともないひとりのシンガーの歌の中に見つけることがある。
「あぁ、この気持ちはこんな言葉で表せばいいんだ。」と。そして、ひとりではないんだ。そんな気持ちになる。共感できる誰かを見つけることで人は孤独を和らげることができるからだ。
そして音楽のすごさは、言葉の壁をも超えてしまうことでもある。理解できない言語であろうと、歌のないメロディーだけであっても、心に染みて、涙が流れることだってある。それはきっと、想いが音に込められているから。
そして、音に乗って体を揺らすということはとても気持ちいい。その場にいるのが、2人であろうと、10,000人であろうと、そこには一体感が生まれる。それってすごいことだ。
音楽=音を楽しむ
なんて素敵な言葉なんだろう。
音楽には色んなジャンルがある。私は割とジャンルにこだわらず聴く方だと思う。新しい音楽に触れると、新しい感性が自分の中に生まれる気がしてワクワクする。全て自分の思い通りになるヒトカラも好きだけど、誰かと行くカラオケでは、今まで知らなかった歌に出逢えるからおもしろい。
特にカラオケは言葉が文字として頭に入ってくる。歌っている人のその歌への想いも一緒に。まだ知らない相手のことも歌を通して知ることができる。そして、自分の好きな歌を相手が歌った時、急に仲良くなれたりする。口下手な人がメッセージ性のある歌を歌うと、なんともグッとくる。本当はこんな熱い人なのかな、とか思えるからだ。
そして、歌うという行為そのものがいい。お腹から声を出すと、それだけでストレス発散になるらしい。歌う時は、ぜひ、お腹の底から声を出してみてほしい。声と一緒に心の重りも吐き出すように
携帯で音楽を聴くことが主流になってきた。
イヤホンでも聴けるし、そのまま聴くこともできる。音楽を簡単にダウンロードすることもできる。便利な世の中だ。私は、Spotifyを愛用しているのだが、お気に入りの歌を曲名で検索すると、違うアーティストがその曲をカバーしていたりする。
声やアレンジが変わると、歌のイメージが変わり、違う良さも感じれるから好きだ。そして、自分の好きな曲をカバーしているということは好みが似ているのかもしれないと、そのアーティストの曲も聴いてみるきっかけにもなる。
ここで、私の「0910」のプレイリストを紹介したいと思う。

1曲目「サヨナラCOLOR」は思い出の歌だ。大失恋をした時に、親友がカラオケで歌ってくれた。なんて素敵な歌詞なんだろうと涙が止まらなかった。
サヨナラからはじまることが
たくさんあるんだよ
本当のことが見えてるなら
その思いを僕に見せて
この歌は勇気がほしい時に聴く、応援歌になった。歌ってくれた友達の愛情と一緒に、ずっと私を励ましてくれている。
2曲目「強がりました」あいみょんはいい。すごくいい。ストレートに胸を打つ。
選ばなかった道の運命も
悪くなかったのかな
人生の選択は、常にその時の最良を選んでいるはずだ。でも、振りかえると、間違ったんじゃないか、あっちの道が良かったんじゃないかと考えたりする。後悔をする。でも・・・
選んだ道で幸せを見つけていく。それが人生なんだと思う。
3曲目「風」コブクロの名曲を丸本莉子という女性アーティストがカバーした曲だ。
舞い上がる花びらに吹かれて
あなたと見た春を想う
コブクロの歌詞は日本語の美しさを感じる。「舞い上がる花びら」と「春」という単語を聴くと、日本人は桜が舞う景色を思い浮かべる。その景色に、今はもういない愛しい人の面影を想う。美しい風景の中に取り残された切なさが・・・いい。
4曲目「贈る言葉」原曲は、海援隊武田鉄矢の声がなんとも印象的な歌。金八先生も浮かんでくる歌だ。
人は悲しみが多いほど
人には優しくできるのだから
誰かに優しくなれるように、悲しみがある。そう思うと、今の痛みが少し癒される気がする。この名曲を大橋トリオが歌っている。私は大橋トリオの声がとても好きだ。心が荒んだ時に聴くと、心のトゲが丸くなる声だ。
プレイリスト「0910」は別れの歌ばかり。いや、この日に限らず、私のプレイリストは別れの歌がかなり多めだ。別れの歌は、もちろん切なさがあるわけだが、そこから立ち上がろうとするパワーが私は好きなんだと思う。作詞者のそんな想いに勇気をもらうんだろう。
そういえばこの前、友達と五感について話した。5つの感覚のうち、どれが一番敏感か、大切かという話。私は「聴覚」だと答えた。1番奪われたくない感覚だから。
グラデーションに空を彩る夕陽も好きだ。炊き立てのご飯も好きだ。ふわふわな布団も好きだ。薔薇の香りも好きだ。でもやっぱり、音楽が1番好きだ。
ヘッドフォンひとつで、いつでも、どこでも、自分だけの世界を作れるから。

音楽をダウンロードで聴くのもいい。でもやっぱり、生の音が一番いい。生の音は、耳だけでなく、体全体に響く感じがする。そして、熱を感じる。
コンサートホールに響くピアノの音。
アコースティックギターのアルペジオ。
お祭りの太鼓の音。
空を彩る花火の音。
鈴虫の歌声。
そして、大切な人の笑い声。
音を楽しまなくても、毎日は過ぎていく。なくてもいいものかもしれない。でもきっと、なくてもいいモノの有り難さを感じることが、笑顔を増やすコツなのではないかと思う。

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