世界へ羽ばたこうとする女子プロレス
ラー、志田光が主演する座長公演『改
札の前でアナタを拾いました』、それ
は主宰のMARUからの熱きエール

女子プロレスラー出身で、もっとも演劇に舵を切って頑張っているのがMARU。華奢でボーイッシュな風貌からは、プロレスラーだったことを想像すらできないが、その当時は愛らしい表情で少年ギャングのようなキャラクターだった。その後、水色革命という劇団を旗揚げしたり、本を出したり。ここ数年は、小劇場文化の拠点だったタイニイ・アリス改めスターフィールドという劇場をオーナーから委託され、水色革命で運営もしている。そんなMARUが劇団とは一線を引き、プロデュースするのが「コルバタ」シリーズ。役者やお笑い芸人などのメンバーが座長となって公演を行う。その中にアメリカで旗揚げしたばかりの「オール・エリート・レスリング」と3年契約を結び、世界に羽ばたこうとしている女子レスラー、志田光が座長を務めるコルバタ志田組がある。新作『改札の前でアナタを拾いました』は、MARUから志田へのエールでもある。
志田光
 コルバタ志田組がスタートしたのは、2014年で、今回で8作品を迎える。
MARU「コルバタは私のプロジェクトで、コルバタ○○組という名前にして、さまざまな劇作家さんに脚本を依頼して、その役者さんが主演する舞台をつくっているんです。コルバタ志田組は志田が座長をやっていて、プロレスを盛り込んだお芝居を上演しています。だから志田組だけは私が劇作、演出をしています。志田の名前はもちろんプロレス界ではどんどん上がってきていますが、舞台女優としても才能があるんだぞということを伝えたいなという思いがあって志田を口説きました。志田の魅力ですか? なんだろう(苦笑)」
志田「(苦笑)」
コルバタ志田組公演より
コルバタ志田組公演より
 もちろん?2008年にプロレスデビューした志田は、MARU(2005年に引退)が選手として活躍していた時期を知らない。MARUは「MARU25周年記念 MARU大全集」という本を出版した際、その企画でプロレスラーと女優の両方で活躍しているメンバーと座談会をやったときに、志田にも声をかけたのだ。
志田「そうなんです。そこで初めてお会いしました。少しお話しさせていただいて、その後で水色革命さんの舞台に客演として呼んでいただきましが、コルバタという企画をスタートするとなったときに“志田組をつくらないか”とお声がけくださったんです。もともと映像で演技したことはあったんですけど、舞台も2作品くらいしか経験もなく、ましてや主演なんかやったことがなかったので驚きました。大丈夫かなという思いがありましたが、最初の作品がプロレス関係者だけでやる作品だったので、面白そうだなと」。
 志田は、映画「スリーカウント」(窪田将治監督)のオーディションに合格。しかし映画出演の条件としてプロレスラーとしてデビューすることが求められており、アイスリボンという女子プロレスの団体で練習に参加、柔道と剣道の経験を生かし、映画では主役の座を射止めた。同時に、プロレスの魅力にハマりプロレスラーとしての道を選択する。その後はキレのある動きで躍動する試合と美貌、ラインのきれいなヒップの魅力もあいまって、女子プロレス界の最前線で躍動してきた。
MARU「志田の魅力はやっぱり普通の女優さんにはない目の力ですね。それに器用だし、何よりガッツがあって、お芝居をやるときにも常に本気なんです。だから私は作品ごとに英語で歌をうたったり、ピアノを弾いたり、ダンスを踊ったりと、いろんなハードルを課していました」
志田「本当ひどいんですよ!(笑) 歌は苦手だからNGとして事前に申告しているのに、知らん顔して脚本に盛り込んでくる。書かれている限りはやりますけど……。コルバタ志田組は試合のシーンも含めて、迫力、勢いが売りで、そのときその場でしか出せないエネルギーが魅力。それは映像では表現できないもの。志田光の人生だったり、その時の感情も一緒に乗って表現できるのが志田組かなと思っています」
MARU「へへへ。でも今回はそういう課題がないんです。その代わり後半に長いセリフをいれています。役者としての志田を見せたいなと思っているんです」
MARU
 恋人の高史が自殺してしまい、傷心の里都は彼の故郷を訪ね、彼がなぜ死を選んだのかと、その謎を解き明かしたいと考える。その村では、駅員を地域の女性たちが務めていた。15年前に起きた列車事故で駅が閉鎖されそうになっていたのを、ボランティアで支えてきたのだ。一方、男たちの多くは村の研究施設で働いている。村に現れた里都の前に、シリコンというAI搭載のロボットが現れ、里都に告白する。シリコンがロボットであることは里都には内緒されていたが、シリコンに埋め込まれたUSBを狙う集団と村人の戦いに里都も巻き込まれていくーー
志田「彼氏の自殺を真相を知りたいがために彼の生まれ故郷を訪れる里都は、実は数学の天才で、街全体を包み込む謎に絡んでいきます。数学の天才だとか架空の村の存在もファンタジーですが、里都はごく普通の女性として、すごくリアルな役どころです。MARUさんの本は本当に難しくて、泣いていたと思ったら次の場面で笑顔だったりとか、全く違う話になっていたりとか場面がポンポン飛んでいくんです。でもその中で、MARUさんが伝えたいことがはっきりわかるのが面白い。今回なら残された側の人間の思いとか、人間がどうやって幸せになっていくかみたいなことが核としてあるので私は好きなんです。スケールが大きくて、メッセージも素敵で、われわれ役者次第だとは思うんですけど、今までの志田組を凌駕できるような素晴らしい作品になると思います」
MARU「描きたかったのは、“好きだから一緒にいたい”という気持ち。それがロボットだろうと植物だろうとなんでもいいんじゃないか、そんな作品です」
志田光
 もちろん今回もプロレスの試合のシーンもあるのだが、あの狭い劇場で大丈夫なのか?
志田「それが結構できるんですよ。もちろん場外というか、客席にも分け入っていきます。ロープはないけれど、受け身も取ります。リングとは違って普通の床なので痛いけど」
MARU「受け身は取らないで欲しいですけどね、私も見ていて怖くて」
志田「場外に行くと、演出として後ろで見ているMARUさんがお客さんに退いてください、退いてくださいってセコンド業務をするんですよ」
MARU「試合シーンが近づいてくると、私はストレッチしますよ。怪我したくないから」
志田「試合シーンはその日、どんな選手と対戦するかで変わります。時間が伸びないように必死です。レスラーなんでテンションが上がると長くなってしまうんで。私、自分の試合ではコルバタ(助走して相手の頭に両足で飛びつき、相手の首を軸にして体を捻って投げ飛ばす)は全くやらないんですけど、この舞台のためだけに練習しています」
MARU「すみません。コルバタはもともと私が使っていた技の名前なんです。ゴロや画数が良かったんで付けちゃいました」
MAKAIでの志田光 撮影:いまいこういち
 ところで志田が参戦する「オール・エリート・レスリング」とは? 調べてみると、パキスタン系アメリカ人の大富豪シャヒド・カーンとトニー・カーン親子が設立し、新日本プロレスなどでも活躍したケニー・オメガ、マット・ジャクソン、ニック・ジャクソン、クリス・ジェリコ、クリストファー・ダニエルズらが参加する団体。ワーナー・エンターテインメントが運営するターナー・ネットワーク・テレビジョンがウィークリーショーを中継放送するのだとか。アメリカといえばWWEの一人勝ちだが、そこに背を向けたアウトローたちの集団として人気が出そうだ。
志田「昨年プロレスラーになって10周年を迎えて、後楽園ホールで自主興行ができ、アジャ・コング選手とシングルをやって勝つことができたんです。結構やり切った感があって、正直11年目からどうしようと思っていた。これ以上何ができるんだろうと。そう思っているときにお話しいただいたので、本当に良いタイミングでした。いずれ海外でという思いはデビュー当初からあったので、次のステップに進んでみたかったんです。今年31歳ですし、キャリアからしてもラストチャンスでしょうから、ここで本当に大きな結果を出さないといけないという追い込まれ感もありますね。団体のコンセプトは、プロレスラーのための団体。大きな会社になればなるほど縛られていくのが当然なんですけど、そういうものを取り払ってレスラーがやりたいことをできる団体をつくりたいという思いがあるんです。団体をつくった幹部の皆さんが世界で活躍するレスラーで、本当に団体に縛られずに自由で活動していらっしゃる。もちろん自由であるがために、いかにセルフプロデュースをするかが大事になってくるんですけどね。とても未来志向で、プロフェッショナルな集団だと思います。世界的に女子プロレスが改革されて注目度も上がっている今だからこそ、楽しみです。コルバタ志田組については来年以降の話もしていたので、MARUさんには申し訳ないんですけど、解散ではなく休止にさせていただいたので3年後、有名になって帰ってこなければと思います」
 志田は俳優・プロレスラー・ミュージシャンがジャンルを超え、歴史上の英雄達が魔界という異空間で戦う大長編ストーリーをリングで描く「MAKAIプロジェクト」の所属でもある。「オール・エリート・レスリング」は両方の所属になることを認め、また「MAKAIプロジェクト」も世界へ打って出ることを目標としている。「メンバー全員、急に英会話の勉強を始めたんです(笑)」(志田)
 では、コルバタを率いるMARUとしてはどうか? 「いやあ、志田がお客さんをたくさん連れてきてくれればうれしいですね。そのときはぜひ大きな劇場でやりたいです」と冗談ぽく笑う。しかし、コルバタ志田組を残しておくことは、志田への期待の裏返しだと思う。
取材・文:いまいこういち

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