FINLANDS塩入冬湖が一人でもバンドを
続ける理由と意志をクアトロワンマン
収録のDVD発売を機に独白

FINLANDSが初のライブDVD『FINLANDS“BI TOUR”~16th October,2018 at Shibuya CLUB QUATTRO~ 』を9月4日にリリースした。ファンにとっても、そして塩入冬湖にとっても忘れられない夜の一部始終を収めた、貴重な作品だ。改めてこの日のライヴについて、さらに特典音源として収録されている新曲「USE」について、塩入に話を聞いた。
――今回収録されているクアトロでのライブを振り返ってみて、どんな思いが巡りましたか?
あの日は、初めて自分たちだけの冠をつけたツアーをして、終わったなあってもっと感慨に耽るのかなと思っていたんですけど、もっと次はこういう風にやりたいとか、こういうことやってみたいなって、そういう感情の芳が先に出てきて。終わりを感じるよりも、次に向けてのスタートを早めに切っているみたいな感覚が強くて。改めてこの映像を観返してみても、そう思います。感傷に耽るでもなく、普通のいつも通りのテンション感でしたね、あの日は。
――そこがFINLANDSぽいというか、いつも通りのツアーファイナルという感じで。
そうですね、センチメンタルをこちらが醸し出してしまうと、なんかちょっとカッコ悪いなって気持ちはありました。
――とはいえスタッフサイドは、この瞬間の全てを撮るという気合がはいっていて、10台を超えるカメラでシューティングしているから、臨場感がすごく伝わってきます。
疑似体験をしていただける仕上がりにはなっていると思います。色々な角度からシューティングしていただいたので、色々な観え方がすると思うし、ぎっしり凝縮したものができあがったと思います。
――バンドメンバーのテクもきちんとわかるようになっていますよね。
きちんと見せ場とかがわかってるなっていう。
――このライブの後は、打ち上げがあったと思いますが、普段しないような話が飛び出したりしたのでしょうか。
いつも以上に話をしなかったですね(笑)。いつもファイナルの後とかは、みんなでカラオケに行って、私以外の歌っていないメンバーの欲をそこで発散するというか。いつも以上に話はしないけど、いつも以上に楽しんでる空間でした。
――ファンの人達はどんな風に捉えていたのでしょうか。
去年で5年目だったんですけども、それまでFINLANDSってなんだかよくわからない感じで進んできたんですよね。バンドって、結成からの流れって、なにかテンプレートのようなものがあると思うんですよね。大体この辺りでレーベルに所属してCDをリリースして、ここでこの規模のライブハウスでライブをやって、ここで大きいフェスに出て、このタイミングで大きいライブをまた切ってとか。そういうのに全く当てはまらず来たなっていうのが、実感としてあって。やりたい人とライヴをやって、たまにびっくりするような大きいライブに出て、それが何でなんだみたいな感じで、たぶんお客さんも捉えてくれてるというか。でもクアトロという誰もが知っている場所でやることで、お客さんも喜んでくれているのが、あの日は空気として感じて。その事実だけでFINLANDSが前進したんだなっていうのを、メンバーよりもお客さんがすごく喜んでくれたのかなって思いますね。ずっと見てくれていたファンの皆さんに対して、花向けできたという気持ちはすごくありましたね。
私がFINLANDSをたたむっていう選択肢は一切なくて
FINLANDS/塩入冬湖
――塩入さんは、ソロとして塩入冬湖名義でも7月に『惚けて』という3枚目の作品を発表しましたが、違う音楽を伸び伸びというか、本当にいい意味で好きにやっているのが伝わってきますが、一人体制になったFINLANDSとソロとしての棲みわけは、実際にご自身の中でどんな感じでその「場所」を作っているのでしょうか。
FINLANDSを2人でやってる時は、1人で完結させたいと思う作品については、ただ自分の世界に浸って、パソコンと楽器と自分の3点の中だけで全部作り上げて、ソロとしてやってきました。でも今それが、端から見たら1人でやってるものと、1人でやっていないものって、何の違いがあるんだろうって思う人が多いと思います。私もそう思います、自分で。でもこの間ライブで弾き語りをやっていた時に気付いたんですけど、私、歌ってることとか、自分が作ったものを放出することが、すごく好きで。それがもし表舞台に立たないことであっても、ただその曲を作る、歌を歌うという行為自体が、すごく好きなんですよね。なので、バンドとソロ、2つやってることによって、自分がやりたいことが二面性を持って、長い時間物理的にやっていられるなっていうのがあって。だからFINLANDSではこれは違うなって思うことを、ソロでやりたいんです。両方がいい捌け口になっているというか。ソロでやりたいと思っても、これはできないと思ったらFINLANDSでやりたいって思えるし。だから私は逆にその選択肢を2つ持つことができているという、きっと贅沢な状況にあるんだろうなと思うようになって。そういう環境を作ってくれたスタッフには感謝していますし、受け入れてくれるファンの方の存在がすごくありがたくて。それがもし違いがわからないって思う人がいるのであれば、それはそれでいいかなって。FINLANDSを主体として、FINLANDSのボーカルは、ソロもやっている、FINLANDSっていうバンドも1人でやってる。そういうちょっとよくわからない構図だけど、バンド対ソロって思ってもらえるのであれば、それが一番いいかなという気持ちもあります。
FINLANDS/塩入冬湖
――1人になるということが決まった時、FINLANDSというバンドはなくさないっていうのは、その時点で決めていたんですか?それとも一旦FINLANDSはストップさせて、ソロ活動を中心に、という選択肢もあったのでしょうか?
なかったですね。FINLANDSを(コシミズ)カヨと2人で始めた時から、メンバーがいなくても、どうにかやっていけるだろうなっていう気持ちがありました。逆にメンバーがいなくても、サポートメンバーとやっていけるのであれば、バンドってきっと動いていけるという気持ちがあって。その中で、自分がもっと努力しなければいけない点というのは、物理的に言うとサポートへのギャランティや、自分でサポートメンバーにやりたいことをきちんと伝えるための技術や、デモを制作をする技術とか。そういうものって頑張ればどうにかなるものだと思う。そこは自分で納得できるのであれば、FINLANDSというものは、たぶん私は一生辞めないなという気持ちの元、始めたものだったので、カヨが辞めるってなった時も、そこに私がFINLANDSをたたむっていう選択肢は一切なくて。だったら私1人でやるねっていう。たぶんそれはカヨもサポートメンバーもみんなそう思っていて。だからすごく自然な形で、1人になったのかなって思いますね。FINLANDSがなくなるのは、私が死んだ時だろうなって。
――コンセプトが違うので当然だと思いますが、例えばソロでのバラードとFINLANDSのバラードとでは、全く肌触りが違うというか。
ありがとうございます。やっぱりFINLANDSの作品は、少しだけというか相手のことを気にする余地があると思っていて。演奏してくれる人がこの人だってわかって作るから、その人のかっこいい面を出したいとか、多少相手のこと思って作りますが、ソロの場合はそれが一切ないので、言葉をむき出しにして、武器として使えるというか。そういう気持ちはあります。
そういう根本的なことに気付けたというか。そういう歌
FINLANDS/塩入冬湖
――このライブDVDには、新曲「USE」のダウンロードシリアルコード付きカードが封入していますが、ライブの最後に流れていたということもあって、歌詞を読むと色々勝手に推測してしまいますが、これはいつ頃作った曲なんですか?
今年の3月に、恒例の「記録博」という2daysのワンマンライブがあって、そのエンディングソングとして作りました。その時カヨが辞めるのを発表することも決まっていて、ライブの最終日のラストで、そんな発表をしたら、地獄みたいな空気で終わるなと思いました、お客さん的には。いきなり来月辞めますって発表して、満面の笑みで帰れるわけがないと思って。1ヶ月前くらいに、ふとそれに気付いて、最後に曲を流そうと思って作りました。これから1人になるのであれば、1人で全部のパートをやれるということを自分でも証明したいと思って。今までベースは弾いていなかったんですけど、弾いてみようと思って、全部1人で作った曲です。
――そこはかとなく悲しい空気を感じます。
なんかこう、いつも「痛み」は携えていたいなっていうのはありますね。その「痛み」がわざとらしくないのがいいなって。この曲は、作った時期の心境も現れていると思います。確かにカヨが脱退するに当たって、色々なことを考えて作った曲なんですが、カヨのことだけではなく、色々な人への思いでもあるんです。生きていく中で自分が叶えたい、自分が遂げたいものは、音楽を作って生きていく中で、FINLANDSだったり、色々な目標があってやっているんですけど、人の協力なしではここまでくることはできませんでした。じゃあその協力してくれてる人が遂げたいものとかに対して、私は何かができているのかな、何か応援することができているのかなってすごく思って。いつも自分本意で、人の人生を最初に考えられていないということに気付いて。カヨに対してもそう思ったんです。カヨの人生として、たぶん私の言うこと、やることにずっと頷いてくれていたけど、本当はもしかしたらこの子がやりたい事とか遂げたいものって、もっとシンプルなものなのかもしれないとか、そういうことをすごく考えた時期でした。だからカヨが脱退することになったことも、逆に後押しできたし。あなたはあなたの未来があるし、その人生をきちんと動かした方がいいって、自分も自分でカヨに対して頷けたし。きっとこの人は離れていても、たぶん私がやってる事に対して頷いてくれるんだろうなとう自信もすごくありました。だから私が間違えないようにしようと思ってたのは、彼女がいたからっていうのはありますし、それが今離れてみても、私は彼女のためだけに正しく生きようと思ってたわけではなく、そういう根本的なことに気付けたというか。そういう歌になっています。
FINLANDS/塩入冬湖
――ベースが歌っているみたいで、長めの間奏のところがすごくカッコイイ。
新しくサポートベースを迎えて作って、これからまたFINLANDSが始まっていくんだなっていうすごいワクワク感がありました。初めてカヨ以外の人と曲を作ったので、これ面白いなっていう興奮みたいなものもあって。それはたぶんずっといるギターとドラムのサポートメンバーも感じていて、そういう相乗効果でいい曲に仕上がったと思っています。
――9月16日からはワンマンツアー『REMOTE CULTURE TOUR 2019』がスタートします。
心理的にも物理的にも、変わるものもあれば変わらないものもあると思います。そこに対して私が気負ってしまうとよくないと思っていて。よく変わりたいですよね。パワーアップしたというか、新しい面がめくれて見えていくようなツアーにしたいです。
FINLANDS/塩入冬湖
取材・文=田中久勝 Photo by三輪斉史

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