未来を見据える感動体験STAR ISLAND
の本質…世界を魅了するその理由とは

今年も15,000人を動員し、大盛況のもと幕を閉じた感覚拡張型エンターテインメント「STAR ISLAND」。日本の伝統文化・花火に音楽、パフォーマンス、そして最先端テクノロジーの3Dサウンドやライティングなど様々な要素を加味した本イベントは、今や世界が注目するメイド・イン・ジャパンの一大スペクタクル。
そんな「STAR ISLAND」を手掛けるのは、世界の「ULTRA」を日本で成功させた立役者でもあり、現在は数多くの人気イベントを手掛ける稀代のクリエイティブディレクター・小橋賢児氏(写真右)。そして、事業プロデューサーとして辣腕を振るうエイベックス・エンタテインメント株式会社の坂本茂義氏(写真左)。
今回は2人に「STAR ISLAND」の魅力……多くの人を感動させ、心を動かすその由縁、さらには本イベントに込められた信念と本質、そして未来への提言……確たる思いをたっぷりと語ってもらった。

もはやただの花火、イベントの枠には収まらない「STAR ISLAND」の真の姿とは?

音で映像を喚起…音楽が作り出すストー
リー

——まずは、今年の「STAR ISLAND」を振り返って率直な感想は?
小橋:お台場から豊洲へとベニューが変わったので、東京での開催は3回目ですが、今回はむしろゼロからの仕切り直しのようでした。会場が変わると演出や座席、区が変わると地域ごとのルールも全然違うんですよ。しかも、オリンピックを控え、新しいルールが追加されて、去年までできたことができなかったり。ただ、逆に豊洲だからこそできたこともあったんですけどね。正直、豊洲の会場に初めて立ったときは、どこから手をつければいいんだろう……と愕然としました。

——会場のレイアウトを考えるのがまず大変だったと。
坂本:その前に、会場押さえからでしたね。『STAR ISLAND』はロケーションエンターテインメントと謳っている分、会場へのこだわりが強いので。

小橋:様々な問題がありましたけど、豊洲に移ったことで花火が200mという至近距離、大迫力で見られるようになった。それがお客さんの感動に繋がったので、結果的にはよかったと思っています。
——そもそも、花火と音楽を組み合わせるということは大変ではないんですか?
小橋:大変ですよ(笑)。ただ、技術的には以前から存在しているものなんです。とはいえ、それをそのままやってしまうと気持ちよくなかったりする。全て規則的なタイミングで花火が打ち上がればいいかと言えば、そうでもない。音楽にも裏でとる心地よさがあるわけで。特に、現代人はいろいろな音楽に親しんでいるからこそ、花火師さんとは毎回綿密に話し合いをしていますね。

——花火と音楽で、いかに気持ちよくなれる瞬間を作り出すかが大事だと。
小橋:そこは演出家の潤間(大仁)さんとこだわっている部分でもあるので。でも、それ以上に大変なのは、音楽でストーリーを作ることなんですよ。ある曲を聴かせるために、そこまでどう作っていくのか……それって映画の編集と似ているというか、ひとつのシーンだけをピックアップしてもいけない。俯瞰してみると繋がりが見出せなくなってしまったり、寄り引きが結構大変で。ただ気持ちよくなるためにDJ的に音を繋ぐのではなく、音で映像が浮かぶようにすることに毎回苦心しています。

——見ていて思ったのが、音楽で花火の見方、感情が変わるということ。ダンスミュージックでは昂揚感、クラシックでは壮大な気持ちになったり、いろいろな効果がありますよね。それがまた面白い。音楽の重要性を改めて感じました。
小橋:そう言ってもらえると嬉しいですね。そこに行き着くまで苦労しましたから(笑)。

メイク・ミラクル…日常の延長線上にあ
る奇跡

——様々な曲がかかっていましたが、印象的だったのはElton Johnエルトン・ジョン)の“Rocketman”。今回のテーマにもバッチリで。
小橋:音楽が好きな方はみんなそう言いますね。不思議な話なんですけど、今年の1月、坂本さんと潤間さんと3人で合宿をして、今回のテーマを考えていたんです。そのときに今年は改めてエンタメ感、見る人にワクワク感を持ってもらいたくて、“スペース・トラベル”みたいな仮のテーマを設定していて。

——それは今回のテーマ“2019: A SPACE ODYSSEY”が決まるずっと前の話ですね。
小橋:そうです。しかも、そのときは5月の開催予定で。そこから何かに導かれるように日程が変更となり、最終的に7月20日に。そして、その日のことを調べたら、アームストロング船長が月面に着陸した日だ! ってなって。まさに運命的に引き寄せられた感じで。だから、実は今回のテーマは後付けじゃない、最初からあったんです。

坂本:7月20日に正式決定したときも、月面着陸の話なんかは一切なく、本当に物理的に日程が可能だったのがその日で。
——まさにミラクル。しかも、当日晴れたことも奇跡的でした。
小橋:これもまた不思議な話で、シンガポールのときも年末年始は雨期にも関わらず、奇跡的に施行日からずっと晴れていて、当日にまさかの超豪雨。でも、オープンと同時に雨が止んだんですよ。『STAR ISLAND』ではある意味、神事のようなことをやっていて、天候をも味方に付けたというか……。ただ、天気ひとつで人々の心も動くんですよね。屋外での開催はリスクも大きいものの、日常の延長線上でやるからこそ奇跡を感じやすい。そういうメリットがあると思います。

何かのきっかけに…パラレルな世界に込
められた思い

——今年のテーマは、「STAR ISLAND」にスゴくフィットすると思いました。目の前には現実の東京があり、夜空を見上げれば花火、その向こうには宇宙がある。幾重にも重なるフィルターが「STAR ISLAND」の世界観を増幅させるなと。
小橋:人はいつから地球と宇宙を切り離し、宇宙への憧憬を持ったのか……そもそも僕らは宇宙に生きているんですよ。僕らは1人1人が宇宙に輝く星のひとつなんです。それをみんなに伝えたいし、だからこそ『STAR ISLAND』では光るバンド(LED BAND)を付けて来場者がひとつの星になる。この世界には境界線がない、それを感じてもらうためにもロケーションや光の演出に意味があると思っています。

——パフォーマンスも多種多様で、様々な意味があると思うんですが。
小橋:それぞれ様々なメッセージがあるんですけど、いろいろなものにインスパイアされてできています。それこそ、僕が毎年行っている出雲大社の神迎祭だったり。ただ、本来のコンセプトはエンリケ・バリオスの小説である『アミ小さな宇宙人』。少年が宇宙人・アミに連れられていった愛と調和の世界です。その少年は最終的に地球に戻って行動し始めるんですが……僕らはそこに連れていくことはできないけれど、『STAR ISLAND』というパラレルな世界を体験することで感じたことを各々の人生の中で活かしてほしい、何かのきっかけになってほしい。
坂本:僕は事業的なことを考える立場でもあるので、(小橋)賢児とはちょっと違うんですけど、人は何をもって感動するのか。それをいかにメジャーに落とし、わかりやすく作り込んでいくのかを考えているんですけど、クリエイター側からの要望は結構難しいことばかりで(笑)。

——理想と現実をすりあわせるようなポジションなんですね。
坂本:それぞれにこだわり、熱い思いがあるので、クリエイティブな部分は得意な人を信頼して突き進んでもらう、それだけですね。

作ると同時に見方を変える…それだけで
世界は一変

——「STAR ISLAND」の意義とは何だと思います?
小橋:『STAR ISLAND』が提案している花火って、世間的には伝統をアップデートしたものと思われがちですが、僕らはもっと先を見ていて。そもそも、タイトルに“花火”という言葉が入っていないのも僕らが見ている目の前のキャンパスには無限の可能性がある、テクノロジーを含め、人間が想像できることはもっとスゴいということを伝えたいからなんです。無限の世界、有限の自然の中に僕らは何を作り出すことができるのか……想像力を駆使することで新たなモノを作ることができ、同時にモノの見方を変えることも可能だと思うんです。どう見るかによって世界は一変する、その両軸が大事だと思っていて。

——“モノを作ること”と“見方を変えること”ですね。
小橋:花火はひとつのコンテンツ、僕らができることはもっとたくさんあるんですよ。人は新しいものに飛びつき、古いものを記憶の片隅に追いやる傾向にありますが、見方次第で生きている世界、日常は変わっていく。『STAR ISLAND』にはそんなメッセージが込められているんです。

坂本:感覚を超越させていくことに対しては、ものすごくこだわっている気がします。音楽ひとつで情景が思い浮かぶというのも聴覚を超越した感覚だと思いますしね。究極的には何が正しくて、何が悪いのか、そういった価値観をも超越することに人は感動するのかなと思います。

——「STAR ISLAND」の完成形ってあるんでしょうか? 何をもって成功とするかはわかりませんが。
坂本:まだ4回しかやっていないので、10回ぐらいやって判断できる部分があるのかな。ただ、成功はないんじゃないかなとも。

——きっとどんな形になっても満足しないんでしょうね。
小橋:確かに(笑)。次々とやりたいことがでてくるし。それに、もともとのビジョンはもっとすごく壮大なところから始まっていて、現実的に引き算をした結果が今なので。それは何かを削ったり、縮小しているわけではなく、あくまで当初の想定が未来を見据えてのもので、時代が追いついてくればできることはさらに増えると思っています。

未来を見据える一方で…残すべきは伝統
の本質

——「STAR ISLAND」は時代の進化とともに変わっていくんですね。
小橋:世界を見渡すと、様々なイベントが当初とは違った形になっている。例えば、『South by Southwest』などは音楽フェスから大きく変化しているんですよね。今後、『STAR ISLAND』もそうなると思っています。それがいつなのかわかりませんが、個人的にはすごく楽しみです。

坂本:継続することの重要性は感じていますし、僕は『STAR ISLAND』をカルチャー化させたい。各々のライフスタイル、時間軸の中で必要最低限の心の拠り所、エンターテインメントになればいいなと。そのためには、ブランディングもそうですが感動体験者を増やす、地道な作業の必要性を感じています。

——10年後、20年後ぐらいまで考えていたりするんですか?
小橋:世界はどうなるかわかりませんが、いろいろな可能性があることだけは確かだと思います。次々に生まれてくる最新テクノロジーをいかにエンターテインメントとリンクさせるか、現時点でも未来の姿はある程度想定していて、それは鑑賞方法なのか、はたまた座席なのか、ニオイかもしれない……具体的には言えませんが、この5年、10年で世界はものすごく変わる気がしています。そして、その変化した先に『STAR ISLAND』が切り開く新たな何かがあるとも思っています。

——「STAR ISLAND」のお題目でもある伝統と革新、その2つを融合させることについてはどう考えています?
小橋:伝統をリスペクトすることは大事だと思います。しかし、それをただの道具にして、宣伝文句にしてしまっている部分があるのかなと。伝統をそのまま素直に伝えることも必要ですが、僕はそれを世界中の人たちが本気で楽しめる、感動できるものにしたい。でないと、ただの押しつけになってしまい、伝統がただの道具と成り果て、本質的に残らなくなってしまいそうで。

坂本:長年受け継がれてきた伝統って、歴史の中で余計なものが数多く付随してしまっていると思うんです。例えば、花火にしても固定概念ができあがっていて、膨大な記録の中には不可解なことがたくさんある。しかも、アップデートされるのは全てリスクの部分で、エンタメの要素はされないんですよ。歴史から学ぶことは大事で、事故を未然に防ぐことの重要性もわかりますが、ネガティブにならないようネガティブになってしまっているというか、固定概念が足を引っ張っている部分も感じていて。それを一掃すると言うとおこがましいんですが、モノの見せ方を変えるだけでも何かが変わると思うんです。

STAR ISLAND の今後…2020年に向けての
展望

——2020年はオリンピックもありますが、「STAR ISLAND」はどうなるんでしょう?
坂本:希望的観測で言えば、オリンピック前にやりたい。難しいハードルがあると思いますが、世界中の人が東京に注目する以上、開催しない手はないと思っています。あとは、同時に海外展開も随時やっていきたい。今は嬉しいことにアジア各国から誘致されていて、グローバルの注目度をすごく感じています。

——7月に東京、9月にサウジアラビア、年末にシンガポール、このスケジュール感は大丈夫なんですか?
小橋:ほとんど不可能なんですけどね……。でも、やるしかない。不可能なことを可能にすると信じるしかないんですよ(苦笑)。

坂本:プロセス上、僕は可能だと思い込んでいる節がありますね(笑)。僕らがやれないと言ってしまうと本当にできなくなってしまうので。

小橋:基本的にイベントは99%がトラブル、1%の可能性を信じて突き進むしかないんです。

坂本:何のためにやっているかと言えば、開催を待ってくれている方々のため。シンプルですが、より多くの人に感動してほしい、知ってほしいという思いだけ。機会をいただければどんどんやっていきたいですね。
——小橋さんは2020年に向けていかがですか?
小橋:僕自身、今はオリンピック・パラリンピックの東京2020 NIPPON フェスティバルのディレクターとして様々な企画に携わっていますが、来年は本当に数多くのイベントが予定されていますよね。きっと世界中の人々が東京であらゆるものを目撃する、ある意味カオスのような感じかもしれませんが、僕はそこでいろいろな価値観が塗り替えられると思うんです。そして、それは2020年だけでなく、それ以降も続いていく、すごく重要なタイミングでもある。無論、『STAR ISLAND』の開催に向けても諦めずに模索していきます。そして、そこで僕らが見せたいのは日本の伝統的な花火ではなく、グローバルな人たちに向けたエンターテインメント、翻訳言語としての『STAR ISLAND』。昨年シンガポールで海外の方にも受け入れられた実感があるので、この絶好の機会に、また最高のものを届けられたらと思っています。

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