百貨店は人間模様の宝庫!? 今野浩喜
主演・舞台『上にいきたくないデパー
ト』ゲネプロレポート

舞台『上にいきたくないデパート』が2019年8月21日(水)、東京・三越劇場にて開幕した。デパートのコンシェルジュを主人公にした群像劇で、今野浩喜の舞台初主演作。初日直前に行われたゲネプロ模様をレポートする。
本作はドラマ『私のおじさん~WATAOJI~』(テレビ朝日系)などのメイン脚本も手掛ける若手クリエイター・岸本鮎佳による群像劇。コンシェルジュとして働く小木曽茂(今野)をはじめ、デパート内で働く個性豊かな面々のさまざまな人間模様を描く。
成富百貨店の開店のアナウンスからほどなく、幕が上がるとともにジャズバンド・Calmeraカルメラ)によるオープニングナンバーがスタート。劇中では同バンドによる書き下ろしのメインテーマやおなじみのナンバーが生演奏され、まるで高級デパートを訪れたときのような高揚感に包まれる。
小木曽は人当たりが良く、争いごとが苦手で誰からも好かれるタイプ。その人柄を評価され、部長の中曽根聡(モロ師岡)から後任への推薦を打診される。平穏な日々を望む小木曽は昇進を阻止しようと、わざとミスを重ね自らの株を下げるための行動に出ることを企てる。
ある日、店の売り上げを支える顧客・松金綾乃(岸本鮎佳)が怒り心頭で乗り込んできた。理不尽なクレームに、外商担当の海老沢弘樹(小松準弥)の悪気のない天然発言が火に油を注ぐ結果に。先輩で成績優秀な神山樹(猪野広樹)が解決に乗り出すが、小木曽も彼らのトラブルに巻き込まれていく。
商品以上に多種多様な人間が集まる成富百貨店。アパレルの店長・真壁凛子(矢島舞美)は、仕事に対する責任感の強さゆえにほかのスタッフと対立している。コスメカウンターにはメンヘラ気味なビューティーアドバイザー・成島一華(能條愛未)を筆頭に独自の美意識を持つ美容部員たちが勢ぞろい。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の発声など、“接客あるある”には思わずクスッとさせられる。
苦手な人間との付き合い、仕事への向き合い方の違い。時には自分自身のコンプレックスと闘いながら働く登場人物たちには、誰もが共感できる人間らしさが詰まっている。衣裳はもちろん、貴重品を持ち歩くためのクリアバッグや在庫チェック表、インカムなど細かな小道具も物語にリアリティを与えている。
裏をかけばかくほど、不思議と物事が良い方向に向かってしまう小木曽は、絶妙な喜劇の間合いでストーリーをテンポよく引っ張っていく。あるときは各店舗のなかで、あるときは全員を巻き込んで繰り広げられる愉快なドタバタ劇。ラストまでスピード感あふれる展開は必見だ。
同作が上演されている劇場があるのは日本橋三越本店の本館6階。百貨店の空気感を感じながらの帰り道は、観劇の余韻にたっぷり浸らせてくれるだろう。
取材・文・撮影=潮田茗

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