『Saravah!』から見て取れる
高橋幸宏のキャパシティの広さと
その革新的姿勢

『Saravah!』からYMOへ

のちに幸宏は、『Saravah!』を振り返って「カバーをいっぱいやりたいと思っていた」と述懐していた。また、M3「C'EST SI BON」について、「“シャンソンをレゲエでやるんだぞ! どうだ、このアレンジは!” という感じだった」とも語っている。自らの革新性を確信しながら『Saravah!』を制作していたことがよく分かる発言である。ちなみに、『Saravah!』の歌入れは1978年3月だったそうだが、細野、幸宏、坂本の3人がYMOの結成を決めたのは同年2月だったという。つまり、『Saravah!』制作時点ではすでに3人の中にYMOのコンセプトはあったことになるわけで、M5だけでなく、M6「ELASTIC DUMMY」やM9「PRESENT」辺りからもテクノポップの原型を感じることができるのは、当然と言えば当然のことなのであろう。

そんな風に、幸宏はもちろんのこと、そこに参加したメンバーも意欲的に取り組んだアルバム『Saravah!』。幸宏がメインボーカルを担当したのは本作が最初ということもあって歌い方が定まってなかったそうで、幸宏自身は次第に本作に収録された歌に納得できなくなっていったという。リリース1年後には坂本にボーカルを取り直したいと伝えていたようである(その頃はYMOで超多忙だったので、そうは思ってもなかなか実現できなかったのだろう)。そんな積年の思いを晴らすかのように、幸宏のボーカルパートをすべて録り直し、新たにミックスダウンとマスタリングしたアルバムが昨秋に発表された『Saravah Saravah!』。そして、そのアルバムリリース後に、ソロ活動40周年を記念して開催された『Saravah!』の完全再現ライブが『Saravah! 40th Anniversary Live』である。当たり前のように、この公演チケットは瞬間的にソールドアウト。コンサートが見れずに涙を飲んだファンは相当数に及んだとの噂も聞き。幸宏自身も気に病んでいたようで、「チケットが買えなかった人へのせめてもの償い」と制作されたのが『YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE2018 SARAVAH SARAVAH!』である。

TEXT:帆苅智之

アルバム『Saravah!』1978年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.VOLARE (NEL BLU DIPINTO DI BLU)
    • 2.SARAVAH!
    • 3.C'EST SI BON
    • 4.LA ROSA
    • 5.MOOD INDIGO
    • 6.ELASTIC DUMMY
    • 7.SUNSET
    • 8.BACK STREET MIDNIGHT QUEEN
    • 9.PRESENT
『Saravah!』('78)/高橋ユキヒロ

OKMusic編集部

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