ウィーンの大ヒットミュージカルが宝
塚歌劇に登場 宝塚月組『I AM FROM
AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調
(しら)べ-』制作発表会レポート

創立105周年を迎えた宝塚歌劇団が、『エリザベート』以来二度目のウィーン産ミュージカル、本邦初演に挑む宝塚月組公演UCCミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』​の制作発表会が8月20日(火)都内で開催された。
(左から)美園さくら、珠城りょう
『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』(以下『I AM FROM AUSTRIA』)は、『エリザベート』『モーツァルト!』など数々の大ヒットミュージカルを生み出したウィーン劇場協会が、2017年にオーストリアそのものを題材として制作した作品。ウィーンの老舗ホテルの跡取り息子と、オーストリア出身の人気ハリウッド女優が惹かれ合い、オーストリアの美しい街並みや自然の中で、自分の居場所を見つけていくまでを、オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒが綴った名曲に乗せた、ハートフルに、時にコミカルで、レビュー要素満載の物語となっている。
そんな期待の海外ミュージカルの制作発表会は、月組トップコンビ珠城りょうと美園さくらによるパフォーマンス披露からスタート。
珠城りょう
暗転になったステージに、「Nix is fix」と高らかにコーラスが流れ、老舗ホテル・エードラ―の御曹司ジョージ・エードラ―の珠城りょうが照明のカットインで登場。
珠城りょう
決められた人生、定められた規範の中で飼いならされ生きたくない!
珠城りょう
「Nix is fix」と歌う珠城が実にエネルギッシュ! たった1人で舞台をところ狭しと踊りながら歌う姿が、楽曲に相応しい躍動感を盛り立てた。
珠城りょう
曲調が変わり、人気ハリウッド女優エマ・カーターに扮した美園さくらが登場。
美園さくら
珠城と共に故郷オーストリアへの思い、そこに生まれた尊さをしっとりと歌い合う。
珠城りょう
美園さくら
作品のタイトルでもあり、オーストリアの第二の国歌と称される名曲「I AM FROM AUSTRIA」の美しいメロディーが、「故郷」や「家族」をテーマにした作品の本質を感じさせる時間になった。
(左から)美園さくら、珠城りょう
そこからステージは会見場に。ウィーンからも多くの関係者が駆け付けた賑やかな登壇者がそれぞれの挨拶を行った。
宝塚歌劇月組『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』制作発表会より
宝塚歌劇団の小川友次理事長は、約2年半前に宝塚歌劇105周年の謂わば目玉作品を模索していた時に、『エリザベート』初演以来友好関係を築いているウィーン劇場協会から、新作ミュージカル上演の案内が届き、『I AM FROM AUSTRIA』を観劇。これこそ宝塚105周年に相応しい作品だと直感して、宝塚で上演させて欲しいと要請し快諾を得たという、上演の経緯を披露。
小川友次理事長
常にリスペクトを感じているウィーン劇場協会の大ヒット作品を記念の年に上演できることへの感謝と共に「宝塚でやる限りは珠城りょう主演というアダプテーションがあります」と明言。ネタバレにならない程度に、潤色・演出の斎藤吉正に語って欲しいと和やかに話した。
上島達司代表取締役会長
作品の協賛会社であるUCC珈琲株式会社上島達司会長は、作品にウィンナーコーヒーが出てこないことを残念がり、会場を笑いに巻き込みながら、自社のテーマである「コーヒーから生まれる笑顔のために」と同様、皆さんに笑顔になって頂ける作品を創る為に協力したいと、これまで協賛してきた『ミー&マイ・ガール』同様の、楽しい作品になると確信していると語った。
フランツ・パタイCEO
ウィーン劇場協会CEOのフランツ・パタイは、日本でも愛されている『エリザベート』『モーツァルト』『ダンス・オブ・バンパイア』『ルドルフ・ザ・ラストキス』『貴婦人の訪問』等の作品は世界21ヶ国で上演され、6200万人の動員を成し遂げているが、そのサクセス・ストーリーは23年前宝塚歌劇団が、世界で初めて『エリザベート』を上演してくれたところからはじまっている。そこから続く四分の一世紀もの友情関係が、『I AM FROM AUSTRIA』という作品によって、さらに深まっていくことを期待していると、ウィーンミュージカルが世界に広まって行った原点は宝塚歌劇にあるとの思いを述べた。
クリスティアン・シュトゥルペック
脚本・クリエイティブデベロップメントのクリスティアン・シュトゥルペックは、『I AM FROM AUSTRIA』はどこが自分の故郷か、どこが自分の家なのかという非常に重要な問いを扱った物語の舞台を主としてウィーンに置いた作品で、ウィーンでは二年間に渡り50万人以上の人が観劇した大ヒット作品のひとつになった。そんな物語が日本で歩みを継続することを誇りに思い、宝塚歌劇団がオーストリア以外の世界で初めて、作品を上演してくれることに感謝している。心から敬愛する日本の観客の皆様方が、『I AM FROM AUSTRIA』のニュープロダクションで大いなる喜びを見出して頂けますように心より祈念すると、柔らかな笑顔で語った。
ティトゥス・ホフマン
脚本・アイディアのティトゥス・ホフマンは、この作品は軽快でユーモアにあふれ、かつエモーショナルで深く心に触れる、まさにウィーンオペレッタの伝統の中で、しかしモダンなストーリーであることを意図してスタートし、オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒの賛同を得て、まず楽曲の場所を先に決め、謂わば後付けで話の筋を練り上げ構築していったという作品の成り立ちを解説。その中で最終的にはあたかもこの物語の為に楽曲が作曲されたという効果を得るように意識したものだが、今日、日本語で珠城と美園が歌ったナンバーを聞いても、その効果が全く変わらずに伝わったことに感動していると、楽曲の素晴らしさが言葉の壁を超えていることに敬意を表した。
齋藤吉正
宝塚版の潤色・演出を担当する齋藤吉正は、自身の作品が上演されていた台湾公演時にこのプロダクションに関わることを理事長から伝えられ、ウィーンに飛んで以来綿密な打ち合わせを続けてきた。月組はミュージカルに強い組だし、トップスターの珠城りょうは学年は若いが、トップとしてのキャリアは十分で、トップ娘役の美園さくらも披露公演から確実に進歩しているので、ウィーンオペレッタの歴史を模範とする、メロディーに乗せた台詞で綴られている『エリザベート』とは性格を異にする、しっかりした楽曲とウィットに富んだ台詞回しによる、老若男女の方々に楽しんで頂ける作品の稽古に、邁進していきたいと意欲を述べた。
珠城りょう
そして、主演の月組トップスター珠城りょうは「今回この作品を上演させて頂くにあたり、ウィーン劇場協会のミュージカルというのが宝塚歌劇と致しまして『エリザベート』に続いて二作目ということで、とても身の引き締まる思いでおります。月組と致しましては先日『エリザベート』も上演させて頂きました。今回の『I AM FROM AUSTRIA』は『エリザベート』とは180度世界観も、雰囲気も、楽曲の毛色も違う作品になっておりますので、そういったところにまた月組として新たに挑戦していけることをありがたく思っております。また先日私は実際にウィーンの劇場まで足を運ばせて頂き、ウィーンの皆様から『I AM FROM AUSTRIA』という作品が非常に愛されているということを肌で感じてきました。ですのでそれを実際に私達が日本で上演するというのは、かなり責任のあることだなとプレッシャーにも感じているのですが、ウィーンのキャストの皆様やCEOのパタイさんをはじめ関係者の皆様、観客の皆様がとても温かく迎えてくださったので、それは自分にとって忘れられない思い出ですし、今日またこうやって皆様と再会できたことを非常に嬉しく思います」
珠城りょう
「私の役どころジョージは、ホテルの御曹司という役柄ではあるのですが、両親との確執も抱えた極普通の青年です。両親からの独立というのが、彼の一番大きなテーマなのかなと作品を観て感じました。男女の恋愛だけではなく、友情や祖国愛というものが、皆様がおっしゃられていた通り、素晴らしく美しく様々な音楽に乗せて描かれていく。本当に心温まる、観終わったあとに温かいものが心に残るような作品だなと感じています」
珠城りょう

珠城りょう
「日本で上演してもきっと多くの方に共感して頂ける物語になっていると感じますので、大人の方だけではなく、SNSが普及している現代に生きる若い方々にも是非観てもらいたい作品です。そこから家族や友人の大切さ、また自分自身が将来どうなっていきたいのか? を一人ひとりが考えることが如何に大切かを作品から感じ取って頂けるのではないかと思いますので、そういったところを大切に月組の皆と丁寧に、齋藤先生とも色々話し合いながら、ぶつかり合いながら良い作品に仕上げていきたいと思います」と力強く語った。

美園さくら
またトップ娘役の美園さくらは「日本とオーストリアの友好150周年という素晴らしい年に、このような作品に携われることを大変光栄に思っておりますし、日本初演ということで身の引き締まる思いでございます。ウィーンでも観劇させて頂きましたが、今まで体感したことがないような本当に華やかで、それでいてスタイリッシュなパフォーマンスに圧倒されました。その感動を余すことなく日本の皆様にもお届けできるように、これから精一杯お稽古を頑張っていきたいと思っております」
(左から)美園さくら、珠城りょう

美園さくら
「演じさせて頂くエマ・カーターという人物はハリウッド女優で華やかな世界で生きている分、孤独や苦悩を抱えておりますが、美しい故郷に帰ってきて彼女が感じた心の解放を、本当に美しい音楽に乗せて繊細に表現することができるように精一杯頑張りたいと思います。また今回は『夢幻無双』に続き齋藤先生に演出して頂けるということで、齋藤先生には私の性格や色々なこと全てわかって頂いているので、非常に心強いですし、先生にしっかりとついてお稽古を頑張っていきたいと思います」と決意を述べた。

全員の力のこもった挨拶が続いた為、質疑応答の時間は極めて短いものになったが、齋藤に「宝塚ならではのアダプテーションを差し支えのない範囲で教えて欲しい。またコーヒーは出てきますか?」という質問に斎藤が「コーヒーはもちろんですよ! 出てきます!」と断言して会場が笑いに包まれる一幕も。
(左から)齋藤吉正、珠城りょう、美園さくら
『I AM FROM AUSTRIA』が宝塚に向いている点のひとつにストーリーばかりでなく、各レビューシーンが非常にバラエティーに富んでいることがあり、月組生全員の出場場面が大変多くなること。また、ウィーン版はLEDを駆使した大きなケーキ型のセットがベースになっていたが、宝塚歌劇の舞台は盆が回り、大きなセリもあるので、それらを用いた宝塚の正攻法の転換を使い、「あぁ、宝塚レビューだな」と思える流麗を創り出していきたい。もちろん物語のあとには、華やかな宝塚歌劇ならではのフィナーレレビューもあると、宝塚版の見どころを披露。作品への期待が高まる時間となっていた。
(左から)美園さくら、珠城りょう
(左から)美園さくら、珠城りょう

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