清水翔太 11年目の夏、アーティスト
として戦い続ける日々の苦悩と喜びを
音楽に変えて前進し続ける男の現在位

デビュー10周年を経て11年目の夏を駆け抜ける清水翔太から届いた、最新デジタルシングル、その名は「Breathe Again」。サウンドは心地よくクールなトロピカルハウスで、リリックはひと夏の恋の始まりと終わりを感傷的に描き出す。完全洋楽志向のサウンドと和風情緒豊かな世界観との融合は、“これぞ清水翔太!”と喝采を叫びたい素晴らしい仕上がりだ。10周年、30歳、アーティストとして戦い続ける日々の苦悩と喜びを、音楽に変えて前進し続ける男。清水翔太の現在位置を探る、最新インタビューをお届けしよう。
――個人的に10年振りのインタビューなので、すごく嬉しいです。ちょっと余談から入らせてもらいますけど、2月に出たAK-69 のアルバム『THE ANTHEM』に参加して、武道館公演にもゲストで出たでしょう。あの時の翔太くんがすごくかっこよくて、印象に残っていて。
ありがとうございます。
――黒いフードをかぶって、スッと出て来て、歌って、パッと帰る。あのスマートさがかっこよかった。やっぱり人のライブって、気分が違うものですか。
そうですね、自分がすごく求められている時もあれば、必ずしもそうじゃない時もあると思っていて。
――というと?
AKさんは、音楽的にもプライベートでも僕のパーソナルな部分を知ってくれて、声をかけてもらっているんですけど、それが見えない人(観客)も当然いるわけで。どっちかというと(自分を)求めてないお客さんが多い場所かな?と思ったので、あんまり出しゃばった真似はしないという気持ちがありました。
――ああ。そうだったのか。
それがたとえば、事務所の先輩の加藤ミリヤさんとか、仲のいい(青山)テルマとか、あのへんのお客さんだったら、“翔太!”って声がかかったりして、そうなるとちょっと出しゃばっちゃいますけど(笑)。AKさんの場合は、それだけじゃないなという感覚があったので。
――納得しました。AKさんにも聞いたんですけどね、知り合ったのはわりと最近だとか。
そうですね。きっかけはUVERworldのTAKUYA∞さんで、すごく感謝してます。AKさんは僕からすると、一番近い表現で言うと“怖い”というか、お会いする前のイメージはそれでしたけど、本当にいい人なので。TAKUYA∞さんに呼んでもらって、プライベートでもお会いするときにAKさんが顔を出してくれて。僕なんかにも話しかけてくれて、“翔太と曲、やりたいんだよね”と言ってくれたので。それはすごく嬉しいし、音楽的にもプライベートでもかっこいい人だなと思ってたから、“喜んで”という感じでした。
清水翔太 撮影=西槇太一
自分の才能とスキルを活かしきれてないという感覚が、ずっとあったんです。最初の5~6年は。
――今日は本題のニューシングルの話に入る前に、そういうことも聞きたかったんですよ。今年の2月でデビューからちょうどまる10年、人との出会いという意味で、どんな10年でしたか。
ほんと最近なんですよね……。基本的に僕は一匹狼で、誰とも仲良くせずにきたので。
――それは意識して?
いや、単純に苦手というか、人見知りがけっこうあったので。今はもうないんですけど。それも考えれば、深く根付いた、自分のアーティストとしての活動に結び付く問題というのも絶対的にあって。僕はR&Bが好きですけど、自分の才能とスキルを活かしきれてないという感覚が、ずっとあったんです。最初の5~6年は。
――はい。
何て言うのかな、“これが俺なんだ”と言える作品がないというか。もちろん、デビュー曲の「HOME」とかも全然自分自身だし、別に当時の曲が嫌いなわけでもなんでもないけど、やっぱり、マーケティングとかいろんな考え方がある中で、“いや、自分はもうちょっと、こうなんだけどな”と思う瞬間が当然あって。それはあってしかるべきで、全アーティストが戦うところなんですけど。そこでやっぱり、プライベートなところでどうしてもビビっちゃうというか……本当に一生懸命R&Bやヒップホップをやってる人からは、“ポップスの人でしょ”と思われるだろうな、という恐怖があったし、逆にポップスの人たち……というか、要するに活躍している人たちは、単純に畏れ多いし。どことも仲良くできない感覚があったので、すごく孤独でしたね。
――うーん。そうなのか。
でも『PROUD』(2016年)というアルバムから、曲の雰囲気も変わったし、自分が好きなことを思いっきりやるようになって、音も全部自分で作るようになって、“これが自分なんです”と胸を張って言える作品ができたあたりから、人との付き合いも恐れなくなってきたんですよ。出会った人が“翔太、かっこいい”と言ってくれるとしたら、それは嘘じゃないと思えるようになったというか。そのタイミングでTAKUYA∞さんから突然“対バンしよう”という話が来て。UVERworldって、ツアーの時に同じ1曲を延々みんなで聴くらしいんです。そうしたら、その曲を聴いたらそのツアーを思い出すから、記憶と結びつけるために、ずーっと同じ1曲を聴く。それで2年前ぐらいのツアーの時に、自分の曲をTAKUYA∞さんが気に入って、ツアー中ずーっとその曲を聴いてくれてた。『FLY』(2017年)というアルバムに入っている、「夢がさめないように」という曲なんですけど、それで“対バンやりたい”という話をいただいて、こちらも“ぜひ”という感じで出たのがきっかけです。その時に初めてお会いして、どんなに相手が自分のことを好きでも、こっちが相手のことを好きでも、社交辞令じゃないけど、仕事上での関わりを最初に一歩超えるのって、大変じゃないですか。
――そうですね。
それをTAKUYA∞さんは感じさせないというか、初めて会ってたのに“おー、やっと会えたな”みたいな、その人柄というか兄貴感というか、一緒にいると安心するので、そこがすごく好きなんですよ。そこからTAKUYA∞さんの周りの人を紹介してもらって、面白い人がいっぱいいて、仲良くなって遊びに誘ってもらえるようになったりとか。それまでは外に飲みに行ったりしなかったんですけど、ちょうど同じ時期に、“ここいいな”と思える店が一つできて、いわゆる行きつけの店で、店員さんとも仲良くなって。そういうところに、“翔太が好きな店だから”って、TAKUYA∞さんがAKさんを連れて来てくれたりとか、そういう中で増えていった人脈がすごく多くて。
――なるほどなあ。
だからほんと、この3~4年ですね。友達がめちゃくちゃ増えました。僕からも、気になる人にはどんどん“連絡先教えてください”という感じで行くようにしようと決めて、そこからもめっちゃ増えましたね。僕、あんまりテレビとか出ないので、現場で会うというのが少なくて、だからツイッターでDM(ダイレクト・メッセージ)を送るんですよ。それで仲良くなった人もいっぱいいます。最近だと、霜降り明星の粗品さんとか。まずツイッターをフォローして、フォローが返ってきたら向こうも興味あるのかなと思って、“すごい好きです”ってDMを送ってみる。それから連絡先を交換して“飲みましょうよ”とか言って仲良くなる。和牛さんにも、“大好きなんで、良かったらライブ来てください”ってDMしたら、本当に二人でライブに来てくれたりとか。芸人さんの友達もたくさん増えましたね。昔は一切、そういうことやらなかったですけど。
――長くやるもんですね。
ほんと、そうですね。当時はやっぱり、フェスとかで寂しかったですから。交流のあるアーティスト同士はみんな仲良さそうにしゃべってるけど、そこに一切入れない。上の人たちが気を使って、“翔太くん”って来てくれるんだけど、なかなかうまく溶け込めない。だから今、そういう人たちにあらためて会って、たくさんお話ができるのも嬉しいですね。スキマスイッチのお二人とか、ゴスペラーズのみなさんもそう。いつも気にかけてくれて、話しかけてくれるんだけど、“……どうも”ぐらいしか言えなかったんですよ。だから、話せるようになって良かったです。
――良かった。あと、曲提供も増えたでしょう。最近だとV6とか。それも、ここ何年かの大きな進化だと思ってます。
それもやっぱり、明確に理由があって。僕って、自分で言うのも何ですけど、わりと器用で、聴く音楽もR&Bだけじゃなく、ヒップホップもJ-POPもすごく好きだし、その中で自分のブランディングに苦しんできた10年なので。デビューしてから数年もそうですし、好きなことをやり出した『PROUD』以降も、今も、ブランディングに苦しむんですよ。今まで作ってきた自分というものを壊したくなる瞬間もあるし、昔作っていたような曲をまたやりたくなったりもする。そうすると、今の路線を待ち望んでいるファンには“また戻っちゃうの?”って不安にさせるし、逆に“戻ってほしい”という人もいるし。ブランディングにすごく悩まされるぶん、どんどんいろんなものを作りたい気持ちがあって、作ってみたらいい曲もたくさんあるので。そういういろんな曲を、人に歌ってもらえたらいいよなと思うから、曲提供をするようになったんですね。それはこれからもやっていきたいです。

歌詞が日本の情緒があるワードなので、せつなく見えるんですけど、ストーリーだけ見ると、まあまあパリピですからね。
――そろそろ本題に行きましょう。6月の「Sorry」に続いて、ニュー・デジタルシングル「Breathe Again」が8月が21日にリリース。結果的に、センチメンタルな失恋系の楽曲2連発になりました。
確かに。
――だいぶ、せつない夏になってますけどね。たまたま、ですか。
そうですね。でも「Breathe Again」は、せつないという印象は自分の中にはあんまりないんですよね。歌詞が日本の情緒があるワードなので、せつなく見えるんですけど、ストーリーだけ見ると、まあまあパリピですからね。
――……え? もう1回言って。
パリピじゃないですか。ひと夏の関係みたいなことですからね。でもそれを僕が書くと、日本の情緒のワードになるから。
――ああ、ああ、そういうことか。パリピと聞いて、一瞬ひっくり返りそうになったけど(笑)。
時、止まってましたね(笑)。
――マジびっくりした。今。
まあ、冗談ぽく言えばそういう感じです。ただひと夏の恋とか、夏の刹那の、線香花火のように一瞬きらめいて消えてしまうものとか、僕の中で永遠に好きなものなんですよ。季節は夏が一番好きなんですけど、太陽とかビーチとかじゃなくて、もうちょっとじめっとした、夏の夜の雰囲気が好きなんです。僕が夏の曲を書くと、だいたいそのテーマなんですね。すごい人気な曲で「ナツノオワリ」という曲があるんですけど、それもひと夏の恋で、一緒なんですよね。
――これはトラックが先に?
実はけっこう前からある曲で、サビだけインスタに上げてたんですよ。今とはちょっと違うんですけど、2年前ぐらいですかね。曲の鮮度もあるし、出す気はなかったんですけど、すごい人気で、“あの曲は出さないんですか?”という声がたくさん来ていた。でも先が浮かばないからずっと放置していて、“いつかは向き合わないとな”と思っていたところで、6月ぐらいに向き合ってみたところ、パッとできたので、じゃあ大急ぎで出そうよと。本当はもうちょっと早く出したかったんですけど、ぎりぎり夏に滑り込みで、でも振り返ってる曲なので、ちょうどいいかなと。
――リリックには多少は現実も入ってますか。
僕はこんな経験ないですけどね。パリピということで言うと、クラブなのか夏の海なのか、どこかで出会って、お互い恋愛の射程範囲に入って、でも結局散っていく……みたいな感じ。わかりやすく言えば、北野武さんの『ソナチネ』っていう映画、あるじゃないですか。僕もあんまり覚えてないんですけど、女の子と出会うシーンがあって、雨の中で、服が透けちゃって、Tシャツを絞るみたいな。夏の沖縄かどこか、離れた場所でふと出会う少女みたいな、そんなのにめっちゃ憧れるんですよ。夏の曲を書く時は、そういうイメージは常にあるんですよね。パリピと言うと言い方が悪いですけど、どっちかというとそっち寄りですね。
――それはすごく伝わります。
じめっとした感じがいいんですよ。音はトロピカルハウスで、ワーッとなってるけど、自分の中の画は、じめっとした夏の夜の、寂しく波が打ち寄せるような感じ。そこで恋が始まって、終わって、でも忘れられなくて、ループしていく自分の感情みたいなものを音にした、という感覚ですね。
――そこ、すごく翔太くんぽい。ボキャブラリーがないのを丸出しで言うけれど、これはトラックだけ聴くと洋楽でしょう。そこに情緒ある世界観と、その声が乗ることで、日本のポップスになるというか。
そうなんですよ。僕はそことすごく戦ってきたという自負があるので。自分の好きなサウンドと、日本語の相性の悪さから逃げない。英語を使ったり、安易な表現に逃げないということに、ずーっと悩んで苦しんで戦ってきたので。戦ってきたその結果が、すごくいい形で消化されたなという感覚を、この曲にはすごい持ってます。ほぼほぼ英語はなくて、これだけ日本の情緒を感じるワードで、このサウンドで違和感がないというのは、自分だからできたのかなという感覚はあります。
――腑に落ちました。
自分はR&Bとかヒップホップが好きだし、作る音もそういうものばっかりですけど、じゃあ言葉を書くとなったら、古き良き日本の情緒、わびさびとか、そういうものをなくしたくないんですよね。それが個性になっていけばいいなと思ってます。
――なってきてると思いますよ。そして、まだまだ全然やれることある。
そうですね。
清水翔太 撮影=西槇太一
自分が幸せになることよりも、周りを幸せにしたい気持ちが強くなってきちゃってます。そのためには、自分のことを頑張らなきゃいけないんですけどね。
――今年、このあとはどんな活動を?
とりあえずアルバムを作ってます。「Sorry」とか「Breathe Again」も入ったアルバムを作ってるんですけど、いつ出そうというのは、ちょっと悩みどころですね。いつもはアルバムを出して、それをツアーでやるんですけど、今年はアルバムは出さずにツアーをやって、制作をしながら、良きタイミングでアルバムを出すという計画ですね。
――楽しみです。いろんな曲があるって感じですか。
うーん、ぶっちゃけまだあんまりできてないんですね(笑)。ここから頑張らないと。
――そして、9月からおよそ3か月間という、けっこう長いツアー。どんなツアーにしますか。
まだ何もわからずです。いつもこの時期に“どんなツアーに?”と聞かれて、いつも答えられないんですよ。“リハやってみないとわかりません”みたいな(笑)。事前に考えられないので、リハーサルに入っていろいろやりながら、試行錯誤して組んでいくと思います。
――アルバムツアーじゃないし、ある意味自由に何でもできる。
そうなんですよね。リハーサルして、バンドの音が鳴って、でっかいちゃんとしたスタジオでやってみた時に、初めてお客さんが見えるというか、そこからじゃないと考えられないんですよ。まあでも、せっかくアルバムを出さずにやるツアーなので、みんなが聴きたかった曲をやりたいなとは思いますね。
――あらためて、デビュー11年目、そして30歳になった抱負を、最後にひとこともらえれば。
おこがましいんですけど、最近やってるプロデュースとか、人に曲を書くのもそういう感覚なんですけど、もう自分が幸せになることよりも、周りを幸せにしたい気持ちが強くなってきちゃってますね。自分を慕ってくれてついてきてくれる人もいっぱいいるし、そういう人を幸せにしたいなっていう感覚が強くなってきちゃってます。だから“人のために”という感覚はすごくあります。そのためには、自分のことを頑張らなきゃいけないんですけどね。
取材・文=宮本英夫 撮影=西槇太一
清水翔太 撮影=西槇太一

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