英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネ
マシーズン 2018/19 ロイヤル・バレ
エ団『ロミオとジュリエット』~エネ
ルギーが疾走するナグディ&ボール

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19の最後の演目は、ここのロイヤル・バレエ団で生まれたドラマティックバレエの最高峰『ロミオとジュリエット』だ。ジュリエットを踊るのはヤスミン・ナグディ、ロミオはマシュー・ボール。2019年6月の英国ロイヤルバレエ来日公演で、あるいはマシュー・ボーンの『白鳥の湖』公演で、その魅力を日本のファンにたっぷりと焼き付けて行った2人が、鮮烈な若々しいエネルギーあふれる恋人たちを演じる。主演を中心にバレエ団一丸となった感動的な舞台は、何度も見たこの作品が新鮮に思えるほどだ。ぜひ大スクリーンでご覧いただきたい。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』予告編

■若さならではの疾走感あふれる鮮烈な、生涯ただひとつの恋
とにかくあっという間の上映だった、ナグディ&ボールの『ロミオとジュリエット』。出逢い、恋に落ち、バルコニーで愛を語らい秘密裏に結婚し、しかし一度の過ちから別離を強いられ、最後の賭けに出るも結局は悲劇を迎える――この一連の物語が、2人の若い情熱にけん引され一気に展開し、気が付いたらカーテンコールに応える2人がいた。
『ロミオとジュリエット』は14歳前の少女と17歳の青年の、わずか5日間の物語だ。幼さと紙一重のロミオとジュリエットが、しかしだからこそひたむきに、それぞれの家同士の敵対心も越えて、ただ愛情だけを互いに注ぎ求めあう。純粋に燃え上がる恋は、わずか5日間でも少女を女性へと変貌させる。16世紀に誕生した物語とはいえ、ナグディとボールの演じる恋人たちの姿は恋する等身大の若者たちそのもの。そうした普遍性が現代でもなお人々の心を打ち、この物語を「名作」と言わしめるのだと、改めて思う。
Ⓒ2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks
ロミオ役のマシュー・ボールは2019年来日公演『ドン・キホーテ』のバジルやエスパーダ、マシュー・ボーン『白鳥の湖』で見せたザ・スワンやセクシーなストレンジャーとはまた違った好青年で、感情が実に素直に伝わる。ジュリエットとの恋は青年に両家のいがみ合いを止めようと思わせるが、その矢先の親友マキューシオの死が、全てを打ち砕く。やるせない感情が爆発するロミオがティボルトに立ち向かうソードファイトは、思わず目頭が熱くなる。間違いなく本作の名場面の一つだ。
ⒸROH, 2015. Photographed by Alice Pennefather
一方ナグディのジュリエットは、愛嬌たっぷりで実にかわいらしい。恋を知る前の恥じらいやロミオと出会った瞬間に芽生えた恋心と驚くべき行動力、しかし愛するロミオを失う悲しみ……といった姿、感情は演じる、というよりはジュリエットとして生きているように魅力的だ。
(c) ROH, 2015.
■物語を支える名ダンサーたち。ロイヤル一丸の代表作
主演を支えるダンサー達にも注目したい。まずはなんと言ってもティボルト役のギャリー・エイヴィスだ。何度もティボルト役を演じる、いぶし銀の名優でもあるエイヴィスは、今回もまたその熟練の演技で若いロミオを受け止める。
ⒸROH, 2015. Ph. Alice Pennefather.
ヴァレンティノ・ズケッティのマキューシオはチャーミングで、向こう見ずな若者らしい味わいがあり、金子扶生のロザラインは一目見た瞬間、忘れられない印象を残す。マルセリーノ・サンベのキレのいいマンドリン・ダンスも必見だ。舞台の隅々にいたる全てのダンサー生きており、バレエ団一丸となった舞台には誇りさえ感じられる。
Ⓒ2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks
シェイクスピアの普遍の名作をもとに、セルゲイ・プロコフィエフがバレエ音楽を書いたのは1935年。さらにケネス・マクミランがこの曲に振り付けし、英国ロイヤルバレエ団で初演したのは1965年のことだった。以来400回以上の上演数を記録し、日本の新国立劇場バレエ団をはじめ、世界各国のバレエ団がレパートリーとして取り入れている本作は、様々な振付家が手掛けた数ある『ロミオとジュリエット』のなかでも、名作の筆頭と言っていいだろう。
ダンサーの層の厚さも感じられる、バレエ団の伝統的作品『ロミオとジュリエット』。ロイヤルバレエファンはもとより、「ザ・スワン」あるいは「ストレンジャー」でボールに魅了された方々もぜひ、この映画でもうひとつのボールの姿をご覧いただきたい。
取材・文=西原朋未

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