引きこもり少年が手にしたギターで切
り開く未来。秋山黄色インタビュー。

銃やナイフしかなければ戦うことしかで
きないかもしれないけど、たまたま持っ
たものがギターだった。

秋山黄色、23歳。部屋で1人ギターを弾いていた少年は、気付けば「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」と大舞台でギターをかき鳴らしていた。今、彼と同世代のリスナーたちは、その吐き出されるように書かれた歌詞に深く共感し、その切なくも強く鳴り響くギターに共鳴、そして拳を握りしめる。未だ謎多き秋山黄色という1人の青年を紐解くべく、音楽を始めたルーツから新曲『夕暮れに映して』についてまで話を聞いた。


Text_Sota Nagashima
夕暮れに映して MV

お年玉で買おうとした初めての楽器

――そもそも秋山さんが音楽を始めたきっかけは何だったんですか?

秋山 : 一番最初は、「けいおん!」っていうアニメを観て、バンドをやりたいとかじゃなく楽器をやってみたいとなったんです。ドラムが欲しかったんですけど、ドラムは値段が高いので上級国民しか買えなくて…(笑)。生ドラムだったら買えたかもしれないんですけど、今度は上級国民の家じゃないと叩けないので…(笑)。

――

そうですよね(笑)。それでギターを?

秋山 : いや、ベースを買いました。中学生の頃にデパートに行って、お年玉でドラムは買えないなぁとなって。その買えない悔しさがベースへと流れて、ベースを持って帰りました。でも、一緒に楽器を買おうと言っていた友達が「三国無双」か何かを買って、1人でずっとベースを引いてるのはキツいものがあって、早い段階でやらなくなってしまって。壁に飾ってイキってました(笑)。

――そこから何故ギターを弾くという風に?

秋山 : ベースをやるより、やっぱりエレキギターが欲しいとボヤいていた時に、おばあちゃんがそれを聞いていたみたいで。ある時、ギター持ってきたよと言われて。マジで!って見に行ったらガットギター(クラシックギター)だった。僕も優しかったので、これじゃないんだけどなって言わなくて(笑)。エレキの曲を練習はできないので、それで弾き語りをしようと思ったんです。やっぱり歌を伴うと、ベースより楽しくて。それで段々とギターの方に寄っていきました。

――スピッツの『チェリー』を弾き語りしていたそうですね。

秋山 : 当時はネットで弾き語りって検索すると、『チェリー』が大体出てきたんですよ。それでYouTubeで弾き語りの動画を観たりして、練習していました。

――当時秋山さんは引きこもり真っ最中だったんですよね?そこで何故オリジナルを作曲しようという意識になったのですか?

秋山 : その『チェリー』を覚えたての頃、友達とよく夜中スカイプでずっと喋りながらオンラインゲームをしていたんですね。それで、朝方友達にスピッツの『チェリー』歌えるんだぜって言って聞かせたんです。でも、コードは練習していたんですけど歌詞を覚えてなくて、メロとかも全部適当になったんですね。たまたまそのスカイプをキャスか何かで配信をしていて、その録画を聴き返したら意外といい線いってるなと思って(笑)。あ、作曲ってこういう感じなのかな、別の曲のコードを引っ張ってきて、今度は完璧に自分で歌詞をつけてみようという風になりました。だから、作曲したいなって思って始めたわけじゃなかったんですよね。

――すごい偶発的に生まれたんですね。

秋山 : 弾き語りの練習のために、他人の曲を弾いていたんですけど。自分で作っちゃえば、他人の曲を覚えなくていいんじゃないかと思って、自分で作り出したんですよね。

――オリジナルで自分を表現したいという訳じゃなかった?

秋山 : はい。友達に聴かせるのに、マジなことを歌うのは恥ずかしいっていうのがあって。自分や友達のコンプレックスを歌にして、ほぼ芸人さんのリズムネタみたいなおもしろいものを作ろうとしていたて。でも、自分でやる時間が増えていけばいく程、そうじゃない曲もやりだすようになって。他人に聴かせるためにやらなくなるというか、歌うこともなくなってきて、残ったのが楽器と作詞だったので。すっごい寄り道をして、ようやくちゃんと考えて歌詞を書くようになりました。だから、今でも趣味って感じがするんだろうなと思います。

ちゃんと人に見せる準備がやっと出来た

――以前ライブでも音楽って最強の趣味だと思うっておっしゃってましたよね?

秋山 : そうですね。あれも全然嘘じゃなくて、本当に趣味からスタートして今でも趣味なので。

――でも、引きこもりだった状態から今のように音楽で外に表現するっていうのは、ある意味外に出るっていうことより勇気のいることのように思いますが。

秋山 : 急にやるんだったら、勇気がいると思うんですけど。元々の弾き語りや作詞の趣味から、録音に入っていったので。スカイプを友達とやる為に買ったマイクの機材に、作曲のソフトがついてきて。今まで弾き語りしていたものに、ドラムがつけれるようになったんです。これはもう曲じゃんってなって。音源作りに面白さを見出して、どんどん音源が溜まっていって。それで、最初はTwitterに音源作りましたってお知らせぐらいの感じであげていたんですけど、どうせならずっと聴けるようにしようかなと思って、SoundCloudにあげるようになって、最終的にYouTubeに映像付きであげるようになっていきました。外に向けて発信していたつもりもなくて、結果的にはそうなってましたね。僕1人でやっていたことからいろんな人が関わってくれるようになって変わったことはあるんですが、引きこもりだったからどうとかっていうことは意外とないですね。

――なるほど。では、今もその頃とあまり気持ちは変わらない?

秋山 : どう思うかが重要だと思うんですけど。今も全然外に出ているつもりはないですし(笑)。ライブや今日みたいな時しか外に出ないので、全然まだ引きこもってます(笑)。インターネットを外と捉えればそうなんですけど、僕にとってインターネットはまだ家の中なので。たとえ100万回再生とかいっても、モニターにそう書いてあるだけで実感として感じない。最近になってライブで直接人を目にすると、少しだけそうなのかなって感じます。

――今年も「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」や「SUMMER SONIC 2019」 など大きなフェスへ出演もされると思いますが、それでも?

秋山 : まだ実感はないですね。中学生の頃とかはギターもまだ弾いてないのに、頭の中でデカいステージで自分がギターを弾いているところを想像していたりしてたんですけど、実際にそれが現実になってみても実感はあまりないですね。想像の世界ではすごいんですけど、いざ目の前にそういうことがあると、手前で多少なり努力もしているので、ワクワク感というかその時やることに集中している感じですね。

――では、ライブで緊張などもあまりしないですか?

秋山 : 初ライブの時とかは当たり前のように緊張して、それから緊張は続いていたんですけど。去年のサマソニのときに全く緊張しなくて。当日、体調悪いのかなって思ったぐらい(笑)。緊張してないのも良くないだろうと思って、準備中の時に一回ステージに上がって人がバァーっている光景を見たんですが、何も緊張を感じなくて。ちゃんと人に見せる準備がやっと出来たのかなって思いました。

――すごいですね。秋山さんがここまでやってこれたその原動力は何だったのでしょう?

秋山 : 曲を作る原動力に関しては、今も昔も曲を作りたいということですね。最初に遊び半分で制作をやっていたからこそ、ゲームしたいボーリング行きたいっていうのと作曲も変わらないです。仕事っていう感覚が極端にない方だと思うんです。

――音楽でお金を稼がなければってゆう感覚が少ない?

秋山 : いや、それはもちろんあります。でも、他の人よりもポジティブに考えられているのかもしれない。これが売れなかったらヤバいってよりも、これを作って大儲けしてやるというような(笑)。結果は変わらないんですけど、感じ方は違う。爽やかな野心ですね。

――秋山さんの楽曲からそこまで野心があることはイメージしていなかったので、少し意外でした(笑)。

秋山 : 野心はバリバリあるんですけどね(笑)。

みっともないけどやっぱり変わりたくな

――内向的というか、内から出るものを吐き出すような詞が多いイメージですが、普段作詞はどういう感情で作られていますか?

秋山 : 本心では基本重いことをずっと考えているんですよ。物の生き死にとか、宇宙とかについてずっと考えているから、それをアウトプットする先が作詞になっちゃっているんですよ。結果、注ぐものがそれしかないとゆうだけで、作っているときはずっと楽しい。自分の武器が銃やナイフしかなければ戦うことしかできないかもしれないけど、運良くたまたま持ったものがギターだったので。そこに込めていることは重いけど、やることはエンタメなので。うまいこといい具合になっているのかもしれない。趣味としてすごい良いなと思います。

――それでいうと新曲の『夕暮に映して』は比較的明るい曲調で、詞も苦しいながら自己肯定をしようとしている曲に感じました。

秋山 : 曲が出来てから詞を考えることが多いんですが、これはアコギで作った曲で。爽やかな曲になったから、爽やかなことを書こうとなった塩梅に、自分らしさを入れたので半々に見えるんじゃいかなと思います。重いけどある程度救いもあった方がいいと考えていて思い出したのが、過去の恋愛の悲しかった出来事などでした。今までの曲も全部出てると思うんですけど、みっともないけどやっぱり変わりたくないっていう意識が一番自分らしいと思っていて。完全に爽やかにしてもいい曲でもあったんですけど、自分らしさは損なってはいけないと思って思い出したのがそういうエピソードでした。

――今回の曲は実体験を基に作られているんですね。

秋山 : そうです。でも、全曲そうですね。元々あったことを誇張していることはありますが。

――この曲で伝えたいことって聞いても大丈夫ですか?

秋山 : えっと…、言わない方が良いと思います(笑)。アーティストのほとんどは、作ったものを聴き手に自由に解釈してもらいたいって思っていると思うんですけど、僕の場合は一つの意味が必ず普通にあります。ボカさずに一つ伝えたいことがボンってある。言わないだけで、主張とも言えるべきレベルであります。

――ありがとうございます。最後に、先程野心があるとおっしゃってましたが、それは具体的にどんなものがありますか?

秋山 : やっぱりスタジオを作ることですね。超具体的に言うと(笑)。曲を作りたいので。ゲームしたいからゲーム部屋を作るようなものですね。

――活動的な意味では何かありますか?

秋山 : 悩みも消し飛ぶぐらいのヒットですね(笑)。シャンプーたけぇ、リンスも本当は4プッシュしたいとかそんな悩みも無くなるくらいの(笑)。戦略的にどうとか頭の良いことはできないので、良い曲を普通に作り続けていきたいです。


作品情報

秋山黄色 – Single
『夕暮れに映して』
2019.8.9 Release

https://akiyamakiro.lnk.to/yugureniutsushite


秋山黄色 オフィシャルサイト
秋山黄色 Twitter

引きこもり少年が手にしたギターで切り開く未来。秋山黄色インタビュー。はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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