柿澤勇人「いつか出たかった」三谷幸
喜の新作舞台『愛と哀しみのシャーロ
ック・ホームズ』に登場

「シャーロック・ホームズは如何にして、偉大なる名探偵になったのか?」をテーマにおくる、三谷幸喜の新作舞台『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』。ホームズと相棒のワトソンが出会い、『緋色の研究』で描かれた最初の事件に遭遇するまでの数ヶ月間、まだ20代のホームズを描いていく。ホームズを演じるのは、今年2月の『海辺のカフカ』フランス公演も記憶に新しく、『スリル・ミー』をはじめミュージカル作品でも引く手あまたの柿澤勇人。「2019年はストレートプレイしかしない」との決意のもとで挑む本作について語ってもらった。
柿澤勇人
――主役のシャーロック・ホームズを演じると聞いたときの感想を教えてください。
チーフマネージャーに居酒屋に呼ばれて、何か怒られるのかな、悪いことしたのかなと思っていったら、「ガッキー、三谷さんが一緒にやりたい」って。最初は「嘘でしょ?」って思いました。三谷さんはシャーロック・ホームズに思い入れがすごくあって、ご自身を「シャーロキアン」と称されるくらいお好きで。しかもホームズ役ですから……。
――三谷さんと組まれるのは?
初めてです。役者として三谷さんの作品にいつか出たいと思っていました。三谷さんはあて書きというか、その人の個性や特性を生かした脚本を書かれると伺っていて、インスピレーションが沸かないとなかなかキャスティングされないとも聞いていたので、すごくうれしかったです。
――シャーロック・ホームズはどんな印象ですか?
天才肌で、風変わりで、近寄りがたいけど魅力がある天才というイメージですね。ホームズについての資料がたくさんあるので、目を通しておこうと思います。ただ、既存の作品ではないので、あまりイメージに捉われずに自分なりのシャーロック・ホームズをやれたらと思っています。
――三谷さんからはホームズ像にリクエストはありましたか?
自分のことは分からないのですけど「そのままでいいよ」とおっしゃってくれたので、そのままでいようかなと思います(笑)。
――普段、稽古場での役作りはどんなふうに?
自分がその日やれることを全部やって、プレゼンして。それが演出家の意図と違ったら、次の日に変えて。役を掴むまで時間がかかるので、最初から出来たら最高ですけど、いつ掴めるのか……。早く(役が)降りてきてほしいですね。降りると言うとカッコつけすぎですね……、腑に落ちるという感じです。そこにたどり着くまでがもどかしいです。ただ、稽古場では役の事ばかり考えていますが、稽古場を出たら全然違うことを考えています。そのメリハリがまた、影響を及ぼすことがあるんです。
――役が抜けるのも早いですか?
早いです。芝居は楽しいですけど、苦しいことも多いので、「ああ、終わった。やり切った」という方が大きいです。
――お芝居の苦しさ、楽しさはどういうところに感じますか?
お金を頂いている以上、良いものをしなければという責任があるので、そこは苦しいというか、だからこそ苦しまないとダメだと思っています。楽しいというのは、芝居は虚構で、セリフ一つ一つも全部嘘だけど、たまに本物になる時があって。楽しいと思えるのはその瞬間ですね。
――嘘が本当になるというのは、自分の中から自然と湧き上がるという感じでしょうか?
そうです。セリフが自然と出てきます。その瞬間は楽しいです。それがたまに訪れるんですよね……。
柿澤勇人
――柿澤さんはミュージカル作品が多いと思うのですが、今回はストレートプレイです。その点についてはいかがでしょうか?
僕が劇団四季を辞めたのは芝居をしたいという思いと、「役者とは何か、芝居とは何か、演技って何なんだろう」と思って勉強し直そうと思ったからです。ミュージカルの「歌って踊る」というのはある意味、技術が必要なことですが、その技術が使えない時にどう戦えるかということを求めていて。ストレートプレイでいかに戦えるかというのは僕自身、課していることなので、「やっと来たな……」という感じです。
――三谷さんが柿澤さんの舞台をご覧になって「僕のシャーロック・ホームズがここにいた」とおっしゃったとか。それは何の作品だったんですか?
『メリー・ポピンズ』です。バートという役でした。ミュージカルをご覧になったうえでのストレートプレイで、というのも嬉しかったです。

柿澤勇人

――「僕のシャーロック・ホームズ」とは、どんなイメージか三谷さんからお聞きになりましたか?
推理に関しては風変わりで、突然奇声を発したり、這いつくばったり、匂いを嗅いだり、暴れたりするとおっしゃっていました。普段の僕はそんなことはしません(笑)。
――今年はストレートプレイに絞ってきたとのことで、現時点で何か手ごたえはありますか?
瞬発力が大事だなと。今、映画とドラマを並行して撮影しているのですが、舞台は稽古が1カ月半あって、今日できなくても明日できればいいし、悩みながら、もがきながら考える期間があります。でも、映像の場合は、自分の考えてきたこととは違うことを現場で要求されることがあって、それに対して反応できるかできないかで大分、変わってきます。相当鍛えられるし、反応していかないといけない。それは舞台にもつながることで、1カ月半から2ヵ月、稽古があったとしても、三谷さんに「ガッキー、これやって」と言われた時に、その要望に対しての瞬発力があるかないかでクオリティが違うと思うんです。『フランケンシュタイン』や『スクール・オブ・ロック』など、来年はミュージカル作品がいくつかありますが、ミュージカルでも同じで、瞬発力が大事だと思います。
――相方のジョン・H・ワトソンは佐藤二朗さんです。佐藤さんとのタッグはいかがでしょうか?
何も不安はないです。百戦錬磨の二朗さんは何を言ってもちゃんと返してくれるし、僕が失敗しても拾ってくれるし、突っ込んでも返してくれるし、懐が深いですね。完全に信頼しています。本作についてプレッシャーを感じていると二朗さんに相談した時、二朗さんが言うには「恐れなくていい。俺がお前を最高のシャーロック・ホームズにしてやる」と。飲みの席ではそう言っていたので、最高じゃなかったら二朗さんのせいです(笑)。

柿澤勇人

――依頼人のヴァイオレットは広瀬アリスさんです。
今回が初共演で、ビジュアル撮影の時に初めてお会いしたのですが、僕も人見知りですぐには仲良くなれないので、稽古を経て仲良くなれたらなと思います。
――では最後に、改めて『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』について読者の皆様へ一言、お願いします。
とにかく信頼して、三谷幸喜さんの世界に飛び込もうと思っています。僕も二朗さんも、アリスちゃん、横田栄司さん(マイクロフト・ホームズ役)、はいだしょうこさん(ハドソン夫人役)も三谷組が初めてなので、三谷さんとの新たな化学反応が起こるんじゃないかなとワクワクしています。みんな本当に達者な方々ばかりで、何も心配はしていません。東京公演を経て大阪にお邪魔するので、その頃には確実に面白い舞台になっていると思います!
柿澤勇人
取材・文=Iwamoto.K 撮影=田浦ボン

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