【インタビュー】ディカペラ「ディズ
ニー映画っていうのは人生のサントラ
。人種も性別も国籍も超越する力を持
っている」

ディカペラ(DCappella)は、ディズニー・ミュージック・グループが送り出す初のアカペラグループ。オーディションで選出された超実力派達7名が繰り広げるアカペラでのパフォーマンスは、老若男女に愛され続けるディズニー映画の名曲と相まって最高の音楽空間を作り上げる。7人のハーモニーは時には激しく時には穏やかに聴く者の心を揺さぶる。変幻自在なヴォーカルパフォーマンスは唯一無二の存在。ディズニーへの想いがさらに募ることになるだろう。そしてディカペラは2019年8月~9月には初の来日公演が決定。日本でのパフォーマンスに意気込むメンバー4人に話を聞いた。

■人生の分岐点で完璧にマッチする曲がディズニーにはある
■それを歌うことによって皆さんと共有できるのが嬉しい

──今日は4名のメンバーに来てもらいました。それぞれ簡単に自己紹介をしてもらえますでしょうか。

アントニオ・フェルナンデス(以下、アントニオ):ビートボックスを担当しているアントニオです。米ディズニー・パークのアカペラ・グループ<アメリカン・ミュージック・マシーン>でここ4年間活動をしているんだ。子供のころからディズニーが大好きだよ。

カレン・ケリー(以下、カレン):メゾソプラノのカレンです。プロ歌手としては5年活動しています。それ以外にもいろいろなことをやっていて、メイクアップ・アーティストでもあり洋服のショップも持っているの。

ソジャーナ・ブラウン(以下、ソジャーナ):アルト担当のソジャーナです。ニューヨーク大学を卒業して初めての仕事がこのディカペラなの。大学では詩や音楽を学んでいたわ。

RJ・ウェスナー(以下、RJ):テナーを担当しています。ニューヨークでプロとして9年間活動していて、声優や俳優、音楽などいろいろなことをやっています。ロスに引っ越してからディカペラに参加して1年半。それ以外にもディズニー曲をオーケストラで歌う活動もやっているんだ。

──ディカペラを結成されたときのいきさつを教えてもらえますか。

カレン:2017年の終わりにアメリカ全土にメンバーの募集があったんです。第一段階としては自分のパフォーマンスをビデオ収録して応募したの。それから何度も何度も審査を重ねて、最終オーディションがあるということでロサンジェルスに行ったら、集められたメンバーで決定というサプライズでみんな大喜び。その2時間後にアルバムのレコーディングをしていたのよ。驚きでしょ?

──このディカペラの企画を立ち上げたのが、コンテンポラリー・アカペラ界のパイオニアであるディーク・シャロンさんですね。彼について、どういう人なのかを教えてもらえますか。

カレン:人間としての彼は、みんながよく言っているのが“人間エスプレッソ”ということなの。その一杯にエネルギーが満ち溢れていて、彼が現れると部屋中が沸き立つような感じになる。ものすごくエキサイティングでエネルギー満載の人よ。

RJ:ミュージカルコメディ映画『ピッチ・パーフェクト』3部作が彼の仕事としては一番有名だけど、他にもいろいろなテレビ番組の仕事も網羅しているんだ。いわゆるアカペラ界のゴッドファーザー的な存在の人だね。
──アカペラは最近日本でも若者を中心に人気になっていますが、音楽の形としてはそんなにポピュラーなものではありません。アメリカでは、リスナーにどういう風に受け止められていますか?

ソジャーナ:アカペラはもちろん何百年も前から歌われていた一番古い形の音楽ではあるけれども、ポップミュージックとしてアメリカで人気になりだしたのはここ10~15年くらいなの。青春ミュージカル番組『Glee/グリー』や映画『ピッチ・パーフェクト』がすごい人気になって大学のアカペラサークルが増えていって、彼らが自分たちの歌をYouTubeに投稿するなど、インターネットを介して広がって行っているのが大きいんじゃないかしら。いまではクレイジーな状況になっているわ。その中でもやっぱりペンタトニックスの存在がすごいわね。

──アカペラに惹かれたきっかけをそれぞれ教えてもらえますか

アントニオ:10歳のときに母に連れられてジャズシンガーのボビー・マクファーリンのコンサートに行ったんだ。彼は人間の声を限界まで追い求めているアーティストで、それに刺激を受けて、自分も“声”の可能性を追い求めていきたいと思った。だからこそいまヒューマン・ビート・ボックスをやっているんだ。ボビー・マクファーリンから学んだことは他にもあって、彼のコンサートは観客が参加するんだ。観客とのコミュニケーションがあって演奏が完成する。それが素敵で、いまディカペラでも観客とともにコンサートを作り上げていくことを心がけているよ。

カレン:5歳の頃にカントリー歌手のシャナイア・トゥエインのオーディションに合格して、譜面をもらって初めてステージでパフォーマンスをしたの。私はそれだけ。それがアカペラのパフォーマンスだったんだけど、歌っている最中にその素晴らしさに気付いた。クラシックなどのコーラス隊っていうのは美しいハーモニーを幾重にも重ねていって表現するんだけど、アカペラっていうのは楽器の音すらも人間の声で表現する。そのかっこよさにステージで気付いてしまったわけ。

ソジャーナ:ハイスクールの頃は中世ルネッサンスの頃の音楽をやるアカペラグループに参加していて、衣装も歌ってる題材も歌自体もその時代に忠実に再現するっていう、ちょっとオタクなグループだったの。でもとても仲良くて家族のようだった。大学時代に参加していたアカペラグループも同じように家族のように温かかった。それはなぜかというと、アカペラってお互いに支えあわなきゃいけない。頼れるのはメンバーだけなので強い絆ができるの。だから私にとってアカペラが重要なものになっているのよ。

RJ:ハイスクールの頃に、自分の声の音域がかなり広いということを知って、そして自分には音楽で生きていくしかないと思っていたんだ。でもピアノや楽器は弾けなかったので、コンピュータを使って自分の声を何重にも重ねて録音し音楽を作っていくということをやっていた。インディアナ州の音楽コンクールで優勝したことで大学のスカラシップを得ることができて、そこで音楽理論やギターやピアノなどの楽器の演奏も学ぶことができたんだ。

──ディズニーミュージックというのは、クラシック、ジャズ、ロックンロールなどありとあらゆる要素が入った素晴らしい音楽です。みなさんは歌っていてどんな魅力を感じていますか?

カレン:“ディズニー映画っていうのは人生のサントラだ”って、みんなもよく言っていることなの。それは全世界の人がそう思っているんじゃないかしら。音楽っていうのは世界共通の言葉だし、人種も性別も国籍もすべてを超越する力を持っている。ディズニーの音楽は人の心の深くに入り込むし、それによって人々を笑顔にする。だから自分の人生が分岐点を迎えたときに、その状況に完璧にマッチする曲があるのよ。思い出とリンクするというか。だからこそ、それを歌うことによって皆さんと共有できるのが嬉しいの。
■ディークは個性を考慮して完璧なアレンジを作ってくれる
■声の個性を出しつつもそれを融合させるのが素晴らしい

──では具体的に歌のことを聞かせてください。アルバムは皆さんの声を多彩なアレンジで表現されていて感動しました。これって譜面を見ながら歌っているんですか。それともヘッドアレンジで録音されるのですか?

ソジャーナ:これがディーク・シャロンのすごいところで、それぞれの個性を考慮して完璧な譜面を作ってくれるの。声の個性を出しつつも、それを融合させるのが素晴らしいわね。

RJ:完璧な譜面はあるんだけど、僕らの想像力が重要な部分もあるんだ。譜面には“アドリブ”“リフ”“RJ、ここは君が考えてね”なんていうことが書かれている。それを元に臨機応変に想像力を駆使しながら即興で作ってかなきゃならないこと多いんだ。例えば「インモータルズ」では、あんなゴリゴリのロックソングをどうやって歌うんだろうと思っていたら、結果として素晴らしいものが出来上がった。ディークは僕たちを形に嵌めるんじゃなく、個性を重んじてくれているんだ。だからこそ、それができるメンバーを選んだんじゃないかな。

──レコーディングの方法を教えてください。一斉に歌うんですか?

アントニオ:いや、一人ずつ音を重ねて録音するんだ。まずはクリックに合わせてリズムパートを録っていく。ピアノとクリックを聴きながら僕のビートボックス、そしてベースから録音が始まる。ビートボックスには譜面はないから100%想像力が勝負になってくるんだ。そしてメロディーを次々に重ねていく。だから最後のヴォーカルの人が、すべての音を聴きながら歌うことができるんだ。

──先ほど話に出た「インモータルズ」のことなんですが、音が入り乱れていて、さらに人間の声とは思えないような音と歌唱法。これって、ステージでどう再現されるのか想像できないほどです。

RJ:実はこれルーパー(※)を使っているんだ。このエフェクトで短いフレーズを何度も重ねていき、さらにリードボーカルも3回重ねている。この曲が一番サウンドを厚みがあるね。ステージでも同じようにルーパーを使うことになるよ。
(※)ルーパー:楽器や声の短いフレーズを重ねて録音/再生をしながらさまざまなパフォーマンスを実現するエフェクト

カレン:そう、“アッ”っていう短いフレーズをルーパーに録音して繰り返すことで、私は他のフレーズを歌うことができる。それぞれがみんなそれをやると、音が何重にも重ねられて面白い効果を生み出すの。

アントニオ:最新テクノロジーを使うことによって新たな可能性が見える。観客との交流も新しいことができるようになるんだ。「踊ろう、調子よく」でも同じような効果を聴くことができるよ。
──「踊ろう、調子よく」の音はめまいを起こしそうなほど不思議な音にあふれています。

ソジャーナ:これもルーパーの使い方が重要な曲ね。これはステージを実際に見てもらわないと、どうやるのか説明するのは難しいわ。ぜひ見に来てほしいわ。

──このアルバムで一番印象的な曲をそれぞれ教えてください。

カレン:「You'll Be in My Heart」ね。90年代を髣髴させるフィル・コリンズも曲で、ディカペラのユニークさを一番打ち出せていると思うの。

アントニオ:このアルバムには入っていないんだけど、『インクレディブル2』のテーマ曲。これが僕のお気に入りなんだ。このサントラには僕たちは4曲参加しているよ。

RJ:映画『ジャングル・ブック』の「I Wan’na Be Like You」。これはかなり前からレパートリーに入っていてずっと歌っているんだけどいまだに大好き。ジャジーでスイング感があって、なおかつ女性陣の声をうまくフィーバーしている。僕のボーカル・トランペットを聴くことができるよ。

ソジャーナ:「8.When She Loved Me」が思い出深い曲。ハーモニーが4パートに分けられていて美しい響きになっているの。あと、このアルバムには日本語の曲が5曲収録されているんだけど、これがすごく楽しくて新しいチャレンジになったわ。特に「Beauty and The Beast」は美しくてアレンジが個性的で素敵よ。

──みなさんが一番最初に好きになったディズニー曲は何ですか?

RJ:『アラジン』の「A Whole New World」だね。ロマンスと美しいメロディーに夢中になったんだ。

ソジャーナ:『ライオンキング』の「Circle Of Life」。朝日が出てくるシーンが忘れられない。

カレン:『ヘラクレス』の「The Gospel Truth」で、それまでのディズニーミュージックとは全然違うタイプの曲なの。

アントニオ:『ピノキオ』の「星に願いを」。4歳の頃、紐を引っ張るとこの曲が流れるおもちゃがあったんだ。それを聴くたびに涙してたなぁ。

──最後に、日本のファンにメッセージを。

カレン:日本での始めてのツアーなので、とでも興奮して待ち遠しく思っています。8箇所ありますので、パフォーマンスで皆さんに会えるのを楽しみにしていることはもちろん、おいしいものを食べまくって洋服も買いまくって楽しみたいと思います。

取材・文●森本智
リリース情報

『DCappella』
UWCD-1025 \2,500(税抜き)
発売中
1.Tune Up チューン・アップ
2.The World Es Mi Familia 音楽が僕の家族 (『リメンバー・ミー』)
3.Friend Like Me フレンド・ライク・ミー (『アラジン』)
4.How Far I’ll Go How Far I’ll Go (『モアナと伝説の海』)
5.Let It Go/Do You Want to Build a Snowman? レット・イット・ゴー~ありのままで/雪だるまつくろう (『アナと雪の女王』)
6.I Wan’na Be Like You (The Monkey Song) 君のようになりたい (『ジャングル・ブック』)
7.You’ll Be in My Heart ユール・ビー・イン・マイ・ハート (『ターザン』)
8.When She Loved Me ホエン・シー・ラヴド・ミー (『トイ・ストーリー 2』)
9.Trashin’ The Camp トラッシン・ザ・キャンプ (『ターザン』)
10.Part of Your World / A Whole New World パート・オブ・ユア・ワールド/ホール・ニュー・ワールド(『リトル・マーメイド』、『アラジン』)
11.Step in Time 踊ろう、調子よく (『メリー・ポピンズ』)
12.Immortals インモータルズ (『ベイ・マックス』)
13.Remember Me リメンバー・ミー (『リメンバー・ミー』)
ボーナストラック(日本語歌唱)
14.Whole New World ホール・ニュー・ワールド (『アラジン』)
15.Beauty and The Beast 美女と野獣 (『美女と野獣』)
16.Circle of Life/He Lives In You サークル・オブ・ライフ/ヒー・リヴズ・イン・ユー (『ライオン・キング』、『ライオン・キングII』)
17.Under the Sea アンダー・ザ・シー (『リトル・マーメイド』)
18.Thanks to You サンクス・トゥ・ユー(東京ディズニーシー1stアニバーサリーより)

ライブ・イベント情報

<ディカペラ ジャパン・ツアー>
2019年8月22日(木) 札幌文化芸術劇場 hitaru
2019年8月24日(土)いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
2019年8月25日(日)東京エレクトロンホール宮城
2019年8月27日(火) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2019年8月28日(水) 兵庫県立芸術文化センター 大ホール
2019年8月30日(金) 福岡市民会館
2019年9月2日(月) - 9月8日(日) 東急シアターオーブ
2019年9月10日(火) - 9月12日(木) NHK大阪ホール

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