【インタビュー】琴音、少女と大人の
境を超え優しい雨のように心に沁み通
る1stシングル「今」

大器の片鱗というよりも、すでに大器の輪郭がはっきりと見えている。シンガーソングライター琴音。2002年生まれ、17歳、高校3年生。「Eggs presents ワン!チャン!!」グランプリ、テレビ朝日「今夜、誕生!音楽チャンプ」グランドチャンプ獲得という華々しい経歴を引っ提げ、2019年3月6日、E.P.『明日へ』でメジャー・デビュー。一度聴いたら忘れないその声は凛として強く深い包容力を持ち、少女と大人の境を超え優しい雨のように心に沁み通る。8月7日、1stシングル「今」をリリース。この声は、あなたの中に眠る本当の気持ちを呼び覚ます。BARKS初登場インタビュー。

■思ったより嫌な気がしないで表現ってできるんだと思ったので
■また作ってみようかなと作ったのが今も続いています

──今、高校3年生ですか。

琴音:はい。3年になりました。

──大学行きます?

琴音:大学は、今は考えてないですね。

──じゃあ、音楽に就職だ。

琴音:でも今は自分に知識がなさすぎるので音楽を学べる学校のことも多少考えてます。

──周りの友達は、どんな感じですか。やりたいことが決まってる人とか、とりあえず進学してから考える人とか。

琴音:大学を目指している子は今の時期は“昨日10時間勉強した”と言っていますね。でも自分の周りには、やりたいことが決まっていて専門学校を目指す子もけっこう多いです。鉄道が好きだからJRを目指すとかアクセサリー系に行きたい子とか映像をやりたいと言ってる子もいますし。鉄道が好きな子は四六時中、山手線の路線図や時刻表をずっと見てるとか。それは試験に出るのかただ好きで見てるのかわからないですけど(笑)。

──好きこそものの上手なれ。琴音さんは早くから歌手になると決めていたんでしょう。

琴音:そうですね。実現するかどうかわからないけど、夢を持ってるというレベルだったら、童謡を歌っていたぐらいの年齢から思っていました。

──すごくいい声ですね。豊かな包容力を感じる、ぬくもりのある声。それは声変わりする前から…女子は声変わりしないか。

琴音:年齢的にもその年にしか出ない声はあると思うので、徐々に変わって来てるとは思うんですけど。基本的にはずっとこんな感じだと思います。

──自分の声ってどう思っていますか。特徴があると思う?

琴音:どうですかね。17年ぐらい付いてるものなので(笑)。あんまり意識はしないですけど。たとえばラジオ収録に行くと“落ち着く声ですね”とか褒めていただいたりします。

──専門的に歌を習ったことはないですか。

琴音:一時期、人に慣れるという意味で合唱団に入っていたことがありました。今はある程度慣れてきたんですけど、昔は本当に恥ずかしくて人に話しかけることができない人間だったので親がすごく心配して、歌が好きならそこで人間関係が良くなるんじゃないか?ということで合唱団に入って。実際そこで人に心を開けるようになったと思いますね。自分が小3で入った時、小1から高3ぐらいまでの幅の子がいたんですけど、先輩方は優しくしてくれて小さい子はなついてくれて。部活のほうが忙しくなって3年ぐらいでやめてしまったんですけど、すごく楽しかったなと思います。

──言い方は固いけれど。音楽に救われたというところがあるのかしら。

琴音:もちろんです。何かと、頑張らなきゃいけないと思う原動力は音楽だったと思います。人付き合いにしても勉強にしても。

──具体的に、誰の影響を受けた人はいるのかな。

琴音:最初は親の影響が大きかったと思います。父がギターを弾いて歌を歌う人で母はピアノを弾くので、保育園で覚えてきた曲を歌っているとすぐ弾けちゃうんです。夜になると父がずっとギターを弾いていて音楽ができる部屋があるんですけど、そこに入って行って父がギターを弾いてるのを聴きながら寝るということがよくありました。その時に、父が作った曲を聴かされて歌詞も眺めていたりしたので。父がMr.Childrenがすごく好きだったので、私も聴くようになったりとか、そういう影響はあったと思います。母はジャズのほうなんですけど、英語がわからないのでそっちの曲はあんまり知らないんです。
──作詞作曲は小さい頃からやっていた。

琴音:中2ぐらいですね。それも親の影響があって、小学校の卒業祝いに連れて行ってもらったスナックで歌わせていただけるようになったのがライブ活動をするようになったきっかけなんです。だいたい前座で出させていただくんですけど、出演者の方々はシンガーソングライターやバンドの方ばかりで、当たり前のように自分の曲をやってらっしゃるので、すごいなあと思いながら見ていたんですね。自分にはできないと思ってたんですけど、父も曲を作っているし、母に“曲を作ってみたら?”と言われたり、自分の曲が作れないやつはダメだみたいなことを母の友達がSNSで言ってきたり。

──何ですかそれ。

琴音:母が友達とそういう議論をしているのを見せられたんです。その時は半分嫌味だと思いましたけど(笑)。でも歌がある程度歌える人なんてそこら中にいるし、自分よりうまい人もたくさんいるので、それ以外で自分らしさを出して行くには曲を作っていくに限ると言われて、それはそうだと思ったので。最初は父と相談しながら作っていました。

──最初に作った曲って覚えていますか?

琴音:最初に作った曲は、メジャー・デビューの前に出した『願い』というミニ・アルバムに入っている「大切なあなたへ」という曲です。あれを作ってみて最初はやっぱり怖いなと思いました。

──怖い?

琴音:自分の内情というか思っていることを発信するわけなので。今まで思ってることをあんまり周りに出してこなかったというのもありますけど、否定されるんじゃないか?という怖さがありました。でもいざ作ってみたら、“微笑ましい”とか“いいね”とか言ってもらえて、思ったより嫌な気がしないで表現ってできるんだと思ったので。また作ってみようかなと思って作ったのが今も続いています。

──「大切なあなたへ」って、確かお母さんに向けた曲でしたっけ。

琴音:そうです。

──やっぱり最初は、お母さんのことを歌いたかった。

琴音:そうですね。ずっと送り迎えや家での練習を一緒にやってくれて。ギターを弾いてない頃は母にピアノを弾いてもらって一緒にステージに上がってもらったり。母は仕事をしていたので、すごいハードスケジュールだったと思うんですけど、私のこともやってくれてすごくパワフルな母なんです。それだけさせてるわけだから、日頃の感謝を伝えようと思って書きました。

──曲を聴くと、この人は文学好きだろうなと思ったんですね。文語っぽい言葉や哲学的な言葉も普通に歌詞に使うし。

琴音:言葉はけっこう好きです。人付き合いがあまり得意ではなかった頃は本が友達みたいな感じだったので。小学校では走ったら数秒で着くくらい図書室にが近かったので、休み時間のベルが鳴った瞬間に走っていました。走って行って定位置があって、ここにいると落ち着くみたいな、クッションがふわふわな場所があったんです。そこへ行って本を読んでいました。友達が一人二人できたあとも、同じようなことをやっていましたね。二人で同じクッションに座って別々の本を読むみたいな。

──何かいいシーンだなあ。やっぱり文学少女だ。

琴音:いえいえ(笑)。中学生ぐらいになると、気持ち的にも中途半端な時期で、もやもやしたりとか自分の中でいろいろ考えてしまったりとかが多かったので、それを歌に出していくことが多かったと思います。今は高校生になって古典もやるようになったのでその影響もあるのと、現代文でも難しい本も読めるようになったので、なおさらいろいろ考えられるようになりました。
■優しくていい子だけど心に傷を負っている子が多いんです
■そういう子たちも元気づけられるような歌が作れればいいな

──話を今に戻して「今」の話をしましょう。1stシングルのリード曲になった「今」は一番新しい曲ですか?

琴音:そうです。

──何を歌おうと思って作った曲ですか。

琴音:私はぼーっとしてる時は周りを見てしまうんです。観察というほどでもないですけど、みんなが何をやっているか無意識に眺めている時に“あ、この子、今、自分の主張を隠したな”とか“無理してるな”とか。周りに合わせるためにスッと変える瞬間とかがけっこう見えるんです。

──ああー。学校とかで。

琴音:学校でみんなと話してる時に時々そういうことがあって。大体そういうことをやる子って決まっているんですね。自分も今はいい仲間にも巡り合えて自分の言いたいことを言えるようになったんですけど、周りの目に怯えてる時期や自分の人格を取り繕っているような時期もあったし。そうしたほうが周りの子が喜んでくれたので、ひょうきんなことを言ったりして無理やりやたら明るくふるまってみたりとか小さい頃にはあったので。でも今ぐらいの年齢になっても、そういう面影が見える子はけっこういるので、それがしんどいんだったら良くないなと思って、それで曲を作ってみようと思ったのがきっかけです。そういう人は自分の立ち振る舞いに悩むことがあると思うし、今は高校3年生で来年にはみんな違う場所に行くので、そこでまた悩んだり疲れたりするだろうし。と思った時に、それを発信することでしんどいなと思っている人が“自分を主張しよう。ありのままで行こう”と思ってくれれば嬉しいのと、あとは自分自身の記録というか“私もこういう時期があったな”という、成長記録みたいなものの一つでもあるかなと思います。

──40、50になってもそういう人はいますよ(笑)。それは元々の性格だったり環境がそうさせてしまったり。

琴音:もちろん、自分を隠さなければいけない場は人によってはあると思いますし、自分を隠して生きていくほうが平和的な人もいるでしょうし、そのほうが周りに迷惑をかけないとか居心地がいいとかは否定はしないです。“そのままでいいよ”という歌詞は、ありのままでいいということと自分を偽っているそのままでもいいよ、と。

──ああそうか。人によって解釈は変わる。

琴音:歌はその人の解釈次第だと思うので。この曲を聴いていただいて、何か考えることとか苦しい人を元気づけられたらと思います。何か感じ取っていただければ嬉しいかなと思います。

──カップリングの2曲も、新しい曲ですか。

琴音:いえ、3曲目の「Aries」はスナックで歌っていた時からあった曲です。自分のことをめちゃめちゃ応援してくれてた大好きなひいおばあちゃんが亡くなった時に作った曲です。みんなから愛されているひいおばあちゃんだったんですよ。亡くなる前の数年は私のことがわからなくて“だあれ?”と言われたりとかしたんですけど、でもやっぱりわかるんです。おばあちゃんが“琴ちゃんだよ”って言うと“ああ、琴ちゃん”って。自分が保育園の頃から遊びに行くといつも“歌って”と言ってくれて、歌う曲は年々変わっていくんですけど、童謡からポップスになっていったり、それを全部喜んで聴いてくれて。もう直接聴かせられなくなると思うと寂しいですけど、届いているといいなと思います。

──なんだか、あなたの周りには優しい人しかいないなあ。

琴音:この前、衣装さんにも言われました。友達の話をしたら“琴音ちゃんの友達の話って、めっちゃいい子ばっかりだから、ちびまる子ちゃんかなと思った”って(笑)。親や友達、人間関係はいいご縁に恵まれているとすごく思います。自分はけっこうふらふらしているというか自由なところがあるので、人付き合いに疲れてくると一人でどこかに行っちゃったりするんですけど、それでも“あれ、どっか行っちゃったね”“あ、戻って来たね”みたいな(笑)。仲間意識で嫌な束縛をしあったりするわけでもなく、あたたかい感じの人がいっぱいで。でもそういう子たちって、苦しいことや悩んだことが過去にけっこうあったりするので。すごく優しくていい子だけど心に傷を負っている子が多いんです。特に自分の友達はわりとそういう子が多いので、そういう子たちも元気づけられるような歌が作れればいいなと思いますし、友達からも影響はすごく受けてます。
──いいなあ。そういう歌をどんどん書いてください。2曲目の「飛行機」は自作ではなくて、柴田聡子さんと岡田拓郎さんが書いてくれた曲。

琴音:普段自分が作る曲とテイストがだいぶ違うので面白いなと思います。前にも他の方に楽曲をご提供いただいたことがあったんですけど、こういう音楽もあるんだという、個人的に勉強になるなと思いますね。自分の中では、シンガーソングライターとはまた別のジャンルだと思って歌っています。どういうふうに歌えばいいんだろう?って、歌手に徹する感じです。

──今後、そういうのもあり?

琴音:そうですね、全然なしではないです。

──いいシングルですね。色がよく出ている。これから大きい会場でやりたいとか近未来の夢はありますか。

琴音:うーん、今はたぶん探してるのかな。元々歌を歌う人になりたいと思ってたんですけど、それが早い段階である意味叶ってしまったので、何ができるのかを考えている感じです。とりあえず今はお客さんもたくさん増えたので、精一杯やることが一番かなと思いますね。あとは、自分の表現をちゃんと伝えられるように頑張っていけたらいいのかな、みたいな。

──たとえば、武道館のステージに立ってる自分とか想像できる?

琴音:いやー、どうなんですかね。ライブでご一緒したバンドさんには“武道館行きたい!”とかそういう方がたくさんいらっしゃって、うわーすげーと思いましたけど(笑)。正直、今の段階ではこぢんまりした場所で歌っていた時期が圧倒的に長いので、そっちのほうがイメージしやすい。でももちろん、たくさんの方に聴いていただけるならそれはいいことだと思いますし、いろんな人が“いいな”と思って聴いてくださればいいなと思います。でも、そうですね、探し中です。

──ゆっくり探してください。今年の夏はどんな活動を?

琴音:今年の夏は、けっこう詰まっています。インストアライブがあるのと次の制作もあるので。今のところ夏休みの半分ぐらいはほぼ東京に行く感じになっていて、後半もちょいちょい入って来ると思うので忙しくなりそうです。

──せっかく高校最後の夏休みなのに。

琴音:でも平日はけっこう遊んでるほうだと思います。仲のいい友達と集まってお茶したりしゃべってぐだぐだしたり。そういう空間も楽しいですし、親も“いいねえ”と言ってくれるので、楽しくやっていこうかなと思います。

──シンガーソングライターは今の気持ちを歌う人だから。来年になって卒業したら歌うことも変わるだろうから、すごく楽しみ。その頃また来ますよ。定点観測させてください。

琴音:はい。お待ちしています(笑)。

取材・文●宮本英夫
リリース情報

1st Single『今』
■2019年8月7日(水)リリース
■初回限定盤(2CD): \1,800(+税) / VIZL-1617
■通常盤(CD): \1,200(+税) / VICL-37485
■CD収録内容:
[CD収録曲]
1.今
2.飛行機
3.Aries
[初回限定盤収録CD]
「1st note TOUR 2019 -明日へ- 2019.4.3」
1. 願い
2. 戯言~ひとりごと~
3. 夢物語
4. 記憶
5. しののめ
6. 大切なあなたへ
7. 音色
8. ここにいること

ライブ・イベント情報

<2nd note TOUR(仮)>
11/23(土祝):名古屋クラブクアトロ(愛知)
11/30(土):新潟LOTS(新潟)
12/1(日):仙台HooK(宮城)
12/7(土):Music Club JANUS(大阪)
12/8(日):福岡ROOMS(福岡)
12/21(土):Veats shibuya(東京)
12/28(土):Veats shibuya(東京) 【追加公演】

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