ねごとラストライブに見た12年。“ね
ごと”とはなんだったのか

ねごとが全国ワンマンツアー「お口ぽかーん!LAST TOUR 〜寝ても覚めてもねごとじゃナイト〜」のファイナル公演を7月20日(土)、東京・Zepp DiverCity TOKYOで行った。2018年12月に(今回のツアーを最後に)解散することを発表し、2019年4月に最初にして最後のベスト・アルバム『NEGOTO BEST』をリリースした4人。ラスト・ライブで彼女たちは、バンド結成から12年の軌跡を刻み込むようなステージを繰り広げた。

Photgraphy_Azusa Takada
Text_Tomoyuki Mori

Edit_Ado Ishino(E inc.)

12年の月日が魅せた圧倒的濃度のステー

客席の照明が落とされ、ステージに掛けられた幕が左右に開くと、そこには定位置に付いた4人のメンバーの姿が。蒼山幸子(V/Key)にスポットが当たり、鍵盤の弾き語りで“明日を呼んでみよう”(「インストゥルメンタル」)というフレーズを響かせると、会場は大きな歓声に包まれた。さらにドラム、ベース、ギターが加わり、エモーショナルなサウンドが生まれる。これが最後のライブ。メンバー全員、さすがに気持ちが入っている。
「こんばんは、ねごとです」(蒼山)という挨拶、シンバルによるカウントから「透き通る衝動」へ。さらに「DESTINY」「sharp♯」とアッパーチューンを続け、ぎっしり埋め尽くされたフロアの熱気を一気に上げる。
序盤でもっとも印象的だったのは、「ループ」。ねごとがデビューするきっかけになった「閃光ライオット2008」で演奏されたこの曲は、藤咲佑(Ba)の骨太のベースラインから始まるナンバー。90年代オルタナティブ・ロックの影響を感じさせる沙田瑞紀(G)のギター、アタックの強さとしなやかなグルーヴを兼ね備えた澤村小夜子(Dr)のドラムを含め、先鋭的にしてポップな特有のバンドサウンドが響き渡る。デビュー直後は拙さが目立っていた4人だが、12年という時間のなかで彼女たちはロックバンドとして確実に進化を続けてきた。この日の演奏は、技術の高さ、感情表現の濃さを含めて、これまででもっとも高いクオリティだったと思う。
蒼山幸子(V/Key)

ねごとの豊かなポップネスが伝わってきたのは、ライブ中盤で披露された「ふわりのこと」。アルバム「ex Negoto」(2011年)に収録されたこの曲は、蒼山の地元(千葉県)の家から最寄り駅までの風景を描きたナンバー。叙情的な手触りのメロディ、身近な情景と等身大の思いが込められた歌詞、歌を引き立てることを意識したアレンジなど、ねごと流のJ-POPと呼ぶべき楽曲だ。ファンの間でも人気が高く、この日もしっかりと聴き入っている観客の姿が印象的だった。

ライブ中盤で個人的にもっとも心に残ったのは、「サタデーナイト」「水中都市」だった。5thアルバム「SOAK」に収録されたこの2曲は、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がサウンドプロデュース、レコーディングエンジニアを担当。エレクトロ、ハウスなどのテイストを取り入れ、バンドとダンスミュージックを融合することによって、ねごとの音楽世界は大きく広がったのだ。特に「水中都市」は楽曲の後半から生々しいバンドサウンドに移行、シンセベースと生のドラムを軸にしたディープな音像を描き出してみせた。
沙田瑞紀(G)

そう、ねごとはメンバー自身の欲求に従いながら、新たなサウンドを果敢に取り入れてきたバンドだった。そのポイントとなったのは、4thアルバム「ETERNALBEAT」。UnderworldThe Chemical Brothersをきっかけにクラブミュージックに傾倒した沙田が、その影響を楽曲づくりやサウンドメイクに持ち込み、ねごとの音楽を大きく進化させたのだ。当時は数曲をDJ的につなぐステージを展開していたが、快楽的なダンスミュージックに“エモい”バンドサウンドを有機的に結びつけることで、ライブパフォーマンスの質も確実に向上した。その“成果”は、この日のライブにもしっかりと反映されていたと思う。
初期のライブアンセム「メルシールー」からライブは後半へ。ねごと史上もっともアグレッシブなロックナンバー「nameless」、切ない情感とダンサブルなサウンドが融合した「endless」などを放ち、オーディエンスの興奮を引き出す。ライブが終わりに近づくにつれて、”ねごとの音楽を生で体感できるのは、これが最後なんだ“という思いがフロア全体から溢れ始める。「今日が最後だなんて、実感がわきません。それってすごく幸せなラストツアーなんじゃないかなって感じてます」「今回のツアーで、みんながどれだけ本気で私たちの音楽を聴いてくれたかということがすごくわかって。ここまでバンドをやった意味って、確かにあったなと思います。出会ってくれて、ねごとを見つけてくれて、ありがとう」(蒼山)という言葉も強く心に残った。
本編ラストは「LAST SCENE」と「アシンメトリ」。「LAST SCENE」は、ベストアルバム「NEGOTO BEST」に収録された新曲だ。解散を決めたあと、”最後に1曲、ファンにプレゼントしたい”という4人の思いから制作されたこの曲は、“この先でまた会えるように/振り返らずに駆け抜けて”というフレーズが印象的なナンバー。気持ちよく駆け抜けていくメロディ、ポップな華やかさを感じさせるサウンドを含めて、未来に対する前向きな気持ちが伝わってくる。この日のライブ自体もそうだが、“解散だからといって、しんみりするのはイヤだ。自分たちの音楽を思い切り表現して、清々しく終わりたい”というメンバーの意思がはっきりと伝わってきた。
最後は「アシンメトリ」。エレクトロとロックがぶつかり合うようなアレンジ、エモーショナルなメロディなど、ねごとの独創性が端的に示されたこの曲が響くと、観客も手を挙げ、大きな歓声で応える。メンバーの楽しそうな笑顔を含め、ねごとの魅力がまっすぐに示された瞬間だったと思う。

ねごとラストライブに見た12年。“ねごと”とはなんだったのかはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

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