結成30周年を迎えたMONOの土田英生が
語る、特別企画『涙目コント』

今年で結成30周年を迎えたMONOが、特別企画第2弾として上演するのは『涙目コント』。30周年を祝して、イキウメ、カタルシツの前川知大、iakuの横山拓也、オイスターズの平塚直隆が、それぞれ台本を提供した。「笑えるだけのものではなく、オチを聞いて涙目になる」というMONOらしさ溢れるコントについて、脚本・演出を手がける土田英生に話を聞いた。
MONO結成30周年企画の第2弾
──劇団結成30周年を祝しての特別企画。今回は3人の劇作家に、それぞれ脚本を寄せてもらうという構成になっています。
 ふだんは、年に一回、本公演をしていて、基本的にぼくの脚本でひとつの物語をやっているんですが、今年は30周年で、公演をたくさんするんです。で、ちょっと変わったことをやろうと。お祭り気分でということで。
──30周年祭り、MONO祭りですね。
 そうです。秋には、長野県の上田市にあるサントミューゼという劇場で、プロデュース公演をMONOのメンバーでやります。
──舞台写真家の谷古宇正彦さんが、2016年11月に写真展を開いたところですね。
 そうですね。その後は来年の2月から3月、本公演を予定していて、そこまでを30周年と銘打っています。前回公演から4回連続で、結成30周年の記念シリーズをやろうと。『涙目コント』はその2回目になります。
──春に上演された『はなにら』に続く、30周年企画の第2弾ですね。
 ふだんどおりの公演をやっても新鮮味がない。いままで他人(ひと)の作品をやったことがなかったので、やってみようということになりました。
MONO特別企画『涙目コント』(土田英生脚本・演出、前川知大・横山拓也・平塚直隆脚本提供)の稽古風景。
笑いにこだわりつつも、MONOらしく
──これまでMONOは、三鷹市芸術文化センターで新作を上演されることもありましたが、同時にMONOの名作シリーズを、新たな配役で上演されてましたね。
 「セレクション」というシリーズ名でやらせていただいています。
──今回はコントなんですね。
 そうですね。でも、今回は、あくまでもMONOの公演なので、いままでの再演をするとかではなく、新作で。
──コントという形式にこだわられた理由を聞かせてください。
 ひとつには、短篇をやりたいなというのがありました。ぼくはもともとお笑いが好きで、本公演でも、自分のなかでは大事にしているんですけど、だんだんそういうふうには見られなくなった気がします。まわりからも。
──うーん……そうですかね。
 どっちかというと、本当のエンターテインメント系のコメディではない……ちょっとどこかに悲哀があったりとか、そういった作品をやっているので、今回は初心に返るということがひとつあります。
 もうひとつは、去年、20年ぶりにメンバーが増えたんですね。女性が3人と、男性がひとり、全部で4人加わりました。彼らにもエッセンスを体験してもらいたいという思いもありましたね。
──ある意味、原点回帰してみようということですね。では、もうひとつ『涙目コント』というタイトルの「涙目」について教えてください。
 基本的には、ぼくはいつも自分が芝居を作るとき、さっき、あんまりエンターテインメント系のコメディじゃないと自分で言いましたけど、なにかにカテゴライズされるのがあんまり好きじゃなくて、たとえば、お笑い劇団ですねと言われるのも嫌だし、社会派劇団ですねと言われるのも、なんかその……はっきりジャンル分けをされたくないなと。常に笑いと、笑いじゃないものの境界線をやりたいなというのが、ぼくのなかにはずっとあります。
 だから、よく言うのは、葬式で人が足が痺れて立てなくなってるのは、ひとつはコメディですけれども、故人との関係性とかによっては、痺れて立てない人を見て、すごい悲しくなることもありますし。だから、演劇って、観客の見方によって、その両面見えるようなものがいいなとぼくは常に思っているんですね。
 で、そうすると、ただのコントをやりますと言うと、これはもうジャンルとして限定されてしまうので、これに矛盾するものを付けたいということで、『涙目コント』というタイトルになってます。
MONO特別企画『涙目コント』(土田英生脚本・演出、前川知大・横山拓也・平塚直隆脚本提供)の稽古風景。
築50年のマンションの屋上で起きるドラマ
──今回は築50年のマンションの屋上が舞台ですが、これを決めたのは土田さんですか?
 そうなんですけど、これは取材的には面白味のない答になっちゃうかな。今回、他人(ひと)に台本を依頼しようと決めて、いろいろ浮かんだんです。受けていただけるかどうかは別として、コントも書いてらっしゃる先輩方にご依頼しようかとも考えたんですが、それよりも自分より若くて、ふだんから面白いなと思っている方にお願いしようと考えて、今回の3人に個人的に連絡しました。で、前川知大さんから「短いものだったら、いままで書いたものが何本かありますよ」と提案をしてもらって、送っていただいたなかに「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」があって、これを使わせてもらおうと決めたところから始まったんです。
 この作品の設定が屋上なんですよ。その後で、横山さんと平塚さんに書き下ろしてもらうことになり、じゃあ、なんかで縛りをつけたほうがいいということになって、全部屋上にしちゃうことになりました。
──屋上には虚構の劇団の鴻上尚史さんもこだわっていらして、「建物の中なんだけど外でもある」という面白い場所で、休み時間や授業をさぼって高校生が上がっていっては、いろんなことを夢想する自由な空間として描かれたりしています。
 屋上って、たぶん、日常でありながら非日常でもあるんですよね。しかも、高いところから、外を見ることができますから、自分のことも含めて俯瞰できる場所でもある。
──視点が高いところにある。
 ドラマは起こりやすいですよね。舞台を作るときに、どういう状況に置いたら、この人物たちは内面を語るんだろうみたいなことを、ふだんから考えるんです。そういうときはだいたい事件を起こしたりとか、ちょっと特殊な場所にしたりとかするんですが。屋上という場所は、大きな事件がなくても、屋上に出ることが、ふだんのぼくらの生活のなかでは「ちっちゃな非日常」なんで、まあ、そのへんの魅力は感じてました。けっこうあるんですよ、北村想さんの作品にも『屋上のひと』という戯曲がありますし。
──『屋上のひと』は、不倫している主婦とか、露出狂とかが、屋上へやってきては、ふだんは人目に見せない欲望をさらしていく話でした。
 そうでしたね。話が変わっちゃいますけど、屋上って高すぎると……いまのタワーマンションの上になっちゃうと、非日常すぎるんですよ。あんまり下界とつながってない。かといって、2階や3階だと屋上感がない。それで、今回は6階にしてるんですけど、それぐらいがちょうどいいというか。
──築50年というリアリティもある。
 だから6階建ての屋上という、ぎりぎりのラインを選んだということはあるかもしれないですね。
──そこは成功していると思います。
MONO特別企画『涙目コント』(土田英生脚本・演出、前川知大・横山拓也・平塚直隆脚本提供)の稽古風景。
これからのMONOはどこへ向かうか
──最近のMONOの舞台は、社会的な問題がよりクローズアップされて取り入れられる傾向があります。もちろん、時代を近未来にしたり、ユニークな設定にすることで、深刻なんだけど、同時に距離を置いて見られるような舞台になっていました。結成30周年を経て、これからのMONOはどちらの方向へ進んでいくんでしょう。
 ぼく自身は、たとえば、自分が作る作品とか、劇団が進む方向を、積極的に何か狙いがあって進んできたということはいっさいなくて、ただ逆に、やらないことははっきりしているというか。
 すごく小さいことですけど、たとえば、ぼくらは30年やってますけど、公演のTシャツとかを販売したことがないんです。MONOはぼくが21歳のときに旗揚げしたんですけど、たとえば、あるブランドが、MONOの芝居が面白くて、コラボしてTシャツを作りたいと言ってきたら、そういうTシャツを売っていただくのはけっこうなんですけど、自分でTシャツ作って、自分で売ってるのが気持ち悪いんですね。そういう、まわりがやっていても嫌だなということだけは避けながら……。
──そういうこだわりがあったんですね。グッズは作っていらっしゃるんですけど……。
 だから、グッズも芝居に関するものしかないです。DVDとか、本とか、パンフレットとか、公演に関するものはありますけど。それは本当に瑣末な例ですが、とにかくその場その場で、嫌なことだけはやらずに、ちょっとこっち行ってみようか、あっち行ってみようかって思いながら30年やってきた感じなんですね。だから、たぶん、この先も大きく変わることはないだろうと思いますけれども、メンバーも増えましたし、それでどういう化学変化が起きるのかなあと楽しみにしている感じですね。
MONO特別企画『涙目コント』(土田英生脚本・演出、前川知大・横山拓也・平塚直隆脚本提供)の稽古風景。
30年という時間の蓄積
──これからどんな化学変化がMONOに起きるんでしょうか。
 この30年間、アンサンブルみたいな、あるルールみたいなものはやっぱり劇団のなかにあって、それはぼくが外で仕事するときにはできないもの。それが実現できるのが劇団の魅力です。ふだんは自分が戯曲を書くので、書くときからそこを想定して書いているんですけれども、今回はそれができないですよね。そこで、どれくらい自分たちの流儀が、他人(ひと)の作品でもちゃんと活かせるのかを、ぼく自身も楽しんで……ちょっと苦しんで稽古してますので、そのへんを見てもらいたいです。
 これがうまくいけば、今後、MONOの本公演として別の劇作家の作品をやることがあるかもしれません。チェーホフとか、シェイクスピアをやることがあるかもしれませんので、その実験の第1弾という感じですね。
──MONOのアンサンブルで、チェーホフの一幕劇などをいくつか見てみたいです。
 じつは結成20周年のときに、チェーホフのヴォードヴィルは書き直してやってるんですよ。10年前ですけど、AI・HALL(兵庫県伊丹市)で特別企画をやることになって、「結婚申し込み」などの4本を翻案して書き直して。当時は男性5人の劇団だったんですが、その5人でやりました。
──「結婚申し込み」には、女の人も登場しますよね。
 それも男性が演りました。ふだんは、ぼくはそういうことをあんまりしないんですけど、そのときも20周年でお祭りだからといってやりましたね。
──提供していただいた3つの脚本ですが、劇作家によっては、上演するさいにリライトされる場合があります。俳優に合わせて口調を直したりとか。土田さんはどうされていますか。
 少しはしてます。ぼくは劇作と演出を兼ねることが多いですが、どちらかというと作家寄りだなと思っています。だから、いままでは他人の作品を演ったときに、脚本を直しちゃってたんですよ。つながらないなと思うと、自分で書き直しちゃうみたいなことをしてて。
 でも、自分の台本を、外部の、たとえば劇団に書かせていただくと、大事にして、一言一句変えずにやってくださるんですよね。だから、今回はけっこう踏ん張って、変えないようにしてます。役者から「ここ、ちょっと、やりにくいんだけど」って言われたとき、ここに3行ぐらい入れたらつながるなとか思ったりするんですけど、今回はそれをしないで闘ってます。
──プロローグはラジオの音で始まって、エピローグもラジオの音で終わりますが、ラジオへのこだわりみたいなものはありますか。声の出演でもいいから、MONOの劇団員全員を出したいとか……。
 そういう物理的な理由もありましたが、たぶん単純に、RCサクセションの『トランジスタ・ラジオ』を連想したんでしょうね。屋上でラジオというイメージが勝手に出てきちゃったんで、それで屋上でラジオを聞いて、泣いてる人から始めたいなみたいな……。
──深夜や明け方に、ラジオから、録音ではなく、人の生の声が聞こえることで、なぜか励まされることがあります。結成30周年第2弾の『涙目コント』の上演を、とても楽しみにしています。
MONO特別企画『涙目コント』(土田英生脚本・演出、前川知大・横山拓也・平塚直隆脚本提供)のチラシ。
取材・文/野中広樹

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