『Little Women ~若草物語~』名作
文学が原作のミュージカルに挑む、朝
夏まなと&下村実生を直撃

19世紀半ばの南北戦争の時代に、家族で支え合って生きる四姉妹の姿を生き生きと描いたアメリカ小説『若草物語』。『続・若草物語』と合わせ、ブロードウェイ・ミュージカルとしてお目見えしたのが2005年のこと。その『Little Women ~若草物語~』が、長女メグに彩乃かなみ、ヒロインである次女ジョーに朝夏まなと、三女ベスに井上小百合(乃木坂46)、四女エイミーに下村実生(フェアリーズ)というキャスティングで実現する。朝夏まなとと下村実生に、作品への意気込みを聞いた。
ーー名作文学のミュージカル化となります。
朝夏:題名は知っていましたが、読んだことがなくて。アニメを見たような記憶もあるんですが。
下村:私も知らなくて、母に「出演が決まった」という話をしたら、「有名な作品よね」と。ファンの方からも、「『若草物語』がすごく好きだから、出演がうれしい」と言ってくれる人がいました。そこで初めて、有名な作品なんだなって。
朝夏:今回の脚本を読むと、描写がすごくおもしろくて。四姉妹それぞれ、そして、みんなのいる情景がすごくイメージしやすくて、引き込まれますね。
朝夏まなと
下村:エリザベス・テイラーがエイミーを演じている映画版(1949)を見ましたが、この時代の女性は、仕事に就くよりも結婚して……という感じなんだなと。私はそういう時代をあまり知らないので、こんな時代もあったんだなと思いました。映像を通じて、エイミーのイメージもつかめたように思います。
朝夏:映画の中で、ジョーってこういう人かもとすごく思えたシーンがあって。雪が降っている中、おうちに帰って来たときに、柵を越えて飛び降りようとして失敗するんです。それを他の三人が見ていて、笑う。そうしたらジョーはもう一回やり直すんですよ。私自身、やり直すタイプなので、「わかる!」と思いました(笑)。悔しいんですよね、失敗したことが。私とジョーは似てるというか、共感できる女性だなと感じました。
彼女が生きていた時代では、ジョーは先進的な女性ですが、ファンの方から「ジョーに憧れていた」「ジョーみたいになりたかった」というお声をいっぱいいただいているので、四姉妹の中で、彼女が一番、今の時代の女性が共感できる人物なんじゃないかなと思うんです。憧れるのは、彼女が情熱をもって突き進む姿や意志の強さ、逆境に負けないところとか。そして、家族のために作家になりたいという夢をかなえるところとか、そういうところなんじゃないかなと。生き様がすごくかっこいい女性ですよね。そういうところをもっとふくらませていって、この時代、この年代の香りをお客様に感じていただけたらと思います。
下村:私も三兄弟の末っ子なので、エイミーに近い部分があるのかなと思います。兄二人とは仲が良いですが、ケンカすることもあったり、兄にはできて私はできないことがあってふてくされたりということもよくあったので、似ているなと思いました(笑)。
下村実生
ーージョーは物書きですが、朝夏さんは宝塚時代の『Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』、『王妃の館-Château de la Reine-』を含め、作家役はこれで三度目ですね。
朝夏:女性の作家は今回が初めて(笑)です。自分でも、ちょっとした文章を書く際、「これいいかも」と思って自画自賛しているときはありますね(笑)。作家って、イメージをふくらませる職業じゃないですか。実生活に何かあったことでも、イメージをふくらませて話にする。台本からイメージして役を作るという意味では、役者という職業にも共通するところがあるのかなと思います。物書きという魅力的な役を三回も演じられてうれしいです。
ーー四姉妹の中で、ジョーとエイミーの関係が一番緊張感がありますよね。ジョーの書いた原稿を、エイミーが暖炉で燃やしてしまったり。
朝夏:ひどいですよねえ(笑)。
下村:最初読んだとき、衝撃的でした。何で燃やしちゃったの? と思って。でも、お姉ちゃんが好きだからこそ、嫉妬というか、お姉ちゃんの一番大切なものを壊してやれ~という感じだったのかなと。
朝夏:そんなことするからエイミー、池に落ちるんだよ(笑)。
下村:でも、ジョーお姉ちゃんはちゃんと助けてくれるから。やっぱりお姉ちゃんだなって、じーんとしました。
朝夏:氷が割れて池に落ちるなんて、やっぱり人には悪いことしちゃいけないってことですよね(笑)。実際、私には弟がいて、子分みたいな感じで、「ついてこ~い」って言うと訳もわからずついてくるみたいな。でも、宝塚に入る15歳までしか一緒にいなくて、そこからは宝塚に入ったので、女の園ですからね。お姉ちゃんみたいな人がいっぱい、妹みたいな人がいっぱいの、大家族みたいな感じでした。
(左から)下村実生、朝夏まなと
ーー今回の舞台が初顔合わせですね。
下村:朝夏さんにお会いするのは今日で二度目なのですが、本当にお姉ちゃんみたいで、リードしてくださるので、すごく安心感があります。
朝夏:まだ20歳で、かわいいのに、すごくしっかりしているなと思います。宝塚でも18~20歳くらいの子と接してきましたが、実生ちゃんは抜群にしっかりしている感じ。ちゃんと自分の意見をもっていて、受け答えもしっかりしていて、でも、お茶目でかわいくて。きっとまだ見ていない部分もいっぱいあるだろうから、これから四姉妹みんなでいっぱい楽しい時間を過ごしたいですね。実生ちゃんがどんな顔をもっているのか……。
朝夏まなと
下村:ワル実生とか(笑)。
朝夏:(笑)楽しみです。本気でケンカしたいですね。
下村:ケンカのシーンの後、本気で気まずくなったらどうしよう(笑)。
ーー下村さんはこれがミュージカル初挑戦になります。
下村:舞台自体三度目、ミュージカルは初めてです。音楽が好きなので、ミュージカルをやってみたくて。先輩方が大勢いらっしゃるので、吸収できることがたくさんあると思いますし、ボイストレーニングでも、これまでとは全然違う経験をしているので、たくさん勉強して、これからの自分に生かしていけたらいいなと思っています。声の出し方、響かせ方、共鳴のさせ方の大切さといった基礎を教わっていますが、普段のグループでの活動においてはけっこう激しい踊りをしながら歌うので、歌に専念できるのが自分にとってはありがたいです。ミュージカルのダンスもまた新しい経験ですし、ドレスも長かったりして、大変なことはいっぱいあると思いますが、自分が成長できることもいっぱいあるので、頑張りたいです。グループでは、みんなで歌うことは少なかったりするので、今回の四姉妹の歌のような、きれいな四重唱の経験はないんです。すごく素敵な歌になるんだろうなと思うと、とても楽しみです。
下村実生
朝夏:今回の曲、めちゃくちゃ難しくて。複雑で、ここに音が行くんだ~と思うこともありますが、それがそのときのジョーの心情をすごく表しています。音楽記号が沢山ついているところでジョーの怒りの感情が表現されていたり、いろいろなジャンルの曲があって、激しい歌もあれば楽しい歌もあるし、バラードもあるし、本当に一人の方が書いたのかなと思うくらい多様なんです。そのときそのときの登場人物たちの心情を表現しているんだなと思うと、とてもしっくりくる感じの曲ばかりなので、早く自分のものにした上で芝居をしたいなと思います。
下村:ミュージカルは、セリフから急に歌に入るというイメージがあるのですが、経験がないのでそのあたりをどうやって表現するのだろうと……。でも、気持ちをこめて歌いやすいのかなとも思います。普段はいきなり曲だけを歌っているので。ミュージカルだと、お芝居した流れで感情が高まったときに歌う感じですよね。楽しいときは楽しい気持ちで歌えるから、感情の流れに乗りやすいのかなと思います。
ーー抱負をお願いします。
下村:初めてのミュージカルで緊張していますが、先輩方の背中を見ながら、自分にできることからちゃんとやっていって、いろいろなことを吸収して、頑張りたいと思います。
朝夏:今の時代に失われつつある、家族間の情だったり、隣のおうちの人とのコミュニケーションであったり、そういった、すごく大事なこと、失ってはいけないものがいっぱいつまった作品です。出演者は総勢十人、濃密な空間になると思います。素敵な音楽とすばらしい脚本で、私たち生身の人間が体現する『若草物語』の世界で、セリフ以上のもの、歌以上のものを伝えられるように作っていきたいと思いますので、ぜひ観にいらしてください。
(左から)下村実生、朝夏まなと
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=荒川 潤

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