2019年7月20日、都内で行われた記者会見時の宮迫博之

2019年7月20日、都内で行われた記者会見時の宮迫博之
ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第140回 吉本騒動 あのー、この前の吉本の岡本社長の会見凄かったですよね。あれ、松本さんにやれって言われて仕方ないからやっただけで、何が問題とされてるかよくわからないままやってしまったって感じでしたよね。コンプライアンス、コンプライアンスと言いながら、一番言っちゃいけない「冗談でいいました」という台詞を言ってしまうあたり準備が全然できてなかったんだと思います。想定される質問の範囲内なのだから、聞かれる前から「私としては冗談のつもりだったのだが、立場の差を考えておらず、一方的な抑圧として機能する以上はパワハラでしかなかった。」とか最初から発言するように準備しておけばいいのに、なんだかグダグダやっていて、本当にあわてて会見開いたんだなというのがよく伝わる会見でした。
 闇営業問題の発覚から、反社グループから謝礼をもらっていたことの公表、宮迫さんと亮さんの会見、岡本社長の会見と続く流れは本当にグダグダで、税金が投入される公的事業に関わる企業としてどうなるかという印象になってしまうのは仕方がないことでしょうね。
 この一連の流れの中にはいくつかのポイントが存在します。入江さんの仲介による反社グループ相手の闇営業。吉本自体が入江さん経由で反社グループがスポンサーであるイベントにタレントを出していたということ。入江さんに反社グループを紹介したと思われるエイジエンターテイメントというイベント会社・広告代理店の存在。宮迫さんが嘘をついて保身をはかっていたこと。岡本社長のパワハラに代表される吉本の古い体質。所属芸人の会社への不満の噴出。それぞれ別の話ではありますが、トータルとしては「あの会社は変」と多くの人に受け取られる結果になってしまったのではないでしょうか。
 宮迫さんたちの嘘についてなのですが、一般人ですら「謝礼もらってないわけないだろう」と思っていたのに、会社がすんなり信じるのは変な話です。あえて追及せずに、そういうことにしておきたかったのではないのかなという気もします。入江さん経由で反社グループから金をもらったという点では、闇営業に参加した芸人も吉本も変わりはないわけで、そこを公にせずに早期解決を図りたかったから、わざと騙されたというふうに見る人が出てくるのは自然なことでしょう。とわざわざ騙されて、そういうことにしてたのに、良心の呵責に耐えかねた亮さんが本当のことを言いたがったら、それは困るし、腹が立つでしょうと想像してしまいます。せっかく政府がらみの大事業に関わろうとしてるのに白紙になりかねませんから。まあ、ただのゲスの勘繰りだったらいいんですが。
 そういえば、20年ぐらい前に当時の東京吉本の若手芸人さんについて周囲の人からきいた話があります。その芸人さんに取材しようと雑誌が吉本にコンタクトをとっても、別の芸人さんを勧めてきて差し替えられてしまうという話です。マネージャー間の力の差で力が強いマネージャーの抱える芸人に仕事をとられてしまうという話ですが、実力で勝ち取ったような仕事も会社の意向で奪われてしまうような目にあっている芸人さんたちがいるとするならば、怨みもあるだろうし、ファミリーとか言われてもシラケるだけでしょうね。
 入江さんが何の会見もないままに早々と契約解除されたり、ワイドショーが入江さんに全然取材にいかないのはおかしな話だと感じている人も多いようですね。普段は相手の気持ちを無視して一方的に押し掛けるようなやり方をするワイドショー関係が、入江さんには全然寄り付かない。それを不思議な話だと思っている人は大勢いるでしょう。普段だったら、直撃取材とか言って家の前に押し掛けて、大勢で取り囲んで攻め立てるのに、なんなんでしょうね。急速にワイドショーのリテラシーが向上したのだということであればいいことですけど。まあ、「吉本に都合の悪いことを言ったら困るから、何も言わないように因果を含めて辞めさせた。」「テレビ局も人気タレントを使わせてもらえなくなったら困るから忖度してる。」みたいな感想を抱く人の方が普通ですよね。
 なんというか、吉本の説明に嘘があろうがなかろうが、やり方が雑なんですよ。嘘をついてないなら、もっと情報を開示していった方がよかったし、嘘をつくなら、すぐ解雇とかじゃなくてシナリオをもっと練って突っ込まれないようにしないと疑われるだけだし。雑すぎてグダグダなんですよね。まあ、嘘をつくのが上手い企業というのは困るんですが、
 松本さんに言われたからって急に雑な会見をするのも、宮迫さんの処分の解除の理由があやふやなのも、松本さんに対する「気持ち」で動いているからなんでしょうけど、巨額の税金が投入されるプロジェクトに参加する企業がそんなことでは駄目ですよね。芸人との書類が存在しない契約形式とか、ギャラの打ち明けが不透明とか、岡本社長のパワハラと見なされる発言を含めて、大昔の個人商店の感覚のまんまで動いていて、今やってるビジネスの規模と釣り合ってないし、時代に適応できてないんですよね。色々なことがありましたが、全ての結論はそこに行き着きます。
 あと、吉本自体に非はないのですが、ヤクザと関係してたことを理由に契約解除となった島田紳助さんが騒動について発言してるのもビックリ。どう考えても、一番発言しちゃいけない人でしょう。なんか、休養してる間に感覚がズレてきちゃたんですかね。この騒動の中、反社から金をもらった宮迫さんが反社と付き合っていた紳助さんと直接会ってた話を出しちゃうのとか、本当にダメダメだなと思います。
 最後になりますが、今回の一連の報道の流れで一番個人的によかったのは、『ガキの使い』での岡本さんのキャラが本人の性質をデフォルメしたものだったんだなということがわかったことです。なんとなく合点がいきました。
(隔週金曜連載)
写真:2019年7月20日、都内で行われた記者会見時の宮迫博之
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