【インタビュー】Chicago Poodle、デ
ビュー10周年と黎明期を語る_第一章
「3人で続けることを受け入れてくれ
た」

Chicago Poodleが7月24日、メジャーデビュー10周年記念ベストアルバム『10th Anniversary Best』をリリースする。同2枚組ベストアルバムよりDisc2収録の新曲「決意」がTBS番組『ひるおび』の7月度エンディングテーマに起用されるなど、既発曲やリメイク曲はもとより、最新の極上な旋律たちもベストアルバムに特大の華を添えている。
10周年のアニバーサリー企画としてBARKSではChicago Poodleのヒストリーを3回にわたってお届けしたい。世代を超えて愛されるピアノポップを生み出し続けてきたChicago Poodleの原型が結成されたのは、いまから19年前の2000年。当時、辻本(B)はバンドに在籍していないが、3人は同じ高校に通う同級生でもあった。高校時代は洋楽ハードロックなどもカバーし、シャウトしていたという花沢(Vo&Key)、学祭でTHE YELLOW MONKEY等のカバーをしていたという山口(Dr)、ヴィジュアル系に傾倒し「てっぺんをとってやろう」と野心に燃えていた辻本。連載第1回目の“インディーズ編”では、意外な過去や笑えるエピソードが明らかにされることになった。Chicago Poodleの音楽スタイルが確立された青春期の3人に迫る。

   ◆   ◆   ◆

■高校の文化祭にはお互い出ていました
■3人とも別のバンドをやっていたんです

──今回は、インディーズ時代のヒストリーを根掘り葉掘り聞いていきたいと思います。その前にメジャーデビュー10周年ということで、どんな気持ちで迎えるアニバーサリーイヤーですか?

花沢:僕ら、デビューする前のインディーズ期間が10年ぐらいあったんですよ。基本的に昔から曲が先で、歌詞はあとからつけるんですけど、メジャーデビューしてからの10年間はより多くの人に曲を届けたいと思うようになって、曲に関してはサビの部分をより考えるようになったという変化はありますね。ただ、気持ち的にはシングル「ODYSSEY」(2009年発表)でデビューするタイミングで締め直すというのはあったにせよ、劇的な変化はなく、3人ともそんなに心境が変わってはいないと思うんです。東日本大震災のときは僕らも少し立ち止まったりしましたが、やっぱり音楽が好きやと思ったし、音楽を通していろんなことを伝えたいという気持ちは変わらないですね。

山口:メジャーデビュー5周年を迎えたときは“もう5周年か?”と思ったんですけど、さらに早く月日が過ぎていくのを感じて、“もう10周年?”って。アッという間に感じるぐらい駆け抜けてきたんだなと思っています。それも僕らの音楽を好きでいてくれて支えてくれる人たちあってこそだと思っているので、感慨深いし、あらためて“Chicago Poodleと出会ってくれてありがとうございます”という気持ちです。
▲花沢耕太 (Vo&Key)

──Chicago Poodleの音楽はバーンと背中を叩かれるというより、そっと押してくれるというか、いろんな人生の局面で寄り添ってくれるようないい曲を作ってきたバンドだなと思います。

山口:僕ら自身の性格もイケイケではないので、おっしゃってくれたように音楽がみなさんの日常に寄り添ってくれたらいいなって。ちょっと嫌なことがあったりしたときや、月曜日、通勤中に聴いて「また1週間頑張ってみようかな」とか。そんなふうに思ってもらえるような音楽を目指して作ってきたので、そう言っていただけるのは嬉しいですね。

辻本:10周年って考えたら生まれたばかりの赤ちゃんが小学生になっているわけなので、インディーズ時代から応援してくださっている方のお子さんが高校生になって「一緒にライブに来たよ」って言ってくださると、最初は自分たちのために音楽をしていたのが、聴いてくださる方の比重がどんどん大きくなってきたのを感じます。それこそインディーズ時代はいろいろな方の協力も得て必死で走ってきたんですが、デビューしてからの10年は自分たちの足で立って、メンバー同士でアイディアを出し合ったり話す機会も増えましたし、応援してくださる方に少しでも還元していきたい気持ちがどんどん強くなっていきましたね。花沢、山口が言っていたように、やっていることはそんなに変わらないかもしれないですけど、気持ちの面ではいい変化があったと思っています。

──10周年記念ベストアルバム『10th Anniversary Best』にはインディーズ時代の楽曲や新曲も収録されていますが、どんな3人の想いがあってこういう形になったんですか?

花沢:インディーズ時代の曲、「Hello」「愛燦燦」「one」はファンの中でも人気のある曲を選んでリアレンジして“10th Anniversary ver.”として収録させてもらいました。新曲の「春風トレイン」「決意」「One Voice」は単純に新しい曲も聴いていただきたかったんです。“Disc1”は、このタイミングでChicago Poodleを知ってくださる方もいらっしゃると思うので10年間の代表曲などヒストリー的な選曲になっていて、“Disc2”はこれまで聴いてくださったお客さんも納得していただける内容にしたいと思いました。

──初回限定盤特典DVDにはライブ映像やミュージックビデオ、思い出の地で語るインタビュー映像などが収録されていますが、レアな話も?

花沢:そうですね。それこそコアな話というか、僕たちの本音が出ていてChicago Poodleの10年、そして未来について話しています。

──まさにスペシャルな記念盤ベストですね。では、いよいよ知られざるインディーズ時代を振り返っていただきたいと思います。Chicago Poodleは同志社大学の仲間で結成されていますが、そもそも一緒にやろうと思ったのは?

山口:まず、いまのメンバーになったのが2006年なんです。

花沢:2000年の結成当初は5人編成のバンドだったんですよ。

山口:当時はキーボーディスト、ギタリストがいてベーシストも辻本くんではなかったんです。そこから紆余曲折あって、いまに至る。
▲『10th Anniversary Best』初回限定盤

──ぜひ、19年前の話から教えてください。

花沢:僕は高校生のときからオリジナル曲を作っていて、大学に入ったら曲を形にしたいと思っていたので、オリジナルをやるバンドを組みたかったんですね。当時から山口がドラムをやっているのは知っていたので、授業中に「バンドやりたい」っていう話をして。

山口:そう(笑)、授業中にね。

辻本:2人は高校のとき、普通の友達だったらしいです。一緒にカラオケに行くような。

花沢:カラオケはよく行ってましたね。

──ちなみに3人とも同じ高校だったんですか?

辻本:一緒だったんですけど。

花沢:辻本とはクラスが一緒になったこともあったんですけど、全然しゃべったことがなかった。

山口:辻本は陸上部だったので、接点なかったんですよ。

辻本:バンドはやっていたんですけど、僕は陸上仲間とヴィジュアル系の音楽をやっていたんです。

花沢:高校の文化祭にはお互い出ていましたね。3人とも別のバンドをやっていたんです。

辻本:山口がドラムを叩いているのはなんとなく知っていたんですけどね。花沢もドラムやってなかったっけ?

花沢:ドラムも叩いていたけど、ボーカルもやっていたかな。

──いまとは全然違うジャンルの音楽やってたんですか?

花沢:はい。僕は洋楽のコピーやっていて。ハロウィンとか(笑)。

山口:ハロウィン!? あれ、そっちやってた?

花沢:歌ってましたね。

──ジャーマンメタルとは意外(笑)。

花沢:と同時に、LUNA SEAの「I for You」もやったり。

辻本:流行ってたな。ドラマ『神様、もう少しだけ』の主題歌で。

山口:ハロウィンとLUNA SEAってどんなバンドや(笑)。

花沢:まぁ、文化祭バンドなので、それぞれが好きなバンドの曲をコピーするっていう感じだったと思うんですよ。山口はTHE YELLOW MONKEYとかやっていて、辻本くんはヴィジュアル系をやっていました。

辻本:ROUAGEとかLaputa、La’cryma Christiとか。
■出てみてあかんかったら、その程度かなって
■そうしたらグランプリを獲ったんですよ

──3人それぞれのバンドキッズ時代があったわけですね。

花沢:ええ。で、大学に入って本格的なオリジナルバンドを組もうと思って杉岡(秀則)っていうギタリストと組んだのがChicago Poodleの始まりです。じゃあ、メンバーを集めようって山口に声をかけてキーボードには原田(直弥)、ベースは最初、辻本じゃなくて三上(れいじ)の5人編成だったんですよ。オリジナルと並行してエアロスミスとかボン・ジョヴィのコピーとかもやっていて。

山口:当時の花沢の曲はどちらかというとアメリカンロックテイストだったんですよ。最初はピアノを弾かずにボーカルに専念していたし。

花沢:そうだね。最初はバンド名もChicago PoodleじゃなくてHORIZONだった。

山口:杉岡がつけたバンド名ですけど、なんか英語の教科書みたいやなって(笑)。

辻本:『NEW HORIZON』(笑)。

花沢:杉岡の中ではこだわりがあったんですよ。“地平線に沈むのも浮くのも僕ら次第だ”って目を輝かせながら考えてきたバンド名なんですけど、よく考えたらダサいなって(笑)。

山口:なので、すぐ変えました。当時は僕ら、MR. BIGが好きやったんですよ。「COLORADO BULLDOG」という彼らの曲があるので、もじってChicago Poodleにしたんです。

花沢:地名と犬つながりでいこうって(笑)。
▲山口教仁 (Dr)

──そして初のオリジナル曲もやるバンドがスタートしたと。

山口:でも、メンバー5人ともクセのカタマリみたいな性格やったんで、けっこう衝突しまして。

花沢:よく喧嘩しましたね。

辻本:個性が強かった。三上くんはメタル好きなむちゃくちゃテクニカルなベーシストで。

花沢:曲作って譜面渡しても勝手に変えてくるんですよ。「このコードで弾いてほしいんだけど」って言っても「こっちでええやん」って全然違うコード進行で弾きだす。で、クビにしようかなと(笑)。

山口:その前にギターの杉岡とウマが合わなかったキーボードの原田が抜けたんです。三上をクビにして辻本くんが加入したのが2002年ですね。

──4人体制になって花沢さんが鍵盤を弾きながら歌うようになったのは、ひとつの転機だったんですね。最初からプロを目指していたんですか?

花沢:いや、定期的にライブハウスに出るぐらいで趣味の範囲でしたね。

──辻本さんはChicago Poodleのライブを見ていたんですか?

辻本:いや、見ていなかったです。共通の知り合いから「ベース探してるらしいぜ」って言われるまで僕は、Chicago Poodleの存在をよく知らなかったんです。当時の僕は「ヴィジュアル系で食っていく!」っていう覚悟で、髪も縮毛矯正して長くして、コンタクトしていい感じに仕上がっていたんですけど(一同笑)。

辻本:相方と「一緒にてっぺんとろう!」って意気込んでいたんですけど、ある日、そいつに呼び出されて「俺、明日からパチプロになるわ」って(笑)。

──ははははは!

山口:えらい道が離れたな(笑)。

辻本:当時の僕らは、お客さんが少ない中でライブをしていて、あるときステージにバーンと出ていったらお客さんがゼロでPAさんと照明さんしかいなかったりとか(笑)。

花沢:なのに、ちゃんとライブの告知したらしいですよ(笑)。

辻本:そう。誰もいないのに“ここで告知します! 次のライブは◯◯でやります。ジャーン!”みたいな(笑)。

山口:まぁ、大事なことですよね。
▲『10th Anniversary Best』通常盤

辻本:「てっぺんとる」って思っていただけに傷心状態で、そんなときにChicago Poodleのことを聞いて「どんな曲やってるの?」って自主制作のCDもらって聴いたら、僕がやっていたバンドとは雲泥の差で、ちゃんとスタジオに入ってエンジニアさんつけて録ってるし、当時僕は洋楽を聴いていなかったんですけど、そういうテイストが入っていて新鮮だったんです。「このバンドでベース弾いたら面白いかもな」って。スタジオにいるっていう噂を聞きつけたので勝手に行って勝手にベース弾いたら、知らない内にメンバーになっていました(笑)。

山口:ははは。1回スタジオで合わせようって話はしていたんですよ。

辻本:加入したらChicago Poodleはお客さんもしっかり呼んでいるし、意識高く活動していたんですよ。彼らはプロになるとか具体的に考えていなかったと思うんですけど、僕的には花沢の作る曲や歌、メンバーの個性も含めて「いけるんちゃうかな」って。で、コンテストに応募したんだよね?

花沢:そうだね。

辻本:スタジオにコンテストの張り紙がしてあって。

──それが2003年に京都で開催された『全国学生音楽コンテスト』ですか?

辻本:そうですね。タイミングもよくて、ちょうどレコーディングをしていたときだったので、音源を送ったのを覚えていますね。

花沢:その時点でも僕らは“プロになるぞ”って強く思っていたわけではなかったんですよ。まわりが就活する中、“どうしようかな”って個々では思っていただろうけど。で、1つの区切りとしてスタジオの『第1回京都学生音楽祭』のポスターを見て、「コンテスト受けてみようぜ」って。

辻本:実力を試すような感覚で。

花沢:出てみてあかんかったら、その程度かなって。そうしたらChicago Poodleがグランプリを獲ったんですよ。

──いまに繋がる大きな出来事ですね。

辻本:認められたという意味でも大きかった。

花沢:それでいまの会社のレーベルからインディーズデビューさせてもらったんです。

辻本:優勝したのでCDを出してみようっていうことになって作ったのが『White mini album』(2004年発表)ですね。

山口:そうしたらラジオ局の方がパワープレイにしてくださって。

辻本:まわりの人から「いいね」って言われるようになって、しかも何万曲も聴いているラジオ局の方から褒められたので自信に繋がりましたね。
■以前はピアノよりギター色が
■強い曲もありましたからね

──ちょっと話は戻るかもしれないですが、最初は洋楽ロックのカバーもやっていたわけですよね。カバーと日本語のオリジナル曲の意識の違いがあったんでしょうか?

花沢:ああ、インディーズ初期はオリジナルも英語が多いんですよ。

辻本:サビが全部英語やったりね。

花沢:そう。エアロスミスをやっていたせいか、英語のほうがしゃがれたいい声が出る気がしていたんです。でも、ディレクターやプロデューサーに「日本人に伝えるんだから日本語で」ってアドバイスされて、やっぱり日本語は大事だなと思ったのもあって、どんどん日本語の割合が多くなったんです。

辻本:あと、当初は杉岡くんというギタリストがいたので、いまみたいなアレンジじゃなくギターロック的な曲もあったんですよね。

──ということはChicago Poodleの音楽性がいちばん変化したのはインディーズ時代なんですね。

花沢:そうですね。

山口:2006年に杉岡がバンドを抜けるんです。“3ヶ月連続ライブ”が決まっていた矢先に。
▲辻本健司 (B)

──そ、そうだったんですか?

辻本:しかも「今日やめる」って。

山口:うん。「本日をもちまして私、杉岡はChicago Poodleを卒表したいと思います」って(笑)。

辻本:脱退じゃなかったっけ?

花沢:卒業って言ってましたね(笑)。

──3人にとっては晴天の霹靂?

辻本:いや、やめたいとか、いろいろ悩んでいたのは知っていたんですけど、まさか、そのタイミングで言い出すとは。

山口:彼はバンドと同じぐらい勉強が好きなんですよ。いまは大学で講師やっているんですけど、どっちか諦めなきゃいけないっていうときに勉強のほうを選んだっていう。

辻本:で、「ライブどうするの? 困るわ」って言ったら、「僕の人生の責任、君たちがとってくれるの?」って(笑)。

──ははは。“3ヶ月連続ライブ”を決める前に決断してほしかったですよね。

花沢:しかも、そのライブは杉岡がお金に困っていたから開催を決めたんですよ。でも、やめるって言い出したのが“3ヶ月連続ライブ”初回の10日ぐらい前で。

辻本:1回目だけ出たんだっけ?

山口:2回目も出たよ。「出てくれ」って言って。

花沢:3回目のライブが3人だけ。かなりドキドキしましたね。

──当時、新たなギタリストを迎えるっていう選択肢は?

山口:なかったです。とりあえずサポートギターを入れてっていう考えでした。

辻本:ライブをするにはギタリストが必要やなっていう話にはなったんですけど、それが新しいメンバーという方向ではなかった。

花沢:人間関係を作るのがたいへんやなと思ったので。ライブが決まっていたから、3人でやらざるを得ない状況だったのが逆に良かったのかもしれない。いま振り返るとそこで立ち止まっていたら、いろいろ考えて一歩踏み出せなかったかもしれないですね。

──ギターロック的な曲もあったということですけど、サウンドやアレンジ的な変化も?

花沢:その前はピアノよりギター色が強い曲もありましたからね。ただ、ウワモノ楽器としてピアノとギターがあるんですけど、基本的に楽曲はずっとコードで作っていたので、いわゆるギターリフで押していくような曲がなかったことも大きいかもしれない。だから、ギターがなくても成立するなって思えたし、まあ、お客さんの後押しが一番でしたけどね。3回目のライブのときのお客さんの反応からも「杉岡さんが抜けても、私たちが3人を応援するで」っていう想いが感じられたので。この状態でいけるんやったら、毎回サポートギタリストに入ってもらったらええんちゃう?ってなったんですよ。

──新しい人がメンバーとして入ってくる違和感を、お客さんとしても望まなかったのかもしれないし。

花沢:そうかもしれないですね。この3人のことを一番わかっているお客さんが、3人で続けることを受け入れてくれたという。

辻本:それがコンセプトマキシシングル「Songs 4 one day EP」(2006年発表)をリリースする前ですね。

花沢:なので、そこに収録されている「Hello」という曲は杉岡がChicago Poodleに残していった置き手紙みたいなものです。

山口:で、Chicago Poodleは杉岡が抜けたときからピアノ色が強い曲になっていくんです。もちろんレコーディングではギターも入れているんですけど、メンバーは3人なので。

辻本:あと当時は杉岡くんがメインで歌詞を書いていたので、抜けるタイミングで山口と「これからは2人で歌詞を書かなあかんな」って。
▲2ndシングル「Songs 4 one day EP」(2006年)

──2006年ぐらいからいまのChicago Poodleの“ピアノ名曲工房”的な在り方になっていくわけですね。さっきお金がないっていう話が出ましたが、3人のインディーズライフはどういう感じだったんでしょう?

花沢:お金はなかったですね。

山口:地方キャンペーンとか行ったら、ご飯はだいたいマクドナルド。

辻本:100円マックですね。

花沢:それこそ全国にプロモーションで廻っているとき、すごく疲れたことがあって。寝れなかったんですよ。

山口:宿泊先がスーパー銭湯のざこ寝仮眠室みたいなところだったからな。

花沢:次の日も移動して宿泊だったので、プロデューサーに「ホテルで寝かせてください」ってお願いしたこともありました。

山口:そこで経験させてもらって、培ったことも多かったし、体力もつきましたね。

──2007年にはミニアルバム『風街序曲』をリリースして全国18本のツアーを廻っていますが、“こういう人たちにも曲が届いているんだ”とか、ツアーって発見も多いと思うんですが?

山口:僕らのお客さんって夫婦でいらしてくれたり、親子だったり。

花沢:当時からそうでしたね。男の人もけっこう見に来てくれて、洋楽が好きなお父さん世代がポツンと見にきてくれたり。そういう発見は嬉しかったですね。

──最初から、そういう普遍的な魅力のある曲を作ろうと思っていたんですか?

花沢:個人的には1980年代の音楽が好きなんですよ。楽曲がいちばん良かった時代だと思っていて、そういう音楽に近づきたいって曲を作っていたというのもあると思うんですよね。両親が音楽好きっていう影響もあるし。
■いい旋律やなっていう楽曲さえできれば
■どんな化粧をしても変わらない

──インディーズ時代にみんなで語っていた夢や目標は?

花沢:常にいい曲を作りたいとは思っていましたね。

──花沢さんが考えるいい曲の定義とは?

花沢:リピートできる曲が定義のひとつです。

──たとえばインディーズ当時の2000年代は、青春パンクやギターロックがバンドシーンを席捲していたと思うんです。その流れに迎合しようという考えも一切無い、ブレのない状態でここまで来ているわけですよね?

辻本:それは、今の会社にお世話になるインディーズ時代の一番最初に、プロデューサーから言われたことでもあるんです。「君たちの音楽性は、前を走っているアーティストが誰もおらんから、絶対に苦労するよ」みたいに。でも、それは承知のことで。僕たちは花沢が作る曲が好きで、いいと思えるからその音楽を信じているという。もちろん花沢自身はいろいろな音楽を聴いているし、知っているんですよ。

花沢:それって編曲の部分の話だと思うんですよね。Chicago Poodleの曲はアレンジによってギターロックにもなると思うんです。僕はそこに対してこだわりがないというか。極論を言えば、“いま流行っているから、ギターを大々的に入れようぜ”というアイデアがあるなら、入れてもいいんです。“僕の曲になんで脚色をすんねん”みたいな気持ちはない。自分がええ曲やなっていうものさえできれば、どんな化粧をしても変わらないと思うんですよね。

──その中心に、花沢さん自身がいいと思えるメロディーがあれば。

花沢:そうですね。絶対的なメロディーって、僕はあると思っているんです。それをいかに作れるかということなんですよね。

──では、大阪BIG CATをソールドアウトさせていますが、この会場を埋めたいとか、もっと大きな会場でとか、そういう目標は?

山口:そういう感じはなかったよね。

花沢:メジャーデビューということに関しても、僕らはどういうことかあまりわかっていなくて、いつのまにかメジャーになっていたというか。
──インディーズデビューからメジャーデビューまで5年と長いですけど、焦っていたわけではなかったんですね。

山口:僕らの性格の問題なんやと思うんですよね。なんでですかね?

辻本:いやホントに性格ですよね(笑)。いいスタッフさんに恵まれていたのかもしれないし。インディーズ時代からラジオ番組をやらせていただいたんですけど、ラジオって顔が見えないだけに、いい曲やったら音楽の力だけで“また聴きたい”と思ってもらえるメディアだと思うんです。そこにうまく花沢くんが作る音楽と声がマッチしたんだと思います。

山口:ラジオは大きかったと思います。

花沢:僕らにも貪欲さはあると思うんですよ。でも、職人気質というか、“この曲のこのサビのメロディーはこういうフレーズで”とか、そういうことを追求していく欲なんですよね。

──そこが3人に共通しているから、バンド活動が現在も続いているのかもしれない?

花沢:そうですね。長く音楽したいと思っていたので。

──2人から見て、花沢さんはインディーズ時代から変わりませんか?

辻本:変わらないですね。昔から尖っていたし、人前でしゃべるのも苦手で、ピアノに向かって黙々と曲を作る音楽職人みたいな。変わったのはボーカルに対する意識。歌詞に関しても最近は僕たちにガンガン要望を言ってくるようになったし、“よりいい音楽を作りたい”という気持ちは強くなっていますね。

花沢:僕から見ると山口は昔から変わらない。一貫してクールですね。辻本はお客さんに愛されて育てられていると感じるようになったのが変化かな。山口は昔から縁の下の力持ち的な存在ですね。

──3人のバランスがいいということもあるんでしょうね。

辻本:そうですね。僕みたいにへらへらしている人間がいるからこそ、山口くんのクールな良さが光る(笑)。

──ははは。では、先ほど「Hello」のエピソードが出たので、ベストアルバムに収録されているインディーズ時代の曲を作ったときの思い出を教えてください。

花沢:まず「one」は僕らの初のフルアルバム『one』の表題曲で、インディーズ時代からいままでずっと大事な場面で歌ってきた曲なんです。犬の鳴き声の“ワン”だし、1曲目に入れたかったんですね。ピアノ、ギター、ベース、ストリングスもすべて一新したんですが、当時は演奏面でも未熟なところがあったので、レコーディングし直したかったんです。

──“ほんの少しの自信を 大切に育めばそれでいい”っていう歌詞がいままでの話とリンクして響いてきます。

山口:ああ、そうかもしれないですね。

花沢:「Hello」はさっき話した杉岡が抜けた分岐点の曲でもあり、インディーズ時代の曲の中で1位、2位になるような人気曲なので絶対に入れたいと思っていました。今回、オーケストラアレンジにしているんですけど、僕個人的にはずっとゆったりしたテンポで歌ったらどうなるんだろう?と思っていた曲で、今回、形にしてみました。「愛燦々」はアップテンポなラテンテイストの曲でChicago Poodleがやりたい音楽にいちばん近いタイプのマイナーキーの曲です。こういう曲はこれからもずっとやっていきたいと思っているので、リアレンジするに当たってよりラテン色を強くしました。

──では最後に、インディーズ時代の自分にいま声をかけるとしたら?

辻本:「もっと練習頑張れよ」って(笑)。あと、当時は山口と一緒にこんなに歌詞を書くようになると思ってなかったので「もっと本読めよ」って。

山口:「もうちょっと焦れよ」ですね(笑)。インディーズ時代を半分ぐらいに短縮したかった。いま思えばですけどね。

花沢:僕も似てますね。「曲を5倍ぐらい作れよ」って。

辻本:マジで? けっこう作っていたのに。

花沢:いまと比べたらサボってますね。「もっと焦れ」とか「もっと地に足を着けろ」とかいろいろ言いたいですね。

──「インディーズ時代、よく頑張ったな」とか、ないんですか?

3人:ないですね(笑)。

──反省の締めになっちゃいましたけど(一同笑)。

辻本:最後にひとこと言わせてください。インディーズ時代の3曲、持っていない方はなんとか入手して、いまのバージョンと聴き比べてほしいなという気持ちです。

花沢&山口:お、さすが(笑)。

取材・文◎山本弘子
■ベストアルバム『10th Anniversary Best』

2019年7月24日(水)リリース

▲初回限定盤


【初回限定盤 (2CD+DVD)】GZCA-5288,5289 / GZBB-5288 ¥4,000+税
▼初回限定盤特典DVD収録内容
<メンバーインタビュー>
『HISTORY I〜デビュー当初〜』『HISTORY II〜in二色の浜海岸〜』『Past & Future』
<Music Clip (副音声付き)>
「君の笑顔がなによりも好きだった」「シナリオのないライフ」「ずっと煌めく君は僕のダイヤモンド」「答エアワセ」「泣いたらええ」「タカラモノ〜Wedding 篇〜」
<LIVE映像>
・2009-2019 memory of “ODYSSEY”
・2017.12.2「犬(one)フェス2017〜I & 喜縁~」森ノ宮ピロティホール
「深くもぐれ」「アイアイ」「ODYSSEY」「GET UP! 〜不屈のファイティングマン〜」「ありふれた今日の特別な場面」

▲通常盤


【通常盤 (2CD)】GZCA-5290,5291 ¥3,000+税
▼Disc1
01. ODYSSEY
02. ナツメロ
03. さよならベイベー
04. 愛と呼べる言葉
05. Fly〜風が吹き抜けていく〜
06. Is This Love?
07. 桜色
08. ありふれた今日の特別な場面
09. 1225〜君がいたクリスマス〜
10. タカラモノ
11. 君の笑顔がなによりも好きだった
12. with
13. 空遠く
14. シナリオのないライフ
15. ツナグモノ
16. Wonderful Days
▼Disc2
01. one ~10th Anniversary ver.~
02. Hello ~10th Anniversary ver.~
03. 愛燦燦 ~10th Anniversary ver.~
04. 春風トレイン (新曲)
05. 決意 (新曲)
06. One Voice (新曲)

※初回生産分のみアルバム×ツアー連動特典封入
※初回限定生産・通常盤共、初回生産分のみ<Chicago Poodle -10th Anniversary Tour->会場での特典引換券封入


■『10th Anniversary Best』アルバムリリース記念イベント』

▼イベント内容
ミニライブ&サイン会
※『10th Anniversary Best』ご購入者はライブ終了後のサイン会にも参加可能
▼日程
7月23日(火) 神奈川某所
7月24日(水) 都内某所
7月25日(木)19時~ JEUGIA三条本店5F J-SQUARE
7月26日(金) 名古屋某所
7月27日(土) 大阪ステーションシティ5F 時空の広場
・1st stage13時~
・2nd stage14時30分~
7月27日(土)19時~ タワーレコード梅田NU茶屋町店6Fイベントスペース
※会場へのお問合せはご遠慮下さい


■<Chicago Poodle -10th Anniversary Tour->

8月18日(日) 滋賀・B-FLAT
open16:30 / start17:00
(問)077-510-6330
8月24日(土) 広島・SUMATRA TIGER
open16:30 / start17:00
(問)sumatratiger@star.ocn.ne.jp
8月30日(金) 奈良・NEVERLAND
open18:30 / start19:00
(問)0742-36-2431
9月01日(日) 岡山・MO:GLA
open16:30 / start17:00
(問)086-235-3277
9月08日(日) 宮城・STARDUST
open16:30 / start17:00
(問)022-265-1139
9月14日(土) 愛媛・松山サロンキティ
open16:30 / start17:00
(問)089-945-0020
9月21日(土) 京都・MOJO
open16:30 / start17:00
※京都MOJO20周年!!×Chicago Poodle10周年!
(問)075-254-7707
9月23日(月祝) 徳島・club GRINDHOUSE
open16:30 / start17:00
(問)088-655-5175
9月29日(日) 石川・もっきりや
open16:30 / start17:00
(問)076-231-0096
10月5日(土) 北海道・UNIONFIELD
open16:30 / start17:00
(問)011-215-1900
10月12日(土) 愛知・LIVE&BAR SPACE TIGHT ROPE
open16:30 / start17:00
(問)052-242-8557
10月13日(日) 東京・下北沢GARDEN
open16:30 / start17:00
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888
▼チケット
前売り 4,500円 / 当日 5,000円
※税込/全自由(整理番号付)/ドリンク代別途必要
一般発売:7月6日(土)AM10:00

■<10th Anniversary Tour -FINAL->
10月20日(日) 大阪ビジネスパーク円形ホール
open16:30 / start17:00
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
▼チケット
前売り 5,000円 / 当日 5,500円
※税込/全自由(整理番号付)

※整理番号順の入場となります。
※3歳以下は入場不可、4歳以上はチケットが必要です。
※開場・開演時間は変更となる場合がございます。
※会場によって立ち見の場合がございます。

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