激動プログレアイドル「キスエク」に
緊急インタビュー~どうなる? 7.25
開催の「2nd ワンマンライブ」

プログレアイドル。文字通り「プログレ」、即ちプログレッシヴロックという前衛的で七面倒くさいロック音楽を専門的に歌い踊る、世にも稀少すぎるアイドルのことだ。それは、プログレとアイドルを無理やり縫い合わせたキマイラ的存在である。アイドル界において、いわばアルマジロと戦車の合体した怪物が火山の噴火口から飛び出してきたかのように攻撃的な活動を繰り広げてきた、それこそが、我らがキスエクことxoxo(Kiss&Hug) EXTREMEだった。
或る時はフレンチ・プログレの老舗マグマをカヴァーし、全世界からyoutubeに「いいね」が押された。また或る時は今が旬の和製プログレバンド金属恵比須とコラボし、北欧プログレのアネクドテンをカヴァーしてみせた。その非凡な楽曲選定のセンスにディープな好事家たちからの注目はどんどん増すばかり。マニアックさでは他に引けを取らないSPICEにも、これまで何度かご登場いただいた。
しかし、そんなキスエク界隈で最近、激震が走った。2019年5月31日に“ちゃんまお”こと小日向まおの体調不良による脱退が発表された。のみならず、約一週間後の6月8日、今度はキスエクのリーダーである“めるたん”こと楠芽瑠が今年9月16日に卒業することが発表された。この「吹けよ風、呼べよ嵐」とも言うべき状況に接し、多くのキスエク・ファンたちは「危機」を感じたに違いない。「キスエク、何があった?」「キスエクは大丈夫なのか?」
しかし、そんな中で来たる7月25日(木)には、約1年半ぶり待望の2nd ワンマンライブ『xoxo(Kiss&Hug) EXTREME 2nd ワンマンライブ 〜UNION〜』が渋谷WWWでおこなわれる。「ん? キスエクの2nd ワンマンて、2018年4月にやらなかったっけ?」という疑問を抱く向きもあろうが、あれはどうやら1st ワンマンの「The Other Side」という位置付けだったらしい。そんなわけで今回が正式なる2nd ワンマンライブ。そのタイトルは「UNION」という。連合、結合、合体、団結などを意味する、今のキスエクには些か意味深な言葉。だがこのライブ、キスエク史上かつてない、どえりゃーものになるというではないか。これからのキスエクの方向性を占う試金石ともなろう。そこでSPICE編集部は、キスエクの現メンバーである楠芽瑠・一色萌・小嶋りん、及び研修生の浅水るり、そして運営の大嶋尚之プロデューサーの全5人にインタビュー、「激動」の内幕について迫った。
■リーダーめるたん卒業~Wish you were here…
──小日向まおさんの脱退発表と、リーダーである“めるたん”こと楠芽瑠さんの今年9月卒業の発表が相次ぎ、その衝撃はハンパないものでした。キスエクに何があったのかと。ただ、公式ブログに掲載されためるたんの声明文によれば、卒業はかなり前から決まっていたそうですね。
楠芽瑠(以下、芽瑠) はい。今回の卒業の日程を決めたのは今年の年明けでした。でも、卒業の話は、実はかなり早い時期からあって。なんならキスエクで初めて迎えた私の生誕ライブ(2017年7月2日)が、最初で最後……。
一色萌(以下、萌) ……の予定……。
芽瑠 ……だったんですよ。
──え。2017年7月といったら、キスエクが始まってから割ととすぐじゃないですか。
芽瑠 最初は1年ぐらいで卒業しようと考えていたんですよ。キスエクが本格始動したのが2016年の12月だったので、2017年12月には卒業するつもりで。だから2017年7月の私の生誕ライブが最初で最後になるはずでした。そもそも運営の大嶋さんから声をかけていただいた時も、「年齢的にそんなに長くは続けられない」とは伝えていたんですよね。
──だけど結果的に、すぐにはやめなかった。
芽瑠 はい。最初で最後になるかもしれないと思っていた2017年の生誕ライブで、お客さんを100人集めるという動員目標を作り、メンバーみんなが協力してくれたおかげで、見事に達成できたんです。そうしたら、だんだん楽しくなってしまって(笑)。それに、気が付いたらリーダーになっていて……別に、無理矢理ならされたわけではないんですけどね(笑)。私はキスエク以前からアイドルをやっていたのですが、他のみんなはアイドル未経験者ばかり。私だけが経験者ということで、必然的にリーダーを務めるようになっていたんです。でも私、普段は友達といたらそんなに仕切るタイプでもないし、むしろ友達に頼っちゃうような性格なんですよ。なのにキスエクで活動してると、けっこう厳しくなっちゃうと言うか、みんなを引っ張っていっちゃう体質みたいで(笑)。
めるたん、こと 楠芽瑠(くすのきめる)
──キスエクの活動の中で、そういう自分を発見したんですね。
芽瑠 そうですね。責任感も出てきて。リーダーなのにそんなすぐに辞めちゃうの?と自問したり。まわりのみんなの成長も見てるわけじゃないですか。みんながやっと、それぞれの個性を出してきた時に、まとめている私が今いなくなっちゃったら、それらの個性がうまく活かされなくなるんじゃないか、とか……。そういうことを考えていたら、もうちょっとやりたいかも、もう少しみんなの成長を見たいし、もう少しみんなと一緒にいたいっていう思いがだんだん強まり、当初の予定よりも全然延びてしまったんです。
でも、昨年(2018年)の誕生日を本当に最後の生誕ライブにして、その前に卒業発表をしようと考えていました。ところがその矢先に、メンバーの一人の子が諸事情で活動休止に入ってしまった。メンバーが揃ってない時点で卒業発表するのも、自分的にちょっと許せなかったので、その子が戻ってくるまでは待っていようと。で、結局年が明けて、今度こそ卒業しようと。メンバーも、ファンの皆さんも、最後だとわかった状態で生誕ライブを迎えられるようにしたいと思って。そのことを今年の1月の始めに大嶋さんに伝えて。3月にはメンバーにも、卒業の日を決めた状態で話しました。
萌 今年6月のめるたんの生誕で卒業、という話もありました。でも、7月25日に2ndワンマンが入ったから、だったら、そのワンマンの日に卒業しようかってなったけど「いや平日だし」とか、みんなで色々話し合って(笑)。じゃあ、そのワンマンの直後の土日にしようか、とか。
芽瑠 夏前には辞める予定だったんですけど、夏ってアイドル系イベントがアツいじゃないですか。
萌 それで、めちゃめちゃ引き留めた(笑)。
芽瑠 それに、りんりんの誕生日が8月13日なんですよ。
小嶋りん(以下、りん) やっぱ、私の生誕ライブ、みんなで一緒にね、って。
芽瑠 メンバーたちと相談して。夏も一緒に頑張りたい、りんりんの生誕にも一緒に出て欲しいって言っていただけたので、じゃあ、すいませんやっぱり延ばしていいですか、ってことで、9月になりました。
萌 私もキスエクが始まった時点で、めるたんが長くやれるわけじゃないということは薄々勘付いていました。だから一番最初の、2017年のめるたんの生誕ライブが最初で最後になると思い、その時、めちゃめちゃ寂しくなって、めちゃめちゃ泣いたんですよ(笑)。
芽瑠 泣いた、泣いた。なのに、まさか3回も一緒にできるとはね(笑)。
萌 そう。でも、だから、ずっと覚悟はしていたんです。それがもうこんな、2019年の9月まで一緒にいられるだなんて、むしろ万々歳と言いたいくらい。よくぞ、ここまで一緒に頑張ってきてくれたって思える。
萌ちゃん、こと 一色萌(ひいろもえ)
──ファンにはあまりに唐突な話だったけれど、一緒にいたメンバーとしては「よくぞここまで」なのですね。
萌 かなり前から心構えができていた分、「急に来たな」という感じはしなかったし、「もっとちゃんと過ごしておけばよかった」と悔やむこともない。だって、もう充分、日々を大事に過ごしてきたから、心残りもそんなになかった。ただ、私は、夏の季節に沢山あるアイドルのイベントに、できることなら一緒に立ちたいってずっと思っていました。だけど、7月に卒業してしまったら可能性が全くなくなってしまう。もし夏のイベント出演の可能性が少しでもあるんだったら、ぜひ一緒に過ごしたいっていうことを、めるたんに伝えました。りんりんの生誕のこともあるし。結果として、夏を一緒に越えてくれるっていう決断をしてもらえたので、ベストかな。ベストの時期にめるたんを卒業で送り出してあげられるかなって思っています。
──めるたんの声明の中で、卒業の理由として、「年齢」「家族と一緒にいたい」そして「20代のうちにアイドル以外のこともやっておきたい」という3点を挙げていましたね。
芽瑠 そうですね。私、ハタチぐらいからアイドルを始めているんですが、この仕事って実際犠牲にしていることも多いんですよね。友達は色々遊びに行ったり、旅行に出かけたりして、楽しそうだなって思える。でも私は、普通ではできない活動をやらせてもらってる。しかもそれは若いうちにしかできないこと。だから私はそのほうがいいと思ってアイドルの活動を続けてきたんです。ただ、私の20代、あと2年くらいかって思った時に、ちょっと不安にもなった。アイドルしか知らないまま20代を過ごしてきちゃったけど、もうちょっと視野を広げておいた方がいいんじゃないかなって。それと、家族と過ごせる時間も今後そんなに多くはないなって。そう思った時に、もうちょっと、大事にしたいものとの時間を増やそうかなって思ったんです。
──その気持ちはよく理解できます。ただ、その卒業発表のタイミングが小日向まおさん脱退発表の直後になってしまったので、世間にはかなり衝撃を与えてしまいましたね。運営としてはどういうお気持ちでしたか?
大嶋尚之(以下、大嶋) そちら(小日向脱退)の方は本当に突然だったんです。でも残ったメンバーたちがとても頑張ってくれて。
芽瑠 私たちが知ったのも、発表とほぼ同じタイミングでした。本当に急遽で。予想外、想定外。
萌 とにかく想定外だった。でも、めるたんの卒業はずっと前から話し合って決まっていたし、7月に2ndワンマンがあることも前々から決まっていた。だから、不測の事態に見舞われようと、もうすでに控えていることに対して、今できることをMAXの力でやるしかないと。もちろん不安にもなるし、やばい、どうしようってなるけど、そっちの感情に振り回されている場合ではなくて、逆に、団結するしかなかったから、ただもう必死にやってましたね。
芽瑠 必死でしたね。というか、今も必死なんですけど。今はもう4人でやるしかないので。だってファンの皆さんも、約1年半ぶりのワンマン、期待して待っててくれたわけじゃないですか。なのに、悲しい情報が続いてしまったら、当然みんな不安な気持ちにもなると思うんです。だけど、私たちのほうがそう思ってしまったら、より一層マイナスの空気になってしまう。だから私たちはとにかく前を向いて全力でやるしかないねって。
りん うん、うん。
りんりん、こと 小嶋(こじま)りん
■謎の研修生
──そんな中で、研修生るりちゃんの存在は、一筋の光明というか。今後の活躍が期待されてやみません。でも、謎めいた雰囲気を醸し出していて、「謎の研修生」という印象もありました。そんな、るりちゃんは、いつからキスエクに関わっているのですか。
浅水るり(以下、るり) 実は昨年の夏頃から候補生という形でレッスンに参加させてもらってました。研修生として初めてステージに立たせていただいたのは、今年3月16日。それが私のお披露目でした。
──そもそも、キスエクに入りたいって思ったのはどうしてですか。
るり もともとアイドルとか、そういう、人前に立って表現するということを何かやりたいと思っていました。でも親に反対されていたんです。というのも、私は出身が福井県で、田舎に住んでいましたので、親の考え方がちょっと古い……というか、我が子を都会に出して音楽をやらせるとか、そういう考えは全然ない人でした。それで私は、他の表現方法で自分の個性を活かせないかと考え、ファッションの勉強をしていました。でもハタチになった時に、それまでのことや、これからの人生のことなどを考えて、「このままでいいのか、いけないのか」って思ったんです。もう大人だし、自分の力で一歩を踏み出そうと決意し、色んなアイドルを探していた時、たまたまだったんです、キスエクを知ったのは。YouTubeでライブ映像を見つけて、正直、なんか直感的に「すごい」「いいなあ」と。それで、応募しようって思いました。
──でも、キスエクって、とんでもなく変わったタイプの音楽をやるグループじゃないですか。
るり 私は、もともと変わった音楽が好きなので、キスエクの楽曲には、けっこう惹かれました。逆に王道系の音楽は自分にちょっと合わないかなって思います。
──すると、プログレなんかも聴いていた?
るり 「プログレ」っていう言葉、実は知らなかったんですよ。でもピンク・フロイドはよく聴いていました。日本のバンドだとゆらゆら帝国が好きで。ああいうちょっとサイケデリックみたいな感じのジャンルのアーティストとしてピンク・フロイドを聴いていたのです。キスエクの曲を聴いて色々調べていくうちに、私が今まで聴いてきた曲って割とプログレ寄りだったんだなと。自分の好きな音楽とプログレには共通点があることがわかり、ますますプログレを興味深く感じられるようになりました。
るりちゃん、こと 浅水(あさみ)るり
──候補生になる時、オーディションのようなことをしたのですか。
るり そうですね。最初は大嶋さんの前で歌とダンスを見てもらい、次にリーダーの芽瑠さんが加わっての面接でした。さらにその後、メンバーみんなとお会いして。
芽瑠 メンバーのみんなと会ったのは、加入が決まってからだったと思う。最初、オーディションの一次審査は大嶋さんに歌とダンスを見せて、二次面接まで進んだ子は私に会う、みたいな。私、ラスボスみたいな(笑)。でも私、ラスボスの割に、めちゃくちゃ人見知りなんですよ。だから、初めて会った人に、そんなに話せないというか。……るりちゃんは私のこと、どう思った? 感じ悪いとか、怖いとか思った?
るり 人見知りなんだろうなとは思いました(笑)。
芽瑠 あ、わかった?(笑)
るり 根っから感じの悪い人だったら、私もそれを感じとれると思うんですけど、なんかそうではなく、目も合わせられないみたいな……。きっとこの人は人見知りなんだろうなと思い、それほど悪い印象は受けませんでした。
芽瑠 そう! あ、バレてた(笑)。
るり ただ、ちょっと不安は覚えました。これから先、話すことができるのかな、みたいな。
芽瑠 ああ、やっぱ、そうだよね。
萌 今だから言えるけど、めるたんが面接から帰ってきた時の、るりちゃんについての印象、なかなかでしたよね。
芽瑠 え、うそ!
萌 「私、この子、合わないかもしれない」って言いながら帰ってきて、「え、どうした!?」みたいな。
るり そう思われてるだろうな、という気はしていました。
萌 るりちゃんはプログレが好きとか、めるたんと趣味が全然共通してなくて。
芽瑠 彼女、面接で、すごいプログレを語ったんですよ。なんか「私はプログレが好きなんです!」みたいな感じで(笑)。
るり というか、色んな音楽の話を……。
芽瑠 そうそう。なんかすごい深いジャンルを言うから。まあ私はリーダーでありながらも、プログレを一番知らないし、一番興味がないのに、新しく来た子がすごい目で「私は!」みたいに語るから(笑)。
るり それは確かにイヤかもしれないですね。そういう子、私はイヤだ。
芽瑠 そう。イヤでしょ?(笑)
大嶋 めるたんはまずNOから入る傾向があるから(笑)。
芽瑠 だから、「あ」ってシャットダウンしちゃったんですよ。「合わない」って。色々質問して、「いや、ちゃんとしてる子だな」とは思ったんです。人として。でも「あ、趣味は全然合わないな、あれ、どうしよう」と思い、メンバーのみんなに言いました。「私は無理かもしれない」って。だからレッスン中、最初の数カ月は、大して会話をしてないよね。
るり そうでしたね。
芽瑠 彼女からは一番先輩の私に気安く話しかけられないじゃないですか。私も、あまりコミュニケーション取らないタイプなので、ダンスの必要最低限のこと以外、特に喋らない。だから、たぶん本当に感じ悪いというか、怖い人だと思われてるんだろうなって。でも私、るりちゃんのことは、全然イヤだとは思ってなかった。
るり ああ、よかった、それは。嬉しい。私も萌さんから「めるさんは最初NOから入る人だから」みたいなことは、なんとなく。
萌 レッスンの帰り道に「練習に参加してて、どう?」とか、「何か気になってることある?」とか訊いた時に、「めるさんに嫌われてるんじゃないか」と、けっこう脅えていて(笑)。
るり 嫌われてると思ってたんですよ(笑)。最初は人見知りかなと思ったけれど、ずっと一緒にいてもその感じが続いて、なんかいい感じにならなかったから。
── 人見知りの期間が異様に長い。
芽瑠 長いんです。本当、長い。
萌 「ダンスのわからないこととかあったらどんどん訊いた方がいいよ」って私、言ったんだよね。で、るりちゃんがめるたんに訊いたみたら「意外と平気だった」って。
るり そうです。それで少しづつ会話ができるように。
萌 そう。でも一緒に活動するようになって、私、この二人、似てると思ってるんですよ(笑)。趣味こそ全然違うけど、真逆すぎて、半周違いで似てる、みたいな。こだわりが強いところもそうだし。関係ないけど、私がすごい面白いなって思うのは、めるさんはサーモン好きでマグロが嫌い。るりちゃんはマグロ好きでサーモンが嫌いなんです。こんな正反対、なかなか、いなくないですか? 正反対で似てる感じがする、すごく。
芽瑠 確かに似てる。るりちゃんは考えてることとか暗めじゃん。私はそれを真逆にポップにしたヴァージョン、みたいな?
りん 時空を超えた双子みたいな(笑)。
芽瑠 マジで。出会った、やっと出会えた。
りん 日本とブラジルの生き別れの双子。
一同 (笑)。
るり 私が、ブラジル?(笑)。
──でもせっかく出会えたのに、めるたんがすぐに卒業してしまい……。
萌 でもまあ、良かったかなって気はする。ちゃんと活動期間もかぶってるし、めるたんが卒業してしまうタイミングで入ってきてくれた子が、半周回って似ている、るりちゃんだったことは良かった。
りん るりちゃんは真面目そうに見えて、不思議なところがあるって言うか、変わってるよね。
るり なんか、よく言われます。喋らなかったらすごい大人しめで、真面目そうで。でも喋ると、ちょっと変、みたいな。
──それにしても、いよいよこれからっていう時に、ここ最近の一連の状況に直面して、「私ここで本当によかったのかな?」なんて不安はよぎったりしませんでしたか。
るり まあ、でも私は、何かがあっても何でも出来るってまず思うタイプなんですよね。そう思っていれば、大抵のことは出来るかなって。そういうと、なんか私、すごいポジティブな人みたいですけど(笑)。本当は全然ポジティブじゃないですよ。でも、そういうところだけは、あまり考えすぎないというか。
──まだ研修生ってことで、遠慮してる部分も多いかと思いますが、その遠慮を思い切って振り払うと、何か凄いものが湧き出て来るかも知れません。
るり そうですね、日頃からモヤモヤしてることや、こういうふうに表現できたらいいなとか、自分でも考えてることは結構あるので、それらをうまく表現に繋げられたら、いいものができるんじゃないかなって思います。
──大昔の話で恐縮ですが、ドリフターズの志村けんも付き人を経ています。で、抜けた荒井注の代わりにドリフに入った時も、最初はまだ見習いだったんです。そこから、頭角を現していった。
るり じゃあ私、志村けんになります(笑)。
一同 (笑)。
大嶋 彼女だけ、いつの間にか歌を歌っていないかもしれない。コントをやってるかもしれない。
るり いまもちょっと、曲の途中でハンマーを持ってくる係とか、変なポジションになりつつある(笑)。
萌 変なおじさんだ(笑)。
■総勢14名の壮観パフォーマンス
──2nd ワンマンはどのようなライブになりそうですか。
芽瑠 約1年半ぶり待望のワンマンライブは、会場も渋谷のWWWという、今までよりも大きいライブハウスで行います。前回のワンマンも含めて、これまで生バンド付きのライブは結構やらせていただきましたが、今回は初めてバンドさんが2つ同時に入り、それだけでもかなり大きな挑戦になります。内容的には、8月下旬リリース予定のアルバムの世界観を先行披露するような形になるかと。一つの物語をテーマにした構成を考えていて、今回そこがかなりポイント高いと思います。もちろん、そこには複数の新曲も含まれていますが、初披露ですし、しかも生バンド付きですから、とても豪華になりますね。それだけ私たちの気合が入ってるってことが、皆さんに伝われば嬉しいです。
──8月発売のアルバムについても教えてください。
芽瑠 曲数が10前後で、新曲が半分ぐらい。その新曲には、すでに私たちのライブで披露済の「オレンジ」や「初恋の通り道」も含まれています。
大嶋 既存曲では「Time and tide wait for no man」や「鬱。」など。すべて、るりちゃんも参加してる新録バージョンで。私は「アルバムには一つのコンセプトがあって、一曲めから最後の曲まできちんとテーマが貫かれているべき。特にプログレは」という変なこだわりがあるので、そういうところもお楽しみいただけると思います。
──そのコンセプトは、7月ワンマンのテーマとなる物語と同じものであると考えていいですか。
大嶋 同じですね。テーマは「アイドルの人生」です。プログレ的に言っちゃえば、ピンク・フロイドのアルバム「狂気」のようなものと思っていただければ。あれも、人が誕生して、苦悩し、狂っていく過程が描かれていますから。
──曲作りは、大嶋さんがほとんど手掛けてらっしゃる?
大嶋 いや、半分くらいです。先行して発表した「オレンジ」は里咲りささんに作詞作曲をしていただきました。また、お馴染みのコジマミノリさんや、「Time and tide~」の宮野弦士さんも。そして、他にもまだ発表していない外部の作家の方が何名か。
萌 今までは大嶋さんかコジマさんに作っていただくことが多かったのですが、それとはまた違う作家さんに作ってもらって、違う雰囲気の曲が入りつつも、アルバムとしては1枚でまとまった感じになります。一本の物語の筋が通っている感じに。
大嶋 ですからライブのほうも、コンサートの流れは物語主導で、描きたい表現に合わせて変遷していく形にしたいと。
──ライブのタイトルが「UNION」。
萌 イエスさんが1991年に8人組編成で「UNION」ツアーというのをおこなったという……。
大嶋 プログレファンだったら、まずそこを思い浮かべるんじゃないかと。キスエクの「UNION」ライブも、それにあやかって、生バンドが2つ出演します。たぶん二度とない日だと思うんですよ、こんな顔ぶれが全員ステージに上がるっていうのは。
芽瑠 私めるたんと、るりちゃんが、同じステージに立つワンマンも今回限りで、もう二度とないから、すごく貴重です。
──今回登場する2つの生バンドについて詳しく教えていただけますか。
大嶋 1つは、いつもお世話になっているSilent Of Nose Mischiefさん。5人編成のバンドです。アレンジはおなじみコジマミノリさん監修で、実は毎回少しずつ演奏が変わっていたりもするので、そこも注目ポイントですね。そしてもう1つは、先日バンド名が決まったばかりのAlsciaukat(アルシャウカット)さん。こちらも5人編成で「プログレ・オールスターズ」といっても過言ではないような、プログレ各所で活躍しているメンバーたちによる夢のバンドです。「新●月」のヴォーカリストだった北山真さんのバンドでギターを務めた現Quiの林さんを含めると、「新●月」関係で活躍された方が計3名、つまり過半数となります。超絶技巧な完全生演奏で、難易度の高いキスエクの楽曲の世界を描いてくれること必至です。今回、キスエクの4人と合せると総勢14名もの人間がステージに乗ることになるので、そのパフォーマンスはなかなか壮観ですよ。
──いずれは、Alsciaukatさんと一緒に、「新●月」のカヴァーもやってほしいな。名曲「鬼」とか。和風のジェネシスみたいな。棺桶が運ばれてきて、その中から北山真さんが出てきて歌うんです。
萌 それ、めっちゃいい!
りん やりたい!やりたい!
芽瑠 うっそ。私だったら、絶対イヤだ。
萌 じゃあ、めるたんがんが卒業したら新体制でそれを(笑)。ちょうどいい、ちょうどいい!
大嶋 カヴァーの許可がもらえるかどうか。でも、面白いかもしれない。
──ところで、この春に「Nucleus」でコラボした金属恵比須の高木大地さんには、2nd ワンマンライブのレポートをSPICEで書いてもらうことになりました。
一同 わー(拍手)。
■そして、3人が残った……?
──このワンマンの後、9月16日が、めるたん卒業のイベント。これはワンマンではなく?
大嶋 そうですね。ワンマンっていう形ではないです。お世話になった方々とか、芽瑠が好きな人たちを呼ぼうかと。詳しくはこれから考えます。
──めるたんは卒業後、何をしていきたいですか。
芽瑠 事務所には残るので、たまにソロでライブをしたりとか、撮影会だったり、イベントなどやりたいです。キスエクだと、あまりできなかったオフ会とかも。あとは、キスエク主催のライブだったらゲストで呼ばれるんじゃない?ってみんなに言われてて。
大嶋 芽瑠はMCもできるので、そういうのが必要な時に。
芽瑠 たぶん、今後呼ばれることは多いんじゃないかな、キスエク関連の仕事で(笑)。
萌 リアクション芸が必要なときには来てほしい。天才なんです。
芽瑠 そうなんです。キスエク主催で、VRの『バイオハザード』やってるんですよ、月1で。私がすごいビビリなんで、まあそれが目玉みたいになっちゃってて。
萌 『バイオハザード』のためだけに来てください。
芽瑠 VRはちょっと嫌ですけど。
りん お菓子あげるから。
芽瑠 本当に? じゃあ。……そう、お菓子で釣られちゃうんですよ、私。お菓子に弱いんで。
りん これからは、めるたん一人だけで独り占めできるから。今までは4人で分け合ってたけど。
── 一方、キスエクはいよいよ3人体制に?
大嶋 そのへんもまだ、何とも。
萌 いまずっと新メンバー募集中なんですけど、もしかしたら、この間にオーディション、来てくれる子がいるかもしれないし。
──ほう、その可能性もアリなんですね。
萌 そうですね。だから新しい子が入るにしても、あるいは縁がなくて3人になったとしても、私はまあ、がんばってやっていこうかなって思っています。
大嶋 「そして3人が残った」って言いたくてしょうがないプログレマニアたちが沢山いると思うんですけどね(笑)。ジェネシスのね。
りん へー、面白い。
萌 あの、リーダーがいなくなったというやつですか。
芽瑠 え? それ、めっちゃいいじゃん。そのまんまじゃん(笑)。じゃあ……。
──ピーター・ゲイブリエルというフロントマンと、スティーヴ・ハケットというギタリストがジェネシスを辞めちゃって、「もう駄目か!」と思われたところで、残った3人が起死回生の大ヒットを飛ばして、むしろ3人になってからのほうが売れちゃったというね。
芽瑠 えー。お、期待だ。じゃあ、売れたら私がまた戻って。
──プログレ界は出戻りも多いですよ。
芽瑠 それ、言われました。プログレ的に、全然アリだから戻ってきてね、って言われて(笑)。
萌 脱退とか卒業とかでバタバタして、こちら的には大変なんだよっていう時に、ファンの中には「プログレっぽい」とか楽しんでる人もいて、「おい!」って思いましたけど(笑)。
──余談で恐縮ですが、ドリフも長介と志村が謹慎したことがあり、加藤・仲本・高木の3人が残って「全員集合!」を回していた時期がありました。特に発展的なことは何もありませんでしたが……。それはさておき、めるたんが卒業したすぐ後には、いよいよマグマが来日しますね!
萌 そうなんですよね! 行く気マンマン
──皆さんで挨拶に行く感じですか?
大嶋 そうですね、ライブにはほぼほぼ、全員行きますね。
──マグマに会ったら、何を話しますか。
萌 まず、「ハマタイ!」(笑)。挨拶代わりの「ハマタイ!」ですね。
りん 私は「毎日、ハマタイ弁当食べてます」って。ディスクユニオンさん特製の弁当箱持参で。
ディスクユニオンMAGMA特典「HAMATAI BENTÖ(浜鯛弁当箱)」 (ディスクユニオン公式サイトより)
るり 私は「初めまして」。
萌 全員、「初めまして」だよ(笑)。
大嶋 マグマは我々と同じ、WWWでもやりますからね。
萌 WWWでやるマグマは、アコースティック・ヴァージョンなんでしたっけ。
──キスエクも「The Last Seven Minutes」を、マグマに先んじて、WWWでアコースティックでやったらいいんじゃないですか。
萌 はっ!
芽瑠 そっか!
萌 マグマより先に(笑)。
──「The Last Seven Minutes」は3ヴァージョンくらいやってほしいです。
萌 ははははは、永遠に終わらない。
大嶋 実際、3ヴァージョンぐらいありますからね。「Nucleus」なんて4パターンあるんですよ。
──では、そろそろまとめに入ります。まず、めるたんにとって、キスエクとは何でしたか?
芽瑠 キスエクとは。うーん。最初は、本当に、「プログレって何?」から入ったし、実際、やりたいこととは正反対のグループだったので、すごい抵抗があって、なんか「ええっ?」っていうことが多かったんですよ。衣装も最初、黒だったし。自分がやりたいアイドルじゃないなっていうマイナスのイメージから入った。でも大嶋さんには昔からお世話になっていて、誘っていただいた時に、私のアイドル活動はこれが最後って決めて入ったグループでしたから、全力でやらなきゃと思ってました。
ライブは好きだったし、楽しみながらやっているうち、いつの間にかキスエクが自分の大切な居場所になっていた。そして、活動を通して自分を成長させてくれる場になっていた。だから、すごいありがたかったし、出会えて良かった存在でしたね。実際、ここまでキスエクが生活のメインになるとは思っていなかったので、20代後半にかけての活動がキスエクで良かったなって、今すごく思います。
──キスエクに残る3人はそれぞれ何を思いますか。
萌 まだどういう体制でやっていくかはわかりませんが、みんなが「大丈夫?」って言うほど、私自身は心配していたり不安には思っていなくて。というのも、めるたんが卒業するっていうことはずっと前から分かっていたことだし、いつかは来るものだと思っていたので、それはもう受け入れて、その先のことは切り替えて考えた方がいいと思っているから。
でも、めるたんには、プログレ・アイドル、キスエクの「アイドル」の部分をすごく担ってもらってた。めるたんがいるからキスエクがアイドルとして成り立ってるって思われていた方も多いと思うし、その部分がいなくなってしまうっていうのは、キスエクとしての在り方を根本から考え直さないといけないかもしれない。
もしかしたら、めるたんのようにアイドル性をすごく担うぞっていう気合のある子がこれから新メンバーとして来るかもしれませんが、今はまだいないので、私と、りんりんと、るりちゃんの3人でも出来ることを考えていった方がいいなって頭が動いてて。となると、音楽性をより前面に出していくこともありなのかなとか。今までのようにできなくなることもあるけど、新たにできるようになることもあると思うので、そこはそこで力を合わせて頑張っていけたらいいなって思っています。
めるたんには事務所に残ってもらえるので、ダンスの指導などもお願いしたいと思っています。キスエクもめるたんが卒業してしまうからといって、めるたんのエッセンスが丸々消えちゃうっていうわけではないと思ってる。そこはそんなに心配してない。卒業後まで甘えるつもりではないんですけど、相談に乗ってもらう機会も増えるのかなって思ってます。
りん 私はもともと普通にアイドルになりたいなと思って、アイドルの募集を探していたのですけど、一方で音楽もやっていたから、そちらもやりたいと考えているうちに、普通のアイドルではなくて、音楽的に面白いアイドルをやってみたいと思うようになり、それでキスエクに応募して、メンバーになれました。そのキスエクに、めるたんが遺してくれたものは本当に大きいと思っています。もしリーダーがめるたんではなくて別の人だったら、私、アイドルという生き方をちゃんと理解できなかったかもしれない。めるたんが卒業したら、キスエクのイメージとか形も変わっていっちゃうかもしれませんが、めるたんから学んだアイドルのスピリッツはこれからも大切に、新しい表現の中にうまく活かせていけたらいいなって思ってます。
るり 私は半年間芽瑠さんと一緒に活動させてもらう中で、いろいろ学ばせてもらったことがあります。いいなって思うところはたくさん吸収させてもらいました。だからといってこれから私に芽瑠さんの代わりが務まるわけではありませんし、足りないところもまだまだ沢山ありますが、これまでキスエクのことを見て来てくださってる方々には、今後も安心して応援していただけるようなグループになれるように、その一つの力になっていきたいです。まずは現在の研修生から正規メンバーになれることを個人の目標にして、引き続き頑張っていきたいと思っています。
取材・文=安藤光夫(SPICE編集部)  写真撮影=池上夢貢

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