特別展『三国志』鑑賞レポート 曹操
、劉備、孫権が躍動した「リアル三国
志」の世界へ!

2019年7月9日(火)に東京国立博物館 平成館で始まった特別展『三国志』。9月16日(月・祝)まで開催されている本展は、中国各地で発掘された三国志とその周辺の時代の文物をもとに、真の歴史に基づいた「リアル三国志」を標榜する特別展だ。ここでは開幕前日に行われたプレスプレビューで見つけた本展の注目ポイントをナビゲート。天下の覇権を争い、曹操、劉備、孫権ら三国の猛者が躍動した熱い時代に思いを馳せよう!
中国各地から三国志にまつわる約160件の文物が来日!
日中文化交流協定締結40周年を記念する本展には、中国各地の博物館や研究施設から出品された約160件の文物が来日している。そのうち「一級文物」は42件と、中国本国でも実現不可能に近い豪華なラインナップを見ることができる。
中国各地から三国志関連の資料が集結
三国志ファンには改めて説明不要だが、古代中国が舞台の三国志は、西暦220年から280年までの三国時代とその周辺の時代の出来ごとが書かれた長大な歴史物語である。魏の曹操(そうそう)、蜀の劉備(りゅうび)、呉の孫権(そんけん)という三つ巴の戦国記という印象が強いが、実際には曹操の誕生に始まり、延べ400年続いた漢王朝の滅亡、乱世から三国時代への突入、そして三英傑の死後、晋が呉を滅ぼして天下を統一するまでのストーリーが描かれている。そして、野望、友情、忠義、結束、あるいは裏切りといった複雑な要素が絡み合いながら、争いの中で無数の武将たちが織りなす熱い人間ドラマこそ、三国志が時代を超えてファンを惹きつける魅力といえる。
展示風景
一方で、もうひとつ知っておきたいのは、現代には大きく分けて2つの三国志が伝わっているということ。ひとつは晋の時代に陳寿(ちんじゅ)という歴史家が史実をまとめた正史『三国志』、もうひとつは明や清の時代に正史に脚色を織り交ぜ、読み物として書かれた『三国志演義』である。現代の我々が小説やゲームで知るドラマチックな話の多くは『三国志演義』をベースにしたものであり、その上で正史に基づいた三国志の核心を伝えることが本展の狙いとなっている。ひとまずこれだけでも知っておくと、三国志ファンから誘われて初めて三国志の世界に入るようなビギナーでも、本展をしっかりと楽しめるはずだ。
どの入り口から三国志にハマった人でも楽しめる展示
おそらく会場に入って最初に目に飛び込んでくるのが高さ約1.7mの《関羽像》だろう。これは15~16世紀の明の時代に作られた青銅製の像。関羽は死後、民間信仰の中で武神・財神として崇拝され、日本でも関羽を祭神として祀る関帝廟が今でもある。甲冑姿の関羽は類稀な智性と一騎当千の強さを誇った三国志の物語そのものの威容を感じさせる。なお、本展は個人利用に限り内部撮影がOK(ただし、動画撮影、フラッシュ・三脚・自撮り棒などの使用は禁止)なので、関羽様と一緒に自撮りするもよし、また、像から溢れ出るパワーを自分のスマホに納めるのもいいだろう。
《関羽像(かんうぞう)》 明時代・15〜16世紀 新郷市博物館蔵
関羽像が展示されたプロローグ「伝説のなかの三国志」から始まる本展は、三英傑の家系を紐解く第1章「曹操・劉備・孫権─英傑たちのルーツ」を皮切りに、その後は三国志の時系列に沿った全5章立てで構成され、ラストのエピローグへと続いていく。
横山光輝『三国志』原画 新書判第1巻「桃園の誓い」 光プロダクション蔵 (c)横山光輝/光プロ
会場では日本で育まれた三国志カルチャーも展示を盛り上げる。例えば、各章の最初には横山光輝によるマンガ『三国志』の原画を展示。また、川本喜八郎による武将たちの人形が各所に展示されている。
手前から、川本喜八郎 NHK「人形劇 三国志」より曹操、劉備、孫権 飯田市川本喜八郎人形美術館蔵 (c)有限会社川本プロダクション
さらに本展では2種類の音声ガイドが用意され、一方では歌手の吉川晃司がナビゲーターを務め、吉川英治版の『三国志』の一節も朗読。もう一方にはゲーム『真・三國無双』シリーズの4人の武将が登場している。つまり、小説、マンガ、ゲーム、人形劇と、どの入り口から三国志にハマった人でも刺さるポイントが用意されているのだ。
「真・三國無双」シリーズより張飛の「蛇矛(じゃぼう)」。『三国志演義』に記された長さで再現 (c)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
千本の矢が降ってくる!? まばゆい工芸品も必見!
第1章の展示室には曹操、劉備、孫権の三英傑を軸に、それぞれのルーツがわかる品々を展示。その中には《玉装剣(ぎょくそうけん)》《豹(ひょう)》など劉備の祖先とされる中山靖王劉勝(りゅうしょう)の遺物もある。劉勝は漢の武帝の異母兄弟であり、劉備が漢王族の血を引くことを示す意味において重要な人物。《壺(こ)》などは金銀のまばゆい装飾が漢の貴族の栄華を伝えている。
《玉装剣(ぎょくそうけん)》 前漢時代・前2世紀 河北博物院蔵
三国志序盤の漢王朝の衰退から黄巾賊(こうきんぞく)の反乱、董卓(とうたく)の台頭、そして三国時代の夜明けまでの流れを追う第2章「漢王朝の光と影」に続いて、第3章「魏・蜀・呉─三国の鼎立(ていりつ)」には三国時代に使われた武器や戦の様子を今に伝える数々の出土品が展示されている。
右/《鉤鑲(こうじょう)》 後漢〜三国時代(蜀)・3世紀 綿陽市博物館蔵 左/《武士俑(ぶしよう)》 三国時代(呉)・3世紀 赤壁市博物館蔵
戦闘ゲームなどでもおなじみの《矛(ほこ)》《戟(げき)》、この時代の特殊な防具《鉤鑲(こうじょう)》といった展示への注目もさることながら、それらと併せて我々の目を奪うのは、《弩(ど)》から放たれたかのように頭上を飛ぶ1,500本もの矢。三国志といえば赤壁の戦いの前に諸葛孔明が3日間で10万本もの矢を集めたという奇策があまりにも有名だが、この空間はそんな戦の中のワンシーンを思い起こさせる。
《弩(ど)》から放たれたかのような1500本の矢
同じく第3章から第4章「三国歴訪」にかけて数多く展示されているのが、三国それぞれの特色が表れた工芸品の数々だ。どれも細かな技巧が施されたものだが、金印や印もそのひとつ。
《「関内侯印(かんだいこういん)」金印(きんいん)》 後漢〜三国時代(魏)・2〜3世紀 山東博物館蔵
2cm台の四方に亀の像を象った《「偏将軍印章(へんしょうぐんいんしょう)」金印(きんいん)》《「関内侯印」金印》といった絢爛な金印のほか、魏にまつわるとされる墓から出土した《「曹休(そうきゅう)」印(いん)》も三国志に登場する人物の名が刻まれた現存唯一の印として注目の展示。
ほかにも、五頭の龍を透し彫りした《五龍硯(ごりゅうけん)》、「卑弥呼の鏡」ともされる日本の三角縁神獣鏡の研究にも重要な意味を持つ《方格規矩鳥文鏡(ほうかくきくちょうもんきょう)》、人型や犬型の《俑(よう)》など、細かな芸と当時の栄華を感じさせるものが多い。

《俑(よう)》 三国時代(呉)・3世紀 武漢博物館蔵
曹操が眠る墓を疑似体験、そして三国時代の終わりへ……

第5章「曹操高陵と三国大墓」では、三国時代の権力者の墓に着目した展示がある。なかでも曹操高陵(そうそうこうりょう)の再現空間は本展最大の見どころ。現在の河南省安陽市に位置する曹操高陵は、2008年から翌年にかけての発掘調査により曹操の墓であることがわかった。古文書に書かれた記録に一致したことと「魏武王」と書かれた《石牌(せきはい)》の出土がその決め手になったという。これは近年の中国での三国志研究ブームに火をつける大発見となった。
「曹操高陵」の再現空間
曹操の墓というからにはかなり豪華……と思いきや、通路の幅は小さく狭い。ここには「墓は質素に」という曹操の遺言のほか、この時代の墓の質素さが表れている。室内には実際に曹操高陵から出土された白磁《罐(かん)》が展示されている。こちらも6世紀末頃に始まったとされる白磁の歴史を覆す貴重な資料だ。
そのほか、魏の文帝(曹丕)がほしがったという黄金の鮮卑頭《金製獣文帯金具(きんせいじゅうもんおびかなぐ)》や、呉の権力者の墓で棺を支えた《虎形棺座(とらがたかんざ)》などが見られる。
《虎形棺座(とらがたかんざ)》 三国時代(呉)・3世紀 南京市博物館蔵
そしてエピローグの「三国の終焉─天下は誰の手に」には、「世界一短い三国志」と例えられる《「晋平呉天下大平(しんごをたいらげてんかたいへい)」磚(せん)》が展示されている。側面には「晋が呉を滅ぼして天下を統一した」という意味の言葉が刻まれ、魏、蜀、呉がいずれも天下を掴むことができなかった三国志の儚いエンディングを肌で感じることができる。
《「晋平呉天下大平(しんごをたいらげてんかたいへい)」磚(せん)》 西晋時代・280年 南京市博物館蔵
なお、会場には、写真を撮るだけでコーエーテクモゲームスの『三國志』『真・三國無双』シリーズのような自分似のキャラクターを作ってくれる「特別展『三国志』武将メーカー」も。もともと三国志ファンという人も、本展をきっかけに三国志の世界に飛び込もうという人も興味を引く仕組みが盛りだくさん。この夏は三国志ワールドにどっぷりハマってみてはいかがだろう。
日中文化交流協定締結40周年記念 特別展『三国志』は、9月16日(月・祝)まで東京国立博物館 平成館で開催中。

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