ヨーロッパ企画『ギョエー! 旧校舎
の77不思議』記者会見~「面白怖いお
化け屋敷の感覚で来てもらえたら」

新作『ギョエー! 旧校舎の77不思議』を、8~10月に全国10都市で上演する、京都の劇団・ヨーロッパ企画。「オカルト青春コメディ」と銘打った本作は、誰もが小さい頃に親しんだ「学校の怪談」的な世界を、いかにヨーロッパらしいコメディにするのかが見どころになるという。そのキックスタートとなる会見が、7月5日に大阪で行われた。

会見は、仕事のために欠席した納谷真大(ELEVEN NINES)以外の、4人のゲスト俳優──祷キララ、亀山一徳(ロロ)、金丸慎太郎、日下七海(安住の地)の挨拶から始まった。
祷:ヨーロッパ企画さんとご一緒させていただくのは、今回の作品が初めてです。舞台は、今年の2~3月に初舞台を経験した所なので、二度目の舞台になるんですけど、精一杯頑張ります。
亀島:僕も今回、初めてヨーロッパ企画さんの本公演に出していただいて、ずっと楽しみにしておりました。楽しい劇になるよう頑張ります。
ゲストの祷キララ。

ゲストの亀島一徳。

金丸:呼んでいただくのが4回目になるんですけど、変に慣れた感じとか出さず、初めて出た時よりもフレッシュに、かつガッツあふるる状態で、ヨーロッパ企画の方々に「何やこの客演は! ギョエー!」と思っていただけるようなスタンスで臨みたいと思っております。
日下:同じ京都の大先輩である、ヨーロッパ企画さんから出演のオファーをいただいた時は、本当に今年一番の「ギョエー!」だったと思います。すごく不安もありつつ緊張もあるんですけど、楽しんでいい作品を作りたいなと思います。
ゲストの金丸慎太郎。

ゲストの日下七海。

そして作・演出の上田誠が、最初に「今日はたくさんの(記者の)方に来ていただきまして……後ろの方には亡者の記者さんもたくさん見えて」と、今回の「オカルト青春コメディ」という内容に掛けたような挨拶をしてから、作品の方向性や狙いについて語った。
「昨年(劇団)20周年で『サマータイムマシン・ブルース』と『サマータイムマシン・ワンスモア』という2作を上演して、何となく劇団の集大成のような公演ができたなあと、ある一区切りを迎えた思いがありまして。これから劇団がどれぐらい続いていくかわからないですけど、最初の20年よりも21年目以降の方が面白くて充実しているような、そんな活動ぶりになればいいなあと思ってます。なので今回は21年目でありながら、ちょっと心機一転、新しい所にまた踏み出していこうかなという気分の公演です。
〈オカルト青春コメディ〉と銘打ってるんですけど、今までホラーとか怖いこととか、そういうネガティブなフレーバーはあまり扱ったことがなくて。もっと言うと、みんなで稽古して劇を作って、本番を迎えてっていう集団作業の中で、負の要素をやるのが、そんなに得意じゃなかったんです。楽しく稽古して本番をやりたいというか(笑)。でもそろそろ少しはビターやスパイシーな……たとえばホラーだったら、必ず死や痛みなどが付きまとうと思うんですけど、そこら辺の調味料を上手く使えるようになりたいという、僕の思いがまずありました。
上田誠。
あとは「77不思議」という数の多さがポイントと言いますか、景気よくしたくて……ホラーなのに“景気よく”っていうのも変ですけど(笑)。昨年のツアーの時に、スタッフさんたちと次の公演の話になり、“77不思議をやります”って言ったら“77個もやるのか”と悲鳴に似たどよめきが起こって。今までやったことのないハードルに挑戦する面白さもありそうで “あ、これはいいな”と思いました。それで今回はタイトルの通り、旧校舎に77不思議があるという劇です(笑)。「高校の旧校舎に77不思議がある」と聞きつけた先生方が見回りに行ってみると、やはりただならぬことがそこで起こるという。
ヨーロッパ企画のメンバーたちには主に教師役をやってもらい、今日来ていただいてる若手の世代4人には生徒役をやってもらいます。祷さんは今年『みみばしる』という舞台を観て、すごく存在感のある方だと思って。あと、昔観た映画『堀川中立売』(2010年)にも出られてたりとか、いろんな縁がありました。亀島君は〈ロロ〉という劇団に所属されていて、ロロは同じ劇団同士ということもあり何となくシンパシーがあって。本公演は初めてなんですけど、〈イエティ〉(注:ヨーロッパ企画内のユニット)に出てくれてたりとか、今までも何度かご一緒していました。
金丸君はもう4回目なので、説明を省きまして(一同笑)。日下さんは〈安住の地〉という面白い劇団があり、京都同士のつながりもあって惹かれ合う所があるんですけど、その中でもひときわ異彩を放っておられる。いろんな特技があるので、劇中でも披露されると思います。もう一人のゲストの納谷さんは、もともと富良野塾にいらっしゃったりとか、僕らの計りしれない経歴を持っておられる、妖怪的な役者さんで。妖怪的で先生的という、そういう役をお願いできたら面白いかもと思いました。

ヨーロッパ企画 第39回公演 『ギョエー! 旧校舎の77不思議』 CM

今回は77個も不思議をやると決めたので、当然不思議側というか、怪異側も役者でいくらかは受け持たなきゃいけない所もありまして。『出てこようとしてるトロンプルイユ』(2017年)のガーゴイルやモナリザとかの比ではないかもしれないぐらい、変わった役が多い。そんな配役の中で、ヨーロッパ企画の役者同士が、一筋縄ではいかないクセや個性のある客演さんを交えて、驚かし合い・驚かされ合いみたいなことができたら面白いと思っています。前回の『サマータイムマシン・ワンスモア』で、パスワークの群像会話劇は、今までやってきた中でもすごく満足の行くものができた、という思いがあり。メンバーそれぞれの活動も充実してきたので、ここらで役者の個々のぶつかり合いを観てみたいと思って、こういう仕掛け合いみたいなことができる題材を選びました。
あと音楽の青木慶則(ex:HARCO)さんは、以前『遊星ブンボーグの接近』(2015年)という劇でご一緒していまして、その時は文房具の音をサンプリングして楽曲を作ってくださってます。やっぱり学校の七不思議と言えば、勝手に鳴るピアノが定番だったりして、“ピアノで包もう、今回の劇を”と思った時に、青木さんのことが真っ先に浮かびました。というのも青木さんは実験的というか、現代音楽にも通じるような音楽も作られる方なんで、ピアノを主体にしつつも、ちょっと音楽的な実験もしていただけたらなと。青木さんとはまだ今回お会いしてませんが、“サティみたいな、ああいう実験性のある(ピアノの)音楽はよさそうですね”と、すでにメールで盛り上がってます(笑)。今回は〈オカルト〉〈青春〉〈コメディ〉という3つの要素をちゃんとやろうと思っていて、かつ〈オカルト〉だけでも77個やらなきゃいけない。そのためには役者の力も音楽の力もスタッフの力も借りてと、いろいろ総動員しなきゃいけないという、そんなような公演になると思います」
そして会見恒例、上田いわく「要注目コーナー」だという、ヨーロッパ企画メンバーによるプレゼンコーナー。今回は「ギョエー! 稽古場の4不思議」というテーマで、諏訪雅、酒井善史、永野宗典、そしてこのコーナー初登場の中川晴樹が担当した。
諏訪雅。
酒井善史。
まず諏訪は「ギョエー! 本多君の“ギョエー!”のボリュームが!?」と題して、稽古中で本多力が上げる悲鳴の特殊さを暴露。その場で実演されたが、確かに「ギョエー!」というより「ケエエェェェー!!!」とでも言うような「ぜひ劇場で生声を聞いてほしい」と思える特殊さだった。また酒井は「ギョエー! 上田誠、もう脚本を書き出すと発言」と、通常の新作よりもはるかに早い段階で、上田が「もう脚本書いてもいいなあ」と言い出したという「役者にとっては嬉しいギョエー!」を告白。これに対して上田は「今回は(稽古の)エチュード(即興芝居)に無駄がなくて、早めに(脚本を)仕上げてその先を観てみたいと思った」と理由を説明。そして酒井が明かした、通常の脚本スケジュールの具体的な数字については「決して記事にしないでください(笑)」と、記者たちに念押ししていた。

永野宗典。

中川晴樹。
また永野宗典は「ギョエー! 21年目の申し出」ということで、エチュードで振られた「入団一年目の新人がやってもおかしくなさそうな役」に大きな意味を見出して、劇団結成21年目にして初めて「この役をやりたい」と上田に申し出たエピソードを披露。中川は「ギョエー! 誕生日誰からもおめでとうを言われず」と、会見2日前に誕生日を迎えたにも関わらず、当日の稽古場では特にお祝いなどされなかったという悲しい話を。しかしなぜかゲストの祷だけから「おめでとうございます」と声をかけられたそうで、その不思議の原因を5つほどテロップに上げてみたが、上田から「あまり笑わなくていい大喜利という、新しいジャンルを開発するの、やめてもらっていいですか?」とツッコまれるという展開になった。(ちなみに正解は“たまたまSNSの通知で明日が誕生日というのを知った”でした)
またこのプレゼン中には、最初から脚本や役を与えられるのではなく、稽古のエチュードを重ねることで、自分の役と物語をみんなで積み上げていくというヨーロッパ企画独特の芝居の作り方について、ゲストたちがその思いを明かす場面も。
祷:私は初舞台の時の稽古場しか知らないんですけど、その時は脚本がある状態で稽古始めの日を迎える形だったので、これが舞台の世界のルールなのかなあと思っていて。でも今回お話をいただいた時に「しばらく役も脚本もわからないですが、よろしくお願いします」という風なお言葉が(一同笑)。でももうこれは、自分にとって挑戦だと思いました。
亀島:結構やっぱり、特殊な作り方だなあと思います。「この役をお願いします」というのがない状態でエチュードをやるのは、ここ(稽古)での活躍がきっと出番につながるだろうなということで、毎日オーディションみたいな気持ちです。

(左から)祷キララ、亀島一徳、金丸慎太郎、日下七海。

金丸:毎回参加させていただくたびに、エチュード自体めちゃくちゃ面白いんです。横で見ていても、エチュードをやる方として参加してる瞬間も、ずっと笑っちゃうぐらい皆さん面白いんで。今回も呼んでいただいて、稽古が楽しみでしょうがなかったです。
日下:すごく難しいなという印象。本当にオーディションというか「こういうのを出さないと」みたいなことを毎回思うんですけど、なかなかできないなあと。そういう時はやっぱり、大先輩たちを観て「すごいなあ」と毎日感動して「次頑張るぞ」と思ってます。
続いては、記者からの質疑応答のコーナーへ。回答はすべて上田が行った。
──今実際にオカルトに取りくんでみて、その面白さをどこに感じていますか?
わかってしまうと怖くなかったり、わからないからこそ怖かったりというのがオカルトやホラーの世界ですけど、それってつまり法則性が見出だせないんです。実際に掘ってみると、やはり取り扱うのが難しい題材だなと思います。でも笑いもそれと、ちょっと似ていて。僕は割と理系なので、いろいろ分析して構造を確かめながら作る方なんですけど、笑いって最終的に感覚に頼らざるを得ない所があるんです。「こういう理屈でこう作ると、こういう笑いが生まれる」ってことにはならないのが、ホラーと通じるところがある。また怖いものの中でも、いろいろなジャンルがあって……たとえば「あれ、さっきまでここにいた●●さんは?」「え、そんな人いなかったよ」みたいな怖さって、僕は何となく好きなジャンルだなあとか。分析できないけど魅力的に感じる怖さもあれば、何となく「これはあまり興味ないな」って怖さも、だんだんわかってきました。そういう中で、何かヨーロッパ企画なりの怖さみたいなものが作れればなあ、という風に思っています。
──そのオカルトの舞台に、学校という場所を選んだ理由は。
オカルトのジャンルの中でも、僕は学校の七不思議が好きなんだと思うんです。学校の七不思議ものって、ホラーの中でも最もプリミティブというか、怪談とか怖いことの原型だなあと。小学生とか子どもの頃って、まだ世の中のいろんなことがわかってなくて、そういう想像と現実が混ぜこぜになってるような精神状態の中で、学校という空間の暗がりに、何か想像をはせて……たとえば階段が夜中に一段増えるとかって、すごく豊かなイマジネーションだと思うし、その中でも名作は語り継がれるんですよ。トイレの花子さんとか、理科室の人体模型が走るとか。学校のある特定の場所をトリガーにして、想像が膨らみ、その中でもいい怪談はのちのちまで語り継がれていくという、その生成と淘汰のシステムが好きというのは、ちょっとありますね。そして「何でこの怪談は残るんだろう?」っていう、残るからには何か納得感があるんだろうなって。その納得感がある怪談と、納得感のない怪談みたいなものっていうことを考えながら、77のオリジナルの(不思議の)中で、新たな名作が生み出せたら最高だなと思っています。
記者たちの質問に答えていく上田誠(左端)。
──ヨーロッパ企画といえば、大仕掛けの舞台が一つの名物になっていますが、今回の話を聞く限りは、逆に小さな仕掛けがいっぱい出てくるような形になるのでしょうか?
今回も大仕掛けに次ぐ大仕掛けで……って考えたんですけど、やっぱりそれは難しいと(笑)。「77個怖いことをやります」ということ自体が、大きな仕掛けと言えると思っています。でも何年か前に「企画性コメディ」というのを提唱していた頃は、真ん中にドーンと大仕掛けが……お弁当箱にたとえると「これ入れたら、他は入らないんじゃない?」ぐらい不自由になるかもしれない仕掛けをあえて真ん中に置いて、それで無理やり劇を作ることで、新しいことを目指していくということをやっていました。でも最近は幕の内弁当のように、大仕掛け一発というよりも、豊穣な一つひとつの(要素の)充実をやりたいという気持ちになってきていて。そういう意味では今回、ちょっと面白怖いお化け屋敷の感覚で、お客さんには来てもらえたらなあと思ってるんです。お化け屋敷に入る前の緊張みたいな気分で(座席に)座ってもらえたら、観劇前の状況としてはあまり体感したことがないものになるかなと思っています。
──77個の不思議は上田さんが全部考えるのでしょうか? またそれらの不思議は、どの辺りが見どころになりそうですか?
今のヨーロッパ企画には、若手の作家チームみたいなのがあるので、その人たちと相談したりネタを出してもらったりもしています。役者からアイディアを出してもらうという風には、最近あまりしてなくて。役者は役者のことをやってもらって、作家は作家が仕掛けられることを準備して、稽古場でそれをぶつけ合うような作り方をしています。見どころとしては、ちゃんと(不思議を)77個数えてやろうと(笑)。やっぱり77って、多いんですよ。10個ぐらいまでは観られるけど、11個以降は飽きたりする。けど77個ずっと怖がらせて、楽しませ続けることができるか? というのは、作劇上の挑戦ではあると思います。なので様々な……小さなものから大きなもの、根幹や次元を揺るがすものからメタ構造に行くものまで、77個のいろんな不思議が観られるというのは、今回やってみたいことです。『ビルのゲーツ』(2014年)では、(100以上のフロア中)40フロアは実際舞台上でやったんですけど、77という数字はヨーロッパ企画的にも未踏なんで、最後まで飽きずに楽しんでいただけるものができたらいいな、という風には思っています。
「ギョエー!」という顔をリクエストされた時のヨーロッパ企画メンバー&ゲスト一同。
怖がらせる仕掛けをこれでもかと詰め込んだお化け屋敷のような、夏に上演するのに相応しい(都市によっては秋頃になるけど)舞台になる予感がする今年の新作。とはいえそこはヨーロッパ企画だから、恐怖感を上回る笑いもしっかり用意してくれるはずだ。まさに「笑いと恐怖は紙一重」を具現化しそうなこの舞台で、気持ちよく「ギョエー!」と驚かされに行こう。また7/22には毎日放送で特番が放映されるので、放送圏内の人はぜひチェックを。

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