池田純矢が松岡充主演・舞台『絶唱サ
ロメ』の見どころを語る「人とは思え
ない妖怪のような存在。カッコ良すぎ
て失神しますよ」

俳優・池田純矢が自ら脚本・演出を手掛けるエン*ゲキシリーズ。第4弾となる舞台『絶唱サロメ』が今秋10月に東京・紀伊國屋ホール、大阪・サンケイホールブリーゼで上演される。オスカー・ワイルド作の戯曲『サロメ』を原案に、松岡充との出会いから生まれた、全くの新しいオリジナル作品。「ライブエンターテインメント」と銘打ち、かつてない「音楽と演劇の融合」を創り出す。この度、『絶唱サロメ』のキービジュアルと配役が発表になった。遂にヴェールを脱いだ『絶唱サロメ』の全貌に期待が膨らむ。この記事では、去る5月31日に関西テレビで行われた記者発表の様子と、個別取材では池田が今作への思いを語ってくれた。
池田純矢
古典『サロメ』を王道エンターテインメントに
笑顔で会場に登場した池田。大阪出身でホームということもあり、冗談も飛ばしつつ気さくに挨拶をする。『絶唱サロメ』はどんな舞台になりそうかという質問には「原作の『サロメ』は残虐描写だけど、ある意味妖艶で耽美な作品。今回はそのまま上演するのではなく、あくまでもオリジナルで描き下ろさせていただきました。不道徳や残酷という重たいイメージを、王道のエンターテインメントにしてやろうじゃないかという企画です」と述べた。また、音楽がテーマになるという本作。「ミュージカルでも音楽劇でもなく、新しい形で音楽と演劇が融合という意味で「ライブエンターテインメント」と付けさせていただいたんですが、少なくとも僕はまだ見たことがない融合の仕方。これがお客さんにどう届くのか、非常に楽しみなところです」と答えた。
最初にオスカー・ワイルドの『サロメ』を読んだのは小学生の頃だという池田。サロメをオリジナル作品にする上で重きを置いた点については、「全く1から作ったオリジナルですが、やはりサロメに対するリスペクトはあるので、登場するキャラクターが原作の中でどういうふうに過ごし、最後を迎えるのかという事象に関してはしっかり取り入れていこうと考えていて、ちゃんと原作を読んだことがある人に、「このシーンこうなるんや!」と思ってもらいたい。そこは重きを置いていますね」と真剣な眼差しで口にした。
松岡充との出会いは「雷が落ちたような衝撃」
池田純矢
主演に松岡充を選んだのは「本当に運命的な出会い。『サロメ』をエンターテインメントにして上演したいという思いは元々あり、それと別のベクトルで、音楽と演劇の融合ができないかなという思いがありました。この2つは別々の物語で、自分の中では繋がっていなかったんですけど、舞台『不届者』で松岡さんと共演させていただいて、雷が落ちたような衝撃がありました。歌詞や言葉が形になってドンと目の前に現れるのが松岡さんの歌の1番の魅力。そんな印象を受けまして、頭の中にあった音楽と演劇の融合・妖艶な魅力・サロメというところが松岡充さんというファクターを通すことで全部1つにまとまって、何とか実現させたいなと思ったんです」と顔をほころばせながら語った。
誠意を見せるため、まず最初に台本を書き上げてから松岡にオファーをしたという経緯がある今作。松岡に台本を読んだ感想を聞くと、「「パンクや」と言われました(笑)。僕がやりたいことというか、何をしたいのかはすごく伝わったみたいで、それを総称して「パンク」と呼んでくれたのかなと思います」と笑顔。池田の情熱が実を結び、世に出る形になったのだ。
また、これまでのエン*ゲキシリーズ3作はコメディーだったが、「前作も前々作も、基本的には笑っていただきたいというのが1番のテーマだったんですけども、今回はそのテーマから外れて、初めてコメディー作品ではないんです。なのでいわゆる「笑って笑って」という作品にはならない。もちろんせっかくですから、クスッとできるところはいくつか用意してるつもりではあります(笑)」と、自身のエン*ゲキシリーズとしても本作が新境地であることをうかがわせた。
あらゆるフィールドの俳優陣が一同に集結
池田純矢
今回も脚本・演出・俳優の3役を担う池田。それぞれの見どころを聞かれ「脚本はエン*ゲキシリーズ以外でも何本か書かせていただいていますが、僕は後半にカタルシスがやってくるのがエンターテインメントの重要な1つだと思っています。前半から中盤にどんどん風呂敷を広げて、「そんなところが伏線だったのか!」と思わせるぐらい最後一気に回収していく。そこにエンタメならではの気持ち良さがあるんじゃないかと思っています。演出家としての見どころは、ライブエンターテインメントという部分。自分でもまだどうやって表現するか悩んでますけど(笑)。ある程度の形はできているので、新しい楽しみ方ができるんじゃないかなと思います」と回答。
特に音楽と演劇の新しい融合に関しては、「重要なギミックでもあるので、まだ全てを明かすわけにはいかないんですけど、唄わざるをえない状況で、「唄います」という宣言の元に唄います(笑)。でもライブシーンではないです。よくミュージカルで「何で急に歌い始めるの?」と言うじゃないですか。ミュージカルが苦手な人って多分そこがスッと入れないと思うんですけど、今回のサロメに関してはスムーズに観ていただけると思いますよ。とはいえ作品の世界と乖離しているわけではなく、2部構成になっているわけでもなく、ちゃんとギミックが物語に溶け込むように作っているので、そんなに違和感なく楽しんでいただけると思っております」と述べた。
俳優である立場の強みとしては「自分が役者で、ドラマや映画・舞台・声優と、いろんなフィールドでやらせていただいてるので、俳優陣のつながりが多分普通の人よりちょっと広いんです。その分いろんな客演を呼べる。1つの作品でこれだけのジャンルの人たちが集まっているのは、なかなかない魅力。今回ほんとに個性の化け物だらけですよ(笑)。正直まとまるかなと思ってるんですけど(笑)。これだけ一度に俳優陣を堪能できるのは、この作品においてとても強い魅力だと思っています!」と力強くアピールした。
最後に「『絶唱サロメ』を通して伝えたいことはたくさんありますし、自分なりにいろんな思いがありますが、作り手側がそれを提示してしまうのは野暮。結局、演劇はただの娯楽なので、ラフに観ていただいて、受け取る思いに関しては、お客さんに自由に決めていただければいいなと思っております」と力強く意気込みを述べた。大きな拍手を受けて記者発表は終了した。
力の限り、命の限り歌う、「絶唱」
池田純矢
――今回、松岡充さん主演で物語を書かれたということで、エン*ゲキシリーズでは初のアテ書きですよね。今までアテ書きはしないとおっしゃっていましたが。
アテ書きと呼んでいいのかな。僕の中でのアテ書きの定義が「役者さんにスポットを当ててその役を書いて渡す」なんですけど、そういう意味で言うと違うかなあって(笑)。もちろん松岡さんありきで出来上がった物語ではあるんですけど、松岡さんにアテて書いたというよりも、松岡さんと出会ったから生まれた物語という方が正しいのかなと。だから逆なんですよ。むしろ物語自体が松岡さんにアテてもらった感じなんですよ(笑)。
――それほどまでに松岡さんとの出会いが衝撃だったということでしょうか。
そうですね。会見でも言ったんですけど、サロメをエンターテインメントに昇華したい部分と、演劇と音楽を融合したいという2つの物語が、松岡充さんという人間と出会ってやっと輪郭を持ったというか。なので松岡充は1つのパーツとして物語に組み込まれてるわけです。そうしてキャラクターが生まれたので、アテ書きをしたという感覚はそんなにないんですよね。それは多分、僕が職業作家じゃないからだと思うんですけど。僕が書きたいことを書きたいように、1番おもしろい方法でやりたい。それが原動力の全てなので。だから既存の方法論じゃないことがあると思うんですよ。脚本家になるための勉強とかしたことないんで(笑)。
――気づいたら自然に書いていたと。
はい。だからそういう部分では他の方とは違う切り口があったりするのかな?とは思ったりしますけど。
――配役も発表になりましたね。やはりヨカナーンを演じる松岡さんの素の魅力の部分を、いかに舞台で発揮させられるかが見どころなのでしょうか。
素の魅力というよりも、松岡充という人間が持っている妖艶さや美しさ、それはもちろん物語のギミックとして使いますし、でも生っぽいものではないというか。なんだろうな。やっぱり物語ですから松岡充がそこにいりゃいいってわけじゃないですから。キャラクターに対して、複合的にその要素を載せたいとはもちろん思いますけどね。
池田純矢
――特にこの松岡さんを見てほしい、という演出家としての視点をお聞かせください。
ほんとに人とは思えない妖怪のような存在ですから。めちゃくちゃカッコ良くて失神しますよ(笑)。
――失神!(笑)。
とにかくカッコ良いですから! 「カッコ良い、美しい」のがすごくこの物語の核になってるので、そこはもう存分に楽しんでいただけたらと思います。唄もしっかり浴びていただいて。
――他の配役は、今までのように後で決めていかれたんですか?
そうです。松岡さん以外のキャストのオファーは、本が出来上がってからですね。
――池田さんの役柄が大天使ミカエルですね。ラファエル・ミカエル・ガブリエルで3大天使と呼ばれますが、松岡さんのMICHAELというバンド名ともリンクしていて。
ははは(笑)。サロメ自体も聖書の一文から生まれた物語なので、キリスト教の部分は根幹になってくるだろうなというところでのオリジナルのキャラクターですね。
――タイトルに「絶唱」とつけた理由は?
今回はサロメが元にはなっているけど、サロメであってサロメではない。翻訳劇をするわけではなく、一からオリジナル作品を作ったので、「サロメ」というストレートなタイトルは付けづらいなと思ったんですよね。今回は音楽が密接に関わってくるから、タイトルを見て唄うということがわかってもらえたらいいなというのは最初にあったことで。物語の中で「うたう」という言葉の意味を漢字で当てはめた時に、「唱」が1番しっくりくるなと思ったんです。で、この漢字を使おうと決めてから、「合唱ではないよなー、重唱でもないよなー、何やろなー」と思ってた時に、「力の限り、命の限り歌う」という意味で「絶唱」という言葉を使わせていただきました。
――先に漢字ありきだったんですね。ちなみに会見で『サロメ』を小学生の頃に読んだとおっしゃっていましたが、どこで読まれたんですか?
多分図書館です。もうねえ、何でもよかったんですよ。それこそ小学校の図書館は、1番端から読み始めて、端まで読み終わったら次の棚っていう読み方をしてたんで、雑食に何でもいってた感じですね。
池田純矢
――すごいですね。知的好奇心が強いんでしょうか。
単純におもしろいから本が好きなんです。今やってることもそうなんすけど、全部が全部、僕の中では「おもしろいから好き」というベクトルだけでここまできたので(笑)。
――エン*ゲキシリーズを積み重ねてきて、演出家として変わった部分や、池田さんご自身の成長、確固たるものを感じたりはされますか?
成長はしてると思いますよ。表現方法って重ねれば重ねるほど、老獪になっていきますから。まだまだ本数も少ないですけど、1本前の作品よりも今の作品が1番おもしろいと思ってますし。常に今できる最大限のおもしろいことをやり続けるだけなので、そこはもちろん変わってないです。変わったことで言うと、1年半前よりも今の方が、少なからず観ている作品の数は多いわけで、引き出しは増えてるわけやから、その分の成長は時間とともにあるはずとは思ってますけど。
――池田さんの活動のアウトプットの早さと確実性に脱帽するのですが、ご自身で意識はされていない?
いや〜、単純に楽しいことを楽しいと思うまま、そっちに向かって歩いてるだけなんで(笑)。ことさら自分のことをすごいと思ったこともないですし。遊びの延長にあるものだと思ってます。もちろんプロフェッショナルでならなければならないと思いますし、仕事として少なからずお金をいただくわけですから、そこは責任と誇りを持ってやらなければいけないですけど、その上で僕は遊んでる延長なので。だから難しいことやってるとも思わないですね(笑)。
「自分が楽しいと思った方に全力で向かっていく」と、心底楽しそうに語る池田の瞳が本当に印象的だった。彼が松岡充と出会ったからこそ生まれた奇跡の物語。一体どんな舞台になるのか。続報を楽しみに待ちたいと思う。
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=森好弘

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