形に出来ない感情をリアルに歌い続け
る LOST IN TIMEのキネマ倶楽部ワン
マン

LOST IN TIME キネマ倶楽部 単独公演

ことのはなびら おとのあまつぶ ろくがつのきみ うぐいすのたに
2019.6.15 東京キネマ倶楽部
2019年6月15日(土)、東京キネマ倶楽部で、LOST IN TIMEのワンマンライブが開催された。18時5分スタート、20時15分頃終了。2002年にデビューした頃の曲や、2010年代になってからの曲から、2019年5月17日に配信リリースされ、この日からライブ会場限定でCDでの販売も始まったシングル「Drifter」と「Blinker」のような最新の曲まで、二度のアンコールを含め全21曲がプレイされた。
大岡源一郎の叩くゆったりとした8ビートが海北大輔のベースと三井律郎のギターを導いていくバンド・イントロを経て、2003年1月リリースの1stシングル収録の「一つだけ」でライブはスタート。曲終わり、海北の「LOST IN TIMEです、最後までどうぞよろしくお願いします!」という挨拶に続いて大岡源一郎が「起立!」と叫んで同じく1stシングル収録の「約束」へ突入、着席状態でステージを凝視していたオーディエンス、笑いながら立ち上がる。続いては1stアルバムから「通り雨」と、初期の曲で固めたオープニングだった。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
「通り雨」が終わった瞬間にノイジーなバック・トラックが響き、新曲「Blinker」が披露される。赤一色の照明がステージを染め抜く中、海北、キーぎりぎりの高さのメロを叫ぶようにサビを歌う。インタールード的なインストから突入した名曲「列車」ではイントロで海北の「オオオ」「ラララ」が美しく響く。基本的にコーラスがないところでも歌詞を口ずさみがちな三井&源一郎だが、この曲のサビでは口の動きがいっそう大きくなる。海北がエレピを奏でながら歌い始め、スッとベースに移る「366」の後半では、三井がギターのネックを振り上げて鋭いソロを聴かせた。「30」では源一郎の3度上のハモリが海北の歌に寄り添い、そのバックで三井のライトハンドが響く。
「物語の終わりに」を終えてから、今日最初のMC。チケット完売のお礼と(こんなに早く売り切れるとは思わなかったとのこと)、今日はフロアを座席制にしてお客さんにパーソナルスペースを設けたので、周囲を気にせず気のむくまま立ったり座ったりして楽しんでほしい、ということを伝える。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
楽しいことばっかりじゃない毎日、いつもどおりの同じ毎日を繰り返しているはずなのに、毎日同じ瞬間というのは二度と訪れない。毎日同じ電車に乗っているのに、どうしてこんなに心が漂流してしまうんだろう、と思うことが僕もままある、そんな気持ちを歌詞にしてふたりに演奏をつけてもらって、今年も新しい曲ができました──という言葉から、9曲目「Drifter」へ。コードの展開やメロディののりかた、ギターとベースとドラムの絡み方などに、これまでのLOST IN TIMEになかった新鮮さを感じさせる曲である。次の「グレープフルーツ」のサビでは、海北の喉が今日何度目かの臨界点超えのすさまじくエモーショナルな歌声を響かせた。
「明け星」「太陽のカフス」を経ての「26」では、サビでシンガロングが起こり、それに合わせて照明が客席を明るく照らす。楽器同士が激しくぶつかるようなイントロで、キネマ倶楽部の空気を瞬時にして変えた「22世紀」から、ラウドに響くギター・ベース・ドラムが抑え気味の歌メロと好対照な「Merino Suit」への流れが、この日のピークのひとつ。最後のサビでは海北のボーカルも1オクターブ上になって爆発する。曲のシメで海北は長いシャウトを決め、源一郎はソロを聴かせた。曲が終わっても拍手と歓声が収まらず、源一郎、キャップを取ってクルッと頭の汗を拭いながら挨拶。また歓声が大きくなる。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
三井が吹くハープに、ストレートに海北の歌がからむ「旅立ち前夜」を経て、本日二回目のMC。「僕が歌を歌う理由は、僕が3人で音を奏でる理由は、あなた以外にはいらないかもしれない。今日この日を胸に大切に秘めて、明日からの日々、またいい歌を歌っていけるようにがんばっていきます。いっぱいもらいました。お返ししに行きますからまたいつでも来てください」と締めくくってから、「すべての仲間へ、同志へ、友へ」と捧げたのは「ライラック」だった。「列車」以上にオフマイクで歌う源一郎&三井、今日イチ伸びやかな声を響かせる海北。ラストは初期の名曲「呼吸」。「分かりあえない事 許しあえない事を 抱えて僕と君は息をしてる」で始まり、「分かりあえた事と 許しあえた事を 抱えて僕と君は息をしてる」で終わる海北のリリックを、ひとことひとこと耳に刻むようにオーディエンスみんなが聴き入り、本編が終了。3人に贈られた大きな拍手は、そのままアンコールを求めるハンドクラップになった。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
アンコールはまず、キネマ倶楽部名物・ステージ左上のバルコニーで、海北が歌とアコギ、三井はアコギとハープ、源一郎はカホンとウィンドチャイム、音を拾うのはコンデンサーマイク2本だけでほぼ生音・生歌という、ストリートライブのような状態で、「すべては風の吹くままに」を演奏。一同、海北のとんでもない声量に浸る。そしてステージに移動して「全ての贈り物」。海北の「笑い合おう 歌い合おう 愛し合おう」のリフレインが、「交わらない点と点を 重ならない手と手を」に、感動的につながっていく。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
ダブル・アンコールでは、曲に入る前に、大阪十三ファンダンゴの移転前に6月30日(日)にワンマンを行うことと、東京の次のワンマンが8月12日(月・祝)に下北沢CLUB Queに決まったことを告知。そして、「あなたが僕にとっての、LOST IN TIMEにとっての希望そのものです。それをどうか忘れないでください。あなたが僕たちの希望です」という言葉から「希望」へ。オーディエンスみんなが腕を挙げ歌を口ずさむ光景は、それぞれにとって、まさにLOST IN TIMEこそが希望である、そのことを表しているようだった。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
経年と共に枯れたり落ち着いたりフィジカル面でヘタったりすることが信じられないほど皆無な、バケモンのような歌力(「うたぢから」と読みます)をキープし続けている、いや、年を経るごとに威力が増し続けている、とんでもないボーカリストを擁するバンドであること。さまざまなテクニックを駆使した自在なギターも、シンプルの極みみたいなドラムも、歌そのものの芯をつかんでいることにおいて誰とも代替が効かないし、バンドの歴史において今がもっともいいプレイをできていること。そして、超初期から現在まで一貫して、ずっとセットリストに残り続けるような、深く深く心に刺さる歌を生み続けているバンドであること。など、あらゆる意味で、LOST IN TIMEというバンドが、本当に得難い存在であることを証明する21曲だった。
LOST IN TIME 撮影=にしゆきみ
そして、昔の曲も、もっとも新しい「Drifter」「Blinker」も、この東京キネマ倶楽部満員や、1年前の渋谷さくらホール満員という規模では収まらない、もっともっと広く遠くまで届くべきポテンシャルを持っていることを、改めて実感した。聴き手の中にある、言いたいけど言えない、吐き出したいけど形にできない感情を、こんなにもクリアに、端的に、リアルに歌にするバンド、「約束」を発表した16年前も、「Drifter」「Blinker」の現在も、LOST IN TIMEしかいない。

取材・文=兵庫慎司 撮影=にしゆきみ

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