ReoNa 木漏れ日のような歌の世界で再
度「神崎エルザ」と向き合う インタ
ビューで語ったキャラクターとの関係

TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の劇中アーティスト「神崎エルザ」の歌唱を担当したReoNaが、6月26日に、神崎エルザ starring ReoNaとして約1年ぶりとなる新譜、「Prologue」(プロローグ)を発売した。自身初となるアコースティックライブ、所属レーベルの大型フェスイベントなど躍進を続ける彼女が自身のデビューのきっかけのひとつである「神崎エルザ」とどう向き合ったのか、ロングインタビューでReoNaの言葉を聞いてみたい。
――まずは先日のアコースティックライブ『ReoNaAcoustic ONE-MAN Live“ハロー、アンプラグド。”』についてお伺いしたいんですが、いかがでしたか。
ホールでのライブの経験がないので、あらかじめ一回、会場の下見をさせていただいたんです。空気感だったりとか、すごく近い客席の距離感を確認しました。あらかじめ見ていたので、当日は結構イメージして臨む事は出来たんですけど、空気の圧みたいなものがあって、ライブハウスとはやっぱり違うなと感じました。
――今までバンド形式でやっていたものを、アコースティックのみでというものでしたが、なかなかチャレンジングなライブだったと思います。
目の前の一曲一曲、一人一人、言葉の一つ一つに必死でした。始まる前は長いと思ってたんですけど、あっという間で、もう終わっちゃったんだって感じ。あとは、今まで以上に生身で歌ってる感じ、生の音だったなと思いました。
――その次に出演したイベントが『SACRA MUSIC FES.2019』。こっちは打って変わって大規模イベントでした。
照明もすごいし、モニターも全方向についてて客席も全方向からステージに向いていて……初めてステージの下から出てくる演出もあったし(笑)。 この2日間もお客さんが凄く温かかったですね。イヤモニをするライブはあまり経験がないんですけど、イヤモニしててもこんなに声が聞こえるんだって思いました。アコースティックライブから2週間ぐらいでそんなに間は空いてなかったんですけど……客席から見てていかがでしたか?
――求心力は高いと思いましたよ。GARNiDELiAさんやPENGUIN RESEARCHさんみたいな激しいパフォーマンスをするアーティストさんとの共演も面白かったです。
会場をもの凄く温かくする方が多かったですよね。
――ReoNaさんにもその熱が詰まってる感じはしましたよ。
よかった(笑)。 他のアーティストさんの出番を裏で見てたり、客席で見てたところもあったんですけど、自分が歌ってる時は座って聴いてくださっている方がいて、そういう落ち着いた感じで聴こうとしてくれているのは嬉しいなと。フェスなのに一旦座って見て、聴いてくれているっていうのが嬉しい。
――そういう両極端なのを見てもReoNaさんらしいなと思いましたね。このライブも含めて、最近は色々な経験をしていると思います。そんな中で、ファーストステップだった神崎エルザが今回帰ってきたというところなんですけど、ニューシングル「Prologue」の話を聞いた時はどう思われましたか。
初めてお話を聞いた時は、不安という訳じゃないんですが、元々のミニアルバムである「ELZA」は挿入歌として使っていただいたシーンと紐づいていたりして、パワーのある楽曲たちだったんですね。今回、アニメの挿入歌ではなくてシングルで3曲をリリースという事で、今までのエルザを知っている人たちが受け取る印象が変わってしまうのかなと思ってたんです。デモや出来上がったものを聴いていると、全然そんな事はなくて。作っていく段階でやっぱりエルザだなって思いました。
――確かに印象的な部分がありますよね。クラシックを取り入れている楽曲は、作品の中の神崎エルザと紐づいていたり、今回で言うと書き下ろし小説が付いてくるというのもあります。自分の中で歌い分けている感覚は?
ないです。
――でもおそらく、ReoNaとしてのライブでもエルザの楽曲は歌う訳ですよね。改めて「神崎エルザ starring ReoNa」の名前でシングルを出す中で、自分の中の切り替えもないんでしょうか。
ミニアルバムを聴き返して、エルザらしさを考える時間は自分の中で設けたというか。その時歌える自分の声を精いっぱいぶつけるのはもちろんなんですが、そのうえで1年経ってエルザらしさを失くしたくないと思っています。1年間歌い続けて、技術的に変わった部分があったりする中で、最初に耳に飛び込んでくる声を聴いた時にちょっと違うなっていう感じにはしたくなかったんです。
――チューニングみたいなものですか。
感覚を取り戻すというか、忘れないように元々のエルザを聴き返しました。
――1年間やってきて、自分の中でいい悪いではなく、ReoNaとして変わってきたものを認識できた感じなんでしょうかね。
そうですね。それがこの前のアコースティックライブで、歌、ピアノ、アコースティックギターだけで自分の声が全楽器の3分の1という大部分を占めるパフォーマンスをやった時です。前まで出なかったキーが出るようになったり、表現できる幅も広がっているかなと。まだコントロールできるほどではないので、一つ一つを全力で歌うだけなんですけど、ここのロングトーンはCDの音源より伸ばした方が響くとか、昔より考えられるようにはなってるんじゃないかと思います。
撮影:岩間辰徳
色々な神崎エルザに繋がる楽曲となった三曲
――今回は3曲入りということで、改めて1曲ずつ伺っていきたいと思います。神崎エルザが生まれるというか、形成しているものを表現した3曲だと思うんですが、まずは1曲目の「ALONE」についてはいかがですか。
最初に歌詞をいただいた時に、色々なエルザに繋がる楽曲だなと思っていました。物語の時系列としては「ピルグリム」より前に出来ている楽曲なんですけど、その中で「惜しむ別れもないだろう」とか、「旅に出ようか」を最後に言うのもそうだし、「ヒカリ」、「step, step」、「ピルグリム」の種になるようなキーワードが散りばめられてるなと思います。
――歌詞を見ながら聴いた時に衝撃的だったのは、ヴィヴァルディの「四季」のメロディーで「Life is alone」って歌っているところで、明るい空気感のメロディの中で、「人生は孤独である」というのはなかなかすごい歌詞だなと思ったんです。エルザとReoNa的世界観がシンクロしているというか、改めて「ピルグリム」から聴きなおすと神崎エルザと彼女の側面の一つ、ピトフーイに繋がる部分もあるなと思います。
そうなんです、さらっと絶望を歌う感じとか、内側に破壊衝動を秘めている性格だったり、0から1の原点という意味では彼女らしい曲だなと思います。
――これはやられたなと思いました。続いては「Dancer in the discord」。こちらの作詞は草野華余子さんが担当なんですね。今までは毛蟹さんとハヤシさんのタッグが多かった印象ですが、華余子さんの歌詞はいかがでしたか。
元々『ガンゲイル・オンライン』がお好きとの事で、CDに同梱される小説も読んでいただいたうえでこの歌詞をあげていただいたんです。変な言い方かもしれませんが、違和感がまったくないというか、ピトフーイの元となるような衝動的な怒りや、死にそうで死ねなかったモヤっとした部分が激しい音、激しい言葉で乗っている感じです。新鮮だったのは、話し言葉じゃない歌詞が多いんです。「愛を請う」とか、「涙より雄弁」みたいな。
――確かに、ReoNaさんも神崎エルザもそうですが、一人称が自分だったり自分目線の歌が多いですよね。気に入ってるポイントとかありますか?
「五線譜の上」っていう歌詞が、エルザのすべてを表現してるかなっていう気がします。
――この辺は全部入ってますよね。「愛情も絶望もゆがむ感情が」っていう部分も……。
パワーワードが多い曲だと思うんですけど、「居場所だったら五線譜の上」だったりとか、「愛情も絶望も五線譜の上」とかは、ゲームと出会う彼女の歌だと思うんです。その時のエルザの「私には曲を生み出すしかない」っていう思いが、五線譜の上で踊っている彼女を表しているんじゃないかな。
――激しい楽曲になってるし、これぐらい激しい曲を歌うのは3曲目ぐらいですか。
神崎エルザでは、「Disorder」、「Independence」でこの「Dancer in the discord」かな。
――3部作感がありますね。
そうなんです。ライブを想像をしても、この曲たちの流れを感じられたのでレコーディングではイメージしやすかったです。
――ちょっと脱線するんですが、基本的にはしっとりしたバラード系が多いですよね。こういった激しい楽曲を歌う時はどういう切り替えをされてるんですか?
激しい曲だから身構えるという事はないです。
――かなりのデジロックなのに、ドヴォルザークの表現もちゃんと入っているのが面白いですね。
しかも、これ最後に「家路」も入ってるんです。私もトラックダウンの時に初めて気づいて。アウトロの部分聞いた事あるなって思ったら、入ってたんです。
――聴き込むと発見が多そうな曲ですよね。続いての3曲目、「葬送の儀(うた)」を聴いた時にはとんでもない曲を持ってきたなと思いました。
私自身もエルザの小説をいただいて感じた事なんですけど、私の中でもこの1年間で身近な人との別れがすごく多かった期間だったんです。小説を読むと、彼女が新しい環境に飛び込んだものの、そこでの大切な人との別れがあったりという環境で重なるところがあったんです。私自身は時雨沢先生に自分のそういった近況とかはお伝えしていないんですけど、不思議な運命を感じました。
――そうですね、どこかエルザとReoNaはリンクしてる部分も感じます。
はい、その上で小説を初めて読んで彼女との共通点をたくさん探して、最初の小説のインパクトが残っている時にレコーディングした曲なんです。今まで別れを題材にした歌がいくつかあるんですが、その中でもこの曲は“2度と会えない別れ”みたいなものを歌っています。悲しいとか寂しいとか、また会えるんじゃないかっていう仄かな希望とか……感情が一番乗った曲なんじゃないかなと思います。
――この曲はなんかこれまでのエルザの楽曲の中で、一番「ガンゲイル・オンライン」の世界観を感じたんですよね。洋楽的なサウンドメイクが、『ガンゲイル』の荒野の感じが出てるというか。
確かに。西部、アメリカっぽいっていう感じですよね。
――あとはReoNaさんとの近似値というか、神崎エルザが言いたい事をReoNaが歌っているというのに違和感がないですよね。
不思議な縁ですよね。キャラクターソングとか、劇中歌とか、そういった枠組みを超えて、エルザに寄り添ってもらっているみたいだなと思いました。
撮影:岩間辰徳
エルザは私の前に立っていて、向き合っているような感覚
――かなり広義的な範囲で言えば、キャラクターソングなんだけど、それだけに収まっていないですよね。楽曲をReoNaさんのライブで聴いても、神崎エルザ starring ReoNa名義のイベントで聴いてもしっくりくるというか、近しくなってきているような気がします。実際自身がエルザとイコールになっている部分を感じますか?
うーん、イコールという感じではなくて、あくまで「starring」(主演)という関係性なんだとは思います。不思議なところではあるんですよね。キャラクターがいて、聴いてくれる方がいて、その間にいるというか。私の歌がそのままエルザの歌として聴いている人には届くけど私自身の言葉ではないというか、自分自身も不思議なところにいるなとは思います。あくまでエルザの歌ではあるので、彼女ならどう歌うかとかどうやって作ったのかとか、彼女の思いをさらに深く考える機会になりました。
――神崎エルザっていうキャラが書いたという世界観の中で作られている曲なので、ある意味でReoNaさんからしたら曲を借りているというか。でも、実際聴いていると音も声も歌詞も借りてきた感じがしないんですよ。例えば、May’ nさんはシェリル・ノームは私の中にいるとおっしゃっています。そういう内包しているものではない感じなんでしょうか。
エルザは私の中にいるものではないと思ってるんですが、どう言ったらいいんだろう。
――EGOISTのchellyさんは楪いのりは「隣にいる」っていう表現をしているんですね。May’ nさんの例もある。ではエルザはどうか、っていうのは聞いてみたかったんですよね。イメージの話でしかないんですが……。
それで言えば私はエルザにとってのアバターというか、ゲームの中ではピトフーイがエルザのアバターなんですけど。彼女の歌を形にするというか、どっちがコントロールを握っているのか自分ではわからないんです。でも、私の思いとしてはエルザがコントロールしてるんだろうなと思っています。
――抽象的で概念的な質問をして申し訳ないな、とは思うんですが、やはり気になるところです。
逆にエルザにとってどうなんだろうっていうのを聞きたいです(笑)。 私はどこにいるのって。
――お客さんがどう見ているかっていうのもあるんでしょうか。
きっと重ねて見てくださってる方もいれば、別物と捉えてる人もいると思うし。アニメで流れてくる「Rea(s)oN」は確かにエルザが歌ってるけど、私のライブでは私の「Rea(s)oN」を聞聴きたいって人もいるだろうし。そう考えると、私の前にいて向き合ってるっていう感じなのかな。お互いに透かしてみている感じかな。彼女に聞いてみたいですよね。
――改めてアニメーションも一旦完結してる作品のキャラで、その誕生を曲で表現するっていうのは今回とても面白いと思います。
原作でもアニメでも描かれなかった部分を、こうしてシングルで表現させていただくっていうのはなかった形ですよね。
――この曲が出る事によってまた作品が厚みが増すというか。
そうですね。このシングルを経て、また一から『ガンゲイル・オンライン』を観直したらピトフーイの印象も変わるだろうなって思うし。
――同梱される小説も拝見しましたが、どこかReoNaさんの空気を感じるところがありましたね。
びっくりしました。今まで身の上のお話とか一切共有してないところであの小説だったので……。全く全部一緒という訳じゃないし、彼女の生い立ちではあるんですが、彼女と自分の共通点を自然と探していたり、私だったらどうするかって考えたりして、ものすごい泣きました。短編集なので読みやすくて、でも内容はしっかりと生い立ちを描いていて……。
――こういう言い方があってるかわかりませんが、彼女は作中ではヒールですよね。ライバルというか。
主人公から見ると何をしでかすかわからない人ですよね(笑)。でもヒールにもヒールの人生がありますから。自分自身もやっぱりアニメ、ゲームだったりとか、そういう部分に逃げた経験もあるし、逃げた果てにこうしてお歌を歌うようになったっていうところもあるし。
撮影:岩間辰徳
怖かった初めてを一つ一つ越えた先に見えてきた「木漏れ日」
――今回の楽曲たちは時系列でいうとエルザの最初の3曲っていう話です、でも、ReoNaさんの最新曲でもある訳ですよね。
そうなんです。パラレルしてますよね(笑)。
――多分ですが、デビューした時だったら「ALONE」も「葬送の儀」もこの歌い方にならなかったですよね。
なってないと思います。
――なんというか、聴いていて歌い方が一歩光に向かった気がするんですよね。前は結構、仄暗いところで歌っている感じでしたが、歌声に少し木漏れ日が射してきた気がするんですよね。それは、無意識にでも望んでるものなんでしょうか?そういう所に行くみたいな。
まず、それを聞いて“よかった”って思います。あんまり、キラキラした日向というか、直射日光は苦手なんですけど(笑)、木漏れ日ぐらいが一番、居心地いいですよね。
――エルザの初めて、衝動を歌っているのに、ReoNaさんにとって少しだけ光があるところに足を踏み入れたかもしれない、という歌になっていて。そのループのような感じが面白かったんです。ずっとお忙しいと思うんですが、改めてデビューから今を振り返ってどうですか。立ち位置とか。
自分の事だからこそ見えないものもあって、本当に想像していなかったぐらいたくさんの人と出会わせていただいたし、想像していなかったぐらい色々な舞台に立たせてもらえるようになって。この一年間で自分の世界が広がったし、初めての経験もたくさんあったんですけど……知らないものって大体怖いじゃないですか。初めての事も怖いし、まだ見ぬものはやっぱり怖いし。その一つ一つ怖かった初めてを積み重ねて前に進んで、その分葉っぱの隙間から光がちょっと見えてるっていう感じなのかなって(笑)。
――その前に進む一歩の一つとして、ツアーが控えてますね。
2度目のツアー、『ReoNa Live Tour 2019 "Colorless"』が待ってます。その先には2回目のバースデーワンマンライブとして『“Birth 2019"』もあります。
――活動は広がっていますが、プレッシャーはありますか。
あります。その時々の気持ちで変わるんですけど。家で一人で考えていて、わーっ!てなる時もあるし、一周回って……。それこそ、全国ツアーは初めてなので、まだ怖い事の一つですし。
――大阪、埼玉、福岡、宮城、愛知、北海道。しかも埼玉は女性限定なんですね。女性限定ライブは初めてですよね。
初めてです。
――でも、女性のお客さん結構いる気がしています、総じて皆さんReoNaさんをキラキラした目で見てるような。
女性の方でも泣き崩れてるところとか見ると、本当に毎回もらい泣きしそうになるんです。嬉しいけど、私も泣いちゃうからどうしよう、ごめんって思って(笑)。口が一緒に動いている女性の方も見るので、歌ってくれているのかな。嬉しいですね。
――これもライブで思ったことなんですけど、ReoNaさんって凄いお客さんをよく見てますよね。
見てます。顔を覚えるので。『SACRA MUSIC FES.2019』の大会場でも見知った顔を見つけられましたし。
撮影:岩間辰徳
――デビューから歌ってきて、こういうエルザとの出会いもあって、アコースティックライブをやったり、大きな箱でやって、諸先輩方とも一緒に出演して。更にツアーも待っている。前にもちょっと聞いたんですが、まだどこかで“希望”を追い続けていますか?
ずっと、探してはいます。私は本当に一つ一つ目の前のものしか見れないので、もう1年経つのかっていう感じです。大きな一歩を踏み出させてもらってるんですけど、まだ遠いところに来た感じはしてないですね。
――最後にシングルに込めた思いと、どう聞いてもらいたいかを一言いただければなと思います。
神崎エルザとしての原点を描いたシングルにはなるんですけど、私と彼女自身がリンクするところが多くて、ReoNaの気持ちも歌っていきたいものもギュッと詰まったものになってます。まずは一回、小説とか特典を読まずにシングルとして3曲聴いていただいてから、小説を読んで、紐解いてからもう一度聴いていただくと面白いと思います。同じ曲でも、また違う顔が見られるシングルになってるんじゃないかなと思うので、試してみていただけたら嬉しいです。
インタビュー・文:加東岳史 撮影:岩間辰徳

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