“色褪せない青春”を歌うBOYS END
SWING GIRLがメジャーデビューに至る
まで アルバム『FOREVER YOUNG』イ
ンタビュー

「色褪せない青春を歌いたい」――そんな想いをメロディアスな楽曲にのせる千葉県成田市出身の4人組ロックバンド・BOYS END SWING GIRL(略して“ボイエン”)が、6月5日にアルバム『FOREVER YOUNG』でメジャーデビューを果たした。結成は2010年。10代の頃から積極的にライブやリリースを重ね、バンドへの大きな夢を抱いてきた彼らが、これまで培ってきた経験のすべてを注いで完成させたこのアルバムには、自らを「ふつうの人間」と語り、だからこそ歌える、聴き手の人生に寄り添うメッセージが詰まっている。以下のインタビューでは、ここに至るまで彼らはどんな道のりを歩いてきたのかを中心に話を聞いたが、その道のりは決して平坦ではなかった。まずは、バンドの運命を変えたライブパフォーマンスと集客で競うライブバトル『ROAD TO EX 2017』のグランプリ獲得からの話から。
――2017年に『ROAD TO EX 2017』で初代チャンピオンに輝いたことから、一気にバンドが転がり出したんじゃないかなと思いますけど。
冨塚大地(Vo/Gt):そこからはあっと言う間でしたね。それこそ『メトロック』に出たりとか、いままでは手が届かなかったイベントに出られる機会も多かったし。
飯村昇平(Dr):実は去年の夏頃にはメジャーデビューすることが決まってたんですよ。
冨塚:早く発表したくてしょうがなかったよね。街を歩いてるときに「俺、メジャーデビューするんだぞ!」って思いながら歩いてました。すごい気持ちいいんですよ(笑)。みんな、俺がメジャーデビューして有名になることを知らないんだろうなって思いながら。
飯村:小物感がすごいな(笑)。
――あははは。そもそも『ROAD TO EX 2017』に応募したときは、バンドの状況はどういう時期だったんですか? 「ここで掴んでやるんだ」っていう感じ?
飯村:かなり……追い込まれるというか、『ROAD TO EX』に賭けてましたね。優勝しなかったら、バンドを見つめ直そうっていう。
――すでに全国流通で何枚か作品は出していたのに、ですか?
冨塚:そうなんですけど……僕らはコンテスト自体は10代の頃からけっこう出てたんですよ。で、良い成績も残してはいたんですけど、優勝だけはしたことがなかったんです。自分たちでは「無冠の帝王だ」って必死に言ってたんですけど、ずっと引っかかってたんですよね。そのなかで、事務所から「このオーディションに出てみないか」って言われて。出るなら、優勝しなきゃ意味がないと思ってました。
白澤直人(Ba):死ぬ気でがんばりましたね。
――そこで見事に優勝を掴むなんて、ちょっとドラマみたいな展開ですね。
飯村:僕はバンドで初めて泣いちゃいました。
冨塚:昇平が泣くのは初めて見たからびっくりしましたね。それまでバンド内もピリピリしてたんですよ。「優勝しなきゃ」って思い過ぎて、上手くいかなかったんですけど。(オーディションの)決勝の前に『CLOCK』っていうアルバムを出して、ツアーをやって、そこで結束力が高まった勢いで、『ROAD TO EX』に出られたのはよかったんですよね。
BOYS END SWING GIRL
――一見、ああいうオーディションで優勝するバンドって、順風満帆にも見えたりするけど、ボイエンに関しては全然……。
冨塚:順風満帆じゃないなっていう感じがします。途中で活動休止もしてますしね。ドロだらけです。何かを掴めると思ったら、逃げられるんですよ。ミュージックビデオを録るときにも、(監督に)お金を払ったのに逃げられるっていうのを、2回経験してるんです。勝負の曲ができて、リリースが控えてるのに、録ったものが完成しないっていう。
飯村:悔しい想いばっかりしてるよね。
冨塚:そのなかで負けずに、辞めずに、踏ん張れたのがよかったと思いますね。
――そこで踏ん張れた理由は何だったと思いますか?
飯村:諦めきれないっていう夢の大きさはありますね。一緒にやってたバンドが、いまやロッキン(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』)に出たりっていう現実があるので。俺らも負けてられない。目指すのは大きい夢だけど、それが近くにも感じるんです。
――ボイエンと一緒にライブハウスをやってたバンドっていうと、どのあたり?
飯村:SHE’ Sとか。
冨塚:あとHalo at 四畳半は、高校生のころ、お互いがまったく東京に出たことがないときから一緒にやってたんですよ。
――ハロは、ボイエンと同じ千葉出身ですもんね。
冨塚:そう。1個上の先輩として、ずっと前を走ってくれてるから、そこに向けて必死で食らいつくぞっていう気持ちもあったし。僕たちは、『閃光ライオット』世代なんです(現:『未確認フェスティバル』。2008年から開催された10代限定のオーディション。前述のSHE’ Sも2012年ファイナリスト)。でも、僕たちは『閃光ライオット』に出てないから、あそこでチャンスを掴んだバンドに憧れを持ってたんです。そういうやつらがどんどんメジャーデビューしていくのを見て、やっぱりすげえんだなと思ってましたね。
飯村:その気持ちを経て、いまに至ってるんです。
冨塚:悔しさがいちばんの原動力だと思いますね。一時期、僕「悔しいノート」を書いてたんですよ。毎日の悔しかったことを書いていく。昔はそれを1週間に1回見返すと、ちからが湧いてきてたんです。
――ボイエンにとって、メジャーデビューというのは、当初から目指すべき場所ではあったんですか? それとも、通過点的な意識なのか。
飯村:どっちもありますね。すごい憧れてたから、僕らがこんなところにいるなんて、と思うけど、まだ通過点っていうのもありますね。
鍔本隼(Gt):僕はそんなに……かなあ。売れるぞとは思ってたけど。
飯村:「音楽で食べていきたい」とは言ってたけどね。
冨塚:そうだね。正直、バンドを始めたときは、メジャーデビューをするのが当然だと思ってたんですよ。だけど、バンドを続けていくなかで、メジャーデビューできることも当たり前じゃないって気づいて。限られた人だけだから。それに関して、いまは感謝してます。25歳のタイミングでメジャーデビューできるのがよかったと思いますね。
BOYS END SWING GIRL
――そんな道のりを経てリリースされるデビュー作が『FOREVER YOUNG』になりますけど。「こういう作品にしたい」っていうイメージは何かありましたか?
冨塚:いままでの俺らを全部詰め込もうとしました。1枚目はみんなが帰ってこられる場所にしたいなと思ったんですよね。自分たちも、お客さんも。
白澤:制作段階で曲数がいっぱいあって、そのなかから曲を選んでいくなかで、アルバムの像が見えてきたんです。
――そのなかにインディーズ時代の楽曲「フォーエバーヤング」を選んだところに、ひとつバンドの意思がありそうですよね。タイトルトラックにもなってるし。
飯村:そうですね。今回、アルバム名をどうしようか?っていう話をしたときに、けっこう意見が割れてたんですよ。そこで、レーベルのスタッフが「FOREVER YOUNG」がいいんじゃないかって言ってくれたんですよね。それが満場一致で決まったんです。
冨塚:「これだ!」と思いましたね。
――「永遠の青春」っていうのは、バンドが大切にしたいテーマでもあるんですか?
冨塚:僕らはずっと「色褪せない青春」を歌いたいと思ってるんです。昔から色褪せないものを歌いたいっていう気持ちはあって。「青春」って嫌な思い出もあるじゃないですか。僕は、中学時代は全然イケてなかったんです。でも、高校デビューしてからは、ちょっとイケてて(笑)。どっちも経験してるんですよね、青春の暗い部分も、明るい部分も。それと、僕はすごくふつうの人間なんです。ふつうに恋愛をして、ふつうにサッカーをやって、ふつうにお父さん、お母さんがいて。だから聴いてくれる人の視点に寄れるんじゃないかなと思って。目を背けたくなるような、思い出すと恥ずかしくなるけど、それでも愛おしい青春みたいなものは、俺らの音楽につながってるなと思います。
――そうすると、ボイエンの目指す音楽って、どれだけ時間が経っても変わらない、普遍的に聴き継がれてゆくようなもの?
冨塚:そうですね。最近、インストアライブをやることが多いんですけど、そうすると、5歳ぐらいの小さい女の子もけっこう多いんですよ。逆に80歳ぐらいのおじいさんも来てくれたりして。ライブハウスシーンにいると、若い人にウケる音楽がかっこいいような気がして、そういう音楽をやりたいと思う時期もあったんですけど。でも、いまはこういう音楽をやっててよかったなと心から思えるようになってますね。
――そうやって老若男女に愛されるのが、国民的バンドの在り方ですしね。サザンオールスターズスピッツ、ミスチル、いきものがかりとか。
冨塚:そう、そこが僕たちの目指すところですね。
――自分たちでは、5歳の子から80歳まで、世代を問わずボイエンが愛される理由は何だと思いますか?
飯村:何だろう……田舎っぽいんですかね。
冨塚:あっ! それ、いま俺言おうと思った。都会感がゼロなんですよ。でも、すごい田舎者っぽいわけでもない。ちょうどいいんですよ(笑)。
白澤:ふつうの人だからね。
冨塚:一時期、僕たち「最強のふつうバンド」っていうキャッチコピーでやってたんです。でも、それはあんまり評判がよくなかったんですよね。そこで俺が言いたいメッセージが伝わってなかったというか。俺らは、ふつうに隣の家にいる優しいお兄ちゃんが集まってロックしてるのが強みだと思ってて。誰も飛びぬけて、マジな天才じゃないと思うし、ふつうの人生を歩いてきてる。そのなかで、ふつうに気になったり、ふつうに傷ついたり、ふつうに楽しいなと思ったことが音楽になってるんですよね。
――いわゆるカリスマ性のあるロックバンドではないかもしれないけど?
冨塚:うん。自分たちで「ふつうだ」って言ってるのに、周りのみんなが「カリスマがあるね」って言ってくれるのが、いちばんかっこいいですよね。
BOYS END SWING GIRL
――わかります。アルバムには、青春感の爽やかな曲だけじゃなくて、「縋 -sugare-」とか「Boo!! Let it go!!」みたいな、かなりエッジの効いた激しい曲も入ってますね。
飯村:こういう音楽も好きなんですよ、尖った曲もやりたいんですよね。
――「Boo!! Let it go!!」では<毒がないよって 誰に言ってんの?>っていうフレーズがありますけど、「毒がないよ」って実際に言われたことなんですか?
冨塚:めっちゃ言われてきましたね。そう言われて、「この人、おバカさんだな」と思って書きました(笑)。いままではこういう気持ちって、音楽のなかに出しちゃいけないと思ってたんですよ。自分の本当の気持ちは、ちょっとだけ出すけど、あからさまには出さない。それが変わってきたんですよね。
鍔本:この曲はライブでやるのが楽しみですよね。
冨塚:そうだね。いまの若い人たちって、押さえつけられてると思うんです。SNSの裏アカウントで愚痴を言うのも、そのせいだと思ってて。でも、この曲をライブでやってるときだけは、みんなで吐き出そうぜっていう気持ちなんです。「俺はこんなに嫌なことあるよ、みんなも嫌なことあるでしょ?」っていう、みんなの歌になってほしいんですよね。
――ボイエンって、たぶん「ポップだね」って言われることが多いと思うけど、こういう楽曲を聴くと、ロックバンドだなあと思いますよね。
冨塚:そこは出したかったんですよ。
飯村:けっこう「爽やか」って言われることが多いもんね。
冨塚:僕は「爽やか」っていう言葉が化け物だと思っていて。気を抜いてると、そいつに食い殺されちゃうんですよね。そうすると、本当に言いたいことを言えなくなる。それが嫌で。今回のアルバムでは、ちゃんと自分がこういう人間だぞっていうのを出せたのはよかったと思いますね。
――あとは、サウンドの変化球的な曲で言うと、「ナニモノ」はいいですね。打ち込みのトラックを取り入れたスタイリッシュな楽曲ですけど。
白澤:これは、僕が全部アレンジを作ったんです。せっかくアルバムを作るなら、ふつうじゃないことをやりたかったんですよ。バンドでやれないぐらいの曲を作ってやろうって。それで、がっつりパソコンの打ち込みだけで曲を作っていったんです。
冨塚:僕には絶対にできないアレンジですね。
――この曲の歌詞は内省的ですね。“自分は何者だろうか”って。
冨塚:歌詞、いいんですよね。この曲は大学を卒業して、2年目か3年目のときに書いたんです。周りの友だちが就職して、仕事も安定してきた時期で、かたや自分はバンドがあんまり上手くいってないっていうのが、すごくキツい時期で。本当に自分が何者なのかわからないときに、そこに子どもでもない、大人でもない自分を見つけてしまうというか。その浮遊感がアレンジでも歌詞でも表現できたと思いますね。
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――最後に「Alright!! ~令和若者讃歌~」について聞かせてください。サブタイトルを含めて、遊び心があって賑やかな曲ですけど。
冨塚:これは同世代を応援できる曲を作りたかったんですよね。もともとは「Everything will be all right」っていうタイトルだったんです。ただ、この曲ってリード曲になるタイプじゃないけど、歌詞をちゃんと聞いてほしいなと思ってて。スルーされないために、とにかくダサい名前をつけたかったんです。「讃歌」っていうのが、また絶妙にダサくていいんですよ(笑)。だから、「令和」が発表されるまで、スタッフにはアルバム情報を出すのを待ってくださいってお願いして、ギリギリまで粘りました。
――ブラスを交えたバンドサウンドも華やかでオーラスっぽい雰囲気です。
冨塚:隼が「この曲はブラスがないと、絶対にやらない」って言ったんですよ。
――鍔本くんって言葉数は少なそうだけど、けっこう意思が強いんですね。
冨塚:そう。だから、隼が何かを言うときは、絶対に言うことをきこうと思ってるんです。
鍔本:この曲を聴いたときに、ライブハウスでやってるイメージが湧かなかったんですよね。もっと広い場所に広がっていくような曲だなと思ったから、それに相応しい、ブラスの音を入れたいなと思ってたんです。
冨塚:それ、ずっと言ってたね。「スタジアムでやりたいんだよ」って。
――この曲で終わることで、ボイエンが音楽をやる意味って、決してひとりで完結するものじゃなくて、同じ時代を生きる聴き手に伝わってこそなんだろうなと思います。
冨塚:そうですね。もちろん自分ひとりで完結する音楽も好きだし、かっこいいと思うんですけど。僕がやれるのはそれじゃないと思っていて。受け取ってくれる人がいて、どうやったら、その人たちの人生と一緒に歩けるかを考えてるんです。自分が生きてきた人生と、聴いてくれる人の人生がリンクするような曲を書きたいなと思ってるんですよね。音楽はそのつなぎ目にあってほしい。それが、このアルバムには出てると思いますね。

取材・文=秦理絵 撮影=大橋祐希
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