佐藤流司×仲万美、異色タッグが作り
上げる斬新なロミジュリ像 Rock Op
era『R&J』ゲネプロレポート

2019年6月14日(金)、東京・日本青年館ホールにてRock Opera『R&J』が開幕する。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を原作とした作品は世界中に数多く存在するが、本作は今までにない全く新しいロミジュリになるという。脚本・演出は鈴木勝秀。主演のロミオ役は、2.5次元の舞台を中心に絶大な人気を誇る佐藤流司。ジュリエット役は世界的なダンサーとして活躍し、今回が女優として初舞台となる仲万美。異なるジャンルの第一線で活躍してきた二人のタッグということでも注目が集まっている。

ロミオとジュリエットの短く儚い恋物語の舞台は、イタリア北部の美しい街ヴェローナ……ではなく、近未来のとある巨大都市。そこではモンタギュー家とキャピュレット家ならぬ、グルッパ(不良)とビアンカズーリ(警察)が日々争いを繰り広げていた。ある日、グルッパ率いる少年ロミオと警察長官の娘ジュリエットが出会い、彼らは一目で恋に落ちる。恋は盲目。若く愚かな人間たちの行く末は如何に―――。
初日に先駆け、前日に会見および公開ゲネプロが開催された。
左から鈴木勝秀、仲万美、佐藤流司、陣内孝則
初日前会見に登壇したのは佐藤流司、仲万美、陣内孝則、鈴木勝秀(脚本・演出)の4名。
まず脚本・演出の鈴木は、「設定を近未来にしたりと、好き勝手やらせてもらっています。難しいことは一切ないようにしました。出てくるのは馬鹿者ばかり。でも、最後にぐっとくるようになっています」とシェイクスピア原作である本作の設定に触れた。主演の佐藤と仲については「佐藤流司のような強いハートを持っている若者に出会えて、僕は本当に良かった。それだけで感動してしまう。万美ちゃんはその強いハートに激しく共鳴することができて、その二人がロミオとジュリエットとして立っている姿を見ると、何もしなくてもそれだけで劇場全体が震えるような気がします。今後に向けて非常に楽しみです」と大絶賛。
対して佐藤は「ミュージカルなどの舞台を観にいらっしゃる方が普段聞いたことがないような歌があるんじゃないかなと思います。自分自身、舞台でやったことがない歌い方もしているので、それはぜひ聞いていただきたい。心臓に悪いかもしれませんが、ちょっとびっくりするような歌もあります。本当に“Rock Opera”にふさわしい曲がたくさん揃っていて、ロミジュリだけどロミジュリじゃない作品になっています。ぶっちゃけ、ロミジュリは予習してこなくても大丈夫です(笑)」と語り、新しい歌い方に対する自信も垣間見えた。
今回が初舞台となる仲は「舞台上で踊ることはたくさんありましたが、喋るとか歌うということは初めてなので、稽古が始まる前はどうやって声を出すのかすらわからない状態でした。見るもの全て新しいものばかりで、快感です」と興奮した様子で感想を述べた。
陣内は、意気込みについて質問されるやいなや「女房にロミジュリに出ると言ったらロミオ役だと勘違いされて、『それ高齢者向けの舞台なの?』って。若い俳優がいっぱい出るんだと話してやっと納得してくれた」というエピソードや、マドンナのバックダンサーとして活躍していた仲を引き合いに出し「ちなみに私はマドンナと同い年なので、(仲と)相性はいいのかなと思っています」と続け、最後には「今回の公演で若い女性ファンのハートをガチッとキャッチしたいと思います。何か問題でも?」と弾丸トークで会場を盛り上げた。
ロミオから見たジュリエット、ジュリエットから見たロミオについてそれぞれ質問が及ぶと、ロミオ役の佐藤は「ぶっちゃけ僕も仕事でダンスをすることがあるから踊れるし、とか思っていたんですけど、次元が違い過ぎて。二人で踊るシーンがあって、ゲネ前にこんなこと言うのもなんですけど、本当に嫌だなと。うそうそ(笑)。隣で踊れることを光栄に思います」と、仲のダンスのクオリティの高さに辟易している様子。対するジュリエット役の仲は「ロミオと流司くんは似ている部分が結構あるなって思います。たまに流司くんといるのに『ロミオ?』という瞬間もあるくらい。馬鹿な行動もしてしまうけれど、熱い素敵な人だと思います」と互いの印象を述べた。
会見の最後は、佐藤からこれから舞台を観るお客様へのメッセージで締めくくられた。「脚本・演出家の重鎮であるスズカツさん。世界的ダンサーの万美ちゃん。そして私が役者になりたいと思ったきっかけのドラマ『人にやさしく』に出演されていた陣内さん。他にもたくさん魅力的な役者さんがいらっしゃるので、お客様以上に自分自身楽しんで今回の公演ができたらいいな、と。皆さんとどっちが楽しめるか勝負! ということで、観ていただけたらと思っております」。
初日前会見のあとに、公開ゲネプロが開催された。本公演は、紛れもなくこれまでにない全く新しいロミジュリだった。

AIの進歩によって仕事を失い、不良と化したグルッパ。彼らを病原菌扱いし、淘汰しようとするビアンカズーリ。序盤の彼らの激しい対立シーンによって、この物語の舞台となる架空都市の状況が明らかになってくる。
ビアンカズーリたちを束ねるティボルト(藤田玲)は、ロミオ不在の状態のベンヴォーリオ(諸星翔希)やマキューシオ(田淵累生)をこれでもかと挑発する。
そこに、満を持してのロミオの登場だ。佐藤流司演じるロミオが歌いながらステージに上るその瞬間、会場全体がヒートアップしていく様子が肌で感じられた。
ここで驚かされたのが、佐藤の歌声だ。2.5次元の舞台で聴いたことがある美しい歌声とは、一味も二味も違う。熱が込もった、ロックでパワフルな歌唱は必聴だ。ロミオが舞台上を活き活きと駆け回るその姿は、見ていて気持ちがいい。カリスマ性とピュアさを持ち合わせた、熱いロミオという印象だ。
仲万美演じるジュリエットは、登場シーンからインパクト大。流石としか言いようがないキレの良いダンスを惜しみなく披露する。かつて、これ程踊れるジュリエットがいただろうか?
わがままに育った性格の悪いお嬢様というかなり攻めたキャラクター設定ではあったが、ロミオとの出会い以降の恋に恋する乙女な姿を見ていると、憎めないから不思議である。ストレートの黒髪と真っ赤なリップという仲らしい出で立ちで、舞台上での存在感も抜群だ。
ロミジュリの主役は何といっても若者たちであるが、本公演に出演しているベテラン役者陣からも目が離せない。
AKANE LIV演じるジュリエットの乳母ヘレナは、ジュリエットのためならどんなことでもする優しい乳母……かと思いきや、ロミオからお金を受け取ったり、自らジュリエットに家出を提案したりとかなり自由奔放な一面も。
陣内孝則のロレンス神父は、本当に神父なのか疑わしい程ぶっ飛んだキャラクターで、幾度も客席を沸かせていた。何を言っても信憑性がない上に、本心では何を考えているのか最後までわからない。初日前会見で佐藤が言っていた「陣内さんは毎日違うアドリブを入れてくる。半分くらい台本にないですからね」という話に思わず納得。
コング桑田演じるキャピュレットは、警察長官であり娘ジュリエットを溺愛する父。娘に邪険にされてヘコむ姿には愛らしさすら感じる。だが、実は政界に乗り出そうという企みを持っており、裏ではお金の匂いをプンプンさせていた。味のあるニヒルな表情もお見逃しなく。
仮面舞踏会でのロミオとジュリエットの運命の出会いから、物語は一気にスピード感を増して進んでいく。ロミジュリの筋書きは知っているはずなのだが、斬新過ぎる演出故に次の展開が読めない。本公演ではそんなワクワク感を味わうこともできた。
愚かな二人の一目惚れは、悲劇か喜劇か。結末はどうであれ、カーテンコールではぜひ客席でも”パッパラパー”になって楽しんでほしい。シェイクスピアが観たら卒倒するかもしれないが……。

東京公演は6月14日(金)〜6月23日(日)、続く大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて7月4日(木)〜7月7日(日)に上演される。ジェットコースターのようなスピード感溢れる新しい『R&J』を、ぜひ劇場で味わってほしい。
取材・文・写真 松村蘭(らんねえ)

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