【SPICY CHOCOLATE インタビュー】
人生は出会いと別れでできている
常に聴いてくれたお客さんに
サプライズを与えたいと思っている
毎回共作が多いからこそ、いろんなやり方があると思うんです。でも、実はそれって一番難しいことのように思えるのですが。
そうですね。いつも僕たちは“透明でいること”を大事にしています。いつもアーティストさんがやられているやり方を優先して、それをどうやったらより良くできるのかというのを考えて取り組んでいるんです。何かあった時にだけ、僕らが手を、口を出すようにしたほうが、いいものが生まれるんですよ。
どちらかと言うとプロデューサーの立場に近いのかもしれないですね。
そうかもしれないです。
それっていつも自分の心が開いていないとできない作業だと思うんです。
そうですね。やりたくないことはやらないんですが、興味のあることはどしどし踏み込んでいって、いろいろ取り入れようとしています。だからこそ、頭は硬くなっちゃ駄目だとは常に思っています。どうしても年齢を重ねると硬くなる人がいるじゃないですか。それってすごくもったいないと思うんですよね。あと、柔らかくいる理由として、常に聴いてくれたお客さんにサプライズを与えたいと思っているんですよ。
となると、今度はそろそろバンドとのコラボも聴きたいなと…。
いいですね！ やっていないのは演歌とロックなので、ぜび挑戦してみたいです。音楽はひとつだと思うし、変に垣根を作ったり、ジャンル分けをするよりも、“音楽で楽しもうよ！”という想いが、僕の中にあるんです。もちろん、レゲエに出会ったからこそこういった作品ができているんですが、他のジャンルの方と交流を深めて、新しいもの、新しい表現をできたらいいなと思っています。
そのコラボの中でSPICY CHOCOLATEが、若い子たちのいい教科書になっている事実があるじゃないですか。頑張ったら手が届く難しい問題を渡すような楽曲制作がすごくいいなと思っていて。
それ、いい表現ですね。まさにそうなんです。これからもそういったスタンスでさまざまな音楽を生み出していきたいですね。
そして、2曲目のLeolaさんとRAYくんを迎えた「どんなあなたも… feat. RAY & Leola」もまた意外な組み合わせで驚きました。
「最後のPiece feat. シェネル & Beverly」が出会いだったら、この曲では別れの歌になっているんです。Leolaちゃんは歌唱力が抜群にあって、RAYもラップが上手なのでふたりが組み合わさったらどうなるのかと興味があったんです。
RAYさんの魅力はどんなところにあると思いますか？
彼は歌も上手でギターも弾けて、レゲエアーティストとしては特殊なんです。本来のアーティストとしても素晴らしいんですが、今回は曲のテーマに合わせて歌い方を変えてほしいとお願いしたんですよ。別れたんだけど、その別れは自分にとってマイナスではないっていう前向きな歌詞だからこそ、未練や哀愁漂う歌い方を心掛けてほしいと。少し戸惑ったみたいなんですが、ちゃんとそのように歌ってくれたので、彼の新たな可能性を引き出せた気がします。
その新しい可能性を引き出すのは難しいことですよね。
そうですね。今までとは違うことをやることって抵抗があるんですよ。でも、そこを上手く方向転換してあげるのが僕の仕事だと思っているんです。“もちろんそれもカッコ良いけど、こうしたら違う魅力が出ると思うよ”と説得するのってすごく大事なことで。自分の引き出しがどこにあるか分からないアーティストも多いと思うんですよ。でも、自分では思い掛けない引き出しがすごく良かったということもあるので、まずは開けるお手伝いをするように心掛けているんです。
Leolaちゃんの歌声も、いつものさわやかな潮風を感じるものとはまた違いますよね。
そうなんです。歌詞を何度も何度も書き直した曲に引っ張られて生まれてきているので、すごくいいものになったと思います。この曲は、ふたりはもちろん、僕もすごく成長できた楽曲になりました。
さらにこのEPにはリミックスの楽曲が2曲収録されいるのですが、この曲の組み合わせもすごく面白かったです。
ありがとうございます。今回は原曲をちょっと変えて、よりレゲエテイストを足したものになっているんです。クラブなどでDJをする時、原曲のままだとJ-POP寄りになってしまうので、ちょっと浮いてしまうんですよ。なので、洋楽の合間に掛けられるようなものを意識してリミックスを作りました。
…この4曲、実はすごくつながっていませんか？
あっ、気付きましたか！ どの曲もしっかりと出会いと別れを歌っているんです。少し前の曲になりますが、展開もガラッと変えているので、この曲を聴いて原曲も聴いてもらえたら嬉しいです。
そして、また夏が来ますね。
そうですね。毎年夏に開催しているSPICY CHOCOLATE主催の『渋谷レゲエ祭』も今回で11回目を迎えるんです。11年目ってすごくチャレンジになると思うんですよ。だいたいが10回で廃れてしまうので、今回が最大の壁だと思っています。どうやったら来てくれる人を楽しませることができるのかと悩みながらも、いいものを出せればいいなと思っています。ただ、攻めていきたいですね。
そこは大事にしていることですね。
はい。守った時点でつまらなくなっちゃいますからね。自分でも楽しめるように、今回も攻めていきたいと思っています！
取材：吉田可奈
