LACCO TOWER主催のロックフェス「I
ROCKS 2019 」のクイックレポート 
完売御礼で大感動のアコースティック
とバンドな夜 - 6月7日(金) -

今年で6回目を迎えたLACCO TOWER主催のロックフェス「I ROCKS 2019 stand by LACCO TOWER」。初の4日開催というチャレンジの“2日目”は、めでたく完売御礼。5月12日のSUPER BEAVERとのツーマン以来となる、月をまたいだ6月7日は、奇しくも関東甲信、東海、北陸、東北南部が梅雨入りしあいにくの雨模様だが、会場である群馬音楽センターの屋外には、16時ごろから入場の列に並ぶ人もいた。I ROCKSグッズやアーティストグッズ売り場のほか、特大フォトブースなども設置され、フェスのモードは徐々に加熱していく。また、この日展開されるアコースティック・ライブのエリアである「YOU STAGE」の奥にはドリンク・カウンターもあり、入れ替わり立ち替わり、塩﨑啓示や細川大介、重田雅俊がバーテンダー姿で、来場者に対応する場面も。ドリンク片手にアーティストと近い距離でリラックスムードという、いつもとはちょっと違う趣向で展開した2日目の模様をレポートしていこう。
秀吉
秀吉 Photo by 鈴木公平
「おかえりなさいませ」。LACCO TOWER・塩﨑啓示(Ba)の挨拶からライブが幕を開けた。「みんな、1年間すごく苦労して、がんばってここまで来たと思うんです。僕たちもそうです。今日は最後まで思う存分楽しんでください」。そんな塩﨑の言葉のあと、いよいよトップバッター・秀吉がステージに現れた。
1曲目は、新曲「声」。柿澤秀吉(Vo/Gt)が紡ぎ出す澄んだメロディを、町田龍哉(Ba)と神保哲也(Dr)が生み出す心地好いグルーヴが支える。秀吉のアコースティックステージは、柿澤がアコギを弾く以外は、エレキベース&ドラムを含む通常のバンド編成だ。MCでは、LACCO TOWERのレコーディングにも関わる柿澤が、スタジオで目にするLACCO TOWERは「本当に仲が良い」と伝えて、会場を和ませると、中盤に届けた「歩こう」が素晴らしかった。大仰に背中を押すのではなく、それぞれの歩幅に合わせて一緒に歩くようなその楽曲は、どんなときも飾らずに人間臭い音楽を作り続ける秀吉らしい1曲だ。
最後のMCでは、「たぶんI ROCKSを始めたとき、この大きな会場をソールドアウトするって、いろいろな人に笑われたと思う。でも、諦めたら絶対に叶わないって、このイベントを通じて痛感しました。諦めの悪い先輩がいるから、まだまだ僕らも負けたくないなと背中を押してもらっています」と柿澤。続けて届けた「かなわないゆめ」には、不屈のバンドLACCO TOWERを讃える敬意の想いが溢れていた。
goodtimes Photo by Masanori Fujikawa
I ROCKS皆勤賞でありながら、毎年、シークレットゲストとしての出演だった井上朝陽(Vo/ Gt)がgoodtimesというバンドを率いて、遂に正式なアクトとしてYOU STAGEに登場した。1曲目の「サダメヨサダメ」から、“誰もが口ずさめるメロディ”を大切にする彼らの、歌ごころ溢れるセンチメンタルな楽曲がお客さんを魅了。井上朝陽(Vo/ Gt)、安田そうし(Gt)というふたりのメンバーに加えて、カホンやベースなどを交えた5人編成で生み出す厚みのあるアコースティックサウンドが優しくフロアを揺らしていく。
これまでシークレット枠で出演し続けてきた過去を振り返って、「群馬のバンドじゃないのに、毎年呼んでいただいて、感謝もしてるけど、文句もある(笑)」「みなさんが協力して盛り上がってる風にしてくれたら、次はあっち(メインステージのI STAGE)に出られるかもしれん!」という井上の開けっぴろげなMCでも、ぐいぐいお客さんを味方につける人懐っこさはさすがだ。
ほの暗いメロディから切なさが溢れ出すナンバー「灰色」から、拭いきれない未練を歌うバラード「終わりを迎えた後のこと」まで全5曲。LACCO TOWERへの「大好き」を何度も何度も伝えたステージは、「家族」をテーマに掲げるI ROCKSの、アーティスト同士の絆の強さを象徴するアクトだった。
片平里菜
片平里菜 Photo by 鈴木公平
3月に開催した「名うての唄ひ手〜渋谷博〜」のゲストにも登場し、松川ケイスケがこの弾き語りツアーは彼女ありきだと明言したのが片平里菜。あまりにもさりげなくステージに上がり「帰ってきました、片平里菜です。よろしくお願いします」の第一声から、「CROSS ROAD」を歌い始める。晴天なら夕暮れの中、外で歌っているような雰囲気になったかも?と想像できる一面ガラス張りのシチュエーションがいい。
彼女自身、路上で歌っていた頃を思い出すといい、「ここは響きがいいので」と、オフマイクでサビを歌って見せたのだが、その声の通ること。加えて「迷惑って言わないで ここで歌わせて」というフレーズが、彼女の歌い手としての不変の軸を体現しているようで思わず震えてしまった。その場にいるオーディエンスの表情をくみながら、「歌えそうだったら歌って」と「女の子は泣かない」のシンガロングを起こしたり、ロングトーンで迫真の歌唱力を見せたりーーものの15分で片平里菜という磁場を作り出す底力。
片平里菜 Photo by 鈴木公平
「こうして超えれる場所を作ってるLACCO TOWERはかっこいい兄さん。こうしてバンドの方の中で歌ってるとロックってなんだろう?と思うけど、私は奇を衒わずに自然体でいることなのかなと思います」と、スタンドアローンの凛々しさと柔軟さを短いセットに凝縮して見せたのだった。痛快!
村松拓(Nothing’ s Carved In Stone / ABSTRACT MASH
村松拓(Nothing’s Carved In Stone / ABSTRACT MASH) Photo by Masanori Fujikawa
椅子に腰をかけた村松拓(Nothing's Carved In Stone / ABSTRACT MASH)が、ひとりアコースティックギターを弾き始めると、会場からは自然にハンドクラップが湧き上がった。「もうあったまってるね。群馬で初めての弾き語りです。楽しんでいきましょう」。そう言って歌いはじめたのは、ABSTRACT MASHの楽曲「Aspili」「Silent wheel」。バンドではなく、“アコギと歌”というシンプルなスタイルでは、村松のロックボーカリスト然としたヒリヒリとした存在感がぐっと浮き彫りになる。色気もだだ洩れだ。
MCでは、「LACCO TOWERは兄貴みたいに慕っている」と伝えた村松。14年前に下北沢GARAGEで開催された「ロック番長」というイベントに、ABSTRACT MASHとして出演したことがLACCO TOWERとの初対バンだった。それ以来、対バンの機会がなかった彼らだが、お互いに「遠く離れて、想いやってるような関係」を築いてきたという。「I ROCKSでは奇跡が起こる」と、オープニングで塩﨑が言っていたが、このステージで14年ぶりにLACCO TOWERと村松の対バンが実現したのも、まさにそんな奇跡ひとつだと思った。
村松拓(Nothing’s Carved In Stone / ABSTRACT MASH) Photo by Masanori Fujikawa
最後は「何かを始めるときには恐怖とか不安がつきものだと思います。迷い、悩んだ末に進める一歩がある。そんな悩んでいるあなたの背中を押せる曲を送りたいと思います」と伝えて、Nothing's Carved In Stoneのナンバー「朱い群青」で終演。その身ひとつで、ゆっくりと一語一語噛み締めるように伝えたメッセージは、どこまでも生々しくて、胸に刺さる名演だった。
松川ケイスケと真一ジェット Photo by Masanori Fujikawa
2日目のトリは、「名うての唄ひ手」がツアーに拡大したことで全国に浸透しつつある、アコースティック・スタイルの松川ケイスケと真一ジェット。LACCO TOWERの歌謡としての強さや、メロディの良さ、歌詞の細部が堪能できるステージだ。坂本龍一もかくや、なピアノを奏でる真一ジェット、第一声からポーンと高音で魅了する松川の歌の表現力を堪能させる「檸檬」でスタート。檸檬を月に見立てて窓に置くーー複雑な感情が溢れ出し、早くも場を二人の色に染める。
松川ケイスケと真一ジェット Photo by Masanori Fujikawa
「I ROCKS 2019へようこそ。お帰りなさい!」と松川が第一声を発すると様々な世代が集まったフロアから拍手が起きる感動的なスタートだが、ここから掛け合い漫才よろしく、松川が真一ジェットの新しい髪型の明快な二色ぶりにツッコミを入れ、返す真一ジェットはサングラスの開閉をスマホの着信音よろしく音色を変え、シンクロさせて笑わせる。予定外の真一ジェットによる「晴れろ」と題された晴天祈願のアドリブも交え、1曲披露しただけで10分以上は経過しただろうか。さすがに少し巻き始め、青春の光と影の情景がリアルに立ち上がる「藍染」、さらにはバンド・アレンジでは聴くことのできないジャジーなピアノにのせた「杏子」。オーディエンスにハンドクラップを要求し、最初は表拍で叩いていた気がしたのだが、ピアノが入ると裏拍で打っているという参加感も楽しい。
松川ケイスケと真一ジェット Photo by 鈴木公平
エンディング前に松川がテンポチェンジし、アカペラで熱唱。自由度の高いアレンジでエモーションをまざまざと見せつける。のだが、ロマンティックな気分をひっくり返すように、必ず真一ジェットの「三・三・四拍子」のリフ&「オー!」の掛け声のセットで締めるのだ。なぜ、ムーディなまま終わらない……と思いつつも、妙にクセになる。
演奏とトークが同じぐらいの分量で進んできた中、松川が「いよいよ最後の曲に……いま、誰か『ふざけんな!』って言いました?」と笑わせながら、I ROCKSの核心めいたことを話す。「音楽をやる、バンドをやる、歌を歌うこと以上に、場所を作りたい。今日は帰省1日目。ここがみんなの家みたいになったらと思ってます」。ラストは「花束」。感謝を込めた歌ではあるけれど、「こぼれる弱さを包む花束」というLACCO TOWERらしい文脈が生きた内容がビビッドに伝わるのがいい。
6回目にして初の4日間開催を完売し、「自分が感動するのは当たり前だけど、フェスを作る者として、来るを感動させて、それを見て感動したい」と真面目に決意を話した真一ジェット。続く2日間にバトンを渡すようにアンコールは「薄紅」で締めくくった。
Photo by 鈴木公平
取材・文=秦理絵:秀吉、goodtimes、村松拓(Nothing’ s Carved In Stone / ABSTRACT MASH)、石角友香:片平里菜、松川ケイスケと真一ジェット

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