【速レポ】<MUSISION FEST>kitri、
まるで小鳥たちまで一緒に歌っている
かのような音風景

少しだけ涼しくなった、柔らかな風が会場を通り抜け始めたころ、お揃いの赤い衣装をまとった姉妹がステージの中央に並び、丁寧にお辞儀をする。姉のMonaと妹のHinaによるピアノ連弾ボーカルユニット、Kitriのステージが始まった。
オープニング曲は、“Kitri”というユニット名で最初に作られたパイロット盤『Opus 0』収録の「LIFE」。1台のピアノに2人が並んで、低音域をMona、高音域をHinaが担当するピアノ連弾曲だ。クラシカルな肌触りがするフレーズの中にも強いビートを感じさせながら、そこに2人のハーモニーがふわりと漂う。その曲中には、ベートーベンの「運命」や「歓喜の歌(第九)」の調べが顔を覗かせ、曲が進むにつれてどんどん観客の心を掴んでいった。続く「細胞のダンス」、そしてアップテンポの「一新」では、2人が歌うハーモニーが実に心地よく場内を包み込んでいく。
こうしたスタイルでの演奏は、どちらかというと、きちんとしたホールで、お行儀よく聴かなければならないといったシチュエーションが多いだろう。それが今回は、緑に囲まれた野外で、しかも観客は、身体を揺らしながら、あるいはフードを食べながら笑顔で聴けるという、ある意味でとても贅沢で、実に気持ちのいいものだ。

そんな解放感からか、MC時には客席から2人に対して「カワイイ!」というかけ声も飛び出し、「初めてアイドルさんのような気持ちを味わえました(笑)」(Mona)と、とても和やかな雰囲気で、彼女たちの演奏は進んでいった。
ライブ中盤には、ロシア民謡の「一週間」と、Hinaがギターやカホンをプレイした「硝子の少年」といったカバー曲を披露。多くの人が知る名曲に加えられた、上品ながらも大胆なkitriのアレンジはとてもユニークだ。そして迎えた、この日の一番の目玉は、7月24日にリリースされる2nd EP『Secondo』のリード曲「矛盾律」だ。

Hinaはギターだけでなく、ミニ・キーボード、さらにはカホンで4つ打ちのビートを鳴らすなど、意欲的なアレンジが取り入れられており、その上で奏でられるMonaのピアノにも、ほのかにジャジーな香りが漂うといった新しいアプローチで、ますます新作が楽しみとなるパフォーマンスであった。
その後には、「春」、「リズム」と彼女たちの代表曲が演奏されると、ラストを飾るのは、メジャーデビュー1st EP『Primo』のリード曲「羅針鳥」。気が付けば、ライブ前半に感じられたフェス特有の客席の賑わいはすっかりと落ち着き、多くの観客は、静かに、でも楽し気に、2人が奏でる音だけにじっくりと耳を傾けていた。唯一、賑わいを増していたのは、会場内を飛び回る小鳥たちのさえずりだ。まるで小鳥たちまでもが、Mana、Hinaと一緒に歌っているかのような、そんなkitriが作り出す音風景であった。

   ◆   ◆   ◆

【終演直後の楽屋裏ミニインタビュー】

──まずは、ライブを終えての感想をひと言ずつお願いします。

Mona:緑に囲まれた公園の中という野外ステージに出演させていただいたのは初めてで。子供の頃から、そういう場所に憧れはあったんです。でも、なかなか上がれない、神聖な場所っていうか。そういうところで初めて演奏させていただけて嬉しかったですし、お客さんも、ゆったりと自由に楽しんでいただけたようで。私たちの演奏に反応してくださる方も多くて、私たちも、それに応えるように気持ちがノッて、楽しくライブさせていただけました。とてもピースフルなイベントですね。

Hina:今日はすごく暑くなると聞いていたので、みなさんに涼んでいただけるような冷静さを持ちながら、でも情熱を持って演奏をしたいなと思っていました。ライブの途中には、鳥の鳴き声も聴こえてきて。一緒に歌っている感じというか、そういう野外ならではのシチュエーションが魅力的でした。私たち自身は緊張感を保ちながらも、お客さんの表情に、逆に私たちがホッとするような空気を作っていただけて、本当に楽しいステージになりました。

──1曲目の「LIFE」では、途中でステージの上方を見上げながら演奏している姿が、とても印象的でした。

Hina:はい(笑)。大気や風、日陰の心地よさを感じながら、演奏させていただきました。

──これまで、こうした野外ステージではあまり演奏する機会がなかったかと思いますが、どういうイメージで今日のセットリストを選んだのでしょうか?

Mona:集中して聴いていただくというより、みなさんにゆったりした気持ちで楽しんでいただけるような曲を、いつもより多く選びました。それにフェスですから、私たちのことを知らない方もいらっしゃると思うので、普段はカバー曲って1曲くらいなんですけど、今日は2曲入れて、一緒に楽しんでいただけたらいいなって。

──そんな中で、7月にリリースされる2ne EP『Secondo』からの新曲「矛盾律」も披露されましたが、手ごたえはいかがでしたか?

Hina:ラストナンバーとして演奏した「羅針鳥」が、現在リリースしている中での最新曲なんですけど、そこからさらに新しく、広がった私たちの世界観をお見せできたらいいなと思いながら新曲を演奏しました。音源ではいろんな音が入っているんですが、ライブでは、それを私がミニ・キーボードやカホンで演奏できるように工夫していて。今回は、それをお見せすることができました。

Mona:普通なら、もう少し分かりやすい曲が“リード曲”っていうイメージだと思うんです(笑)。ですが「矛盾律」は、曲の構成だったり、歌詞だったり、メロディだったりが独特なので、そういう意味では“挑戦”というか。でもそれを、自分たちは自信を持って“知ってもらいたい”と思った作った曲なので、そういうチャレンジをお見せできたかなって思っています。

──では最後に、新作『Secondo』リリースに続いて、秋にはツアー<Kitri Live Tour 2019「キトリの音楽会#2」>を開催されますが、どんなものになりそうですか?

Mona:今年1月にリリースした1st EP『Primo』で私たちのことを知ってくださった方もいらっしゃると思うんですが、『Secondo』でさらに多くの方に知っていただけたら嬉しいです。そして、ライブパフォーマンスもどんどん進化していけるように、何にもとらわれず、新しいアイディアが生まれたら、その方向に世界観を広げていけたらいいなと思っています。

Hina:前回、メジャーデビューをして初めてワンマンライブを経験させていただいたんですけど、次は2回目のワンマンということになるんです。そこでいろいろな方に私たちの音楽を届けられるよう、一生懸命にふたりで練習して頑張りたいと思います。

取材・文◎布施雄一郎

セットリスト
1.LIFE
2.細胞のダンス
3.一新
4.一週間(ロシア民謡)
5.硝子の少年(カバー)
6.矛盾律
7.春
8.リズム
9.羅針鳥
<MUSISION FEST 2019>
2019年5月25日(土)
@上野恩賜公園(うえのおんしこうえん)
自由席 4,000円(税込)・当日4,500円(税別)
開場/開演:12:00/13:00
出演(順不同):The Cheserasera音速ライン浅草ジンタ、浜端ヨウヘイ、関取花、kitri、フラチナリズム、MAISON“SEEK”

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