音楽で水彩画を感じさせた
ドゥルッティ・コラムの『LC』は
ポストパンク時代の異端である

本作『LC』について

前作の『ザ・リターン・オブ・ザ・ドゥルッティ・コラム』はジョイ・ディヴィジョンのプロデューサーでもあったマーティン・ハネットが手掛けていたが、本作はライリーのセルフ・プロデュースである。…と言えばカッコ良いが、ライリーの自宅の4トラックレコーダーでの宅録なのだ。ちなみに、パーカッションには本作以降長い付き合いとなるブルース・ミッチェルが参加している。

前作と比べて、ジャケットにはパステルカラーが使われ明るいイメージとなったこと。ライリーの囁くようなボーカルが初めて聴けるようになったこと。前作が、全体的に夕方のもの悲しげなイメージが強かったのに対し、本作では早朝ののどかなイメージも少なからずある。…などが挙げられるが、本質的にサウンドの変化はない。どちらも淡い色使いの水彩画のような雰囲気で、アルバムを何度もリピートし続けると、まさに「家具の音楽」としての効果が味わえる。

ただ、「家具の音楽」とは言っても、彼の音楽は単なるBGMでもイージーリスニングでもない。サティ並みの反骨精神をしっかり持っていることは本作を聴けば一目(聴)瞭然だ。おそらく、81年当時にこのアルバムと出会って衝撃を受けた人は、40年近く経った今でも何かの節目に聴くことは多いのではないだろうか。ヒットチャートとは無縁でも、本作をはじめ、ドゥルッティ・コラムの音楽は永遠に聴き続けられると思う。

本作のリリース前に自殺したジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスは、レーベルメイトというだけでなくライリーの親友であっただけに、その悲しみは大きく、本作所収の「The Missing Boy」はイアンに捧げられている。なお、アルバムタイトルの『LC』(Lotta Continua)はイタリア語で、“闘い続ける”という意味である。

LP時代のジャケットの質感は素晴らしく、CDサイズではその良さが伝わりにくいのが残念だ。現在、ボーナストラックが収録されたCDが出回っているが、時間的にもイメージ的にも僕はオリジナルの10曲だけのほうが良いと考えている。

ドゥルッティ・コラムの静謐かつ端正な音楽は、ベン・ワット、トレーシー・ソーン、ペイル・ファウンテンズ、フェルト、プレファブ・スプラウトら、所謂ネオアコ関連のアーティストに大きな影響を与えているので、そういった音楽が好きな人はドゥルッティ・コラムの音楽も聴いてみてください。きっと新しい発見があると思うよ♪

TEXT:河崎直人

アルバム『LC』1981年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. Sketch For Dawn
    • 2. Portrait For Frazier
    • 3. Jaqueline
    • 4. Messidor
    • 5. Sketch For Dawn
    • 6. Never Known
    • 7. The Act Committed
    • 8. Detail For Paul
    • 9. The Missing Boy
    • 10. The Sweet Cheat Gone
『LC』(’81)/The Durutti Column

OKMusic編集部

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